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最初の試練 自然より生まれし小さな女王
1-5 激突
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1-5
(迷宮出現まで残り35時間...)
難易度が跳ね上がる刻限が迫る、しかし焦って進めば全滅する、それ故に今まで迷宮出現を阻止できたのは3回目の時以降1度もない
(迷宮が出現すれば未だ動いてない奴らも流石に動く、それまでに何処まで進めるかな?)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
〔スリィー聖王国遠征隊〕
「ふぅ、ようやくここまで来たな」
「えぇ、ですがここからです」
クラム一行は途中にあった数々の敵を退け、ウラさんが支配する《1区 始まりの大地》に踏み入れた(《区》が何を表すかは長くなるため番外で説明します)
「キキャァァァァァァ!!!」
上空から甲高い叫び声が聞こえた
「早速か!」
「皆さん!戦闘隊形を!」
現れたのは『アーマード・グラスクロウ』、グラスクロウという鳥型魔獣の中でもとりわけ硬い変異種が一体と、『サードアイズ・グラスクロウ』と言われる魔眼を持つグラスクロウ、そこに配下となる『グラスクロウ』が60羽、《1区 始まりの大地》では、生態系の上に君臨する獣も群れているのだ
「まゆ!現在の戦闘可能兵数は!」
「はい!、えっと、約145名です、戦闘不能者は855名、リーンさん達が順次回復中です!」
「皆聞け!戦況は極めて不利だ!だが、ここまでで散っていった者のためにも立ち止まるわけにはいかない!皆!気勢を上げろ!」
「オォォォォォォォ!!!」
戦士達がけたたましい雄叫びを上げると同時、『サードアイズ・グラスクロウ』の魔眼が開いた、とっさに気づいたマユはすぐさま叫んだ
「魔眼が来ます!」
魔眼の効果は『即死』、その目で捉えた動物が自身と同等以下の存在である場合、問答無用で息絶えさせる魔眼だ
「マユ!やつのレベルは分かるか!?」
「はい!レベル185,000!クラムさんと、リーンさん、私を除いた全員が即死範囲内です!」
「よしっ!あいつは俺が引き受ける!皆は他を頼む!」
グラスクロウとの激戦が、今始まった...
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
〔マヨヒガ 博麗霊夢〕
「紫!」
「ごきげんよう、霊夢。勝手に手を出させてもらったわよ」
大妖怪である紫に助けられたことに複雑に思うが、助けがなければ死んでいた事が解らぬ霊夢でもない
「・・・あ、ありが...とう」
「はい、どういたしまして」
そうしていると、部屋の奥から九尾の妖狐であり、八雲紫の式である『八雲藍』が出てきた
「お茶を淹れました、時間が惜しいのは確かですが、急いては事を仕損じます、一度落ち着いて話をしてみてはどうでしょう」
<数分後>
「ありがとう、落ち着いてきたわ」
「そう!それは良かったわ~」
素直に礼をいう霊夢に紫は嬉しそうに返事した
「で、あんたはどういうつもりなのよ」
霊夢は紫に対し質問を投げ掛けた、八雲紫は幻想郷の主だ、幻想郷を最も愛していると言っても過言ではない、であればこのような試練、未熟な博霊の巫女など置いて、式たちと鎮圧に向かっても不思議ではないのだ、しかし彼女はここにいた博霊の巫女が落ち着くまで、側に居たのだ、疑問に思わない方が難しい
「私の目的?簡単よ、霊夢、手を組まない?いい案だと思うのだけど」
「妖怪の賢者」と「博霊の巫女」が「協力」、それは、良くない...はずだ、永夜異変でこそ手を組んだがあくまでそれは特例中の特例、人々にそれを目撃されてはならないのだ。それを、制定した紫自ら、申し出てきた
