スマホ依存症な俺は異世界でもスマホを手放せないようです

寝転ぶ芝犬

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第536話 神を簒奪したものvs神魔&神剣

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「あ~あ」「やる気満々だ」「なんと愚かな」「神たる我に勝てると」「なんという思い上がり」「まあいい」「お前らを殺して私は」「完璧な存在へと生まれ変わる」

 簒奪者の体内魔力が鳴動するのを感じる。どうやら臨戦態勢に入ろうとしているようだ。ここからようやく本当の戦いが始まる。だがミチナガはイッシンとフェイミエラルの背後へと歩き進む。

「イッシン、フェイ。俺は今のままじゃあいつを倒す戦力になれない。しばらくの間時間を稼いでくれ。」

「それは構わないけど…倒しちゃってもいいんでしょ?」

「頼もしい言葉だが…多分殺しきれない。倒すよりも時間を稼ぐ方向で行ってくれた方が良いと思う。ただまあ…言っても聞かなそうなのがいるから好きにやってくれ。ただこっちを守るのも頼む。」

「わかった。まあ守るのは…フェイの方が得意かな?」

 ミチナガはイッシンとフェイミエラルに任せて使い魔たちの前に立つ。そして使い魔たちを見回すとその場で膝をついた。両手を合わせたその姿はまるで神への祈りだ。

「さて…何分、何時間かかるかわからないけど……我らの神に祈りを捧げよう。」

 ミチナガは祈りを始めた。ただミチナガだけではない。エヴォルヴの機体の中で使い魔たちも同じような格好を取り、祈りを始めている。一体何へと祈るのか、その祈りは届くのだろうか。




「フェイ。最初任せてくれないか?どの程度の攻撃が通るか確認するからさ。相手がどんな攻撃してくるかわからないから守りに徹してほしい。」

「……わかったのだ。その代わり…思いっきりやっちゃって。」

 イッシンとフェイミエラルの共闘。はっきり言ってこの二人が組めばそれに立ち向かえるものは地上に存在しない。たとえ全世界を敵に回したとしても敗北することは決してないだろう。そんな最強のタッグが今動き出した。

「さてと…それじゃあ試しにこのくらいからいってみようか。」

 そう言って刀の持ち手に触れるイッシン。そしてこれから刀を抜くのかと思いきや、もうすでに終わっている。光よりも早い斬撃が簒奪者を襲う。数百という斬撃を浴びせたイッシンであったが、その表情は芳しくない。

「う~~ん…一応この居合でも斬れなかったことないんだけどな。…かすり傷一つなしか。」

 万物を切り裂くと言われるイッシンの斬撃がまるで通用していない。本人としても驚きの結果となったようだ。しかし簒奪者にとってはなんてことのないごく当たり前の結果である。

「そもそも」「大きな勘違いをしている」「これだから愚かな人間は」「我は神だ」「神とは地上の理とは一線を画す」「神とは全ての力の上位に位置する神力をもつ」「我に傷を入れるためには一定の神力が必要だ」

「神力…そういえばそんなこと神人が言ってたな。」

「あの愚か者か」「我らの同胞になったというのに」「自らその地位を捨てた」「所詮は愚かな人間よ」「我々とは格が違う」「我に傷を入れたければ」「神力を使う他ない」「だが一人の人間が持ちうる神力は限りがある」「神たる我は無尽蔵の神力を持つ」「この時点で勝敗を察しただろう」「今ならば我が同胞に迎え入れてやっても良いぞ」

「必要ないです。僕には家族がいますから。それに…今日の夕飯も準備もあるのでとっとと済ませます。」

 イッシンは腰を落として構えを取る。普段一切の構えを取らないイッシンにしては異例の事態だ。そして構えを取った瞬間、イッシンの闘気が吹き出した。

「普段は…本気で斬ると空間切り裂いたりして多くの人に迷惑をかけてしまうから使わない。だけど…今は良いよね?」

 やれるものならやってみろと言わんばかりに構える簒奪者。しかしイッシンが一歩前に出た瞬間、何かを感じ取ったのか瞬時に防御魔法を展開した。だがイッシンの斬撃は防御を切り裂き、簒奪者の醜悪な肉体に傷を入れた。

