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第12話 王都へ
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あれから3日が経ちようやく王都へ出発の日が来た。
この日が来るまで色々とあった。
商業ギルドに行き最後の納品を住めせた後は仕入れ先を教えてくれという商人たちが何度も押し寄せた。
まあ王都へ行くのならもう使うこともないだろう入手先を教えても良いだろうと思っているかもしれないが入手先はこのスマホなので教えても渡すことはできない。
それから方々へ挨拶を済ませるたびに聞きに来るものだから途中から宿に引きこもり王都へ行く日までスマホをいじっていた。
おかげで食料は大量である。
金貨に30枚ほどの余裕があるので本当は新しいアプリを買おうかとも悩んだのだが王都では色々と買い物をしそうなのでお金には余裕をもたせておくことにした。
王都へはアンドリュー子爵が馬車を借りてくれたのでそれに乗ることになった。
子爵は本当は同じ馬車に乗りたかったそうなのだがさすがにそれは身分も違うのでまずいということになり俺は荷物と一緒に馬車の最後尾につくことになった。
座り心地は悪いが他に誰もいないので好きにスマホを使うことができる。
早速馬車が出発する。
ガタガタと揺れるがなんというか冒険感が出て来た。
年甲斐もなく興奮している。
検問もあったがさすがに伯爵と子爵の馬車ということで特に身分確認をすることもなくすんなりと通れた。
検問の外はしばらくの間は畑、牧場と続いていたがしばらくすると森の中へ入って行く。
こんな景色は日本では味わえなかった。
しかも道はアスファルトではなくただの土だ。
遥か昔の原風景を見ているようでテンションはどんどん上がって行く。
移動中はずっとカメラアプリで写真を撮り続けていた。
動画も撮りたかったのでつい金貨10枚課金して動画機能を使えるようにしてしまった。
正直金貨10枚は痛いがそれでも動画を撮影できたのはかなり嬉しい。
当分の間こんな風景が続くらしいがそれでも全く飽きることはない。むしろ興奮する。
風の音と車輪の回る音、馬の蹄が地面を踏み鳴らす音に木々の葉が擦れ合う音。なんというかほっとする。
スマホの電子音と人々の喧騒もないこの空間はある意味何よりの贅沢だろう。シャッター音は別だけど。
この日は野営をするとのことで橋を超えた先の川側を野営地にするとのことだった。
時刻はまだ夕方前だがこれ以上先に行くよりかはここの方が安全とのことだ。
まあ川側の方が良いだろう。なんせ釣りバカ子爵がいるのだからな。
子爵は馬車から降りると案の定すぐに釣りの支度を始めている。
伯爵の護衛はぎょっとしているが子爵側の護衛はさもありなんという表情である。
まあ俺もこの川を見たら遊びたくもなって来る。川幅は5mほどだが水は澄んでいてコンディションは最高である。
「子爵様。私が先に状態を確かめて来るのでごゆっくりいらしてください。」
「ま、待て!ずるいぞ先生!早く!早く準備せい!」
子供のように、いや子供よりも興奮しているぞあの子爵。
まあ状態確認は必要だからな。
俺以外にも子爵の護衛数名が川の様子を確かめについて来た。
川の流れはそこそこ早いが危険はないだろう。深さはそれほどでもないので溺れても安心だ。
俺はいつもスマホで使っている釣竿に仕掛けをつけて釣りを開始する。
しばらく釣りを続けていると大急ぎできた子爵も釣りを開始した。
伯爵はというとその光景をただ見ている。
しかしその表情はどこか懐かしそうでどこか寂しそうだった。
「先生。どちらがより大物を釣れるか勝負ですな。」
「良いですよ。とは言っても私の方が有利なようですが。」
そう言って一匹釣り上げる。こいつはいつも釣っている魚の一匹だ。
それを見せつけてやると子爵は爛々と目を輝かせている。