「どうして?手を組む必要なんてあるのかしら?」
その言葉に紫ではなく藍が口を開く
「おや、状況が解ってないようですね、これはお願いでも、提案でもありませんよ」
「そう言われてハイそうですかと言うわけないでしょ、私は博霊の巫女なの、そう教育してきたのは八雲紫、あんたでしょうが」
「あらあら、頭が固いのねぇ、もっと柔軟にならないと、ただの堅物じゃ今の幻想郷を守りきれないわよ?藍、橙、少し解して上げなさい」
「紫様、スペルカードルールはよいのですか?」
「ええ、いつもの異変ならいざ知らず、外界からの異変、それも世界規模の試練はどうしようもないもの」
「分かりました、橙、全力でいきなさい!」
「はい!藍しゃま!」
藍と橙が妖怪そのものの力で襲い掛かる、それに対し霊夢は
「いいわ、やってあげる、わたしだって肉弾戦が苦手な訳じゃないのよ!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
〔人里 霧雨魔理沙〕
ーーと言うわけで力を借りたいんだ」
前回、妹紅たちと出会った魔理沙は今までの事を踏まえた話をし、協力を求めた
「すまないが私は無理だ、万が一人里が看破されたとき、守ってやらねばならない」
「さっきの状態を見て分かると思うが、私も慧音を護るので手一杯なんだ」
そう言う二人に対し魔理沙はニッと笑って答えた
「そんなこと私だって分かるさ、だからこいつにお前たちの力を込めて欲しい」
そう言って出したのは【透明なる図鑑】というアイテムだった、マジックアイテムに詳しくない二人は揃って首をかしげた
「なんだこれ、こんなんでいいのか?」
「ああ、もちろんだ!」
「どんな効果があるんだこれ」
「おっいい質問だ、親切な魔理沙さんが二人に教えて上げよう!」
「このカードはな、妖力を込めた奴の疑似存在を生み出すマジックアイテムで...うわぁ!」
「っ!誰だ!」
攻撃が来た方向を3人が見ると、そこには一体の化け物がいた、全体的に木製に見えるそれの様相は、3対の直径6mはある羽が巨躯を浮かし、頭部と思わしき場所は円盤状で12の目玉のようなものが獲物から目を離さず見張る、2対(4本)の腕は異様に細く、長さは8mに及び、それぞれの先端には6本指の手がある腕が2本、如何なる物も切り裂きそうな鎌が1本、手首から先が存在しない所か、腕の中まで空洞なのが1本だ、足は無く、変わりに胴体の下には巨大な鐘のような物がぶら下がり、「カラン、コロン」と鳴る、全長凡そ7mの化け物だった
「なんだこいつ!?《始まりの大地》でも見た事ねぇぞ!?」
(カラカラカラカラカラ!!!)
化け物は魔理沙が体制を崩しているのを確認すると、妹紅や慧音には目もくれず、攻撃を開始した
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
〔試練鎮圧部隊〕
「全員止まれ!」
副隊長が全兵士に号令を出し、行軍は一時停止した、目前には森、つまり、ここからが本番であることを示している
「皆、よく聞け、ここより先は《不可侵の森》だ、名の通り、謎の作用をする魔力で森の奥まで行くことが非常に困難である、さらに試練の中心地であることから激戦が予想される!よってここで少しの休憩をとり、出来る限り装備を整え、突入する!」
指示を聞いた兵士達は、各々の場所に腰を下ろし、装備の点検や腹ごしらえを行い始めた、中でも遠距離から攻撃する【弓使い】【銃士】【鳥使い】や、【暗殺者】【偵察】【監視者】のような隠密が基本の者、【魔術師】【魔導師】【魔砲使い】【呪術師】のような遠距離魔法を得意とするものが熱心に武具の手入れを
近距離で敵のヘイトを買う【重装兵】【トリックスター】【双剣士】や、敵に止めをさす【蒼剣士】【狂戦士】【破壊者】、味方の援護を主にする【メイド】【天法士】【踊り子】【祈術師】等は体を休め
