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第329話 久しぶりの遺産回収
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「つまり今の商会はそのひいお爺さんの研究から完成したものを売っているってことか。けどまあ正直…そこまで珍しいものではないよな?」
「ひいお爺様の研究結果が残っているのは一部だけなんです。ほとんどはこのように解析の難しい言語で書かれているため、わからずじまいで…」
どうやら研究書は残っているようだが、肝心の日本語の読み方は伝わっていないらしい。しかし読み方が伝わっていても読み解くのには時間がかかることだろう。なんせ字がものすごく汚い。自分が読めればそれで良いくらいにしか考えていなかったのだろう。
それに軽く読んでみたが、どうやらこの世界のものがどういう理屈で、どういう素材をもとに作られているかを解析したものばかりだ。正直この程度のものならば、今のミチナガは数段上の研究資料を持っている。
今この商会で取り扱っている主力の商品のほとんどは、そのひいお爺さんの代に作った人脈をもとに商品を仕入れて売っているだけだ。正直ありきたりなもので、そこまで大儲けできるものではない。ただ冒険者を相手に商売をするということで、安定して続けられる商売なのだろう。
「一つ聞きたいんだけど、そのひいおじいさんが大切にしていた、不思議なものってあるかな?他ではみたことのないようなものとか…」
「不思議なものですか…色々ありすぎて一概にどうとは…なんなら見に来ますか?」
そういうことでその日の夕方ごろに家にお邪魔することになった。さすがに何代も続いている商会ということで屋敷は立派だ。しかし屋敷の表玄関は通らずに横の勝手口の方から屋敷に入った。
「ひいお爺様のものは基本的に地下にありまして…人が立ち入ることもないので表玄関からだと遠回りになるんです。ああ、ここを降りればひいお爺様の研究所があります。どうぞ。」
案内されるまま地下へ続く石の階段を降りていく。降りて行った先には3つの扉が並んでいた。そしてその扉の一つを開いて中へ入った。
「ここがひいお爺様の書斎です。他の2つの部屋は魔法がかけられているようで中に立ち入ることができないんです。」
「魔法がかけられて?…おれと同じ日本人なら普通の魔法は使えない。そうなると遺産か遺品による能力か。この部屋自体は遺産って感じはしないけど…」
とにかく部屋の中を調べさせてもらう。部屋の中には日本でも見知ったものの模造品のようなものが点在していた。研究の一環なのか、それとも故郷が恋しくて作り続けたのか。とりあえず部屋の中にある本をいくつか読んでいくが、大したものはない。
「魔法を応用した洗濯機の製造…。開発途中でもうこの世界ではそれが流通していることを知ったのか。だけどなんだろう…本当に手当たり次第に研究している感じだな。研究、開発系の能力なのかな?にしてはどれもしょうもない…。まあ条件は厳しいと考えれば…おれのスマホとかと同じような物体のある遺産か。それなら回収可能だな。」
かつて出会った異世界人カイの洗脳能力や、ハジロの幻惑能力の場合は能力自体が本人に宿っているため、当人が死んでいると能力の回収ができない。しかし山田のゼロ戦や、リリーに呪いをかけていたロザリオの場合なら所有者が死んだ後も残り続けるため回収が可能だ。
その後も何か無いか探し続けると壁の一部が外れることに気がついた。そこを外すと中から小さな宝箱が出て来た。その宝箱からミチナガは何かを感じ取った。しかしこの宝箱が遺産というわけでは無い。その中にあるものがきっと遺産なのだろう。そっと開封するとそこには驚くものが入っていた。
「……何これ?木…だよね?」
『ポチ・木だね。木のブロック。だけどこれ…多分遺産だよ。』
「まあそれはわかるけど…商会長、これ何か知っている?」
「いえ…こんなものがあるとは聞いたこともなく…それに特別な木材というわけでは無いようですね。…それが欲しかったのですか?欲しいのでしたら持って行ってもらっても構いませんが…」
「あ、うん…ありがとう。」