「さすがは先生ですな。しかし私とて負けてはおられませんな。どうせでしたら何か賭けますか?」
「いいですよ。では…新しい釣り道具の作成費用というのはどうでしょう?」
「なんと!それは勝っても負けても新しい釣り具が使えるようになるのですから私に損はありません。ぜひそれでいきましょう!どちらがより長い魚を釣るか勝負です!」
日没までというルールで始めたこの勝負だが正直俺の方が有利である。
なんせあのアプリ、釣りバカ野郎はかなりリアル志向で実際に狙うポイントや竿の使い方などあのアプリの通りにやれば実際の魚釣りでも魚が釣れる。
子爵はというと釣り好きではあるが絶対的に経験が少ない。あの街に長らくいたせいで釣りをする機会が少なく技術的に俺の方が有利。つまりこれは始まる前から勝負が決まっているのだ。
「お!先生!見てください。これはかなりの大物ですぞ!」
始まる前から勝負が決まっている…誰だそんなバカなこと言ったのは。
なんかものすごいでかいやつ釣り上げているし。50cmは軽くありそうだぞ。
ちょっと待て、これはまずい。
釣りは確かに技術もあるけど運の要素も大きい。
やばい、せっかくのチャンスが…
そこからミミズをエサに大物を狙うが一向に当たりが来ない。結局そのまま日没が来てしまった。
「どうやら先生。私の勝ちのようですな。」
「しょ、勝負はこの竿を引き上げるまでですよ…って本当に何か来てる!」
もう無理かと思い竿を引いてみると何か大きい当たりがある。
若干青ざめながら竿をそのままにしておいたのが良かったのかもしれない。
なかなかの重さだ。バラさないように慎重に持ち上げる。
「ん?はっはっは!先生。さすがに大きいですが魚でないとダメですよ。蛇と大きさ比べをしたところで釣り勝負にはなりませんからな。」
確かに俺の竿には細くて長い、暗闇に紛れてしまいそうなほど真っ黒なものがかかっている。
確かに一見蛇に見えるがこれは…
「残念でしたね子爵様。これはれっきとした魚でうなぎと言います。」
そう。明らかにうなぎだ。
しかも天然物のくせにかなり大きい。
1mは軽く超えているし丸々と太っている。
子爵は初めて見たのかそんなバカなと騒いでいる。
それを側から見ていた伯爵が確認し確かに魚だと断定してくれた。どうやら伯爵はうなぎを見たことがあるようだ。
その後、食事の最中も気になるのか子爵はずっとうなぎを見ている。
周りの護衛やメイドは君が悪いと囁いている。
「残念だったなアンドリュー。長さ勝負にしたからお前の負けだ。太さ勝負ならお主の勝ちだがな。」
「それよりも未だにこれが魚とは信じられませんな。確かにヒレはあるようですが蛇にしか見えませんぞ。」
「れっきとした魚ですよ。しかもこいつは海から来た魚でスタミナをつけるのにもってこいの魚なんですよ。」
「なんと!先生それは本当ですか!ここから海までは遠く離れているはずですが…」
「儂も初めて聞いたな。長いこと生きているが海からここまでくる魚など聞いたこともない。」
まあ確かに信じられないのも無理はないかもな。
うなぎ自体海に行くというのがわかったのは日本でも2000年以降にわかったことだし。
けど海と川を行き来する魚というのは案外いるもんだ。
うなぎに鮭、それから本シシャモに鮎なんかもそうだったりする。
そんな話をしてやると子爵だけでなく伯爵、それに周囲で聞いていた護衛やメイドたちも聞き耳を立てている。
「はぁ…先生は色々と詳しいですな。もしやどこかで研究者でもしていましたか?」
「うむ。ここで初めて聞く話ばかりだ。よほどの学がありそうだがどちらの出身か?」
「遠い島国の一庶民ですよ。その…少々事故にあったと思うのですが影響で一部の記憶がなくて。」
いずれこう言った話をする機会があると思って考えておいた言い訳である。
何か突っ込まれても記憶がないで通せるし、この国の一般常識がないというのも島国出身ということで誤魔化せる。
それに嘘は言っていない。
