スマホ依存症な俺は異世界でもスマホを手放せないようです

寝転ぶ芝犬

文字の大きさ
514 / 572

第495話 神剣vs神人

しおりを挟む
 大地が隆起し、突如溶岩が噴火すると思えばその溶岩が次の瞬間には凍りつく。空から落ちる稲妻は数百に枝分かれし、地上を破砕する。そんな破砕された地上を全てを切り裂く竜巻が溶岩を巻き上げながら通り過ぎる。

 地獄のごとき環境。しかしそんな環境下でもその環境に適応したモンスターが闊歩する。そのモンスターはどれも一体で国を傾けるほどの戦力を持つ。しかしそのモンスターたちが突如走って逃げ出した。

「ふむ、なんだここは?」

「終末の地と呼ばれる島です。以前神魔と戦った影響でこんな環境になってしまってみんなに怒られました。あの日からこの地は人類立入禁止区域なんです。」

 終末の地。人類史上最恐のこの土地に上陸し、生きて生還したものは指の数よりも少ない。特に今イッシンのいる終末の地の中心部まで入ってきたものはイッシンとフェイ以外ではアレクレイが初めてだろう。

「ここなら本気で戦っても文句は言われないので連れてきました。」

「ふむ、なるほどな。ちょうど良い環境だが、雑音が酷いな。」

 確かに常に自然の災害が巻き起こるこの地では騒音が絶えない。会話するのもやっとの状態だ。するとアレクレイは周囲を見渡すと両手に魔力を込めて手を打ち鳴らした。

 その瞬間、周囲の荒れ果てた魔力がアレクレイの手から発せられた魔力により静まり返る。植物が生えることのできない荒れ果てた環境から草花が芽吹いた。

「多少は静かになったが、まだ騒がしいな。やれやれ…どんな暴れ方をすればここまで酷くなるのか。」

「おお、すごいですね。僕はこの手のことはできないので羨ましいです。」

 数種類の荒れた魔力を一瞬のうちに平常に戻すことなど余程の魔力コントロールと知識がない限り不可能だ。直感的に魔法を扱う神魔ではこれほどの芸当は難しいだろう。これだけでアレクレイの魔法に関する技術力というものがわかる。

「まあまた暴れれば意味もなくなるか。さて、それでは始めよう。その前に…お前の武器はそれだけか?」

「ええ、居合しかできないんです。ですので武器はこの刀一本です。」

「ふむ、まさかそれだけで魔神の域を超えることができるとは思わないが…まあそういうことにしておこう。ではそちらの土俵で戦ってやろう。」

 アレクレイは魔法で空間をこじ開けるとそこから一本の剣を取り出した。その剣から発せられる力はトウショウの武器よりも強く感じられる。これほどの一品はイッシンも見たことがない。

「うわぁ…煌びやかなすごい剣ですね。」

「ダンジョンからの出土品で、この世に二つと無い名剣だ。今まで本気で使ったことはないのだが……お前は耐えてくれるだろう?」

 そういった次の瞬間、アレクレイの姿はその場から消え去りイッシンへと数十の斬撃を繰り出していた。イッシンはその攻撃を全て跳ね除けてみせるが、その額からは冷や汗が流れ出た。

「ほう!今の攻撃を容易く躱しきるか。大抵これで終わることが多いのだが…随分楽しめそうだ。」

「そ、そうですか。こっちとしてはハラハラしちゃって…」

「ふっ…そんな冗談を言える余裕もあるか。」

 それだけ言葉を交わすと再びアレクレイの無数の斬撃がイッシンを襲う。並みの魔神ならば確かにこのアレクレイの高速の攻撃に耐えることもできずに倒れることだろう。しかしイッシンは史上最強の剣士と呼ばれる実力者だ。アレクレイの攻撃全てを捌ききる。

 それを見たアレクレイは嬉しくなったのか今度は魔法攻撃まで加え出した。これで手数は倍以上に跳ね上がった。しかしイッシンはその全てを捌ききる。

「素晴らしい!この攻撃をいとも容易く絶え切ったのはお前が初めてだ!」

「け、結構ギリギリなんですけどね…」

 その言葉の通りイッシンの表情には焦りがみえる。息も上がっているようだ。それを見たアレクレイは一旦攻撃をやめ、少し退くと考え込んだ。

「確かにお前の斬撃は目を見張るものがある。それだけの高速の連撃。並大抵ではないな。居合か…あまりやったことはないがやってみよう。」

 そういうと今の剣から刀へと武器を入れ替えた。入れ替えた刀もとてつもないオーラを放っている。それを見たイッシンはさらに冷や汗を流した。

「ふむ…こういう感じだったな?よし、それじゃあやってみようか。」

 アレクレイはイッシンとの距離を近づけると居合の応酬を始めた。時には体をよじらせ、時には刀をぶつけ合わせて斬撃から逃れる。ただ常人の目には映らないほどの速度だ。アレクレイはイッシンの居合と同等の攻撃をしている。