これまでいくつか遺産を見つけてきたが、その中でもトップクラスにしょぼそうな遺産だ。なんせ本当にただの長方形の木の塊だ。ただ改めて見てみるとよほど大事だったことがわかった。その木の塊には長年、手で触られてきた痕のようなものがついている。
それを見るとどんなものでも大切な故人の品なのだと実感させられる。ミチナガはその場で手を合わせてお祈りをしたのちにスマホに収納した。
『遺産を確認しました。実績が解除されます。報酬の入手までの残り時間48時間。』
「やっぱり遺産だったか。だけどこれは一体なんなんだろ?意外と解析時間もかかるみたいだし…」
『ポチ・あ、もしかして積み木とか?一個だけしか無いけど、形的にはそうじゃない?』
「あ…あぁ~…そう言われるとそうかもしれない。子供の頃やったわ。お城とか作って遊んでた。」
こうしてミチナガは積み木の遺産を入手した。
その翌日、ミチナガは荷物を魔動装甲車に乗せ、出発の準備をしていた。その中にはエリーとエーラの姿もある。
「さてと、エリーとエーラを雇うことに成功したし、遺産の回収もできた。本当ならこの国のミチナガ商会の店舗ができるまで居たかったけど、急ぐ旅路だからな。全員荷物載せ終わったか?」
取り残されている人がいないか確認し、荷物も全部載せ終えたか確認する。出発の準備は万端だ。後のことはこの国にも使い魔を残してあるので、彼らが必要なことをこなしてくれるだろう。
「ポチ!ルートは大丈夫か?」
『ポチ・大丈夫だよ。エリーとエーラをヴァルくんに預けるためにVMTランドに行く道のりはバッチリ。ただここからってなると結構時間かかるから、途中途中で村々に寄りながら行くから多少遠回りになると思うけどね。』
エリーの絵の才能を伸ばすためには同じ芸術の才能があるヴァルドールの元へ預けるのが一番だ。エーラもヴァルドールの元に預ければ、多くを学べるだろう。ミチナガはこれまでヴァルドールのいるヨーデルフイト王国には行ったことがないので良い機会だ。
それにVMTランドからならば列車が通っているため、英雄の国へはすぐに迎える。英雄の国にも早く向かえるので、一石二鳥だ。
「よ~し!それじゃあVMTランドに向けて出発進行!」
VMTランドに向けて出発した翌日。予定していた48時間が経過したため積み木の遺産の解析が完了し、新たな使い魔を入手した。どんな使い魔か確認するためにスマホから出して見ると、その使い魔は他の使い魔に比べて体が角ばっていた。
『キャッスル・アイムキャッスル。ヨロシク。』
「よ、よろしく…キャッスルはどんな能力があるんだ?」
『キャッスル・レンガツクル。レンガツム。』
「……きたぞこの感じ。くそみてぇな能力。俺のスマホだいぶ良くなったと思ったけど、入手した遺産があれだもんな。まあ仕方ないよな。…ちょっと実演してくれるか?」
ミチナガがそう言うとキャッスルはおもむろに土を食べ始めた。そしてしばらく咀嚼すると、まるで口からところてんでも吐き出すようにヌルリと土の塊を吐き出した。吐き出された土はなかなかの強度の土レンガになっている。
「あれこの能力…意外と使えるかも。それってどんな素材でもいけんの?例えばこれとか。」
ミチナガが取り出したのは以前ナイトから建国祝いにもらった超硬度の黒いレンガの素材だ。それを渡されたキャッスルと目を輝かせて喜んでいる。そして土と同じように口の中に入れて咀嚼すると1分足らずで黒かった素材が真っ白なレンガになって出てきた。
「あれ?白くなっちゃった。でも…かなりの強度だな。カッチカチやん。これどういうこと?」
『ポチ・ちょっと調べてみるね。』
ポチが調べている間もキャッスルはひたすらレンガを作り続けた。そしていくつかできると今度はそれを積み上げ始めた。しかもご丁寧にレンガの間には同じ素材をドロドロに溶かしたものを接着剤代わりに挟んでいる。
『ポチ・解析終わったよ!これものすごい強度!通常の倍以上の強度があるよ。これ使えば最強の城ができるよ。これいっぱい作ってみんなでお城を…』
『キャッスル・ツム…レンガツム…』
『ポチ・え…ちょ…』
ただひたすらにレンガを積んでいくキャッスル。どうやら周りの言葉は入ってこないらしい。積み上げられたレンガはもう取り外すことはできなさそうだ。一人で黙々と作業を続けるキャッスルを積み上げられたレンガ共々スマホに収納するとミチナガはため息をついた。
「こいつは癖あるぞ。多分共同作業とか苦手なタイプだ。しばらく好きにやらせて飽きたらみんなでなんかやってくれ。」