日本はここからだいぶ遠くの島国だし移動して来たときはいきなりここに来ていたのでなぜ来たのかよくわかっていない。
その話をすると皆どこか哀れみの視線を向けてくれる。
どうやらうまく言いくるめる事に成功したらしい。
その後は大変だったんだなと色々慰めてもらったがあまり同情を買っても何か居辛くなるだけなのであっけらかんとしておいた。
すると次第に話は変わっていき再びうなぎの事になった。
「そ先生。このうなぎとやらを調理することはできるのですか?」
「う~ん…できなくはないんですが調味料がなくて…ああ、けど白焼きならいけるか。綺麗な川の水だし蒲焼にする必要もないから…では明日の夜に食べる事にしましょう。今日はもう十分食べましたから。」
そうと決まれば保存方法はどうするかという話になったが俺が収納袋を持っているということでそこに保存する事になった。
本当はそんなものないけどスマホがあるので問題ない。
ただ、スマホがバレないように代わりの布袋の中にスマホを入れてその中に収納しておいた。
その夜。いつもならまだ起きている時間なので一人テントの中に入りスマホを取り出すと通知が来ていた。
通知が来るのは初めての経験である。
びっくりしてその通知を急いで確認してみる。
「新種の魚を発見したのでロックが解除されました?どういう事だ。通知したのは釣りバカ野郎のアプリか。」
こんなのは初めての経験である。
通知からアプリを立ち上げると何やらイベントが始まった。
『よくやった!お前は初めての魚を捕まえたな!だからその魚を釣れるようにしてやったぞ。それとレア度に応じてボーナスがつくぞ。』
ま、まじか!ウナギが釣れるようになったのか。
しかもボーナスって一体何がついたんだ?そう思って色々見てみるが特に変化はなさそうだと思っていると新メニューで図鑑が足されていた。
その図鑑には俺が今まで釣って来た魚が表示されていた。
とは言ってもうなぎを含めて2種類だけだ。
そういえば今までこのアプリで1種類以上の魚を釣ったことがない。
初期の川だけだから仕方ないのかと思っていたがそういうことではなかった。
このアプリで釣れる魚は俺が現実世界でどれだけ多くの種類の魚を見つけられるかにかかっているらしい。
どうやらアプリにはまだまだ俺の知らない法則があるらしい。
しかもそれはこの現実世界と密接に関わっているようだ。
これは色々と王都についたらやって見ることが多そうだ。
しかしボーナスってこれだけなのかと思い他を見てみる。
「あれ?新規釣り場の価格が大銀貨5枚分下がってる。」
なんとなく開いてみた新規釣り場の画面だったが価格が下がっている。
しかもよくみて見るとうなぎが釣れるとされているエリアのみ価格が下がっているのだ。
つまりこれがボーナスということだろう。
図鑑を見る限りうなぎのレア度は5だった。
最高が10なのでおそらくレア度1に対して大銀貨1枚分の価格が下がるのだろう。
大したことの無いようにも思えるがチリも積もればというやつである。
今まではかなり手の届かなかった新規釣り場ではあるがこれならば少しづつ値段を下げていずれ買うことができる。
その後早速アプリで釣りを開始してみた結果うなぎの釣れる割合はうなぎ狙いの仕掛けでも10分の1ほどであった。
それと大きさは俺が現実で釣り上げたものの大きさが基準となっているようで最大が俺が現実で釣り上げたうなぎの大きさと同じで、どんなに小さくても俺が現実で釣り上げたうなぎの半分以上はあった。
つまりこれは俺が種類だけを求めて稚魚を大量に集めてもでかい成魚を釣ることはできないのである。
食べたり売ったりすることを考えたらできるだけ大きい魚を集める必要がありそうだ。
これはなかなか面白いことを知ることができた。
現実での行動がスマホに大きな影響を与えるというのならば今後は珍しい食材は買い集める必要があるかもしれない。
もしかしたらファームファクトリーのアプリでも種を自分で集めればタネを買う必要がなくなるかもしれない。
