スマホ依存症な俺は異世界でもスマホを手放せないようです

寝転ぶ芝犬

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第426話 海上都市要塞建設

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 海上都市。それは海神が治める海底の魚人族の国アトランティスが唯一地上の人間と交流することを許した交易都市である。だが人間でこの海上都市に住み着いているものはほぼいない。未だにかつての魚人族と人間との確執が残っているのだ。

 そんな海上都市に大きな変化が訪れた。新たなる海上都市の建設である。これまで一つしかなかった海上都市が新たに建設されるのだ。そしてそれに合わせて今まであった海上都市は新たに増築される。

 ただ、基本的に海上都市とは海底にある本国が地上の人間に向けて交易するために作られたものであり、そこらへんに作ったところで意味はない。しかし海底にはまだまだ人間の知らない魚人族の国がいくつも点在している。

 北方に国を構える巨海獣族、赤道に国を構える虹色魚人族、魚人の中で最も小さいとされるが全ての国の中で最も人口の多い小人魚族、全ての魚人族の中で最も深海に住む深海族。彼らはこれまで人間との確執や資金問題で海上都市を持たず、ひっそりと暮らしてきた。

 しかし今回ミチナガ商会の働きかけと海神ポセイドルスの説得の元、海上都市の建設が決定した。ただ海上都市を作るとなるといくつか問題が発生する。地上に住んでいた人々はこれまでの間、そんなところに魚人の国があったということは知らなかった。故に船乗りなどは漁に影響が出ることになった。

 これには大きな問題が発生すると思われたが、そこもミチナガ商会が多額の資金を投資して新たな漁の形と、新たな産業が生まれることで無事解決した。

 ただポセイドルスにとって新たな海上都市建設とはあくまでおまけのようなものだ。本来の目的は海底の本国の強化である。別に海上都市が滅んでも人間との交易が面倒になるだけで大きな問題は起こらない。やるべきは海底の本国をどこまで要塞化できるかである。

 しかしそもそも海底にある国を攻めることができるのは同じ魚人族くらいなものだ。だから別に強化は必要ないと思われたのだが、歴史に詳しい魚人族達はそう考えなかった。

「かつて人間の中には海を割って魚人の国に攻め込んできたものもおります。その時は宝石魚人と呼ばれる見目麗しい魚人が多く拐われ、殺されました。今でもその時の影響で宝石魚人の全人口は1000人にも満たないとか…」

「他にも海を囲い、強力な熱で海を蒸発させたものもおります。我ら魚人の歴史は迫害と殺戮の歴史。故に不安を取り除くためにも強靭な要塞は必要不可欠です。」

「と、いうことだ。わかってくれたか?」

『ウミ・ん~~…まあそういうことなら?いいんじゃない?ねぇ?』

『マリン・そこまで来ると魚人族の性質上、要塞を強固にしてもどうにもならないような…というか人間の国だって海を蒸発させるような熱をやられたら終わりですよ。……でもまぁ…少し考えてみましょうか。』

 すぐに大勢の使い魔達で会議が開かれるが、とりあえずは気持ち的なことも大切だということで今ある国に強固な避難シェルターと要塞を建設することが決まった。ただそう決まったのだが、ここからが問題であった。

 なんせ魚人の国があるのは浅くても深さ800m。深ければ1万mをゆうに超えて来る。人間でも生身で潜るのは不可能な深さだ。そしてそれはもちろん使い魔達とて同じこと。エヴォルヴの機体を防水仕様にしたが、200mを超えたあたりで機能不全を起こしてしまった。

『社畜・無茶である。海は潜れば潜るほど水圧がかかるのである。潜水艦を作っても今の技術じゃ水深500mがせいぜいである。』

『ポチ・まあそうなるよね。エヴォルヴの機体で潜るのなんて…第一金属だから長期間の運用は塩で錆びるよ。内部に少しでも海水が入ったらすぐにお陀仏。ということだからしばらくはそっちで何とかして。』

