SSランクの俺がギルドに行ったら、チンピラに絡まれた件

アンコロ

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SSランクの俺がギルドに行ったら、チンピラに絡まれた件 作者:アンコロ

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何、この状況?



「ああん? 何か言ったらどうだ、小僧? お前みたいなガキが来るとこじゃねーんだよ。」



「俺らみたいな選ばれた人が来るとこなんだよギルドってーのは。」



「Cランク冒険者のバーカス様のおっしゃるとおりだ。」



 いや、Cランクって、やっと一人前冒険者になった程度の人じゃん?

 俺みたいに、国から認められているSSランクとは、雲泥の差だと思うんだけどね。



 俺が装備している剣とか、鎧とか、どっから見ても一級品じゃん?

 っていうか、国宝級だよ?

 どう見ても分かんじゃん?

 周りの人もどう見ても高ランク冒険者なのは分かってるからさ、オロオロしてるしね。

 もしかして、コイツらバカなんじゃね?

 てか、バカでしょ。

 コイツらのパーティーのリーダーって確か、バーカスだっけ?

 いや、名前からしてバカなのは明白じゃん。

 スのなんちゃって。



「いや、俺は一応、一人前の冒険者だし。」



 正しくは、英雄級の冒険者だけどね。



「ああん? 一応だと? 一人前の冒険者の端くれのお前が、一人前の冒険者であるバーカス様に失礼だぞ。」



「コイツには身の程っていうのを教えてやらんといかん。」



 この大陸でギルドランクは、貴族社会でいう爵位にあたる。下のランクの者は、上のランクの者に従わなければならない。



 ランクは、底辺のFランクから、冒険者の憧れのSランクまであり、俺みたいに13歳にして魔王討伐をしたり、竜王を討伐したりした人には特例でSSランクが与えられる。



 で、目の前の人たちは、俺にとってはたかだかCランクであるにも関わらず、SSランクの俺に『身の程』っていうのを教えてくれるらしい。



「あの、バーカス様? その方はおそらく…」

「おっ! ミリーナちゃん、今日もかわいいね! 俺と付き合ってくれよ。」



「そのお話は前回断ったはずです。」



「あ? Cランク冒険者様の誘いを1回ではなく2回も断るなんて身の程を知れや。」



 おいおい、俺だけじゃなく、ギルドの受付嬢のミリーナさんにまで手を出すなんて、これは罰金+ギルドカード剥奪だけじゃ済まされないよ。



 良くて2日間の晒し刑、悪ければお城の牢にまっしぐらだよ。

 コイツ、分かってんのかな?

 最後通告しとこっかな?



「ほらほら、ミリーナさんも嫌がっているし、そのくらいにしておいた方が…」

「あ? なんだぁガキ?」



「ガキじゃなくて、アレクです。」



『えっ!?』



 元々、俺が高ランク冒険者であることに気づいていた数人の人は俺の正体に気づいたようだ。

 この国にアレクという名の高ランク冒険者は一人しかいないしね。

 あんまり俺の本名は広まって無いけど。

 知ってんのって、ごく一部じゃないかな?

 恥ずかしい二つ名が代わりに広まったからね。



「バーカス様、それぐらいにしておいた方が……この方はかのえ…」

「テメーの名前は聞いてねーんだよ。俺とミリーナちゃんの愛を邪魔するな!」



 ミリーナさんは嫌がってるじゃん?

 それ『愛』って言わなくね?



「ですからバーカス様、その方に無礼を働いてはいけま…」



 ボコッ

 ガンッ



「つべこべさっきからうるせーんだよ。俺の話しに入ってくるな!」



 コイツ、このギルドのギルマスを殴ったね。

 コイツの罪状が増えたね。



 ・SSランク冒険者への不敬罪

 ・ギルド受付嬢へのナンパ

 ・ギルマス暴行罪



 どんどん罪が重なっていくよ。

 ギルドカード剥奪&罰金→2日間の晒し刑又はお城の地下牢へGO→5年間、労働奴隷落ち



 別に、俺に不敬を働いたことは良いんだよ。俺どっからどう見てもガキだし。っていうか、年齢もガキだし。

 でもさ、無関係の人に手を出すなんて良くないよね。





 もうそろそろ正体を出しますか。





「俺のランクはえ…」

「Cランク冒険者バーカスと、そのパーティーメンバーに告ぐ!」



 また話を遮られたよ。



 今回はお城の衛兵だ。

 誰か通報したのかな?



