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第29話 明かされたスマホの秘密
しおりを挟むむふふふふふふ…
むっはぁぁぁ~~!
たまらんぜ、これはたまらんぜ。金貨20万枚!20万枚ですよ!いやぁ良い取引したなぁ。まぁ結果は良かったけど、取引内容は最低だな。結局のところ、この金は脅してとったようなものだし。
ある意味ハロルドさんにはいい経験させてもらったなぁ。今後、大きな取引があるときはもっと慎重に行おう。発言も展開も、ちゃんと考えてやらないと本物の商人にはなれないな。
まあそんなことはいいんだ。もう屋敷にも戻ったし、人払いも済ませたし、準備は万端だ。今日は引き籠もるぞぉ。一歩たりとも外には出ない。課金して課金して新しい機能を増やすぞぉ。
では早速スマホを起動。まずは…どれから課金しようか…お前だぁ!
ドワーフの鍛冶場、前々から欲しいとは思っていたが、値段が高くて手が出せなかった。なんせお値段金貨100枚!まあ20万枚も持っていると安く思えるが、ものすごい値段だ。そこらの平民なら稼ぐのに何十年もかかる値段だ。
早速アプリを起動したいところだがここは我慢。もう一つ別のアプリも買う。
エルフの木工所、これも欲しかったアプリだ。これも金貨100枚。だが今の俺には安いもんよ!
そして、今まで見ないふりをし続けていたが、ついにこれを買う時が来たようだ。アプリ、シティ。単純な名前のアプリだが、このアプリ、なんとお値段金貨10万枚。
マジでふざけている。こんなの貴族レベルの買い物だ。いや、貴族だって買わないぞ。だけど俺は買っちゃう!だってさ、今を逃したら永遠に買うことのないアプリだよ?誰がこれだけの量の金貨を集められるんだよ。はーい!俺でーす!俺集められましたぁ!
たったのアプリ1つで持ち金の半分が消えた。あ、この言い方はダメだな。ちょくちょく持ち金の半分消えているし。なんなら持ち金、全部消えたことあるし。なんと言うか、この言い方だとあまり痛みを感じない。
普通に金貨10万枚使ったって思おう。そうだ、あの金庫の中の金貨半分が消えたって思うのはどうだ?あ、やばい。そう思うと辛くなって来た。
さて、とりあえずアプリを買うのはこのくらいでいいだろう。あとはアプリ内で課金するようにとっておこう。
さーて…最初は何からやろうかなぁ…やっぱり一番高かったシティアプリは最後のメインディッシュに…とっておかなーい!最初に起動させちゃうもんね。最初からメイン行っちゃうもんね。ヒャッハー!
『同期が開始されます。しばらくお待ちください。』
「同期?まあ時間かかりそうなら他のアプリを先に見るか…って、他の操作何もできないし。やること無くなったな。どうしよ…夜に備えて寝るか。」
今日はまた忙しくて眠れなくなりそうだから先に寝ておこう。やば、ドキドキで眠れない。どうしよ、マジで眠れない。眠れない、眠れ、ねむ……スヤァ。
「ミチナガ様?夕食の時間です。旦那様がたがお待ちです。」
「んあ?もうそんな時間?すみません。今行きます。」
まさかそんなにぐっすり眠れるとは思いもしなかった。超スッキリしている。起き上がり、スマホを手に取るとまだ読み込みを行なっていた。しかし9割は完了しているので夕食後には終わっているだろう。
急いで向かうとすでに全員が食事をしていた。俺の姿を見つけたアンドリュー子爵が手招きをして空いている席を知らせてくれた。
「先生、帰ってすぐに部屋に篭もられたので心配しました。付いて行った護衛のものから話は聞きました。なんでもひどい目にあったとか。」
「ええ、手酷くやられましたよ。いやぁ自分の未熟さが身に染みました。だけどある意味いい経験になりましたよ。それでも結果的には成功です。流通制限金貨20万枚になりました。」
その瞬間、全員が動きを止めた。これだけ人がいると言うのにここまで静かになるものなのか。
「先生…流石にそれはあんまりです。先生は平民ですが我々の友人です。こんな目にあって我々が許せるわけがない。すぐにでも話し合いをする必要がありそうです。」
「ミチナガ、お主はお人好しじゃ。だが馬鹿ではないと思っておった。しかしこの有様では少し見込み違いじゃったな。」
なんと言うか雰囲気がおかしい。憐れむ人や、馬鹿だと思う人、怒りを感じる人までいる。この状況は流石にやばいかも。
「い、いや…勉強にもなりましたし、一応金貨も20万枚…」
「ミチナガ!それ以上は何も言うな。我々を失望させる気か。」
やばい、この状況マジでやばい。なんかもう失望しているし。このままだとこれまでの縁も全部なくなりそう。それだけは絶対に嫌だ。せっかくここまで友人になれたと言うのに、それを全て無くしてしまうのだけは嫌だ。
いっそのことこのスマホのことを話してしまおうか。いや、それはやめておいたほうがいい。余計な混乱を生むだけだ。いや、待てよ?部分的な説明なら問題ないんじゃないか?もう気がつかれているようなところだけを明かしてしまえば…。一か八かだ。なるようになれ。