攻撃一個一個が消耗品である【陰陽師】や【禁術師】、【書庫番】は道具やスキルの補充に勤しんでいた
<とある剣士同士の会話>
「いいか、新入り、この先は今までの任務や訓練とは非にならない激戦区だ、一騎当千の王と呼ばれた者が鎧袖一触される程度にはヤバイ」
「その一騎当千の王って誰なんです?」
「ん?それも知らんのか...一騎当千の王って言うのはだな、まだ俺らの国が名もない小国だった頃に暴れていた〔ヒュドゥラム帝国〕の帝王の異名さ、そいつ一人で竜の巣を狩り尽くしたり、他の大国の兵士を全滅させた実績がある帝王の事だ」
「そっれってよくある歴史の捏造なんじゃないですか?」
「いや、それがだな、実話なんだよ、他でもないウラさんがその目で見て、記録したからな、何なら若かりし頃のドルトラン隊長もその様子を見たらしい」
「そんな怪物がウラさん以外にいるなんて...」
「何なら〔ボルティック王国〕にいるぞ?その国は今は滅んだからな」
「え?帝国は滅んだのに帝王は生きてるんですか?」
「あぁ、今奴はウラさん直属の治安部隊で隊長やってるくらいだ」
「(絶句)」
「そういや、話は変わるがお前何歳だ?」
「あ、私ですか?えっと...1,800歳です」
「あー随分と若ぇな、それでこの部隊とは凄いことだが、無茶はするな、トラウマが残って引退とかは洒落にならん」
「はい!気を付けます!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
〔ドルトラン〕
あの怪物の幼体との戦闘はより激しさを増していた、ドルトランの体にも少しずつ掠り傷がつき始め、反撃の回数も減っていた
「キャッキャ」
(まだまだ行くよ!)
追い詰められていくドルトランに対し、優勢であるあの怪物の幼体は少しずつ表情に疲れが見えてきた、今までで使った魔力がとうとう半分をきり、それ故に集中力も切れ始めたのだ
「【偽装の腐毒】!」
ドルトランは表情を変えず、一つ魔法を使った、その魔法は非常に融解性の高い腐毒で分身を作ると言うもの、能力値は本人と同等で、経験も知識として継承される彼の得意魔術の一つだった
(お兄さんが増えた!)
ドルトランが二人になったように見えたあの怪物は一瞬目を丸くし、そのまま攻撃の手数を増やした
(むぅ~全然当たらないなぁ、あっそうだ!)
何かを閃いたあの怪物の様子を見た彼は、警戒しつつ、その行動を待つ
(最近覚えた呪文、見せてあげる!)
そう言うとあの怪物は空を埋め尽くす程巨大な魔方陣を5重に展開した
(これは世界の物語、いけとし生けるものの始まりの産声【序章・世界の始まり】!)
すると上空の魔法陣の内、最下層の魔方陣が輝き、発動する
発動したのは本来であればまばゆい光を伴いながら半径数億キロに及ぶ大爆発を起こす回避不可の全域攻撃だが、今回はあの怪物の大人達が光ごと防いでいた、それゆえ巻き込まれたのは内部にいる彼だけだ
「【貫けぬ肉体】【弾く肉体】【暗黒結界・獄門】【業炎纏う体】【炎の始祖の祝福】!」
あの怪物の大人達による逃げ場の消失を確信した彼は、急ぎ防御行動を行った、分身も同じだ
だが、光がやむ前に、次が来た
(それは生まれ、集まり、砕ける...それは星々の宴か?【一章・生まれ消え行く星々】!)
2つ目の魔方陣が輝き、次の呪文が発動した
ドルトランは突如浮遊感に襲われた、周囲からは不可視の圧力が迫ってくるのを感じ、とっさに回避行動をとる、先程までいたそこには小さく無個性な星があった、それは発動区域全域にランダムで起こっていた、その内幾つかは砕け、幾つかは他の星と融合したドルトランは巻き込まれぬよう避け続けていた
「【緊急回避】【風柳】【流動する肉体】!」
(神々が生まれる!それは...命の生誕と同時期だった!【2章・神々の国】!)