『ポチ・う、うん。わかった。』
久しぶりにクセのありそうな使い魔の参入にミチナガもポチもため息を吐く。スマホが完全版になろうが、なんだろうがこのスマホは一筋縄ではいかなさそうだ。
「ひいお爺様の研究結果が残っているのは一部だけなんです。ほとんどはこのように解析の難しい言語で書かれているため、わからずじまいで…」
どうやら研究書は残っているようだが、肝心の日本語の読み方は伝わっていないらしい。しかし読み方が伝わっていても読み解くのには時間がかかることだろう。なんせ字がものすごく汚い。自分が読めればそれで良いくらいにしか考えていなかったのだろう。
それに軽く読んでみたが、どうやらこの世界のものがどういう理屈で、どういう素材をもとに作られているかを解析したものばかりだ。正直この程度のものならば、今のミチナガは数段上の研究資料を持っている。
今この商会で取り扱っている主力の商品のほとんどは、そのひいお爺さんの代に作った人脈をもとに商品を仕入れて売っているだけだ。正直ありきたりなもので、そこまで大儲けできるものではない。ただ冒険者を相手に商売をするということで、安定して続けられる商売なのだろう。
「一つ聞きたいんだけど、そのひいおじいさんが大切にしていた、不思議なものってあるかな?他ではみたことのないようなものとか…」
「不思議なものですか…色々ありすぎて一概にどうとは…なんなら見に来ますか?」
そういうことでその日の夕方ごろに家にお邪魔することになった。さすがに何代も続いている商会ということで屋敷は立派だ。しかし屋敷の表玄関は通らずに横の勝手口の方から屋敷に入った。
「ひいお爺様のものは基本的に地下にありまして…人が立ち入ることもないので表玄関からだと遠回りになるんです。ああ、ここを降りればひいお爺様の研究所があります。どうぞ。」
案内されるまま地下へ続く石の階段を降りていく。降りて行った先には3つの扉が並んでいた。そしてその扉の一つを開いて中へ入った。
「ここがひいお爺様の書斎です。他の2つの部屋は魔法がかけられているようで中に立ち入ることができないんです。」
「魔法がかけられて?…おれと同じ日本人なら普通の魔法は使えない。そうなると遺産か遺品による能力か。この部屋自体は遺産って感じはしないけど…」
とにかく部屋の中を調べさせてもらう。部屋の中には日本でも見知ったものの模造品のようなものが点在していた。研究の一環なのか、それとも故郷が恋しくて作り続けたのか。とりあえず部屋の中にある本をいくつか読んでいくが、大したものはない。
「魔法を応用した洗濯機の製造…。開発途中でもうこの世界ではそれが流通していることを知ったのか。だけどなんだろう…本当に手当たり次第に研究している感じだな。研究、開発系の能力なのかな?にしてはどれもしょうもない…。まあ条件は厳しいと考えれば…おれのスマホとかと同じような物体のある遺産か。それなら回収可能だな。」
かつて出会った異世界人カイの洗脳能力や、ハジロの幻惑能力の場合は能力自体が本人に宿っているため、当人が死んでいると能力の回収ができない。しかし山田のゼロ戦や、リリーに呪いをかけていたロザリオの場合なら所有者が死んだ後も残り続けるため回収が可能だ。
その後も何か無いか探し続けると壁の一部が外れることに気がついた。そこを外すと中から小さな宝箱が出て来た。その宝箱からミチナガは何かを感じ取った。しかしこの宝箱が遺産というわけでは無い。その中にあるものがきっと遺産なのだろう。そっと開封するとそこには驚くものが入っていた。
「……何これ?木…だよね?」
『ポチ・木だね。木のブロック。だけどこれ…多分遺産だよ。』
「まあそれはわかるけど…商会長、これ何か知っている?」
「いえ…こんなものがあるとは聞いたこともなく…それに特別な木材というわけでは無いようですね。…それが欲しかったのですか?欲しいのでしたら持って行ってもらっても構いませんが…」
「あ、うん…ありがとう。」
これまでいくつか遺産を見つけてきたが、その中でもトップクラスにしょぼそうな遺産だ。なんせ本当にただの長方形の木の塊だ。ただ改めて見てみるとよほど大事だったことがわかった。その木の塊には長年、手で触られてきた痕のようなものがついている。