「あー…。そうですね。これだけだとそう言う反応になりますよね。すみません、実は隠していたことがありまして、話したくなかったのですが、どうやらそうもいかないようです。」
俺はスマホを取り出して全員に見せる。怪訝な顔をしているし、まだ信頼を取り戻せていない。
「これは私の一族に伝わるマジックアイテムでして、スマートフォンと言います。主な効果は収納。収納されたものは時間を停止されます。さらに容量は無限です。」
「ほう?伝説級のマジックアイテムか。確かに珍しいものだがそれが?」
やば、普通にあるものなのかよ。まあ伝説級とか言っていたし、そんな簡単に手に入るものではないと信じたい。
「実はこのマジックアイテムは維持するために金貨を消費してしまうのです。」
「何!!」
ほとんどのものが席を立ち上がり、目を見開いている。そんなに驚かなくてもいいんじゃね?金貨を消費するってデメリットじゃん。
「先生。それは本当ですか?」
「え、ええ。だからこれを持ち続けている限り私は永遠に貧乏人なのですよ。」
ここで笑いを取ったつもりなのだが全員笑ってない。どうしよ、俺一人で笑ってんだけど。
「ミチナガ、お主はそれがどういうことか、どうせわかってないんじゃな?お主は金貨がこの世界に溢れていることは聞いたか?」
確か俺が来る以前の転生者によって、ダンジョンが踏破されて金貨があふれたとか、金貨王?だったかが金貨を生み出しまくったってやつか。
「金貨が溢れているのならば消費してしまえばいい。誰もがそう思った。しかしこの金貨と言う奴は不変なんじゃ。どんなことがあっても消えない。切られても、砕けても、気がつけば元に戻っている。」
「そうなんですか!」
初耳だ。すごいなこの世界の金貨って。超便利。
「その上、模造品を作ることもできぬ。仮にできても手に持っていると、数秒で偽物だとなぜかわかってしまう。だから他の貨幣が使われることもない。この世界で共通の貨幣なんじゃ。だから大量に出回った時に魔神たちが全員でなんとかしたんじゃ。」
「へぇ…」
「そんな金貨をお主は消費することができると言った。魔神たちでさえなしえぬことを。そのスマートフォンとやらを見せてくれ。」
う…このまま取り上げられる可能性もある。だけど見せなかったらまた疑われる。あ、けど力づくで取り上げられたら何もできないや。正直に見せておこ。ファルードン伯爵に手渡すとそのままスマホはルシュール辺境伯に手渡される。
「わしにはわかりませんが、どうですか?」
「試してみましょう。」
すると俺のスマホを持ったルシュール辺境伯を囲むように何やら幾何学模様の光が囲んだ。おそらく魔法というやつだ。この目で初めて見る。そのまましばらく待つと光は消え、顔を歪ませたルシュール辺境伯とスマホが残った。
「どうですか?」
「全くわかりません。これほど複雑なマジックアイテムは見たことがありません。複数の言語で構成されているようですが、その一部もわかりませんでした。伝説級のマジックアイテムが可愛く思えますよ。これは…聖遺物、神が作ったマジックアイテムと言っても信じますよ。」
あ、多分当たりかも。俺をこの世界に呼んだやつが作ったんだろうけど、他の世界に呼べるなんて神でもなければ不可能でしょ。でもこの世界の人間ならできんのかな?どうなんだろ。
だけどこんなものがあるって知ったら、みんな欲しがるに決まっている。なんとか嘘を並べて俺だけのものって証明しないと。
「もしかしたらルシュール辺境伯の言っていることはあっているかもしれません。うちの一族は代々神官でしたらから。それも片田舎の誰も知らない神を祀っていた一族でしたので。言い伝えでは、これを神物として祀っておりましたので。」
「なんと!ではその神の名は?それになぜ先生はここにきたのですか?」
か、勘弁してくれよ。まだ考えてないんだから。ちょっと待って、なんとか考えろ…
「その名は長い年月の間に失われてしまいました。呼ぶための言語自体がもうこの世に存在しないのです。ここに来たのは私にもわかりません。気がついたら知らない場所にいたのです。もしかしたら、そのスマートフォンの隠された力かもしれません。」
やっぱ知らぬ存ぜぬが一番だな。そうしたらもう何も聞けないから。あ、そういえば記憶喪失って設定もしていたな。じゃあ後は記憶にございません、で通すか。
「まあ私が言いたいのはこのスマートフォンの維持のための金貨が欲しかったので、流通制限金貨でも問題はないんですよ。そのスマートフォンは私たちの血族しか使用することができず、流通制限金貨を入れても適切に処理されたと判断されるので、何一つ問題はありません。」
どうやらうまくやりきったみたいだけど、俺の設定がどんどん増えていくな。覚えきれるかな?ボロ出さないように頑張ろ。そういや混乱させないようにって思っていたけど結局混乱させてるじゃん。
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