3つ目の魔方陣が輝き、次の呪文が発動した
幾つかの星が重力を持ち、光輝き、恒星が生まれ、惑星が生まれた、水の惑星、土の惑星、炎の惑星、雷の惑星、それらが恒星の周りを各々の速度で回るだが、途中で急に軌道と速度を変え、衝突し、融合した、不可視の何かが操作している、衝突は常にドルトランを狙っている
「【火炎結界・臨】【氷水結界・臨】【迅雷結界・臨】【豪風結界・臨】【土石結界・臨】【彼方への道筋】!」
(命が誕生した!神々はそれらに生きるための条件と生きられる時間を定め、自らの手駒とした!【3章・最初の命】!)
4つ目の魔方陣が輝き、可視化する程の魔力が放出された
数々の光は各々集まり、様々な形を象った、すると朱い糸がそれらを縛り上げ、色が付いた、それらはドルトランへ襲いかかる、攻撃方法は突進や噛み付き、引き裂きなど単純な動作だが数が数だ、回避は困難を極め、受けきることは無謀だ
「【圧倒】【万生の殺戮者】【強力無比なる剛腕】【獅子奮迅】【運命の反逆者】」
(あらゆる命が生と死を繰り返し様々な進化を遂げた!あるものは巨大化し他者を貪り、あるものは小型化し草葉の影に隠れひっそりと繁栄していた【4章・変わりゆく生のカタチ】!)
最後の魔方陣が輝き、消えた...
襲い掛かる牙は止まり、ドルトランから距離をとると苦しみ悶え、崩れた
(・・・この感覚...まさか!)
ドルトランが幼体の方を見ると発動前に魔力切れを起こし気を失っていた・・・
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
〔ウラさんの居場所〕
「いよいよ各所で戦いが始まったか、よし、一手加えよう、状況の好転悪転はダイスの示す通りってな」
ウラさんは手に持っていた5つのダイスに魔力と天力を五分五分に注ぐと、ウラさんには必要の無い詠唱を行った
「ゆらりゆらり揺蕩う現世、刺激無くして進化は起こらぬ、運命を指し示す手中の石よ、下界の者へ試練と祝福を授けよ、我が込めた力を民達への礎となる事を我は望む【天命指し示す災い石】!」
「ほうほう、これはこれは、皆、頑張れよ」
(迷宮出現まで残り35時間...)
難易度が跳ね上がる刻限が迫る、しかし焦って進めば全滅する、それ故に今まで迷宮出現を阻止できたのは3回目の時以降1度もない
(迷宮が出現すれば未だ動いてない奴らも流石に動く、それまでに何処まで進めるかな?)
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〔スリィー聖王国遠征隊〕
「ふぅ、ようやくここまで来たな」
「えぇ、ですがここからです」
クラム一行は途中にあった数々の敵を退け、ウラさんが支配する《1区 始まりの大地》に踏み入れた(《区》が何を表すかは長くなるため番外で説明します)
「キキャァァァァァァ!!!」
上空から甲高い叫び声が聞こえた
「早速か!」
「皆さん!戦闘隊形を!」
現れたのは『アーマード・グラスクロウ』、グラスクロウという鳥型魔獣の中でもとりわけ硬い変異種が一体と、『サードアイズ・グラスクロウ』と言われる魔眼を持つグラスクロウ、そこに配下となる『グラスクロウ』が60羽、《1区 始まりの大地》では、生態系の上に君臨する獣も群れているのだ
「まゆ!現在の戦闘可能兵数は!」
「はい!、えっと、約145名です、戦闘不能者は855名、リーンさん達が順次回復中です!」
「皆聞け!戦況は極めて不利だ!だが、ここまでで散っていった者のためにも立ち止まるわけにはいかない!皆!気勢を上げろ!」
「オォォォォォォォ!!!」
戦士達がけたたましい雄叫びを上げると同時、『サードアイズ・グラスクロウ』の魔眼が開いた、とっさに気づいたマユはすぐさま叫んだ
「魔眼が来ます!」
魔眼の効果は『即死』、その目で捉えた動物が自身と同等以下の存在である場合、問答無用で息絶えさせる魔眼だ
「マユ!やつのレベルは分かるか!?」
「はい!レベル185,000!クラムさんと、リーンさん、私を除いた全員が即死範囲内です!」
「よしっ!あいつは俺が引き受ける!皆は他を頼む!」
グラスクロウとの激戦が、今始まった...
