スマホ依存症な俺は異世界でもスマホを手放せないようです

寝転ぶ芝犬

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第250話 1000年かけたお膳立て

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「な、なんですと!?!?そ、それでは先生が死ぬというんですか!!こうしてはいられない!急いで先生の元へ駆けつけなくては!」

「落ち着けアンドリュー子爵。今から行ったところで間に合わない。そうだろ?」

『リュー・うん、もう絶賛超ピンチ。僕もこれから簡易拠点築き上げて駆けつけるつもり。』

 アンドリュー子爵一行とそこに合流しているミラル一行は使い魔によって現在のミチナガの状況を伝えられた。アンドリュー子爵はミチナガの一大事だと慌てふためいているが、ミラル達は驚きを見せているがどこか落ち着いた様子だ。それはまるで…

『リュー・もしかして……ミラルはこうなること知っていた?考えてみればこんな大事件預言されてないはずがないしね。』

「まあ流石に気がついたか。……ああ、本来の預言とは異なっているが、ミチナガが火の国に行ったらどうなるかは知っていた。本来の歴史。預言された中のミチナガは火の国へ友を助けに行き……そこでその人生を終えている。」

「そ、そんな!み、ミラル殿はこうなることを知っていたのに行かせたというのか!!」

 アンドリュー子爵は声を荒げる。ミラルはミチナガがどうなるかを知っていて火の国に行かせた。死にに行かせることを許容したのだ。それは断じて許せるものではない。アンドリュー子爵はあまりにも歯を食いしばるため、何かが割れる音まで聞こえて来た。そんな中、リューは酷く落ち着いた様子でミラルの前に立った。

『リュー・いろいろ聞きたいことはあるけど…簡単に聞くね。なんで止めなかったの?』

「私はまだ預言の全てを受け継いでいない。詳しいことはお婆様が知っている。私が知っているのはミチナガという男は友を助けるために火の国に赴き…そこで力叶わず死するということだけだ。止めなかった理由は……これが必要なことだと深山様が考えたからだ。自らの人生も変えられぬ男に未来は変えられない。我らが悲願は叶えられない。」

「あ、あまりにも無責任だ!そんな無茶を言っても…」

「無茶ではない。我々は…深山様は…私たち白獣はその生涯をかけて…1000年の時をかけてミチナガのためにお膳立てをした。その全貌は私も…お婆様も知らない。だが私たちは命をかけて、人生を…一族全てを賭してミチナガ一人のためにお膳立てを行なった!今日この日は我々の悲願を達成するための下準備にしかすぎない!ミチナガが死ぬ?侮るな!!我々の人生は…我々がかけた1000年の時はそんなに甘いものではない!」

 ミラルも、その場にいるギギアールもケイグスもその拳に力を込める。これはミチナガだけの問題ではない。白獣全員の想いなのだ。ミチナガがここでどうなるかによって白獣達のこれまでの努力が、悲願が叶うかどうかがかかっているのだ。

「まさかとは思うが…我々の想い…何一つ受け取っていないわけではないだろう?」

『リュー・まあね。ちゃんと分かっているし受けとっているよ。ただ正直…準備不足は否めないけどね。』

『リュー#1・簡易拠点完成したよ。早く行かないとお祭りに乗り遅れるよ。』

『リュー・はいはい。じゃあちょっと行ってくる。聞きたいことも聞けたしね。それじゃあちょっくら……運命ってやつを変えてくるよ。』




「将軍、お疲れ様です。」

「はぁ…手こずらせたものだ。まさかシャイクス国がここまで強国とは思いもしなかった。隣国として恐ろしく思おう。だがそれも今日この時までだ。城門は破壊した。城壁の上を飛び越えるもよし、城門から入るも良しだ。好きに暴れろ。それがかのお方からのご指示だ。」

 城門の前では大勢の兵士達が突入待ちをしている。中には待てないものもいるが、そう言った者達は城壁を飛び越えようとして、未だに頑張る兵士に撃ち落とされて落下死している。まばらに城壁の上を飛び越えるよりも城門から入る方がはるかに安全だ。

 しかしそんな時、城門の方で少し騒がしくなった。おそらく必死に抵抗している敵兵にやられたものだと思ったが、なぜかその騒ぎは徐々に大きくなっている。疑問に思った将軍は遠くから目を凝らして確認する。

