スマホ依存症な俺は異世界でもスマホを手放せないようです

寝転ぶ芝犬

文字の大きさ
170 / 572

第165話 魔導列車1

しおりを挟む
 出発することになった俺たちは魔導装甲車を収納し徒歩で移動していた。単純に人通りが多いから魔導装甲車に乗るのが面倒になったという理由もある。それに少し街中を散策したいという理由もある。しかし1番の理由はこれからの移動手段が理由だ。

「えっと…確かこの先…って言われたんだよな?おい、マック!」

「え?ああ…そういうことはウィッシに聞いてくれ。…おい、観ろよガーグ。あの戦斧すげえぞ。」

「おお…あれいいな。…値段もなんとかなりそうな気がするが…どうせなら中央国で買いたい。」

 だめだ、もう全員テンション上がって役に立ちそうにない。こいつらまだ依頼遂行中ってこと忘れているだろ。しかしマクベスもそわそわしている。どうやらこの国はそれだけテンションが上がってしまうということなのだろう。

 そんな彼らを連れて移動するとひらけた場所に出た。奥にはでかい建物が見える。どうやらここが目的の場所らしい。マックたちを引き連れて移動するとその先には行列ができていた。

「あちゃー…激混みだな。おいマックたち、誰でもいいから確認してきて。中央国まで7人分の席だぞ。」

 俺の指示でナラームが人混みの中へ消えていった。時間もかかることだろうし、とりあえず人の少ない場所に移動する。それにしても本当に混み合うな。しかしこの世界でも列車に乗ることができるとは夢にも思わなかったな。ここが14個ある列車の駅の一つ、4番目の弓の駅か。

 12英雄はそれぞれ別々の武器を扱う。だからその武器にちなんだ名前の駅になる。ちなみに12英雄が納める国にそれぞれ一つの駅、そして中央国には2ヶ所の駅がある。しかし今年か来年にもう12ヶ所駅は増える予定らしい。発展途中らしいな。

 近くの売店で買ってきた飲み物を飲んで待っているとナラームが戻ってきた。人混みに疲れたのかフラフラとしている。

「一般車両は6時間待ちだ。ただ特別車両なら2時間待ちで乗れそうだぞ。料金は半端ないけどな。」

 ナラームが得た情報によるとここから中央国まで4時間ほどかかる。本来はまっすぐ行けば中央国に1時間ほどで行けるはずなのだが、線路の問題で中央国に行けるのはここから3つほど隣の国らしい。

 そして一般車両は一駅の移動に金貨2枚、格安車両というものもあり、そちらは大銀貨3枚で済む。そして特別車両の値段は一駅金貨50枚。ここだけ一気に値段が上がるが特別車両からの景色は最高だし、どれもこれも最高クオリティらしい。

 なぜここまで値段に開きがあるかというと勇者神が誰でも乗ることができるようにという配慮かららしい。まあ普通はそんなことをすれば特別車両どころか一般車両すら乗りたがらない。しかしクオリティにかなり差があるのでどの車両も満席になるとのことだ。

 まず一般車両なのだが、ボックスシートで売り子が飲み物や食べ物を売ってくれる。まあ新幹線みたいなものだろう。これが一番スタンダードだ。そして格安車両。まず席がない。1車両あたりに乗員人数が決められ、その人数分を車両に押し込む形だ。だから乗客は自分の荷物の上に座って過ごす。

 まるでただの貨物のように人々を運ぶ形なのだが、なんの問題もないらしい。むしろそんな形にするだけでこれだけ値段を抑えてくれるというのはありがたいとのことだ。まあ座るスペースもないほど押し込められるというわけではないからいいのかな?

 さらにこの格安車両は軍が移動する際には強制的に途中駅でも下車させられる。もうこれだけ聞くと最悪なのだが、これでもまあ全く問題ないとのことだ。本当に問題ないのか?