「ハハハハハ!!面白い!面白いぞ!!もっとだ…もっと速度をあげるぞ!」

「ちょ…それは勘弁……」

 アレクレイはさらに居合の速度を上げる。イッシンはそれに対しなんとか斬撃を捌ききっている。しかし表情から不安が拭えない。だがアレクレイの居合はさらに速度を増していく。刀の軌道も動かしている腕も何も見えない。

 どんどんどんどん速度を上げるアレクレイ。イッシンからでる冷や汗は顎から垂れるほどだ。どんどんイッシンの限界が近づいてきた。そしてその時はパキンという綺麗な高い音を出してきてしまった。

「何……」

「あ!……やっちゃった…サエちゃんに怒られる……」

 光を乱反射させながら地面に突き刺さる物体。それは刀の先端であった。そしてその刀の主人はイッシン…ではなくアレクレイであった。

「馬鹿な…この刀が折れることなど…」

「ご、ごめんなさい。これって直りますか?いつも妻から高い武器を切るんじゃないって怒られてて…いつもはちゃんとセーブするんですけど、少し早かったからそれができなくて…」

「切っただと?…そんな馬鹿なことがあるか。これは複数のダンジョンアイテムを複合して作られた世界最高の一振りだぞ。それを切るなど…」

「そ、そんなお高いのなんですか!?!?ど、どうしよ…こういうのは美術的価値、歴史的価値もあるからすごいお高いって…い、いや値段の問題じゃないか…ど、どうしよ……」

 イッシンはアレクレイが武器を取り出したその時から焦っていた。どの程度の力を入れればその武器を切らずに済むか、どう対処したら良いか、そんなことを考えていたせいで戦いに集中できなかった。

 そして不器用なイッシンはついに力を制御しきれる速度を超えてしまいアレクレイの持つ刀を切ってしまった。そしてこのことが一つの事実をアレクレイに突きつけた。

「手を…抜いていたのか?」

「ええ、もちろんですよ。そうじゃなきゃこんなにゆっくり刀を振るいませんもん。」

 そう言った瞬間、アレクレイの目の前からふわりと何かが落ちた。アレクレイは視線を真下に下ろす。そこには自身の毛髪があった。そして自身の額の髪に触れると確かに切られた痕があった。

「これがいつもの僕の剣速なんですけど…見えました?今まで会ってきた人で今の僕の剣速見えた人っていないんですよね。」

 アレクレイは背中が凍りつくのを感じた。しかしそれがなんで起きたのか理解できなかった。アレクレイが今までの人生の中で背中が凍りつくことなど一度もない。そのせいで体の方もどうしたら良いのか解らず、大量の汗を吹き出すことでごまかしている。

「まあその…居合対決しても良いんですけど、武器壊しちゃうと大変なので普通に戦いませんか?正直このままだと…普通に終わっちゃうんで。」
しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

異世界サバイバルゲーム 〜転移先はエアガンが最強魔道具でした〜

九尾の猫
ファンタジー
サバイバルゲームとアウトドアが趣味の主人公が、異世界でサバゲを楽しみます! って感じで始めたのですが、どうやら王道異世界ファンタジーになりそうです。 ある春の夜、季節外れの霧に包まれた和也は、自分の持ち家と一緒に異世界に転移した。 転移初日からゴブリンの群れが襲来する。 和也はどうやって生き残るのだろうか。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい

ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆ 気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。 チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。 第一章 テンプレの異世界転生 第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!? 第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ! 第四章 魔族襲来!?王国を守れ 第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!? 第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~ 第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~ 第八章 クリフ一家と領地改革!? 第九章 魔国へ〜魔族大決戦!? 第十章 自分探しと家族サービス

八百万の神から祝福をもらいました!この力で異世界を生きていきます!

トリガー
ファンタジー
神様のミスで死んでしまったリオ。 女神から代償に八百万の神の祝福をもらった。 転生した異世界で無双する。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

処理中です...