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81話 それぞれの帰り道
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午後六時を回り、街の明かりが一つ、また一つと灯り始める頃。
蒼真と梨花は、取引先との商談を終えてビルを出た。
「はぁ……緊張しました……!」
梨花は胸に手を当てて、小さく息を吐いた。
「初めての外商談にしては、よくやったと思う」
蒼真は落ち着いた声で言いながら、歩道を並んで歩く。
「本当ですか? 途中で少し噛んじゃって……」
「問題ない。誠実に伝えようとする姿勢があった。それが一番大事だ」
その言葉に、梨花の顔がぱっと明るくなる。
「ありがとうございます! 社長にそう言ってもらえるなんて……」
ビルの前で立ち止まると、蒼真は腕時計をちらりと見た。
「ここで解散にしよう。僕はこのまま直帰する」
「直帰……ですか?」
梨花は一瞬、名残惜しそうに目を瞬かせた。
(もう少しだけ……一緒にいたい)
勇気を振り絞るように唇を開く。
「社長……よければ、このあと一緒に食事でもどうですか?今日のこと、もう少し教えてもらいたくて……」
その言葉に、蒼真の足が止まった。
一拍の沈黙。
「……気持ちは嬉しいが、遠慮しておく」
声は穏やかだったが、どこか線を引くような響きがあった。
梨花は一瞬きょとんとした後、照れ隠しのように笑った。
「そ、そうですよね。すみません、つい……」
「いや。気遣いに感謝する」
蒼真は短く答えると、軽く会釈して歩き出した。
梨花はその背中を見送りながら、そっと微笑む。
(……もう、冷たいな。照れてるのね)
夜風が髪を揺らし、街の灯りが滲んで見えた。
---
一方その頃。
蒼真は静かなレストランのテラス席にいた。
対面には春菜が座り、温かい紅茶の香りが漂っている。
「遅くなってすまない。今日、相川さんと外の商談があって」
春菜は微笑みながらカップを持ち上げた。
「お仕事順調そうですね。その梨花さん、どうでした?」
「……ああ。意欲があって、仕事も覚えが早い。驚いたよ。相川さん、採用して正解だったかもしれない。」
「へえ……頑張ってるんですね」
春菜は胸にちくりとささったが、平気なふりをして頷いた。
(……あの子の名前を、あなたの口から聞くと少しざわつく)
思わず小さく息を吐き、少しだけ視線を逸らす。
蒼真は頷いたあと、ふと真剣な目を向けた。
「でも――誤解されないようにしなければと思ってる」
春菜が目を瞬かせる。
「誤解?」
「……俺が誰を想っているのか、それだけははっきりさせておきたい」
春菜の頬に、淡い赤みが差す。
蒼真は静かに微笑み、カップを傾けた。
「俺が好きなのは――春菜さんだけだ」
「……そんな真顔で言われたら、照れます」
高瀬は少しだけ笑った。
「本気だから」
春菜はその言葉に胸を撫で下ろしつつ、心の中で小さく頷いた。
(……信じて大丈夫……)
蒼真と梨花は、取引先との商談を終えてビルを出た。
「はぁ……緊張しました……!」
梨花は胸に手を当てて、小さく息を吐いた。
「初めての外商談にしては、よくやったと思う」
蒼真は落ち着いた声で言いながら、歩道を並んで歩く。
「本当ですか? 途中で少し噛んじゃって……」
「問題ない。誠実に伝えようとする姿勢があった。それが一番大事だ」
その言葉に、梨花の顔がぱっと明るくなる。
「ありがとうございます! 社長にそう言ってもらえるなんて……」
ビルの前で立ち止まると、蒼真は腕時計をちらりと見た。
「ここで解散にしよう。僕はこのまま直帰する」
「直帰……ですか?」
梨花は一瞬、名残惜しそうに目を瞬かせた。
(もう少しだけ……一緒にいたい)
勇気を振り絞るように唇を開く。
「社長……よければ、このあと一緒に食事でもどうですか?今日のこと、もう少し教えてもらいたくて……」
その言葉に、蒼真の足が止まった。
一拍の沈黙。
「……気持ちは嬉しいが、遠慮しておく」
声は穏やかだったが、どこか線を引くような響きがあった。
梨花は一瞬きょとんとした後、照れ隠しのように笑った。
「そ、そうですよね。すみません、つい……」
「いや。気遣いに感謝する」
蒼真は短く答えると、軽く会釈して歩き出した。
梨花はその背中を見送りながら、そっと微笑む。
(……もう、冷たいな。照れてるのね)
夜風が髪を揺らし、街の灯りが滲んで見えた。
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一方その頃。
蒼真は静かなレストランのテラス席にいた。
対面には春菜が座り、温かい紅茶の香りが漂っている。
「遅くなってすまない。今日、相川さんと外の商談があって」
春菜は微笑みながらカップを持ち上げた。
「お仕事順調そうですね。その梨花さん、どうでした?」
「……ああ。意欲があって、仕事も覚えが早い。驚いたよ。相川さん、採用して正解だったかもしれない。」
「へえ……頑張ってるんですね」
春菜は胸にちくりとささったが、平気なふりをして頷いた。
(……あの子の名前を、あなたの口から聞くと少しざわつく)
思わず小さく息を吐き、少しだけ視線を逸らす。
蒼真は頷いたあと、ふと真剣な目を向けた。
「でも――誤解されないようにしなければと思ってる」
春菜が目を瞬かせる。
「誤解?」
「……俺が誰を想っているのか、それだけははっきりさせておきたい」
春菜の頬に、淡い赤みが差す。
蒼真は静かに微笑み、カップを傾けた。
「俺が好きなのは――春菜さんだけだ」
「……そんな真顔で言われたら、照れます」
高瀬は少しだけ笑った。
「本気だから」
春菜はその言葉に胸を撫で下ろしつつ、心の中で小さく頷いた。
(……信じて大丈夫……)
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