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第501話 勇者の旅
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死神ミサトアンリの死亡及びもう一人のリーダー格である観測者の死亡。そして十本指壊滅の情報はその光景を見ていたポチにより全ての使い魔たちが知ることになった。だがしかし、その情報は使い魔たちの中で秘匿された。
なぜならミサトアンリが死んだところで世界中にはびこる死者の群れはいなくならないからだ。蘇った死者たちが自然消滅するのは最長で1年。それまでの間戦いは続く。そんな情報は人々をただただ不安のどん底へ突き落とすだけだ。
だが使い魔たちが情報を秘匿しても察知してしまったものたちがいた。勇者王カナエツグナオとおもちゃの剣によって正気を取り戻した英雄たち、それにそこに付き従う多くの人々。その全てが察してしまったのだ。
「そうか…終わったんだね。」
空を見上げ呟くツグナオ。自身にかけられている魔法の大元であるミサトアンリの死により、現世に居られる時間が限られたことを察知した。そして自分が最後に何をすべきなのかも。
「皆聞け!皆も気がついたと思うだろうが、我々がこの世に居られる時間に限りができた。持って半年か1年だろう。」
ツグナオの言葉に多くの死者たちはうなづいて見せた。しかしこの場には多くの生者もいる。彼らにとっては寝耳に水のことだ。勇者王カナエツグナオがまたこの世から消えるなど信じたくもない悪夢そのものだ。
「そんな!まだ我々にはあなたが必要です!」
「我々をお導きください。どうか…!」
嘆く人々。そんな人々の前でツグナオは堂々とした姿を見せ、そして微笑んで見せた。そのツグナオの笑みを見た瞬間、人々から慟哭の声が消えた。
「私は幸せだ。皆のような友を持てて。これほど勇敢な人々の前に立てたことを誇りに思おう。皆一人一人が私にとって英雄だ。そして英雄たちよ。私は一度死した身だ。再びあの世に戻ることが通りだ。私は行かなくてはならない。」
涙を流す民衆。時折嗚咽の音が聞こえるが、誰もがツグナオの言葉を聴き漏らさぬために口を閉じている。そしてそんな人々の前でツグナオは悪戯な笑みを見せた。
「今の世を生きる英雄たちよ。私は行かなくてはならない。そして死した英雄たちよ。私と共に着いて来てはくれぬか?世界の果てまで轟く我らが英雄たちの名声を天の果てまで轟かせよう!そして…次は天の果てからこの地まで我らが名を轟かせよう!今を生きるものたちよ!我が名が再びこの地まで届くその時までにこの世界を頼んだぞ!我らが英雄たちよ!私に続け!我らの英雄譚を再び紡ごう!!」
剣を高々と振りかざすツグナオ。その姿を見た人々からは大歓声が巻き起こる。一度は終えて奇跡的にもう一度紡がれたツグナオの物語。そしてそれがもう一度終わり、そして始まろうとしている。
これを歓喜せぬものがおるだろうか。これを嘆くものがおるだろうか。それは否。断じて居ない。ツグナオの新しい門出の時に喜ばぬものなどいるはずがない。ツグナオは隣に立つ黒騎士の方を見る。
「クロちゃん…また着いて来てくれるかい?」
「当たり前だろ?私はお前の騎士で…お前の妻だ。あの世の果てだろうが着いて行くよ。」
ツグナオはクロを抱き寄せて熱いキスを交わす。その光景をみた人々の中には興奮のあまり失神するものまで出たほどだ。そしてツグナオはその手に持つおもちゃの剣を顔に近づける。
「僕はもう行くよ。だけど…最後に力を貸してくれるかい?」
ツグナオのつぶやきにおもちゃの剣は発光することで答えた。そしてその光は天高く続く道を作り上げた。
「今の世を生きるものよ!後は頼んだ!再びあの世で皆と会えるその日を楽しみにしているぞ!そしてその時は皆の英雄譚を聞かせてくれ!そして死した英雄たちよ!我に続け!我らが物語を再び始めよう!!」
