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第60話 人探し
しおりを挟むさて、砂糖の原料の加工までしばらく時間が空いてしまったので、ファームファクトリーでは砂糖の原料である甜菜の大量生産に当たっている。これなら当日までに大量の原料ができるだろう。
なので今日は別の作業にあたる。それは人探しだ。今では俺が販売しているおはぎの人気はすごいもので日に金貨数枚は十分に稼げている。しかし、俺自身忙しいため、不定期での販売ということになっている。決してめんどくさいからとかではないぞ。
まあそもそも販売するのが俺だけというのは無理がある。販売を開始するとほぼほぼ休みがないため、開店した日は昼飯すら食べる暇がない。使い魔達に働かせようにも話すことができないので、まともに接客することができない。つまり接客は全て俺任せだ。
そこで今日は商業ギルドで人集めをするつもりだ。そういった人材を探すことも商業ギルドでできるらしい。人を雇うなど全く考えもしなかったのでたまたまメイドさんから聞くまで知らなかった。それにしても俺が人を雇うかぁ…全く想像もできないな。
早速商業ギルドに着くと依頼を出せるカウンターへ向かう。そのカウンターにいたのはなんとも美人なエルフの女性だった。ん、女性か?顔は整っていてかなりの美人だ。しかし…胸がない…。女性…で、いいんだよな?
「ようこそ、本日はどのようなご用件で?」
「人探しをしにきました。うちの店で人を雇いたいのですが、ある程度の計算と接客のできる人を5人ほどお願いできませんか?」
「わかりました。ではここに必要事項と職種内容を記入してください。店名はなんというのですか?」
店名?そういやそんなの決めていなかったな。今もただおはぎ売っているところだし。店名かぁ…。今決める必要もない気はするけど、人を雇うのに店名がないのはちょっとなぁ…。
こっちの世界の店名をつける基準ってなんなんだろ。他に知っている店名はシンドバル商会だし、自分の名前つけたほうがいいのかな?そうなると…
「ミチナガ商店です。」
「ミチナガ商店?失礼ですが聞いたことのない店名ですね。何を取り扱っているのですか?」
「あはは…名前は今考えました。うちではおはぎなどを取り扱っています。」
おはぎを取り扱っているといった途端、急に周辺が静まり返った。その後ボソボソと何やら話している声が聞こえてきたが、内容まではさすがにわからない。
「なるほど、あの話題のおはぎを作っている方でしたか。これは失礼しました。それならすぐに人も集まると思います。人気もあって行列もできますし、いつやっているかもわからないのでなかなか手に入らないと話題ですからね。私も食べてみたいものです。」
「そんなに話題になっていましたか。それは嬉しいですね。あ、よろしければ食べますか?ぜひ他の職員の方と一緒にどうぞ。」
おはぎやあんころ餅はシェフとその眷属達に大量生産させているので、いつでも大量にストックはある。お近づきの印に少しあげても問題ないだろ。宣伝にもなるし。
「よ、宜しいのですか?」
「その代わり一般的に人を雇うための賃金などの細かい内容を教えてもらえますか?そこらへんがよくわかっていなくて…」
そう言うとどうせなのでと言うことで別室に案内され、そこで細かい内容を教えてもらいながら書くこととなった。その際にお茶を出してもらったので、お茶うけとしてあんころ餅を出したところとても喜ばれた。
喜ばれたのは良いのだが…この人女性なのかなぁ…声質は女性だけど胸ないしズボン履いていんだよなぁ…どっちだろ?聞いたら完全に失礼だからな。
「それで計算に関してですが、暗算ではなくレジを導入すべきですね。そのほうが間違いも少なく済みますから。」
「レジですか…そういやなんかへんなの使ってる人いたなぁ…あれレジだったんだ。ちなみにおいくらですか?」
「レンタルも行なっていますよ。月に大銀貨2枚からです。購入の場合は金貨8枚ですね。」
レンタルもあるのかぁ…レンタルなら年に金貨2枚ちょっとか。4年でようやく購入と同じ値段。しかしレンタルの場合、最新モデルが出たらそっちと入れ替えることもできる。う~ん…
「じゃあ3台ください。レンタルではなく購入で。」
まあそこまで高いものでもないし、買ってしまった方が長く使えて便利だろう。それと店でレジが1台じゃ会計が追いつかなくなる。2台は必要だ。もう1台は社畜に渡して研究材料にでもしてもらおう。多少は研究を進ませてくれればいいんだけどなぁ。
「わかりました。ではこちらの書類にサインをお願いします。それと人を雇う際にレジ打ちができると言うのも加えたほうがよろしいですね。」
