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第42話 冒険者ギルドと適性検査
しおりを挟む「ということでどなたか私に戦い方を教えてくれませんか?」
夕食の際に誰か暇そうな人を探してみたが、どうやら皆忙しいらしい。後2~3日もしたら全員自身の領地に戻るので、それまでに他の貴族の屋敷に挨拶に行かないといけない。
「私も国王陛下に挨拶をしにいかなくてはいけないので難しいですね。」
「それでしたら私に考えがございます。」
急に後ろから声をかけられ、ぱっと振り向く。声の主はボランティだ。
「冒険者ギルドに一度いかれてみてはどうですか?魔法適性や武器の適性なども調べてもらえますよ。」
「冒険者ギルドですか?適性を調べるとは一体…」
「首都などにある大きい冒険者ギルドでは様々な魔道具が揃っています。それを使って身体能力や魔法適性を数値として調べてもらえるんです。費用はかかりますが、最も簡単に強くなる方法を知ることができますよ。」
なるほど、そこで適性検査を受けて一番得意なものを重点的に鍛えるわけか。確かに無駄なことをしなくても済みそうだ。俺は基本的にスマホをいじりたいからな。鍛えるのにそこまで時間を取られたくない。
「それが良いじゃろう。ではボランティ、明日の朝にでもミチナガを連れて行ってやれ。」
「はっ、かしこまりました。」
冒険者ギルドか。何度か前を通ったことはあったが、中に入るのは初めてだ。普段は強面の人たちがいっぱいいるから近寄りたくもないんだよなぁ。
翌朝、スマホのしすぎで若干寝不足気味だがこの程度なら問題ない。朝食をとった後、早速冒険者ギルドに向かう。そういえばこの街の冒険者ギルドは、一回も見たことがないな。どこにあるんだろ?
冒険者ギルドはそれなりに力もあるため、この城壁の中にあるのかと思いきや、その外にあるらしい。しかも場所はいつも買い物をしていた方とは逆の方向だ。この辺りには初めてきた。周囲を見渡して見たが、このあたりは宿屋や少し金を持っていそうな店が多い。
「この辺りは雰囲気が違うんですね。」
「ええ、この辺りは冒険者ギルドがあるので比較的治安が良いんですよ。だから冒険者相手の宿屋や冒険者が普段から近くにいることで反正の抑止力になることを狙って店が並ぶんです。」
なるほどね。冒険者ギルドによって土地の人気が出るのか。確かに普段から猛者が出歩いているところで犯罪を犯す気にはならないな。俺も今度からそういうところを狙って宿に泊まろ。ちなみに商業ギルドも冒険者ギルドの近くにあるらしい。他にも色々とギルドがひしめき合っているとのことだ。
「しかしなぜ冒険者ギルドは城壁の外に?」
「冒険者の多くは普通の平民ですから。城壁の中に入るためにわざわざ審査するのは面倒ですからね。一応出張店が城壁の中にありますよ。主に依頼の受付ですが。」
「なるほど。利便性を考えたらここが一番なんですね。」
「そうなんですよ。っと着きましたよ。ここが冒険者ギルドです。」
「おお…立派だな…」
見上げるほど高い建物。さらに無駄にでかい出入り口。ここの冒険者ギルドはひときわ手が混んでいるな。
中に入ると、すでに何人もの冒険者たちが酒を飲んで騒いでいる。どうやら今朝方に帰ってきた一団のようだ。あの調子じゃあ随分とうまくいったのだろう。まだ朝も早いため、多くの冒険者たちは依頼を受けている。冒険者同士の情報交換や、依頼によっては他の冒険者と手を組んでいる奴もいる。
そんな中俺はひときわ人の少ないところへと向かう。
「ようこそ冒険者ギルドへ。ギルドへの入会でしょうか?それともご依頼でしょうか?」
「この人の適性検査をお願いしたいのです。これからすぐにできますか?」
「適性検査ですね。ギルド員でない場合金貨3枚かかりますがよろしいですか?」
「この人は商人ギルドの人間なので冒険者にはなりません。」
「そうでしたか。商人ギルドの方の場合はお値引きして金貨2枚でさせていただきます。料金は先払いです。」
金貨2枚とは高いな。流通制限金貨は持っているが、普通の金貨はほとんどない。まあ必要経費だし仕方ないかと思ったらボランティがすでに払っている。それは流石に悪いと思ったらアンドリュー子爵たちから受け取っていたらしい。どうやらみんな俺のステータスが気になるらしい。
料金を払うと奥の部屋に案内され、様々な装置をつけられていく。はっきりいって魔道具など未知の領域のものなので見てもどんなものかわからない。
その後は装置をつけた状態で、歩行やジャンプなど様々な動きをさせられる。それからいくつかの質問など、なんだか人間ドックの気分だ。一通りの行動を終えると、控え室で待つように言われた。
ただ待っているのも暇だったのだが、待っている間に出てきたお茶が美味しくて、ついまったりしてしまった。すると急に慌てた一人の係員が部屋へと入ってきた。
「す、すみません。機械の故障だったようでうまく数値が出てこなかったようです。もう一度同じ検査をさせてもらってもよろしいですか?もちろん追加の料金はいただきません。」
「ええ、構いませんよ。」
もう一度というのは面倒だが、まあそういうこともあるのだろう。それは仕方ないと思っているとボランティが驚いていた。なんでも検査のやり直しなんてことは聞いたことがないらしい。よっぽどのレアケースということだ。
しかし本当にそうなのか?実は…実はスマホに隠れていた俺の能力がこの検査によって判明したんじゃないか?いや、そんな期待はやめておこう。そう思いながらも口元の笑みは止められなかった。
あれからもう一度再検査をした俺は、また控え室で待っていると職員が数名やってきた。その様子はひどくテンパっているというか、冷や汗を垂らして動揺している。
「お、お待たせしました。それと何度も検査をしてしまい申し訳ありません。こちらが今回の結果になります。」
書類を受け取った俺は中身を取り出して確認する。しかしその数値の読み方がいまいちわからない。後ろを確認してみると、ボランティは目を見開き、動揺している。
「今回の結果は…我々職員たちも初めての経験です。こんな数値見たことがない。こんなもの…あり得るはずがないと思っていました。」
その雰囲気に思わず息を飲む。その重苦しい雰囲気は、まるでこの部屋の空気そのものが止まってしまったようだ。
「能力値は大体がA、B、C、となり、魔神の測定不能を除き、SSSが最高、最低がHと言われていました。しかし、今回の結果は全てがI!最低のその下を行く、この世界で最も低い値が出たのです!つまり武術適正なし!武器適正なし!魔法適正なし!保有魔力なし!全てにおいてなんの才能もないことが判明しました!」
「ほへ?」
「適性検査が可能な10歳以上の人類の中で、これほどまでの結果を出した人間はいません!人はなんかしらかの才能があるはずなのにそれが一切ない!こんなこと聞いたことがありません!」
「さ、才能なし……」
「あなたにとって世界とはさぞ恐ろしいものに思えたでしょう。ですが安心してください。我々冒険者ギルドに助けを求めればいつでもあなたを助けましょう。う、うぅ…もう、もう安心して良いのです…」
な、なんか泣かれているんだけど。え、なにこれ。なんの嫌がらせ?え、なんなのこれ。マジで?泣きたいの俺なんだけど。え、まじで?
「え、えぇ…」
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