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〔マヨヒガ 博麗霊夢〕
「紫!」
「ごきげんよう、霊夢。勝手に手を出させてもらったわよ」
大妖怪である紫に助けられたことに複雑に思うが、助けがなければ死んでいた事が解らぬ霊夢でもない
「・・・あ、ありが...とう」
「はい、どういたしまして」
そうしていると、部屋の奥から九尾の妖狐であり、八雲紫の式である『八雲藍』が出てきた
「お茶を淹れました、時間が惜しいのは確かですが、急いては事を仕損じます、一度落ち着いて話をしてみてはどうでしょう」
<数分後>
「ありがとう、落ち着いてきたわ」
「そう!それは良かったわ~」
素直に礼をいう霊夢に紫は嬉しそうに返事した
「で、あんたはどういうつもりなのよ」
霊夢は紫に対し質問を投げ掛けた、八雲紫は幻想郷の主だ、幻想郷を最も愛していると言っても過言ではない、であればこのような試練、未熟な博霊の巫女など置いて、式たちと鎮圧に向かっても不思議ではないのだ、しかし彼女はここにいた博霊の巫女が落ち着くまで、側に居たのだ、疑問に思わない方が難しい
「私の目的?簡単よ、霊夢、手を組まない?いい案だと思うのだけど」
「妖怪の賢者」と「博霊の巫女」が「協力」、それは、良くない...はずだ、永夜異変でこそ手を組んだがあくまでそれは特例中の特例、人々にそれを目撃されてはならないのだ。それを、制定した紫自ら、申し出てきた
「どうして?手を組む必要なんてあるのかしら?」
その言葉に紫ではなく藍が口を開く
「おや、状況が解ってないようですね、これはお願いでも、提案でもありませんよ」
「そう言われてハイそうですかと言うわけないでしょ、私は博霊の巫女なの、そう教育してきたのは八雲紫、あんたでしょうが」
「あらあら、頭が固いのねぇ、もっと柔軟にならないと、ただの堅物じゃ今の幻想郷を守りきれないわよ?藍、橙、少し解して上げなさい」
「紫様、スペルカードルールはよいのですか?」
「ええ、いつもの異変ならいざ知らず、外界からの異変、それも世界規模の試練はどうしようもないもの」
「分かりました、橙、全力でいきなさい!」
「はい!藍しゃま!」
藍と橙が妖怪そのものの力で襲い掛かる、それに対し霊夢は
「いいわ、やってあげる、わたしだって肉弾戦が苦手な訳じゃないのよ!」
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〔人里 霧雨魔理沙〕
ーーと言うわけで力を借りたいんだ」
前回、妹紅たちと出会った魔理沙は今までの事を踏まえた話をし、協力を求めた
「すまないが私は無理だ、万が一人里が看破されたとき、守ってやらねばならない」
「さっきの状態を見て分かると思うが、私も慧音を護るので手一杯なんだ」
そう言う二人に対し魔理沙はニッと笑って答えた
「そんなこと私だって分かるさ、だからこいつにお前たちの力を込めて欲しい」
そう言って出したのは【透明なる図鑑】というアイテムだった、マジックアイテムに詳しくない二人は揃って首をかしげた
「なんだこれ、こんなんでいいのか?」
「ああ、もちろんだ!」
「どんな効果があるんだこれ」
「おっいい質問だ、親切な魔理沙さんが二人に教えて上げよう!」
「このカードはな、妖力を込めた奴の疑似存在を生み出すマジックアイテムで...うわぁ!」
「っ!誰だ!」
攻撃が来た方向を3人が見ると、そこには一体の化け物がいた、全体的に木製に見えるそれの様相は、3対の直径6mはある羽が巨躯を浮かし、頭部と思わしき場所は円盤状で12の目玉のようなものが獲物から目を離さず見張る、2対(4本)の腕は異様に細く、長さは8mに及び、それぞれの先端には6本指の手がある腕が2本、如何なる物も切り裂きそうな鎌が1本、手首から先が存在しない所か、腕の中まで空洞なのが1本だ、足は無く、変わりに胴体の下には巨大な鐘のような物がぶら下がり、「カラン、コロン」と鳴る、全長凡そ7mの化け物だった
「なんだこいつ!?《始まりの大地》でも見た事ねぇぞ!?」
(カラカラカラカラカラ!!!)
