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8話
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火照った顔を見られたくなかったアリスベータはぐりぐりと顔をウィスタリアに押し付けた。
「アリス。僕はね君の行動力も好奇心旺盛な所も強い心もとてもとても好きなんだけどね。そんな君の良い所がいつか君を破滅へと導いてしまうのではと気が気ではないんだよ。」
ガーデンライトだけが光っている少し仄暗い場所で旦那様の澄んだ声だけが響く。
少し落ち込んでいるような心配そうな声にアリスベータはゆっくりと顔を上げた。
「ここは帝国ではないから、いつ何処で君の事を狙っている輩がいるのか僕も全ては把握できないからね。」
月明かりを背負ったウィスタリアはまるで月の光を吸収したかのように綺麗に光る黄金の瞳でアリスベータを見つめていた。
ここでアリスベータはウィスタリアを本当に心底心配させてしまった事に気づいた。
自分の不甲斐なさにふぅっと少しため息をついた。
「ごめんなさい。ウィス。分かってるのよ。本当に。こんなに目立つつもりも口出しするつもりも本当になかったの。でも、あまりにも国のことを考えない権力者にどうしても腹が立ってしまったの。軽い内政干渉のような事も口走ってしまったし、全て私の落ち度だわ。許してとは言わないわ。」
目を伏せたアリスベータは彼の胸元に頬つりをした。スリスリと猫のように甘えるアリスベータをウィスタリアは優しく撫でた。
「分かってるよ…。アリスの落ち度はアリス自身にまだ皇后の自覚があまりない所だね。」
ウィスタリアに苦笑されアリスベータは少しムスッとした。
「仕方ないじゃない!貴方と顔合わせするまで結婚したくなんてなかったんだから!」
「ふふ。でも君は即決だったじゃないか。何がそんなに気に入ったのかな。」
ウィスタリアは顔に拳を当て、くすくすと軽く笑った。その姿を見てアリスベータはやっといつもの旦那様に戻ってくれたと少しほっとした。そんなアリスベータの肩を掴んだウィスタリアはアリスベータから自分の身を離した。
「さて、我妻よ。まだ我は夜会にて殆どの者に挨拶をしておらぬ。」
豪奢な椅子から急に立ち上がったウィスタリアは今までの口調とは全く違う傲慢な王の口調に変わった。スっとウィスタリアの細身だが僅かに鍛えた後が分かる腕をアリスベータに差し出した。
アリスベータはくすりと頬を緩ませた。
「今夜の夜会にてエスコートさせてくれぬか。」
アリスベータが一目見て気に入ったその笑顔は優しく、慈愛に満ちていた。
「えぇ。よろこんで。旦那様。」
ふわりと立ち上がったアリスベータはウィスタリアの横に当然のように足を並べた。
煌びやかな夜会。美しい面。
財力を表す美しい着衣も。
アリスベータにはどこか汚く見える。
そのお金で…とは思わずにはいられないが、これもまた人間の有り様なのだろう。
邪気が漂うこの夜会でも。
旦那様と共に歩めば楽しい遊び場である。
今日も笑顔で茶番を見届けましょう。
おほほほほほ。
______________
最終回のようですがあと少し続きます。
「アリス。僕はね君の行動力も好奇心旺盛な所も強い心もとてもとても好きなんだけどね。そんな君の良い所がいつか君を破滅へと導いてしまうのではと気が気ではないんだよ。」
ガーデンライトだけが光っている少し仄暗い場所で旦那様の澄んだ声だけが響く。
少し落ち込んでいるような心配そうな声にアリスベータはゆっくりと顔を上げた。
「ここは帝国ではないから、いつ何処で君の事を狙っている輩がいるのか僕も全ては把握できないからね。」
月明かりを背負ったウィスタリアはまるで月の光を吸収したかのように綺麗に光る黄金の瞳でアリスベータを見つめていた。
ここでアリスベータはウィスタリアを本当に心底心配させてしまった事に気づいた。
自分の不甲斐なさにふぅっと少しため息をついた。
「ごめんなさい。ウィス。分かってるのよ。本当に。こんなに目立つつもりも口出しするつもりも本当になかったの。でも、あまりにも国のことを考えない権力者にどうしても腹が立ってしまったの。軽い内政干渉のような事も口走ってしまったし、全て私の落ち度だわ。許してとは言わないわ。」
目を伏せたアリスベータは彼の胸元に頬つりをした。スリスリと猫のように甘えるアリスベータをウィスタリアは優しく撫でた。
「分かってるよ…。アリスの落ち度はアリス自身にまだ皇后の自覚があまりない所だね。」
ウィスタリアに苦笑されアリスベータは少しムスッとした。
「仕方ないじゃない!貴方と顔合わせするまで結婚したくなんてなかったんだから!」
「ふふ。でも君は即決だったじゃないか。何がそんなに気に入ったのかな。」
ウィスタリアは顔に拳を当て、くすくすと軽く笑った。その姿を見てアリスベータはやっといつもの旦那様に戻ってくれたと少しほっとした。そんなアリスベータの肩を掴んだウィスタリアはアリスベータから自分の身を離した。
「さて、我妻よ。まだ我は夜会にて殆どの者に挨拶をしておらぬ。」
豪奢な椅子から急に立ち上がったウィスタリアは今までの口調とは全く違う傲慢な王の口調に変わった。スっとウィスタリアの細身だが僅かに鍛えた後が分かる腕をアリスベータに差し出した。
アリスベータはくすりと頬を緩ませた。
「今夜の夜会にてエスコートさせてくれぬか。」
アリスベータが一目見て気に入ったその笑顔は優しく、慈愛に満ちていた。
「えぇ。よろこんで。旦那様。」
ふわりと立ち上がったアリスベータはウィスタリアの横に当然のように足を並べた。
煌びやかな夜会。美しい面。
財力を表す美しい着衣も。
アリスベータにはどこか汚く見える。
そのお金で…とは思わずにはいられないが、これもまた人間の有り様なのだろう。
邪気が漂うこの夜会でも。
旦那様と共に歩めば楽しい遊び場である。
今日も笑顔で茶番を見届けましょう。
おほほほほほ。
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最終回のようですがあと少し続きます。
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テンポも良いしストーリーも面白いです!
一気読みしちゃいました(^^♪
更新待ってます♪
続きが気になります!
更新まってまーす‼︎
わわ!ありがとうございます( ; ; )
そう言ってくださるだけで、書いたかいがあります( ; ; )
更新遅すぎますねほんとに申し訳ございませんm(_ _)m
夫の方が招待状を持っているだろうに、顔も知らない門番が招待状を持っていなあアリスを入れるのだろうか?
普通のお貴族様だと、招待状を持っていなくては入れませんが、馬車ですかね。
馬車には王族のシンボルがマークされておりますし、裏設定ではありますが、護衛達の顔合わせ等もあったみたいです。
まぁそのおかげで入れた……みたいな感じですかね!すみませんガバガバ設定で……( ;ᯅ; )