それを見るとどんなものでも大切な故人の品なのだと実感させられる。ミチナガはその場で手を合わせてお祈りをしたのちにスマホに収納した。
『遺産を確認しました。実績が解除されます。報酬の入手までの残り時間48時間。』
「やっぱり遺産だったか。だけどこれは一体なんなんだろ?意外と解析時間もかかるみたいだし…」
『ポチ・あ、もしかして積み木とか?一個だけしか無いけど、形的にはそうじゃない?』
「あ…あぁ~…そう言われるとそうかもしれない。子供の頃やったわ。お城とか作って遊んでた。」
こうしてミチナガは積み木の遺産を入手した。
その翌日、ミチナガは荷物を魔動装甲車に乗せ、出発の準備をしていた。その中にはエリーとエーラの姿もある。
「さてと、エリーとエーラを雇うことに成功したし、遺産の回収もできた。本当ならこの国のミチナガ商会の店舗ができるまで居たかったけど、急ぐ旅路だからな。全員荷物載せ終わったか?」
取り残されている人がいないか確認し、荷物も全部載せ終えたか確認する。出発の準備は万端だ。後のことはこの国にも使い魔を残してあるので、彼らが必要なことをこなしてくれるだろう。
「ポチ!ルートは大丈夫か?」
『ポチ・大丈夫だよ。エリーとエーラをヴァルくんに預けるためにVMTランドに行く道のりはバッチリ。ただここからってなると結構時間かかるから、途中途中で村々に寄りながら行くから多少遠回りになると思うけどね。』
エリーの絵の才能を伸ばすためには同じ芸術の才能があるヴァルドールの元へ預けるのが一番だ。エーラもヴァルドールの元に預ければ、多くを学べるだろう。ミチナガはこれまでヴァルドールのいるヨーデルフイト王国には行ったことがないので良い機会だ。
それにVMTランドからならば列車が通っているため、英雄の国へはすぐに迎える。英雄の国にも早く向かえるので、一石二鳥だ。
「よ~し!それじゃあVMTランドに向けて出発進行!」
VMTランドに向けて出発した翌日。予定していた48時間が経過したため積み木の遺産の解析が完了し、新たな使い魔を入手した。どんな使い魔か確認するためにスマホから出して見ると、その使い魔は他の使い魔に比べて体が角ばっていた。
『キャッスル・アイムキャッスル。ヨロシク。』
「よ、よろしく…キャッスルはどんな能力があるんだ?」
『キャッスル・レンガツクル。レンガツム。』
「……きたぞこの感じ。くそみてぇな能力。俺のスマホだいぶ良くなったと思ったけど、入手した遺産があれだもんな。まあ仕方ないよな。…ちょっと実演してくれるか?」
ミチナガがそう言うとキャッスルはおもむろに土を食べ始めた。そしてしばらく咀嚼すると、まるで口からところてんでも吐き出すようにヌルリと土の塊を吐き出した。吐き出された土はなかなかの強度の土レンガになっている。
「あれこの能力…意外と使えるかも。それってどんな素材でもいけんの?例えばこれとか。」
ミチナガが取り出したのは以前ナイトから建国祝いにもらった超硬度の黒いレンガの素材だ。それを渡されたキャッスルと目を輝かせて喜んでいる。そして土と同じように口の中に入れて咀嚼すると1分足らずで黒かった素材が真っ白なレンガになって出てきた。
「あれ?白くなっちゃった。でも…かなりの強度だな。カッチカチやん。これどういうこと?」
『ポチ・ちょっと調べてみるね。』
ポチが調べている間もキャッスルはひたすらレンガを作り続けた。そしていくつかできると今度はそれを積み上げ始めた。しかもご丁寧にレンガの間には同じ素材をドロドロに溶かしたものを接着剤代わりに挟んでいる。
『ポチ・解析終わったよ!これものすごい強度!通常の倍以上の強度があるよ。これ使えば最強の城ができるよ。これいっぱい作ってみんなでお城を…』
『キャッスル・ツム…レンガツム…』
『ポチ・え…ちょ…』
ただひたすらにレンガを積んでいくキャッスル。どうやら周りの言葉は入ってこないらしい。積み上げられたレンガはもう取り外すことはできなさそうだ。一人で黙々と作業を続けるキャッスルを積み上げられたレンガ共々スマホに収納するとミチナガはため息をついた。
「こいつは癖あるぞ。多分共同作業とか苦手なタイプだ。しばらく好きにやらせて飽きたらみんなでなんかやってくれ。」
『ポチ・う、うん。わかった。』
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