化け物は魔理沙が体制を崩しているのを確認すると、妹紅や慧音には目もくれず、攻撃を開始した
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〔試練鎮圧部隊〕
「全員止まれ!」
副隊長が全兵士に号令を出し、行軍は一時停止した、目前には森、つまり、ここからが本番であることを示している
「皆、よく聞け、ここより先は《不可侵の森》だ、名の通り、謎の作用をする魔力で森の奥まで行くことが非常に困難である、さらに試練の中心地であることから激戦が予想される!よってここで少しの休憩をとり、出来る限り装備を整え、突入する!」
指示を聞いた兵士達は、各々の場所に腰を下ろし、装備の点検や腹ごしらえを行い始めた、中でも遠距離から攻撃する【弓使い】【銃士】【鳥使い】や、【暗殺者】【偵察】【監視者】のような隠密が基本の者、【魔術師】【魔導師】【魔砲使い】【呪術師】のような遠距離魔法を得意とするものが熱心に武具の手入れを
近距離で敵のヘイトを買う【重装兵】【トリックスター】【双剣士】や、敵に止めをさす【蒼剣士】【狂戦士】【破壊者】、味方の援護を主にする【メイド】【天法士】【踊り子】【祈術師】等は体を休め
攻撃一個一個が消耗品である【陰陽師】や【禁術師】、【書庫番】は道具やスキルの補充に勤しんでいた
<とある剣士同士の会話>
「いいか、新入り、この先は今までの任務や訓練とは非にならない激戦区だ、一騎当千の王と呼ばれた者が鎧袖一触される程度にはヤバイ」
「その一騎当千の王って誰なんです?」
「ん?それも知らんのか...一騎当千の王って言うのはだな、まだ俺らの国が名もない小国だった頃に暴れていた〔ヒュドゥラム帝国〕の帝王の異名さ、そいつ一人で竜の巣を狩り尽くしたり、他の大国の兵士を全滅させた実績がある帝王の事だ」
「そっれってよくある歴史の捏造なんじゃないですか?」
「いや、それがだな、実話なんだよ、他でもないウラさんがその目で見て、記録したからな、何なら若かりし頃のドルトラン隊長もその様子を見たらしい」
「そんな怪物がウラさん以外にいるなんて...」
「何なら〔ボルティック王国〕にいるぞ?その国は今は滅んだからな」
「え?帝国は滅んだのに帝王は生きてるんですか?」
「あぁ、今奴はウラさん直属の治安部隊で隊長やってるくらいだ」
「(絶句)」
「そういや、話は変わるがお前何歳だ?」
「あ、私ですか?えっと...1,800歳です」
「あー随分と若ぇな、それでこの部隊とは凄いことだが、無茶はするな、トラウマが残って引退とかは洒落にならん」
「はい!気を付けます!」
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〔ドルトラン〕
あの怪物の幼体との戦闘はより激しさを増していた、ドルトランの体にも少しずつ掠り傷がつき始め、反撃の回数も減っていた
「キャッキャ」
(まだまだ行くよ!)
追い詰められていくドルトランに対し、優勢であるあの怪物の幼体は少しずつ表情に疲れが見えてきた、今までで使った魔力がとうとう半分をきり、それ故に集中力も切れ始めたのだ
「【偽装の腐毒】!」
ドルトランは表情を変えず、一つ魔法を使った、その魔法は非常に融解性の高い腐毒で分身を作ると言うもの、能力値は本人と同等で、経験も知識として継承される彼の得意魔術の一つだった
(お兄さんが増えた!)
ドルトランが二人になったように見えたあの怪物は一瞬目を丸くし、そのまま攻撃の手数を増やした
(むぅ~全然当たらないなぁ、あっそうだ!)