「「「「おおおおお!!!」」」」
光の道を駆け上がるツグナオ。その背後には数千万もの英雄たちの軍勢が続く。その光景はあまりにも幻想的であった。そしてそんなツグナオの姿を遠くから見たものたちの前にも光の道が現れ、幾本もの光の道を生み出し、ツグナオに続けと天へと駆け上がった。
そしてそれは遠く離れた彼らドワーフたちの元へも現れていた。突如現れた光の道を見た伝説の鍛治師トウショウも全てを理解した。
「おうおう。ようやくお迎えが来たか。」
「そ、そんな師匠!まだ私は教えて欲しいことが…」
「大丈夫だグスタフ。お前は立派な鍛治屋だよ。後は死ぬまで精進しな。鈍らなんて作るんじゃねぇぞ。それから…あの刀は必要とする奴にくれてやれ。最後の心残りがなくなってすかぁっとしたぜ。それじゃあ行くか。」
「へい師匠!どこまでも着いて行きますぜ。」
トウショウの後ろをついて行くドワーフたち。その背中は仕事を終え、なんとも満足そうであった。その後ろをついて行きたくなるグスタフであったが、それは許されない。まだグスタフには早すぎる。それがわかっているからこそ、今完成させたトウショウの最高傑作の一振りを大事に抱えている。
光の道を辿りあの世へと戻って行く人々。しかしそんな人々を阻むものがある。それはかすかに見える巨大な魔法陣だ。この世界を覆う魔法陣によってツグナオもトウショウも行く手を阻まれている。
さらによく見ればすでに死んだものたちの魂も魔法陣の内側で漂っているではないか。そしてこの強固な魔法陣は簡単には破壊できそうにない。しかしツグナオは再び笑みを見せる。
「我に続け!我が道を阻むものは何人たりとも許さぬ!行くぞぉぉ!!!」
「「「「うおおぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」」
数千万の人々の突撃。しかしそれでもビクともしない。だがそこに漂っている魂たちも加勢した。その数は億を超える。しかし数億にも届きそうな人々の魂の突撃でも魔法陣はビクともしない。
だがツグナオは決して諦めない。魔法陣が破壊されるか、ツグナオが諦めるか。だがツグナオの諦めの悪さは筋金入りだ。そんなツグナオの諦めない姿を感じた魂たちはさらなる死力を振り絞る。
魂と魔法陣のせめぎ合い。そんなせめぎ合いの中で先に根をあげたのは魔法陣の方だったらしい。小さな亀裂を生むとそこからいくつもの亀裂を生み、やがてポロポロと剥がれ落ちて行った。
剥がれ落ちる魔法陣はまるで光の雨であった。そして光の雨が降る中、ツグナオたちは光の道を駆け上がり空の果てに消えてしまった。その光景をアレクリアルは地上から涙を流し見つめていた。
するとそんな光の雨が降り注ぐ中からひときわ輝くものが落ちて来た。人々はそれに目を奪われる。そしてそれは大地へと深々と突き刺さった。それを見たアレクリアルは一歩、また一歩と大地に突き刺さった何かに近づいた。
それはおもちゃの剣が再び金属の輝きを取り戻した姿であった。アレクリアルにとっては馴染み深い神剣。だがその神剣の重みはこれまでとは比べ物にならなかった。
「勇者様…私にこの剣を握る資格があるのでしょうか……」
緊張で声が震えるアレクリアル。その姿は勇者神として英雄の国を治める王とは思えぬ弱々しい姿であった。自分にあの剣を握る資格があるのかどうかと不安でしょうがないのだ。だが崩れ落ちそうなその体を13英雄が一人、黒帝ザクラムが支えた。
「あんたが握るんだ。それは俺たちにはできない。アレクリアル、あんたにしか握ることはできない。頼んだぜ王様。あんたがくじけそうな時はいくらでも支えてやるよ。」
「ザクラム…ああ、そうか。そうだな。私にも…勇者王様と同じように頼りになる仲間がいるのだから。」
