女の俺は世界で一番エロ可愛い

椎木唯

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序章 迷子の子猫ちゃん状態

後処理的なアレ

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 事情を聞き、頬に捻りを加えたビンタを入れました。気が済みました。どうも、暴力系美少女アクです。自分で自分の顔を見た訳じゃないから胸を張って言えないけどな。まあ、張れる胸はあるけど!

 ナチュラルにキルビアをディスり…女のカンか、鋭い視線が送られる。どこか熱っぽいのは気のせいだろうか。気のせいであって欲しい。
 アクの願望は大体叶えられない。主人公補正的なアレで相場が決まっている。何だよ、悲劇系ヒロインかよ。誰が主人公か気になるところだけどな。ギルバは論外、シェルダは貞操概念。消去法でキルビアになってしまう。
 そっか、お前が俺の主人公だったか…。

 神妙な心持ちになるがやられたことは看過できない。

「(やるなら意識のあるときにやれって話だよな。卑怯過ぎて涙出るわ。出ねえけど)」

 やはりMの気質があった。






 か弱き少女であるアクのビンタは精神的ダメージを与えるだけに留まり、パーティとしての移動スピードには何の影響も出なかった。気持ちキルビアが落ち込んでるかな? と思うくらいである。後衛なのでそこまでの影響ない。ないので特に反応もしなかった。無情である。

「ちょこちょこ見る野生動物…えっと、猪とかっすね。それを見ると森の終わりも近いみたいっすね」

 空気が読める、で新しい属性を追加しようとしているシェルダが話題を振る。
 話題というより報告的な意味合いが強そうだがアク、キルビアの心情的に気になる女の子を振り向かせようとする男のソレであることを看過し、認識していた。なんだ、エスパーか?
 キルビアはまだしもアク、お前は男だろ? そんな真っ当なツッコミは風の音で満足しよう。風の声が聞こえる系の人ですか。電波系ですね。

 ギルバがよっこらせ、とリュックを背負い直す。直す瞬間に見えた女性モノの下着がアクの脳内を埋め尽くす。

「(……黒、黒だよな…。いや、可能性としてはギルバの所有物かもしれない。少数派であるが女性下着を身につける男もいるって聞いたことあるし…)」

 だとしても変態なのだが。
 疑惑も冷めないうちにキルビアの会心の一撃が繰り出される。

「話逸れちゃうけど私の下着が盗まれたのよね。黒のやつ。アクちゃん使ってる?」

 リュックを二度見してしまう。

「…いや、俺は使ってないけど。つか、替えのやつあるなら貸してくれても良いじゃん」

 まあ、その場合は三日三晩嗅ぐ意気込みはあるし、その為の準備もする自信がある。どんな自信だよ、と思ってしまうがそれが男というものだ。男じゃねえけど。
 そんなアクの言葉に心外そうな表情を見せる。

「いや、替えはないのよ? 寝るついでに干してたのが無くちゃって…ね?」

 そう言ってアクの手を掴み、腰に当てる。スベスベだ。そしてスケベスケベダだ。今なら秘所に手を突っ込んで弄っていたキルビアの気持ちが分かるかもしれない。嘘である。流石にそこまでの積極性をアクは持ち合わせていない。自重が分かる女である。
 パンツとは少なからず布などの生地を使用している訳で、厚みが無いわけがない。冷静になった頭でふと考える。って事はだ…。

「まさか今…クールビズ?」

「そうね、通気性が良くなっちゃってるわ」

 瞬間、ギルバが堪えきれずに鼻血を噴出する。いつか戦闘中に貧血になって殺されそうだな。

 申し訳無さそうな表情を浮かべ、スカートを必死に伸ばすその姿はとても被虐心を煽られるものがあった。おっと、変態の仲間入りか? 危うく道を外れかけたアクだがすぐに軌道修正を行う。今はまだ服装が変な変態止まりで丁度いい。変態に丁度良いのラインはないが。