何かを閃いたあの怪物の様子を見た彼は、警戒しつつ、その行動を待つ
(最近覚えた呪文、見せてあげる!)
そう言うとあの怪物は空を埋め尽くす程巨大な魔方陣を5重に展開した
(これは世界の物語、いけとし生けるものの始まりの産声【序章・世界の始まり】!)
すると上空の魔法陣の内、最下層の魔方陣が輝き、発動する
発動したのは本来であればまばゆい光を伴いながら半径数億キロに及ぶ大爆発を起こす回避不可の全域攻撃だが、今回はあの怪物の大人達が光ごと防いでいた、それゆえ巻き込まれたのは内部にいる彼だけだ
「【貫けぬ肉体】【弾く肉体】【暗黒結界・獄門】【業炎纏う体】【炎の始祖の祝福】!」
あの怪物の大人達による逃げ場の消失を確信した彼は、急ぎ防御行動を行った、分身も同じだ
だが、光がやむ前に、次が来た
(それは生まれ、集まり、砕ける...それは星々の宴か?【一章・生まれ消え行く星々】!)
2つ目の魔方陣が輝き、次の呪文が発動した
ドルトランは突如浮遊感に襲われた、周囲からは不可視の圧力が迫ってくるのを感じ、とっさに回避行動をとる、先程までいたそこには小さく無個性な星があった、それは発動区域全域にランダムで起こっていた、その内幾つかは砕け、幾つかは他の星と融合したドルトランは巻き込まれぬよう避け続けていた
「【緊急回避】【風柳】【流動する肉体】!」
(神々が生まれる!それは...命の生誕と同時期だった!【2章・神々の国】!)
3つ目の魔方陣が輝き、次の呪文が発動した
幾つかの星が重力を持ち、光輝き、恒星が生まれ、惑星が生まれた、水の惑星、土の惑星、炎の惑星、雷の惑星、それらが恒星の周りを各々の速度で回るだが、途中で急に軌道と速度を変え、衝突し、融合した、不可視の何かが操作している、衝突は常にドルトランを狙っている
「【火炎結界・臨】【氷水結界・臨】【迅雷結界・臨】【豪風結界・臨】【土石結界・臨】【彼方への道筋】!」
(命が誕生した!神々はそれらに生きるための条件と生きられる時間を定め、自らの手駒とした!【3章・最初の命】!)
4つ目の魔方陣が輝き、可視化する程の魔力が放出された
数々の光は各々集まり、様々な形を象った、すると朱い糸がそれらを縛り上げ、色が付いた、それらはドルトランへ襲いかかる、攻撃方法は突進や噛み付き、引き裂きなど単純な動作だが数が数だ、回避は困難を極め、受けきることは無謀だ
「【圧倒】【万生の殺戮者】【強力無比なる剛腕】【獅子奮迅】【運命の反逆者】」
(あらゆる命が生と死を繰り返し様々な進化を遂げた!あるものは巨大化し他者を貪り、あるものは小型化し草葉の影に隠れひっそりと繁栄していた【4章・変わりゆく生のカタチ】!)
最後の魔方陣が輝き、消えた...
襲い掛かる牙は止まり、ドルトランから距離をとると苦しみ悶え、崩れた
(・・・この感覚...まさか!)
ドルトランが幼体の方を見ると発動前に魔力切れを起こし気を失っていた・・・
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〔ウラさんの居場所〕
「いよいよ各所で戦いが始まったか、よし、一手加えよう、状況の好転悪転はダイスの示す通りってな」
ウラさんは手に持っていた5つのダイスに魔力と天力を五分五分に注ぐと、ウラさんには必要の無い詠唱を行った
「ゆらりゆらり揺蕩う現世、刺激無くして進化は起こらぬ、運命を指し示す手中の石よ、下界の者へ試練と祝福を授けよ、我が込めた力を民達への礎となる事を我は望む【天命指し示す災い石】!」
「ほうほう、これはこれは、皆、頑張れよ」
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