「お前達をギルドで騒ぎを起こした罪で1日間の晒し刑に処する! よって、これから中央広場にご同行願……あっ! あそこにいらっしゃるのは、SSランク冒険者であらせられる『漆黒の勇者』様ではありませんか!?」



 冒険者達がざわつき始めちゃった。

 まあ、SSランク冒険者って、この大陸に1人しかいないもんね。



「『漆黒の勇者』様がいらっしゃるの? どこかしら?」



 恥ずかしいから、その二つ名で呼ばないで!

 黒目黒髪で黒の鎧と兜、剣に盾の装備だったら、そんな二つ名になるのもわからないでは無いけど。



 でも、何で俺の方見ないんだろう?

 衛兵さんは俺の方を見たのに。



 あっそうだ!

 魔王討伐記念式典では俺、子供が勇者だと各国に示しが付かないとか言われたから、幻惑の魔法で大人の姿にしてたんだった!



 俺の本当の姿を知ってんの、国王陛下と、式典を挙げた広間に着く道のりで会った衛兵さん達だけじゃん!



「かの英雄『漆黒の勇者』アレク様に式典以降も会えるなんて、光栄の極みであります!」



 こっち来た!

 あれ、最敬礼じゃね? 国王陛下、防衛大臣、将軍閣下のみにしか許されない。

 俺、おそらく大陸一強いけどさ、冒険者だし。そんな身分高くないし。



「『漆黒の勇者』様! お疲れ様です! こちらにいらしたのですね。」



 目の前で膝ついて礼されちゃった。

 周りの人が目を見開いているのがわかるよ。



「あんな子供がSSランク!?」



 子供で悪かったね。



「あの人って、バーカス殿が絡んでいた人じゃね?」



「お、おまえ…」



 バーカスの声が聴こえるよ。



「君が絡んでいた人がSSランクだった気分は、どうかな?」



 最高に悪い顔してる気がする。



「嘘だ! こんなガキがSSランクのはずがない!」



「おい! アレク様に失礼だぞ。」



 衛兵さん、迷惑かけてごめんね。



「衛兵さん、この人は私がギルドに入ると絡んできたんだ。だから、いまさらだよ。」



「なんですと!? アレク様に無礼を既に働いていたとは! 即刻中央広場にて刑を執行しなければなりませんな!」



「あ、あとこの人はギルドの受付嬢にナンパしたのと、ギルマス殴ったから罪状に付け加えといて。」



「そんな重罪人だったとは! 晒し刑では足りませぬ! すぐに衛兵待機所に運びます!」



 そう言って出ていった。

 バーカス達を運び引きずりながら。













 結局バーカス達は、



 ・SSランク冒険者への不敬罪

 ・ギルド受付嬢へのナンパ

 ・ギルマス暴行罪



 によって、5年間の労働奴隷にされることになった。

 ちなみに配属先は鉱山らしい。配属されてから半年後には、半数の人が死んじゃうぐらい過酷らしい。

 5年間生き残れるといいね。









 そんなことより、衛兵達がギルドから去って行った後が大変だった。



 サイン下さい!

 握手して下さい!

 名前読んで下さい!

 結婚して下さい!(?)



 などなど、



 冒険者達に囲まれ。

 ギルド職員に囲まれ。

 騒ぎを聞きつけた近所の人に囲まれ。

 非番の衛兵さん達に囲まれ。



 最初は応じていたけど、だんだんと人が増えてくるし、暑苦しいし、周りの人に潰されそうだし。

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 転移で逃げた。









 しばらくはギルドに行かないでおこう。



 チンピラに絡まれたくないし。

 っていうか、大勢の人に囲まれたくないし。



 あれは怖い。



 物凄い顔でこっちに走ってくる。

 正直言って、どんな魔獣に囲まれた時より怖い。



 俺は学んだ。

 一番怖いのは『SSランクの俺がギルドに行って、チンピラに絡まれる』ことでは無く、人に囲まれることだ。
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