アレクリアルは神剣に近づいた。その輝き、その力強さは今までとは比べものにならない。神剣を前に日和そうになる。しかし隣で支えてくれるザクラムのおかげでまた一歩踏み出せた。
そして神剣に触れると勢いよく引き抜いた。その姿を見た民衆たちは一斉に跪く。それはこの世界の新たなる王の誕生であり、新たな勇者の誕生であった。
なぜならミサトアンリが死んだところで世界中にはびこる死者の群れはいなくならないからだ。蘇った死者たちが自然消滅するのは最長で1年。それまでの間戦いは続く。そんな情報は人々をただただ不安のどん底へ突き落とすだけだ。
だが使い魔たちが情報を秘匿しても察知してしまったものたちがいた。勇者王カナエツグナオとおもちゃの剣によって正気を取り戻した英雄たち、それにそこに付き従う多くの人々。その全てが察してしまったのだ。
「そうか…終わったんだね。」
空を見上げ呟くツグナオ。自身にかけられている魔法の大元であるミサトアンリの死により、現世に居られる時間が限られたことを察知した。そして自分が最後に何をすべきなのかも。
「皆聞け!皆も気がついたと思うだろうが、我々がこの世に居られる時間に限りができた。持って半年か1年だろう。」
ツグナオの言葉に多くの死者たちはうなづいて見せた。しかしこの場には多くの生者もいる。彼らにとっては寝耳に水のことだ。勇者王カナエツグナオがまたこの世から消えるなど信じたくもない悪夢そのものだ。
「そんな!まだ我々にはあなたが必要です!」
「我々をお導きください。どうか…!」
嘆く人々。そんな人々の前でツグナオは堂々とした姿を見せ、そして微笑んで見せた。そのツグナオの笑みを見た瞬間、人々から慟哭の声が消えた。
「私は幸せだ。皆のような友を持てて。これほど勇敢な人々の前に立てたことを誇りに思おう。皆一人一人が私にとって英雄だ。そして英雄たちよ。私は一度死した身だ。再びあの世に戻ることが通りだ。私は行かなくてはならない。」
涙を流す民衆。時折嗚咽の音が聞こえるが、誰もがツグナオの言葉を聴き漏らさぬために口を閉じている。そしてそんな人々の前でツグナオは悪戯な笑みを見せた。
「今の世を生きる英雄たちよ。私は行かなくてはならない。そして死した英雄たちよ。私と共に着いて来てはくれぬか?世界の果てまで轟く我らが英雄たちの名声を天の果てまで轟かせよう!そして…次は天の果てからこの地まで我らが名を轟かせよう!今を生きるものたちよ!我が名が再びこの地まで届くその時までにこの世界を頼んだぞ!我らが英雄たちよ!私に続け!我らの英雄譚を再び紡ごう!!」
剣を高々と振りかざすツグナオ。その姿を見た人々からは大歓声が巻き起こる。一度は終えて奇跡的にもう一度紡がれたツグナオの物語。そしてそれがもう一度終わり、そして始まろうとしている。
これを歓喜せぬものがおるだろうか。これを嘆くものがおるだろうか。それは否。断じて居ない。ツグナオの新しい門出の時に喜ばぬものなどいるはずがない。ツグナオは隣に立つ黒騎士の方を見る。
「クロちゃん…また着いて来てくれるかい?」
「当たり前だろ?私はお前の騎士で…お前の妻だ。あの世の果てだろうが着いて行くよ。」
ツグナオはクロを抱き寄せて熱いキスを交わす。その光景をみた人々の中には興奮のあまり失神するものまで出たほどだ。そしてツグナオはその手に持つおもちゃの剣を顔に近づける。
「僕はもう行くよ。だけど…最後に力を貸してくれるかい?」
ツグナオのつぶやきにおもちゃの剣は発光することで答えた。そしてその光は天高く続く道を作り上げた。
「今の世を生きるものよ!後は頼んだ!再びあの世で皆と会えるその日を楽しみにしているぞ!そしてその時は皆の英雄譚を聞かせてくれ!そして死した英雄たちよ!我に続け!我らが物語を再び始めよう!!」
「「「「おおおおお!!!」」」」
光の道を駆け上がるツグナオ。その背後には数千万もの英雄たちの軍勢が続く。その光景はあまりにも幻想的であった。そしてそんなツグナオの姿を遠くから見たものたちの前にも光の道が現れ、幾本もの光の道を生み出し、ツグナオに続けと天へと駆け上がった。
