スマホ依存症な俺は異世界でもスマホを手放せないようです

寝転ぶ芝犬

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第431話 ナイトとムーンと人災のミズガルズ

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「封印第三段階限定解除確認!第四段階封印の限定解除を始めます!!」

「慎重に行え。一つのミスが取り返しのつかないことになりかねない。」

「現在の魔力波は安定しています。しかし本当によろしいのですか?アレクリアル王。」

「完全封印に成功しているとはいえ、毎月確認しないとならない。それに近年封印にほころびが見え始めているという報告も入っている。封印が無くなる前に対処できるのであれば対処したい。ただ…万が一の時は頼りにしているぞヴィシュダル。」

 アレクリアルとヴィシュダルは神妙な面持ちで巨大な結界の前に立っている。その周りには幾人もの魔王クラス、魔帝クラスの猛者たちが並んでいる。よく見れば他の12英雄の面々もいるようだ。

 ここは英雄の国から北西に位置する周囲に村どころか人の影もない僻地。決して誰も寄り付かないこの場所には巨大な結界が存在する。しかも世界中探してもこれほどの強度と魔法の完成度の高い結界はないだろう。

 そんな結界により封印されているこれが、勇者神アレクリアルが保有する2つある9大ダンジョンのうちの一つ、人災のミズガルズだ。

 9大ダンジョンはどれも危険なものであることに間違い無いのだが、それでもこの人災のミズガルズの危険度は一つ頭抜きん出ている。この地の封印には当時の魔神が3人ほど協力して行われたという。そのおかげで現代でも封印が持ち続けている。

 9大ダンジョンの一つ、人災のミズガルズ。そのダンジョンとしての特性は災害と疫病。ダンジョンに住むモンスターは全て疫病を持っている。そしてその疫病は一度地上で広まれば数万人は死に至ると言われている。

 かつてまだダンジョンが現役で使われていた時に最下層を探索して戻って来た冒険者の衣服に付着していた病原菌により国が滅んだという記述がされた石碑も残っている。だからこそこれだけの厳重な封印だ。

 しかし近年その封印が弱まって来ているという。それは年月による劣化によるものだと考えられるが、もしかしたら法国や龍の国が何かしら封印に対して攻撃している可能性もある。もしもこの人災のミズガルズの封印がなくなれば英雄の国どころか、この大陸そのものが半壊する可能性もある。

 そのため、このダンジョンの解放というのは非常に重要だ。この人災のミズガルズも他のダンジョンと同様にダンジョン内は金貨などの貨幣で埋め尽くされ、地上にモンスターが溢れかえっている。

 しかしダンジョンが解放されれば地上のモンスターは消え去り、ダンジョン内に押し留めることができる。そうなれば脅威はほぼ無くなる。

 しかしこの人災のミズガルズの攻略には大きな問題が存在する。それは今ここにミチナガがいないことが大きく要因する。実は今回、この人災のミズガルズの攻略にはミチナガ本人は関わらない。

 なんせミチナガは魔力を持たないただの人間だ。この地に侵入し、疫病にかかれば死に至る可能性もある。もちろんミチナガの場合世界樹の薬を使えばほとんどの疫病は治るだろう。しかし治る前に即死するような疫病も無いとは言い切れない。そのためミチナガによるスマホでの貨幣の超回収は望めない。

 だから今回は使い魔たちだけでの参加だ。貨幣の回収速度はかなり落ちるが、前回の巨大のヨトゥンヘイムと比べてこの人災のミズガルズは半分以上小さい。これならば使い魔たちだけでもなんとかなるかもしれない。

 そうこうしていると第四段階の封印が限定解除された。これで次は第五段階の封印が解除される。この人災のミズガルズの封印は十段階の封印によって構成されている。

 第一から第五までの封印は外からの侵入を防ぐもの。第六から第十までの封印は中から出ることを防ぐことに特化している。そのため第一から第五までの封印を解けばなんとか中に入ることは可能になる。

 ただそれでも第六から第十までの封印を越えるのには一定の実力が必要だ。魔帝クラスでも上位、いや最上位クラスの実力。そして一度中に入ったら、出てくるためにダンジョンの下層に存在すると言われる転移石を入手しなくてはならない。

 そんな危険なことを任せられるのは英雄の国には数少ない。そして現状世界がおかしくなって来ている時にそれほどの戦力を手放せない。故に今回、人間の戦争に興味も関心も無い男がこのダンジョン攻略に選ばれた。

 そしてその男は現在も続く第五段階の封印解除を尻目に、いつの間にか結界内部へ侵入している。これには周囲から驚きと動揺の声が聞こえて来た。

「ア、アレクリアル様!ナイト様がすでに内部に…」

「わかっている。…結界を無理やりこじ開けて侵入したか。結界に問題が起きていないか確認!それから内部環境は問題ないのか確認しろ。……声が届かないのか。ユウを呼べ!」

『ユウ・すでに来ています。ナイトとはすでに交信中です。とりあえずご報告します。内部環境は硫化水素、硫酸などの危険度の高いガスで充満しています。またダニなどの極小の生物の攻撃も頻発。おそらく噛まれればとんでもないことになるでしょう。現在は魔力を放出させて酸素を生成、ダニなどから身体を守り生命維持しています。』

「ダニか…下手に内部には入れないな。パンデミックが起こりかねない。ダンジョンが解放されたとしても広範囲魔法で地上部分は完全焼却が必要だな。ナイトは問題なくダンジョン攻略できそうか?」

『ユウ・ワクワクしちゃってますね。待ちきれないようなんで行っちゃってもいいですか?』

「頼もしいな。では頼む。ただ人災のミズガルズは入り口が多く存在するが、最奥まで行ける正解はひとつしかない。巨大のヨトゥンヘイムとはまた違った大変さがあるが頑張ってくれ。」

『ユウ・了解です。それじゃあ…ナイトいってらっしゃい。ムーンさんも頑張ってください。』

 ナイトはその合図を聞くとすぐさまどこかへ消えてしまった。そんなナイトを確認するとすぐにこじ開けた結界を戻す作業が始まる。まだまだ緊張感が解けないが、それでもこれでしばらくはなんの問題もないはずだ。

 そんな結界を戻す作業が続く中、アレクリアルの隣にいたヴィシュダルがアレクリアルに耳打ちする。

「本当によろしかったので?ナイトは準魔神クラスの実力者。戦争が起きた際に彼の力は戦局を変える一手になります。」

「ミチナガからの頼みだ。次の戦争は大きな戦争になる。ナイトはこれまでも何度か戦争に関わって来たが、ナイトはそういう人間じゃない。だから戦争に関わらせるなとな。奴の頼みは断れん。ミチナガと敵対するくらいならナイトという戦力をここに投入した方が良い。…結界の修復が終わり次第準備を始めるぞ。もう各国では十分すぎるほど準備が完了している。」

「…わかりました。いよいよ始まるんですね。」

「ああ、世界戦争だ。かつてないほど大きな戦争が…そして、長年の因縁がようやく終わる。」
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