 すると城壁の中に侵入しようとした兵士達が続々と城壁の外に追い出されているではないか。中には何かに投げ飛ばされたかのように飛んでくるものまでいる。

「な、なんだ…何が起こっている……」

 何が起こっているか未だにわからない将軍はしばらくしてようやく見た。敵の城壁の中から続々と現れた黒鉄の兵士達を。

「あ、あれはなんだ……一体…シェイクス国は…一体何を隠していたのだ…」




「何が…何が起きているんだ?……」

 ミチナガは絶望で溢れたその眼で目の前で起きている現実を見た。小さな、とても小さくてか弱いミチナガの使い魔達。それが突如、ミチナガの身の丈を超える黒鉄の塊の中に入って行った。それは100や200ではない。5000を超える軍勢だ。突如現れた黒鉄の軍勢は城壁内に侵入してきた兵士達を投げ飛ばした。

 やがて城壁内に侵入した兵士達は一人残らず城壁の外へと押し出されていく。すると即座に城門を修復しようと動き出している。そしてその中の1人がこちらに向かってやってきた。

「ああボス、ちょっとこっちに来てもらえますか?」

「い、一体何が起きて……」

「あ、これじゃわからないか。ちょっと待ってくださいね。」

 そう言うとその人型の黒鉄の兵士の胸のあたりがパカっと開き中から見たことのある使い魔が現れた。

『黒之壱・内緒にしていてごめんなさいボス。まあいくらでも後で説明するのでちょっと城壁の上まで来てもらえますか?』

「あ、ああ…」

 そう言うと再び胸の部分は閉まりミチナガをお姫様抱っこして走り出した。硬い装甲のせいであまり抱かれ心地はよくないがそんなことを気にしている余裕はない。それよりももっと気になることがある。

「な、なあ…いつからこれの開発は進んでいたんだ?」

「え?いや僕は新参なのでよくわからないです。だけど割と前からですね。プロジェクトホープっていう研究でずっと行われて来たみたいです。ポチ先輩がいつの日か、ボスを守れるような力を得られるようにするため、ボスに隠れて資金集めしたり色々やって来た計画ですね。気になるなら後でポチさんから聞いてください。っと着きましたよ。」

 黒之壱に連れてこられたのは城壁の上。この戦争の最前線だ。多くの兵たちが今なお狂ったように戦っている。しかしそこにはなぜかその場に似合わない楽器を持った黒鉄の人型兵器に搭乗した使い魔たちが並んでいた。

「待っていたよ~早く~始めよう~~」

「身の安全はお任せを。」

「その感じは…オペラにガーディアンだな?一体何を…」

 ミチナガの疑問は御構い無しに演奏の準備を始める。こんなところで演奏するのかと不思議に思ったが、下を見ると勇猛苛烈に攻めていた使い魔たちは徐々に押され始めていた。

「我々はまだ初期段階。大量に魔力を消耗すると弱り始める。」

「そういうことか。だけどこの場面にあった曲なんて…って実績を解除してあるのか。」

 この戦争の戦闘にまともに加担したため、ミュージックマイライフに新たなる楽曲が追加されている。ミチナガは己の役割を理解しすぐに準備を始める。

「俺の準備はオッケーだぞ!オペラ!いいか!」

「いつでも~~」

 ミチナガは新曲、戦場のワルキューレを演奏する。この曲は今までの中でも最高難易度の楽曲だ。1秒間に150タップ、誤差0.0001秒という尋常ではない精度を求められる。まず人間には不可能と思われるこの楽曲をミチナガは今の所オールパーフェクトでこなしている。

「やはり異常…」

「ガーディアン、お前はよく知っているんだろ?それは一体なんなんだ?」

 まさかこれほどまで難易度の高いことをやっているにもかかわらず、ミチナガには話すだけの余裕がある。これにはガーディアンも驚きを隠せないが、言われた通りにミチナガに説明を始める。

「原案はかつての超大国オリンポスで開発された異世界人による魔法と科学の完全融合した新兵器開発。しかしそれは開発途中でオリンポスの崩壊とともに消え去った。そしてかの零戦の所有者、ヤマダが能力によってその設計図を完成させた。魔道科学兵器…それがこの研究の名称。とはいえ技術力が足りず我々はまだ第2世代。細かいこと種別は……」
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