今は他のタネは持っていないが王都に行ったら買い集めよう。
この日が来るまで色々とあった。
商業ギルドに行き最後の納品を住めせた後は仕入れ先を教えてくれという商人たちが何度も押し寄せた。
まあ王都へ行くのならもう使うこともないだろう入手先を教えても良いだろうと思っているかもしれないが入手先はこのスマホなので教えても渡すことはできない。
それから方々へ挨拶を済ませるたびに聞きに来るものだから途中から宿に引きこもり王都へ行く日までスマホをいじっていた。
おかげで食料は大量である。
金貨に30枚ほどの余裕があるので本当は新しいアプリを買おうかとも悩んだのだが王都では色々と買い物をしそうなのでお金には余裕をもたせておくことにした。
王都へはアンドリュー子爵が馬車を借りてくれたのでそれに乗ることになった。
子爵は本当は同じ馬車に乗りたかったそうなのだがさすがにそれは身分も違うのでまずいということになり俺は荷物と一緒に馬車の最後尾につくことになった。
座り心地は悪いが他に誰もいないので好きにスマホを使うことができる。
早速馬車が出発する。
ガタガタと揺れるがなんというか冒険感が出て来た。
年甲斐もなく興奮している。
検問もあったがさすがに伯爵と子爵の馬車ということで特に身分確認をすることもなくすんなりと通れた。
検問の外はしばらくの間は畑、牧場と続いていたがしばらくすると森の中へ入って行く。
こんな景色は日本では味わえなかった。
しかも道はアスファルトではなくただの土だ。
遥か昔の原風景を見ているようでテンションはどんどん上がって行く。
移動中はずっとカメラアプリで写真を撮り続けていた。
動画も撮りたかったのでつい金貨10枚課金して動画機能を使えるようにしてしまった。
正直金貨10枚は痛いがそれでも動画を撮影できたのはかなり嬉しい。
当分の間こんな風景が続くらしいがそれでも全く飽きることはない。むしろ興奮する。
風の音と車輪の回る音、馬の蹄が地面を踏み鳴らす音に木々の葉が擦れ合う音。なんというかほっとする。
スマホの電子音と人々の喧騒もないこの空間はある意味何よりの贅沢だろう。シャッター音は別だけど。
この日は野営をするとのことで橋を超えた先の川側を野営地にするとのことだった。
時刻はまだ夕方前だがこれ以上先に行くよりかはここの方が安全とのことだ。
まあ川側の方が良いだろう。なんせ釣りバカ子爵がいるのだからな。
子爵は馬車から降りると案の定すぐに釣りの支度を始めている。
伯爵の護衛はぎょっとしているが子爵側の護衛はさもありなんという表情である。
まあ俺もこの川を見たら遊びたくもなって来る。川幅は5mほどだが水は澄んでいてコンディションは最高である。
「子爵様。私が先に状態を確かめて来るのでごゆっくりいらしてください。」
「ま、待て!ずるいぞ先生!早く!早く準備せい!」
子供のように、いや子供よりも興奮しているぞあの子爵。
まあ状態確認は必要だからな。
俺以外にも子爵の護衛数名が川の様子を確かめについて来た。
川の流れはそこそこ早いが危険はないだろう。深さはそれほどでもないので溺れても安心だ。
俺はいつもスマホで使っている釣竿に仕掛けをつけて釣りを開始する。
しばらく釣りを続けていると大急ぎできた子爵も釣りを開始した。
伯爵はというとその光景をただ見ている。
しかしその表情はどこか懐かしそうでどこか寂しそうだった。
「先生。どちらがより大物を釣れるか勝負ですな。」
「良いですよ。とは言っても私の方が有利なようですが。」
そう言って一匹釣り上げる。こいつはいつも釣っている魚の一匹だ。
それを見せつけてやると子爵は爛々と目を輝かせている。
「さすがは先生ですな。しかし私とて負けてはおられませんな。どうせでしたら何か賭けますか?」
「いいですよ。では…新しい釣り道具の作成費用というのはどうでしょう?」
