汚部屋へGO!〜戦いの記録

はに丸

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私と汚部屋の戦い

第10話 なぜ引き出しの中から片付けるんだ?

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『部屋が汚い人って出しっぱなしの本や服を無視して引き出しの中を片付けるんだよね、先にすることあるやろて思うんだけど』

 私が知ってる中で最も部屋を綺麗に保っている友人の言である。彼女はなぜか汚部屋友人に縁があり、幾度か手伝いに行き……家主が引き出しや戸棚など、後回しすべきところを片づけだすため呆れたらしい。

 正論である。机周りをきれいにしても、部屋の動線は確保できず、片づけた気分で終わることも多いだろう。

 しかし、私は机に向かった。机はロフトベッドの下にある。
 まず、床の動線確保のために机の上に置いていた本を、本棚に戻すことなく床に置いた。

 すでに椅子の上の引き出しはもとに戻してるがその程度。何かよく分からないもので積み上がっている椅子と机。

 私は机周りに軽く祭壇を置いている。
 Newtonの付録だった星空のポスターに推しのグッズを貼り付けるなどをしていたのだ。
 しかし、その星空ポスターは、ロフトベッドの隙間から落ちてきた本により無惨に破れている。
 それにより、推しグッズも落ちたり斜めになっていたりと、ひどい有様であった。

 私は、推しグッズを丁寧にはずしたあと、ボロボロのポスターを外し、ゴミ袋に捨てた。

 私は、机周りどころではなく。

 祭壇を片づけだしたのである。
 一番最後の作業だろ、と言われそうな場所を、である。

 床にある本でも、ロフトベッドで放置されてる本でもなく。机の上そのものでもなく。祭壇。

 理由は簡単である。
 ――ここを今、片づけたいと思った。ここをきれいにしたいと思った。
 それだけの衝動が私を突き動かしたのである。

 祭壇を作ったのはもう5年以上前であり、多少増えたことはあっても、なんとなく惰性で置いていたものも多かった。
 ジャンルへの愛はあっても、脳内麻薬でパッパラパー状態が終わると、グッズに対しても冷めてくる。

 また、新たな推しを飾りたいともなる。

 私は、祭壇に置かないものをガン捨てした。ジャンルの選別である。
 そうなると、箱に入れて棚に押し込んでいたものもいらないことに気づく。5年どころか10年放置のグッズは、もういらなくない?

 机周りでない祭壇もいろいろ捨てた。人に頼んで作ってもらったガンプラも捨てた。このジャンルをまだ愛してるが、作品を見れば十分だ。
  そもそも汚部屋住人にガンプラは向かない。埃まみれになり、支えていてもすぐ倒れ、倒れたものは放置。好きと思う気持ちと物を置くというのはべつなのだ。

 私は、十分幸せにしてもらいました、減価償却完了したんです。嫌いになったわけでも冷めたわけでもない。

 人に誘われて行ったコラボカフェグッズ。通りすがりに出会って衝動的に買ったアクキー。映画でもらった限定配布。

 専門店に売れば、なんらかのお金になるかも知れません。欲しい人の手に渡るかも知れません。

 しかし、そのために専門店を調べたり、買い取り情報を調べると、片付かない。

 捨てます。思い出はあるが、思い出せないほどのものさえある。捨てます。

 そうして空いた場所に、私は新たなポスターを貼った。正確に言うとポスターではない。

 丸善ジュンク堂店内カフェで開催された『文豪クリームソーダ』で、もらってきた紙ランチョンマット、蜜のあわれと檸檬を並べて貼った。もらってきたはいいがどうして良いかわからず、しかしデザインが好きなのでとりあえず置いていた。それが、壁に並んだとき、とても清々しい気持ちとなった。

 そうなると、このデザインを邪魔しないように、しかし飾るように祭壇デコをしていきたい。間桐桜ちゃんの水着ミニうちわ(ヤングエース付録)は絶対に飾りたい。競走馬キセキの勝負服ストラップも飾ろう。

 と、まあ、何時間かかったか知らんが、やりきった。しょうもない、祭壇つくりであるが、やりきった。かわいくできた、達成感が多幸感を生む。

 なぜ、片づけられない人間は引き出しから片づけだすのか。足の踏み場のない部屋を放置して、引き出しの中、机周りを片づけるのか。

 それは、自分たちが最も使用する場所だからである。ゆえに、片付けの方針が汚部屋人間でもわかるからである。

 で。

 達成感のあと、部屋の惨状を見て腰が砕けるのも汚部屋住人にありがちではないだろうか。

 しかし、私は砕けなかった。しかし、床に散らばる本に手を伸ばさなかった。

 死蔵グッズを捨てた。いや、死蔵グッズを新たな祭壇で見極め、容赦なく手放し、愛は胸に刻んで物は捨てた。

 ゆえに。
 私は、棚を占拠していた死蔵品に気づいたのである。

『明日は、あれだ』

 無職の強みである。ロフトベッドを占拠していた本は全て床に置き――もはやもとに戻そうという高等戦術は捨てている――私は翌日に備えて、休むことにした。あ! 風呂には入りましたので!
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