『マリン・そうは言われても明らかな人数不足ですし…そもそも魚人族の方は地上の建物とかに精通していません。今住んでいるところも岩礁を削っただけとかですよ?』

『ポチ・そうは言ってもその深度で耐えられるのお前たちだけだし……とりあえず何人か部下になりたいやつ送るからそいつらを二人みたいに精霊化させて。』

『ウミ・よくわかんないけどはーい。』

『マリン・ちょっとウミ!そんな安請け合いしないで!ポチさん、そもそも僕たちだってたまたま海の上でずっと暮らしていたら海の精霊になっただけでちゃんとしたところはわかっていないんですよ。』

 安請け合いしたウミに対してマリンは慎重に考える。だが今はこの二人に頼るしかない。この二人はなぜか海の精霊の力を得ており、そのおかげで海底にあるポセイドルスの治めるアトランティスに行くことができた。

 ただ二人はあくまで自然に海の精霊の力を取り込み、海の精霊になっただけで海の精霊の力を得る方法はよくわかっていない。しかしそんなマリンに対してポチは話を続けた。

『ポチ・知り合いの中に海の精霊いるでしょ。彼らを頼って何とかしてよ。こっちもエヴォルヴの改良をして深海でも活動できるようにするからさ。でも改良にいつまでかかるかわからないし…時間は無限じゃない。一分一秒を争うと考えた方が良い。わかるよね?』

『マリン・そうは言っても海の精霊って基本的にフラフラしているから知り合いを探すのすごい大変なんですよ!海なんて陸地よりもはるかに広いんです!そんな海の中を好き勝手に泳いでいるんだからどこにいるかなんてわからないですよ!』

『ウミ・それなら大丈夫だよ~待っていれば海の精霊来るよ~。適当に来たやつに頼めば大丈夫大丈夫~。』

『ポチ・まあウミもそう言ってるし。こいつのコミュ力なら大丈夫でしょ。それじゃあこっちも忙しいからこの会議はこれでおしまい!さあ元の仕事に戻るよ~』

『マリン・ちょ!ポチさん!ポチさーん!!』

 マリンの叫び虚しく、会議はそこで終わることになった。会議後、すぐにポチからは500人ほど選定された使い魔をリストが送られて来た。この中から海の精霊になれそうなやつを見つけて、海の精霊に力を分けて貰わなくてはならない。しかしそのためには海の精霊も探さなくてはならない。

『マリン・使い魔の精霊化は戦力になるし、良いことが多いから最近使い魔の精霊化を促しているけど…そんな簡単なものじゃないのに……。僕たち使い魔の中でもすんなりとそのまま思い通りの精霊になれるのなんて一握りなのに…それに加え海の精霊を探せなんて無茶だよ……』

『ウミ・マリンー!マーリーンーー!』

『マリン・何…今忙しいんだけど…遊んでいる暇があるなら少しは…』

『ウミ・精霊見つけたから連れて来た。見て見てクラゲ。』

 ウミの手には小さなクラゲが乗っている。ぶよぶよとしたその体はなんとも貧弱そうにも見える。だがその内に秘めた精霊としての力はなかなかなものだ。精霊としての格で言えば上位精霊に一歩及ばないくらいであろう。

『マリン・ちょ!い、いきなり!?まだ人員の選定が…そもそも力分けてもらっても良いの?』

『ウミ・良いみたいだよ?そういう風にお願いしたら手の上に乗って来たから。』

『マリン・そ、そうなの?ありがとうございます。…ちょっと待って、相性良さそうな人探すから。クラゲだから性格的には…あと力的に人数は3人ってところかな?そうなると……』

 マリンは大急ぎで人数を10人選ぶとすぐに海面付近にその10人を呼び出した。あとはその中からそのクラゲの精霊に選んでもらうだけだ。

 その後も無茶だと思われた精霊の探索であるが、思いの外すんなりと見つかり、思いの外すんなりと話が進み、思いの外すんなりと使い魔の精霊化が進んでいった。使い魔達の会談後、わずか一月で500人の使い魔が精霊の力を得ることができた。

 あとは精霊の力をなじませていけば自然と使い魔達も精霊になれる。この結果にマリンはあれだけ文句を言っていたのにすんなりできんじゃんとポチに嫌味を言われて返す言葉がなかった。

 そして魔神会談からおよそ3ヶ月後、他国に大きく遅れをとることとなったがようやく魚人達の海底国の要塞化が始まった。
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