 そして特別車両。これは最高だ。席はリクライニングシートでモンスターの皮を使った最高級品だ。そして乗客2人に対して1人の乗務員がつくとのことだ。ドリンクと食事は一定のラインのものが食べ飲み放題。さらに多少の金貨で食事のグレードを上げることもできるらしい。

 景色は全面ガラス張りなので最高だ。さらにプロによる生演奏が聴けるらしい。もうこれはすごいな。しかしそのさらに上の超特別車両というのがあるらしい。ただこれは車両一つ貸切ということで値段はさらにはねあげる。そんなの使うやついるのかと思ったらもう1月以上は予約でいっぱいらしい。

 さて、そんな価格によって大きく変わる車両のグレードだが、選ぶなら一般車両か特別車両のどちらかだ。しかし特別車両は一般車両の25倍だぞ。しかも中央国まで4駅ぶんはある。つまり一人金貨200枚、それが7人分なので金貨1400枚もかかるんだぞ。そんなに金をかけられるわけないだろ。

「じゃあナラーム、金渡すから席を買っておいてくれ。それから全員に使い魔か眷属預けておくから連絡はこいつら通してくれ。じゃあ出発の2時間前には集まっておけよ。」

「2時間ってことは…お、おいまじか!やるなぁミチナガ!っよ!さすが!」

「せっかくの記念だ。みんなで特別車両に乗ってやろうじゃんか。ただし遅れたら置いていくからな。絶対に遅れんなよ。じゃあそれまで自由行動!」

 マックたちは勢いよく散会していった。ナラームは俺から金を預かって一人チケットを買いに行った。まあ一人だけかわいそうなのでちょっとだけ手間賃をあげておいたら喜んでいた。このまま時間までぷらぷらしようと思っていたらマクベスだけ残っていた。

「あれ?マクベス、お前はいいのか?」

「迷子になったら困りますから。それに…正直子供一人だと不安ですし…特にやることもないですし…」

 しかし先ほどは色々と見て回りたいように見えた。なんでかと少し考えてみたらマクベスはもうお金を持っていなかった。だからどこか店に行っても冷やかしの客として追い出される可能性もある。そこらへんを考えていなかったな。

「じゃあ一緒に行こう。ああ、本屋さんはあるかな?少し歴史書とか物語の本が欲しいんだけど。知っているか?」

「来る途中で見かけました。フレイド英雄出版がありましたよ。こっちです。」

 マクベスに案内されるままついていくとなんとも大きくて賑わいのある書店にたどり着いた。店内に入るとそこら中に英雄の物語の書物が並んでいた。マクベスを見るとその表情はキラキラと輝いていた。

「すごい数の英雄の書物だな…なんでだ?」

「その昔に初代勇者王がこの出版社の創業者であるフレイド様に命じたらしいです。この国の英雄たちの紡ぎし物語を広めて天まで轟かせろと。多くに語り継がせてあの世に行く自分にも誰かが教えてくれるように広めてくれと命じたそうです。だからこの国に所属する英雄たちには全て記者がついているそうです。」

 なるほど、初代勇者王というと俺と同じ転移者の一人だよな。それなりに人望があったらしい。するとマクベスはこっそりと俺に耳打ちしてくれた。わざわざ初代勇者王が物語を書けと命じた理由の一つに英雄たちが自分の後を追わないようにするためという理由があるらしい。

 なんでも初代勇者王はものすごい人望でおそらく彼が死ぬ時には多くの人々がその後を追うと考えられていた。だから後を追わせないために言ったという説がある。しかしこの説は正しいのかもしれないが人々には好まれていないらしい。どうやら表向きの理由のほうが皆好きらしい。

「なるほどね。じゃあそんな英雄の物語をいくつか買って行こう。何かオススメはあるか?」

「それなら…まずは初代勇者王のお話ですね。それから黒騎士物語。この二つは絶対に外せません。それから13英雄物語も読んだほうがいいですね。この3つはこの国の誰もが読んだことがあるはずです。」