「なんと!それは勝っても負けても新しい釣り具が使えるようになるのですから私に損はありません。ぜひそれでいきましょう!どちらがより長い魚を釣るか勝負です!」
日没までというルールで始めたこの勝負だが正直俺の方が有利である。
なんせあのアプリ、釣りバカ野郎はかなりリアル志向で実際に狙うポイントや竿の使い方などあのアプリの通りにやれば実際の魚釣りでも魚が釣れる。
子爵はというと釣り好きではあるが絶対的に経験が少ない。あの街に長らくいたせいで釣りをする機会が少なく技術的に俺の方が有利。つまりこれは始まる前から勝負が決まっているのだ。
「お!先生!見てください。これはかなりの大物ですぞ!」
始まる前から勝負が決まっている…誰だそんなバカなこと言ったのは。
なんかものすごいでかいやつ釣り上げているし。50cmは軽くありそうだぞ。
ちょっと待て、これはまずい。
釣りは確かに技術もあるけど運の要素も大きい。
やばい、せっかくのチャンスが…
そこからミミズをエサに大物を狙うが一向に当たりが来ない。結局そのまま日没が来てしまった。
「どうやら先生。私の勝ちのようですな。」
「しょ、勝負はこの竿を引き上げるまでですよ…って本当に何か来てる!」
もう無理かと思い竿を引いてみると何か大きい当たりがある。
若干青ざめながら竿をそのままにしておいたのが良かったのかもしれない。
なかなかの重さだ。バラさないように慎重に持ち上げる。
「ん?はっはっは!先生。さすがに大きいですが魚でないとダメですよ。蛇と大きさ比べをしたところで釣り勝負にはなりませんからな。」
確かに俺の竿には細くて長い、暗闇に紛れてしまいそうなほど真っ黒なものがかかっている。
確かに一見蛇に見えるがこれは…
「残念でしたね子爵様。これはれっきとした魚でうなぎと言います。」
そう。明らかにうなぎだ。
しかも天然物のくせにかなり大きい。
1mは軽く超えているし丸々と太っている。
子爵は初めて見たのかそんなバカなと騒いでいる。
それを側から見ていた伯爵が確認し確かに魚だと断定してくれた。どうやら伯爵はうなぎを見たことがあるようだ。
その後、食事の最中も気になるのか子爵はずっとうなぎを見ている。
周りの護衛やメイドは君が悪いと囁いている。
「残念だったなアンドリュー。長さ勝負にしたからお前の負けだ。太さ勝負ならお主の勝ちだがな。」
「それよりも未だにこれが魚とは信じられませんな。確かにヒレはあるようですが蛇にしか見えませんぞ。」
「れっきとした魚ですよ。しかもこいつは海から来た魚でスタミナをつけるのにもってこいの魚なんですよ。」
「なんと!先生それは本当ですか!ここから海までは遠く離れているはずですが…」
「儂も初めて聞いたな。長いこと生きているが海からここまでくる魚など聞いたこともない。」
まあ確かに信じられないのも無理はないかもな。
うなぎ自体海に行くというのがわかったのは日本でも2000年以降にわかったことだし。
けど海と川を行き来する魚というのは案外いるもんだ。
うなぎに鮭、それから本シシャモに鮎なんかもそうだったりする。
そんな話をしてやると子爵だけでなく伯爵、それに周囲で聞いていた護衛やメイドたちも聞き耳を立てている。
「はぁ…先生は色々と詳しいですな。もしやどこかで研究者でもしていましたか?」
「うむ。ここで初めて聞く話ばかりだ。よほどの学がありそうだがどちらの出身か?」
「遠い島国の一庶民ですよ。その…少々事故にあったと思うのですが影響で一部の記憶がなくて。」
いずれこう言った話をする機会があると思って考えておいた言い訳である。
何か突っ込まれても記憶がないで通せるし、この国の一般常識がないというのも島国出身ということで誤魔化せる。
それに嘘は言っていない。
日本はここからだいぶ遠くの島国だし移動して来たときはいきなりここに来ていたのでなぜ来たのかよくわかっていない。
その話をすると皆どこか哀れみの視線を向けてくれる。
どうやらうまく言いくるめる事に成功したらしい。