書類の記入は受付をしてくれたエルフの人がしてくれている。俺は書類の内容の確認とサインをするだけだ。未だにこちらの世界の文字を書くのは苦手なのでありがたい。
「それでは仕事の時間と給金、休みなどはどうされますか?」
「そうですね…仕事は9時から18時まで、途中昼休憩は1時間で交互に交代すること。あ、それなら人を6人雇ったほうが楽か。2人ずつ交代で休憩させてやれば業務に支障は出ないだろうし。週休2日で有給は月2日まで、ただし店には常に4人以上はいること。給金は…いくらぐらいがいいんですか?」
「そうですね…通常は利益の2割くらいがベストですね。ですが土地代や材料費などを考えればもう少し減らしても良いかもしれません。一般的には月に金貨2~3枚ほどです。」
なるほど…俺の場合店を開けば金貨5枚は確実に稼げるはずだ。だから月に金貨150枚その2割となると金貨30枚か。それを6人で割るなら…
「じゃあ月に金貨5枚で。できればなるべく早いほうが良いのですが人…集まりますかね?」
「……これだけの好待遇なら明日には相当集まると思いますよ。本当にこの内容でよろしいのですか?」
う~ん…店の開店時間そんなに長くする必要ないし、そこまで問題ないんだよなぁ。売るものの種類もそこまで多くないし。夜中までやっても意味ないし。俺の儲けだって材料費、土地代0だから給金以外の売り上げ、つまり予想では金貨120枚が毎月入ってくるし。
「それで構いませんよ。ではその内容でお願いします。」
「わかりました。では明日…いえ、明後日にしましょうか。あまり早すぎると良い人が来ない可能性もありますから。明後日のこの時間にお越しください。」
さて、やることがなくなったのでこの時間から少し店でも開くかなぁ。こんな気分で店を開店していいのかなぁ。田舎の店ってわけでもないのに。するとスマホに通知が来た。
ピース『“あ、あの…今いいですか?”』
ミチナガ『“どうしたんだ?”』
ピース『“じ、実はポチさんから任せられている養鶏場で問題が…”』
ああ、そういえばポチは最近社畜の監視と管理で忙しいから、他の作業をピースに任せているんだった。ピースは普段ポチと一緒に働いているから、それなりに色々な作業ができる。
ただし、能力として能力半減がついているので、ポチと比べると作業のスピードは遅い。それでも最近は眷属がいるのでなんとかなってはいる。特にポチの眷属はよく働くので、多少暇はあるはずだ。
しかし養鶏場か。そういえば前に鶏買っていたな。時々卵を使っているけど特に気にしていなかった。ポチに全部任せていたから自分では全く確認していなかったな。
ミチナガ『“養鶏場で何があったんだ?”』
ピース『“そ、それが…鶏が増えすぎちゃったんです。もう収まりきらなくて。”』
ミチナガ『“どれだけ増えたんだ?”』
ピース『“ぜ、全部で5000羽です。飼料問題も出て来たのでどうしようかと…”』
い、いつの間にそんなに増えたんだ。はっきり言ってそんなにいてもどうしようもないだろ。そういえば今持っている卵の個数とか気にしていなかったけどどのくらいあるんだ……2万は軽く超えていんのかよ…
ミチナガ『“半分以上潰すしかないな。雄鶏もいるんだろ?雄は100羽残してあとは肉にしよう。雌は卵を産まなくなったやつを全部肉にして…それでどのくらい残る?”』
ピース『“え、えと…それで半分以下になります。だ、だけど卵を産まない雌を全部潰すと卵を温めてくれる鶏がいなくなっちゃいます。”』
ミチナガ『“そうなのか。じゃあ卵を温めてくれるやつを選んで残してくれ。それで数が半数以上にならないように調節してくれ。飼料の方はなんとかするから。”』
さて、半分以上の鶏を潰すということは2500羽分の鶏肉ができるのか。別に保存しておいても良いけど、今後のことも考えると何か消費する手段を考えないとな。
「鶏肉って言ったら…やっぱ鳥カラだよな。こっちにも鳥カラっぽいのはあるけど、まだまだ甘いな。日本人の鳥から好きをナメたらあかんぜ。」
なんて言ったって日本じゃ鳥カラ専門店までできるぐらいだからな。しかも結構人気だし。海外の骨つきのでかいフライドチキンも美味しいけど、鳥カラのうまさはまた別物だ。
「レシピを買って試しに作ってみるか。だけど香辛料の類が足りないな。少し街を散策して材料を揃えて…無いものはタネを買って育てて揃えるか。できればうちの店の看板メニューの一つにしたいな。」
新メニュー開発か。まあレシピ買うだけの簡単な作業だけどな。しかし美味い鳥カラがこれからいつでも食べられるようになるのか。
……これは太るな。
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