「へぇ~…あれ?なんで13英雄?今は12英雄だよな?」

 なぜか一人英雄が多い。何か問題が起きて一人減ったのかと思ったがそうではないらしい。この13英雄というのは初代勇者王を守るために集まったのだが、その中に初代勇者王の息子も入っていたらしい。

 そして初代勇者王が亡くなった後にその息子が王位を継承したのだが、その際に13英雄自体は誰も死んでいないのに新たに一人加えるというのはおかしいということで12英雄という形になったらしい。

「なるほどねぇ…じゃあこの黒騎士物語ってのはなんなんだ?初代勇者王の話と同じくらい大切にしていただろ。」

「黒騎士というのは初代勇者王の最強の騎士です。奴隷であった幼少期に初代勇者王に拾われて、その恩義を返すために戦ったらしいです。ああ、黒騎士様も13英雄の一人です。他の13英雄が認める歴代最強の英雄です!黒騎士の由来は初代勇者王にクロと呼ばれていたからだそうです。勇者王の家系を3代も守ったらしいです。」

 マクベスは興奮して黒騎士について語り出した。ガラン平原の数万を超えるモンスターを一人でなぎ倒した伝説に、初代勇者王を亡き者にするために送られた魔帝クラス数人を倒した話など数々の偉業を成し遂げているという。

 国民は誰もが初代勇者王を崇拝している。そして誰もがその偉大なる王を守った黒騎士に憧れているのだ。特に奴隷という最下層からこの国の最強の騎士に成り上がったというのは誰もが胸を熱くさせる。

 まあここで色々語っていても仕方ない。なのでとりあえずその3冊とマクベスのオススメの本をいくつか買い漁った。それから店員に聞いて歴史書やモンスターなどの図鑑を何冊も買い漁った。かなりの金を使ったが、まあ必要経費だ。

 随分滞在してしまったようでもう1時間は経過している。この後にどこか寄るのは難しそうだ。だからちょっとした時間で露店をいくつか覗いて商品を物色して行く。

 さすがにでかい国ということあって見たこともないものがいくつもある。だからここはどんどん買い漁って行く。こういったちょっとした所に新しい発見があるからな。

 そしてそんなことをしていれば時間はあっという間に過ぎ去る。もうすぐ集合時刻だ。俺が遅れて置いていかれるなんてそんな間抜け話は笑えないからな。少し急いだほうがいいかもしれない。さて、ようやく魔導列車に乗れるぞ。

しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい

ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆ 気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。 チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。 第一章 テンプレの異世界転生 第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!? 第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ! 第四章 魔族襲来!?王国を守れ 第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!? 第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~ 第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~ 第八章 クリフ一家と領地改革!? 第九章 魔国へ〜魔族大決戦!? 第十章 自分探しと家族サービス

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

勇者じゃないと追放された最強職【なんでも屋】は、スキル【DIY】で異世界を無双します

華音 楓
ファンタジー
旧題:re:birth 〜勇者じゃないと追放された最強職【何でも屋】は、異世界でチートスキル【DIY】で無双します~ 「役立たずの貴様は、この城から出ていけ!」  国王から殺気を含んだ声で告げられた海人は頷く他なかった。  ある日、異世界に魔王討伐の為に主人公「石立海人」(いしだてかいと)は、勇者として召喚された。  その際に、判明したスキルは、誰にも理解されない【DIY】と【なんでも屋】という隠れ最強職であった。  だが、勇者職を有していなかった主人公は、誰にも理解されることなく勇者ではないという理由で王族を含む全ての城関係者から露骨な侮蔑を受ける事になる。  城に滞在したままでは、命の危険性があった海人は、城から半ば追放される形で王城から追放されることになる。 僅かな金銭で追放された海人は、生活費用を稼ぐ為に冒険者として登録し、生きていくことを余儀なくされた。  この物語は、多くの仲間と出会い、ダンジョンを攻略し、成りあがっていくストーリーである。

処理中です...