その後は大変だったんだなと色々慰めてもらったがあまり同情を買っても何か居辛くなるだけなのであっけらかんとしておいた。
すると次第に話は変わっていき再びうなぎの事になった。
「そ先生。このうなぎとやらを調理することはできるのですか?」
「う~ん…できなくはないんですが調味料がなくて…ああ、けど白焼きならいけるか。綺麗な川の水だし蒲焼にする必要もないから…では明日の夜に食べる事にしましょう。今日はもう十分食べましたから。」
そうと決まれば保存方法はどうするかという話になったが俺が収納袋を持っているということでそこに保存する事になった。
本当はそんなものないけどスマホがあるので問題ない。
ただ、スマホがバレないように代わりの布袋の中にスマホを入れてその中に収納しておいた。
その夜。いつもならまだ起きている時間なので一人テントの中に入りスマホを取り出すと通知が来ていた。
通知が来るのは初めての経験である。
びっくりしてその通知を急いで確認してみる。
「新種の魚を発見したのでロックが解除されました?どういう事だ。通知したのは釣りバカ野郎のアプリか。」
こんなのは初めての経験である。
通知からアプリを立ち上げると何やらイベントが始まった。
『よくやった!お前は初めての魚を捕まえたな!だからその魚を釣れるようにしてやったぞ。それとレア度に応じてボーナスがつくぞ。』
ま、まじか!ウナギが釣れるようになったのか。
しかもボーナスって一体何がついたんだ?そう思って色々見てみるが特に変化はなさそうだと思っていると新メニューで図鑑が足されていた。
その図鑑には俺が今まで釣って来た魚が表示されていた。
とは言ってもうなぎを含めて2種類だけだ。
そういえば今までこのアプリで1種類以上の魚を釣ったことがない。
初期の川だけだから仕方ないのかと思っていたがそういうことではなかった。
このアプリで釣れる魚は俺が現実世界でどれだけ多くの種類の魚を見つけられるかにかかっているらしい。
どうやらアプリにはまだまだ俺の知らない法則があるらしい。
しかもそれはこの現実世界と密接に関わっているようだ。
これは色々と王都についたらやって見ることが多そうだ。
しかしボーナスってこれだけなのかと思い他を見てみる。
「あれ?新規釣り場の価格が大銀貨5枚分下がってる。」
なんとなく開いてみた新規釣り場の画面だったが価格が下がっている。
しかもよくみて見るとうなぎが釣れるとされているエリアのみ価格が下がっているのだ。
つまりこれがボーナスということだろう。
図鑑を見る限りうなぎのレア度は5だった。
最高が10なのでおそらくレア度1に対して大銀貨1枚分の価格が下がるのだろう。
大したことの無いようにも思えるがチリも積もればというやつである。
今まではかなり手の届かなかった新規釣り場ではあるがこれならば少しづつ値段を下げていずれ買うことができる。
その後早速アプリで釣りを開始してみた結果うなぎの釣れる割合はうなぎ狙いの仕掛けでも10分の1ほどであった。
それと大きさは俺が現実で釣り上げたものの大きさが基準となっているようで最大が俺が現実で釣り上げたうなぎの大きさと同じで、どんなに小さくても俺が現実で釣り上げたうなぎの半分以上はあった。
つまりこれは俺が種類だけを求めて稚魚を大量に集めてもでかい成魚を釣ることはできないのである。
食べたり売ったりすることを考えたらできるだけ大きい魚を集める必要がありそうだ。
これはなかなか面白いことを知ることができた。
現実での行動がスマホに大きな影響を与えるというのならば今後は珍しい食材は買い集める必要があるかもしれない。
もしかしたらファームファクトリーのアプリでも種を自分で集めればタネを買う必要がなくなるかもしれない。
今は他のタネは持っていないが王都に行ったら買い集めよう。
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