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12話 再会の午後
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優斗は決断を固めた。そんな時、雨上がりの夜、偶然の出会いが全てを動かすことになる……
ビルの灯りが濡れたアスファルトに揺れている。道路には雨の名残りが水溜まりとなって残り、街灯の光を反射させていた。
春菜は時計を見上げ、小さく息を吐いた。
残業で遅くなり、最寄り駅までの道を小走りで急ぐ。終電まで、あと十数分。
疲労感のすき間から、ふと蒼真の顔が浮かんだ。
──今日も、会議中に視線が合った。
わたしの意見に頷いてくれた、あの一瞬だけで、胸の奥がぽっと熱を帯びた。
「……こんなふうに思うなんて、変だよね」
胸の奥が、少しだけ痛む。
(優斗のことを思ってるのに、どうして他の人のことが……)
そんな自分への戸惑いを振り払うように、春菜は歩調を早めた。
そのとき、駅前の小さな広場のベンチが目に入った。
「……優斗?」
小さくつぶやいた声は、風にかき消された。でも、目ははっきりと彼を捉えていた。その隣にいる人物に、思わず目を奪われた。
男性は優斗の肩にそっと身を傾け、何かを耳打ちしているようだった。優斗は少し照れたように微笑んでいる。
ふたりの姿は、まるで"親密"という言葉そのものだった。
心臓が一瞬止まった。
(え……なに、これ)
足が動かない。呼吸が浅くなる。頭の中が真っ白になって、でもその光景だけがくっきりと焼き付いている。
蒼真への想いが一瞬で消し飛んだ。今、胸を支配するのは、理解できない光景への動揺だけだった。
優斗の隣に座っているのは、長身で整った顔立ちの男性だった。駅の光にきらめくような横顔。シンプルな服装なのに、どこか目を引く存在感がある。
(……誰? なんで、あんなに……)
その瞬間、視線が合った。
「……!」
男性の目が、ほんの一瞬見開かれた。まるで予期せぬ人に見つかってしまったような、わずかな動揺を見せる。
けれど次の瞬間、表情を整えて小さく会釈した。
「……春菜さん?」
その声。懐かしい音色に、春菜の胸が一気に騒ぎ出す。
「……えっ、晃、くん?」
記憶の奥に沈んでいた彼の名が、胸の奥でそっと響いた。大学の卒業式。最後に交わした、あの短い会話。あの日、私の話を静かに聞いてくれていた彼──。
でも、今の状況で彼に再会するなんて。
「久しぶりだね」
晃がゆっくり歩み寄る。その足取りには、どこかためらいのような重さがあった。
春菜は呆然としたまま、口元を手で覆った。
「……え、全然気づかなかった。全然、変わって……ない、ようで、すごく変わってて……」
「どっち(笑)」
晃が苦笑する。その笑顔にも、わずかな緊張が滲んでいた。
優斗は、気まずさを隠すように立ち上がった。
「偶然だね。っていうか、春菜さん、こんな時間に?」
「残業で……終電、ギリギリ」
春菜の声は震えていた。さっきの光景が頭から離れない。
「俺たちも、ちょっと飲んでてさ。じゃあ、同じ電車かな」
自然と三人で並んでホームに立つ。
でも、春菜の胸には、さっきの二人の親密な距離感が、鋭い痛みとなって残っていた。
(……あれは、なんだったの?)
手が小刻みに震える。カバンを握る指先に、力が入らない。
電車の車内。深夜の空気に包まれた3人は、吊り広告の下、並んで立っていた。
重い沈黙が流れる。
優斗がちらりと春菜を見て、何か言いかけて、でも結局口を閉ざした。
春菜は窓の外を見つめたまま、心の中で必死に整理しようとしていた。
(優斗と晃くんが、一緒にいたのは偶然? でも、あの距離感は……)
胸の奥で、何かが軋んでいる。
「……」
晃も何も言わない。ただ、時折優斗の横顔を見つめ、そして春菜の表情を気にするように視線を向けている。
車内に響くのは、電車の音だけ。
電車が静かにホームへ滑り込む。
扉が開き、3人は無言のまま降り立った。
「じゃあ、ここで──」
「春菜。ちょっと……話せる?」
優斗の声が、震えていた。
春菜が足を止める。晃もその言葉に反応し、ふたりを振り返った。
「……今、言うのか?」
低く、それでいて穏やかな声。晃の表情はどこか痛みを含んでいた。
優斗は春菜を見つめた。その瞳に、覚悟のようなものが宿っている。
「……本当は、ちゃんと時間を作ってもらって話すつもりだった。でも、春菜の表情を見て、これ以上曖昧にしてちゃいけないって思った」
晃は小さくため息をついた。けれど、もう止めなかった。
「……春菜さんの顔、ちゃんと見てから言えよ」
その背中から、どこか祈るような気持ちが滲んでいた。