 小学校、大いにお世話になったチクリ女子を思い出し、見習う。悪い事はダメだもんな。

「キルビア。ギルバのリュックから黒のパンツが見えたんだけどもしかして、そう?」

「ギルバ、停止」

 理解する前に口が動いた。そんなキルビアを見る。先程までの表情から一点、無表情が張り付いていた。般若である。全然無表情ではなかった。

 ギルバに停止をかけたキルビアだが声自体は荒ぶっていなく、真実を確かめようと湧き立つ好奇心を動力源に言っているようだった。もっとタチ悪いな。

「お、おう。どうしたキルビア休憩か? 大丈夫、俺が見張ってるぜ!」

 若干声が震えていた。完全に犯人だ。一瞬でアクの疑心は確信に変わった。それはキルビアも同じようで声の威圧感が増す。

「私の下着盗んだ?」

「えっと…その、なんだ」

「私の下着盗んだ?」

「あの……」

 一瞬で周りの温度が数度下がる。そんな空気感を感じる。全くの無関係とも言えるアクとシェルダに無情の緊張感が走る。内心は両方とも「嘘をつかず、正直に言え! 命を差し出す覚悟をしろ!」だ。
 色々とシモの理解があるとは言え、キルビアも女性なのだ。下着泥棒には殺意しかわかないだろう。それにキルビアには殺意を形に出来る力がある。まあ、それは切らしているらしいが。それでも鬼のような気迫は薄れる事はない。

 ギルバが白状するのは早かった。

「いや、これには深い訳があるんだ…それは、海溝より深い……」

 手に女性下着を持ち、必死に語るギルバの姿は前日、焚き火を前に色々語っていた仲間想いの姿はなく、ただそこに見えるのはいい歳した下着泥棒の姿だった。
 アクの頬をなぞるようにして一線の涙が溢れる。情けなくて情けなくて。そんな感情が溢れてきた結果だ。
 今思えば昨日の夜も仲間想いの発言では無く、ただのパーティへのお誘いだったような気がしてくる。実際そうであろう。アクのギルバに対する印象は武器の折れた剣士、である。そのままだ。


 先のアクと同様に平手打ちでもするのか、とドキドキワクワクしていたのだが意外にもそんな気配はなく、ただ純粋に近付きギルバから下着を奪っただけだった。

「今度は…しないでよね」

「お、おう。……いや、本当にすまなかった」

 生娘のような恥ずかしさが勝った反応に思わずギルバも吃ってしまう。内心は初恋を経験した小学生男子男子だった。下着泥棒で初恋を思い出すな。
 少し待って、とそう告げ茂みに隠れるその間。何とも言えない重圧がのし掛かった。

「…視姦に続いて下着泥棒って。ギルバ、お前猿か? 今時猿でもそこまで盛ってねえぞ?」

「確かに時期的にちがうっすもんねー」

「うっせ、元祖視姦野郎。街に着いたら民事裁判起こすからな、覚えてろよ」

「…え、まじ?」

 一瞬で対象が変わったことで理解が追いついていないのかシェルダの表情は間抜けズラそのものだった。

「オレ、ウソ、ツカナイ。昨日の夜の血走った目は今でも鮮明に思い出せるからな? もうお前性獣だよ。人を名乗るな、恥じろ」

「確かに、俺は見た。見たけど美少女の生睡眠を目の前にして寝られるかって話なんすよ。ねえ、ギルバも思うよな!?」

 この世の終わりのような表情を見せるギルバ。視界の向こうには怒りが一周回り、無になったキルビアの姿があった。足取りに厳つさがある事からパンツは無事に装着できたらしい。おっさん的な感想が流れる。

 警察官が罪状を述べるかのような圧倒的な心拍数爆上案件にシェルダはコイのように口をパクパクとさせていた。

「昨日の夜? アクちゃんの生睡眠? 視姦? …縄で行動を縛るだけじゃあなたの心までは縛れないのね。しょうがない…」

 そう言ってどこから取り出したのか圧倒的な殺意、有刺鉄線だ。ゆっくりと解き始める。シェルダは腰が抜けてしまったのか動く気配がなかった。
 数秒後、成人男性の断末魔一歩手前の声が森の中を響かせる。この光景はさながらキルビアという指揮者がシェルダという楽器を使って演奏しているかのようだった。阿鼻叫喚ともいう。




 数分後、ケロっとした表情のシェルダは無数に開いた肌を見せ付けながら

「凄くないっすか、俺噴水みたいっすよ!!」

 と、アヘっていた。アドレナインかそれまた違う物質か。常人が出してはいけないような声質で自身の肌について喋り、喜びまくる姿にキルビアは保母のような表情を向けていた。色々とこえーよ。一番キルビアがこえーよ。
 そんなアクの内心は愛想笑いで消えていった。
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