そしてそれは遠く離れた彼らドワーフたちの元へも現れていた。突如現れた光の道を見た伝説の鍛治師トウショウも全てを理解した。
「おうおう。ようやくお迎えが来たか。」
「そ、そんな師匠!まだ私は教えて欲しいことが…」
「大丈夫だグスタフ。お前は立派な鍛治屋だよ。後は死ぬまで精進しな。鈍らなんて作るんじゃねぇぞ。それから…あの刀は必要とする奴にくれてやれ。最後の心残りがなくなってすかぁっとしたぜ。それじゃあ行くか。」
「へい師匠!どこまでも着いて行きますぜ。」
トウショウの後ろをついて行くドワーフたち。その背中は仕事を終え、なんとも満足そうであった。その後ろをついて行きたくなるグスタフであったが、それは許されない。まだグスタフには早すぎる。それがわかっているからこそ、今完成させたトウショウの最高傑作の一振りを大事に抱えている。
光の道を辿りあの世へと戻って行く人々。しかしそんな人々を阻むものがある。それはかすかに見える巨大な魔法陣だ。この世界を覆う魔法陣によってツグナオもトウショウも行く手を阻まれている。
さらによく見ればすでに死んだものたちの魂も魔法陣の内側で漂っているではないか。そしてこの強固な魔法陣は簡単には破壊できそうにない。しかしツグナオは再び笑みを見せる。
「我に続け!我が道を阻むものは何人たりとも許さぬ!行くぞぉぉ!!!」
「「「「うおおぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」」
数千万の人々の突撃。しかしそれでもビクともしない。だがそこに漂っている魂たちも加勢した。その数は億を超える。しかし数億にも届きそうな人々の魂の突撃でも魔法陣はビクともしない。
だがツグナオは決して諦めない。魔法陣が破壊されるか、ツグナオが諦めるか。だがツグナオの諦めの悪さは筋金入りだ。そんなツグナオの諦めない姿を感じた魂たちはさらなる死力を振り絞る。
魂と魔法陣のせめぎ合い。そんなせめぎ合いの中で先に根をあげたのは魔法陣の方だったらしい。小さな亀裂を生むとそこからいくつもの亀裂を生み、やがてポロポロと剥がれ落ちて行った。
剥がれ落ちる魔法陣はまるで光の雨であった。そして光の雨が降る中、ツグナオたちは光の道を駆け上がり空の果てに消えてしまった。その光景をアレクリアルは地上から涙を流し見つめていた。
するとそんな光の雨が降り注ぐ中からひときわ輝くものが落ちて来た。人々はそれに目を奪われる。そしてそれは大地へと深々と突き刺さった。それを見たアレクリアルは一歩、また一歩と大地に突き刺さった何かに近づいた。
それはおもちゃの剣が再び金属の輝きを取り戻した姿であった。アレクリアルにとっては馴染み深い神剣。だがその神剣の重みはこれまでとは比べ物にならなかった。
「勇者様…私にこの剣を握る資格があるのでしょうか……」
緊張で声が震えるアレクリアル。その姿は勇者神として英雄の国を治める王とは思えぬ弱々しい姿であった。自分にあの剣を握る資格があるのかどうかと不安でしょうがないのだ。だが崩れ落ちそうなその体を13英雄が一人、黒帝ザクラムが支えた。
「あんたが握るんだ。それは俺たちにはできない。アレクリアル、あんたにしか握ることはできない。頼んだぜ王様。あんたがくじけそうな時はいくらでも支えてやるよ。」
「ザクラム…ああ、そうか。そうだな。私にも…勇者王様と同じように頼りになる仲間がいるのだから。」
アレクリアルは神剣に近づいた。その輝き、その力強さは今までとは比べものにならない。神剣を前に日和そうになる。しかし隣で支えてくれるザクラムのおかげでまた一歩踏み出せた。
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