春菜は震える手で、カバンのストラップを握りしめた。
(……やっぱり、なにかある)
ビルの灯りが濡れたアスファルトに揺れている。道路には雨の名残りが水溜まりとなって残り、街灯の光を反射させていた。
春菜は時計を見上げ、小さく息を吐いた。
残業で遅くなり、最寄り駅までの道を小走りで急ぐ。終電まで、あと十数分。
疲労感のすき間から、ふと蒼真の顔が浮かんだ。
──今日も、会議中に視線が合った。
わたしの意見に頷いてくれた、あの一瞬だけで、胸の奥がぽっと熱を帯びた。
「……こんなふうに思うなんて、変だよね」
胸の奥が、少しだけ痛む。
(優斗のことを思ってるのに、どうして他の人のことが……)
そんな自分への戸惑いを振り払うように、春菜は歩調を早めた。
そのとき、駅前の小さな広場のベンチが目に入った。
「……優斗?」
小さくつぶやいた声は、風にかき消された。でも、目ははっきりと彼を捉えていた。その隣にいる人物に、思わず目を奪われた。
男性は優斗の肩にそっと身を傾け、何かを耳打ちしているようだった。優斗は少し照れたように微笑んでいる。
ふたりの姿は、まるで"親密"という言葉そのものだった。
心臓が一瞬止まった。
(え……なに、これ)
足が動かない。呼吸が浅くなる。頭の中が真っ白になって、でもその光景だけがくっきりと焼き付いている。
蒼真への想いが一瞬で消し飛んだ。今、胸を支配するのは、理解できない光景への動揺だけだった。
優斗の隣に座っているのは、長身で整った顔立ちの男性だった。駅の光にきらめくような横顔。シンプルな服装なのに、どこか目を引く存在感がある。
(……誰? なんで、あんなに……)
その瞬間、視線が合った。
「……!」
男性の目が、ほんの一瞬見開かれた。まるで予期せぬ人に見つかってしまったような、わずかな動揺を見せる。
けれど次の瞬間、表情を整えて小さく会釈した。
「……春菜さん?」
その声。懐かしい音色に、春菜の胸が一気に騒ぎ出す。
「……えっ、晃、くん?」
記憶の奥に沈んでいた彼の名が、胸の奥でそっと響いた。大学の卒業式。最後に交わした、あの短い会話。あの日、私の話を静かに聞いてくれていた彼──。
でも、今の状況で彼に再会するなんて。
「久しぶりだね」
晃がゆっくり歩み寄る。その足取りには、どこかためらいのような重さがあった。
春菜は呆然としたまま、口元を手で覆った。
「……え、全然気づかなかった。全然、変わって……ない、ようで、すごく変わってて……」
「どっち(笑)」
晃が苦笑する。その笑顔にも、わずかな緊張が滲んでいた。
優斗は、気まずさを隠すように立ち上がった。
「偶然だね。っていうか、春菜さん、こんな時間に?」
「残業で……終電、ギリギリ」
春菜の声は震えていた。さっきの光景が頭から離れない。
「俺たちも、ちょっと飲んでてさ。じゃあ、同じ電車かな」
自然と三人で並んでホームに立つ。
でも、春菜の胸には、さっきの二人の親密な距離感が、鋭い痛みとなって残っていた。
(……あれは、なんだったの?)
手が小刻みに震える。カバンを握る指先に、力が入らない。
電車の車内。深夜の空気に包まれた3人は、吊り広告の下、並んで立っていた。
重い沈黙が流れる。
優斗がちらりと春菜を見て、何か言いかけて、でも結局口を閉ざした。
春菜は窓の外を見つめたまま、心の中で必死に整理しようとしていた。
(優斗と晃くんが、一緒にいたのは偶然? でも、あの距離感は……)
胸の奥で、何かが軋んでいる。
「……」
晃も何も言わない。ただ、時折優斗の横顔を見つめ、そして春菜の表情を気にするように視線を向けている。
車内に響くのは、電車の音だけ。
電車が静かにホームへ滑り込む。
扉が開き、3人は無言のまま降り立った。
「じゃあ、ここで──」
「春菜。ちょっと……話せる?」
優斗の声が、震えていた。
春菜が足を止める。晃もその言葉に反応し、ふたりを振り返った。
「……今、言うのか?」
低く、それでいて穏やかな声。晃の表情はどこか痛みを含んでいた。
優斗は春菜を見つめた。その瞳に、覚悟のようなものが宿っている。
「……本当は、ちゃんと時間を作ってもらって話すつもりだった。でも、春菜の表情を見て、これ以上曖昧にしてちゃいけないって思った」
晃は小さくため息をついた。けれど、もう止めなかった。
「……春菜さんの顔、ちゃんと見てから言えよ」
その背中から、どこか祈るような気持ちが滲んでいた。
春菜は震える手で、カバンのストラップを握りしめた。
(……やっぱり、なにかある)
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