「うわ…これでも切れ目入れられるくらいか……」

 本気で切ったというのに切れ込みを入れることしかできないことに驚くイッシン。しかし簒奪者としてはこれまでの人生で初めて傷を入れられたことに驚いている。だがそれだけではない。イッシンが入れた傷口から内部に押し込められていた魂たちが解放されていく。

「まずい!」「すぐに治癒を」「安心しろもう塞ぎ終わった」「失われた魂はほんの数十だ」「まだ我らには膨大な魂がある」

「それでも先は見えたね。」

 再びイッシンの斬撃が始まる。簒奪者たちもすぐに防御魔法を展開させるが、イッシンの斬撃スピードの早さについていけていない。再びいくつもの傷跡を入れられるとそこから魂が解放されていく。

 その魂たちは醜悪な簒奪者たちの体から抜け出たものとは思えぬほど美しかった。まるで天に昇る星々のようであった。そしてイッシンの斬撃は止まることを知らない。

 そして流石に危機感を感じたのか簒奪者は形態を変える。複数の触手を生み出し、その触手を伸ばしてイッシンとフェイに襲いかかる。だがイッシンはフェイを守るように立ち回り、全ての触手を撃ち落とすように斬撃を放つ。

 だがこの攻防は簒奪者の方が上手であった。イッシンでも切り落とせない触手を無理やり特攻させる。そして触手のスピードに対応できなかったのかイッシンに触手が直撃した。

 吹き飛ばされるイッシン。その光景に満足そうな笑みを見せる簒奪者。だがその笑みはすぐに歪むことになった。吹き飛ばされたはずのイッシンにはなんの傷もないのだ。

「いてて…無理やり特攻させられると厳しいな。切り落とせないのって辛いな。」

「馬鹿な」「無傷だと?」「神たる我の一撃を受けたというのに」

「生半可な攻撃じゃ効かないよ。」

「ならば」「効くまで殴り続けよう」「次は魔法も込みだ」

 大量の魔法と触手をイッシンへと繰り出す簒奪者。イッシンはその全てを撃ち落そうとするが、魔法の方もかき消すのにかなりの労力を要する。触手を切ることもできない。だが次の瞬間、魔法も触手も全て地面へと叩き落とされた。

「だいたいわかった。もう加わっても良いか?」

「助かった。さすがにこの数は捌けなかったから。」

 フェイミエラルの放つ重力魔法。その威力は簒奪者にも十分に影響を与えるものであった。さらにすぐに抵抗魔法を行使した簒奪者に対し、その魔法をかき消す魔法を放つ。

「やっていることはただの魔法なのだ。神といえどやっていることは人間と変わりない。」

「やっぱり魔法便利だなぁ……このままだと足引っ張ることになるかも。それは勘弁だよなぁ…」

 それだけ言うとイッシンはフェイミエラルの行使している重力魔法の中へと入っていく。簒奪者たちの触手の動きを封じるほどの重力の中をイッシンは何事もないように歩いていく。

「一度の斬撃じゃ切れ目を入れるだけ。でもそこに斬撃を重ねたらどうなるかな?10でも100でも…切れるまで切り続ける。」

 宣言通りイッシンは斬撃を繰り出す。同じ位置に正確に斬撃を重ねていく。そして数万の斬撃を重ねたことで簒奪者の触手は切り落とされた。

「おお、切れた切れた。これで勝ち筋が見えてきたね。」

 イッシンは切り落とした触手をさらに切り続け、内部に押し込められている魂を全て解放させた。触手一本で1万近い魂が解放される。これに焦りを見せた簒奪者はすべての触手を元に戻した。

「ありゃ、触手引っ込めちゃったんだ。まあでも…戦い方はわかったね。」

「イッシン、あいつの攻撃は全て封じるから攻撃任せたのだ。」

「そういうことだね。これなら終わりが見えてきたよ。」

 イッシンとフェイミエラルは不敵な笑みを見せる。今のところイッシンとフェイミエラルは無傷だ。対する簒奪者は数万の魂が解放されている。しかしこれで終わる簒奪者たちではない。

「勝ち誇るな」「なんと愚かなことか」「魂まで壊さぬように加減してやっていたというのに」「では神の本気を見せてやろう」
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