使徒と神獣と選定者のゆったり生活(仮)

待雪 菖蒲

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「ん……ふぁ……。ぁ……よく寝たぁ。」

どこまでも続く青空と柔らかく包み込む大地。
心地よい風が、頬を撫でていく。

ずっとこのまま微睡んでいたい。
もう一度眠る体勢を整えていると微かに自分を呼ぶ声が聞こえた。

「ふぁ……きこえない、きこえない。」

返事をせずに身体を丸めて楽な姿勢を探し続ける。

『おい、奏。起きろ。まだ寝るきか?早くしねぇと日が暮れるぞ』

声は徐々に近づき、ゆっくりと肩を揺すられる。

『今夜の宿を探さねぇと。それよりまず、人のいる町か村へいこう。人族は弱いんだから。食料も寝具もない中、野宿なんでできねぇだろ』

少し乱暴な言葉遣いで、しかし優しく奏を起こすのは、大きな黒い狼。

「ガイ……ありがとう。でも眠いんだ。なんでこんなに眠いんだろう」

目を擦っても奏の瞼が上がることはなく、腕も足も起き上がることができない。

「まだ身体が馴染んでいないのかもしれねぇな。せめてユキのところへいこう。眠いなら背に乗れ。連れていく」

そういってガイは返事を待つことなく奏の腹の下に自身の頭を入れて持ち上げ、背に乗せ歩きだした。勝手にやってくれるならと奏も文句を言わず、微睡み続ける。

奏を落とさないように慎重に、しかし颯爽と走るガイは川辺に座り水面を覗く男性に近寄っていく。

『ユキ、奏を連れてきた。どうやら身体の構築の影響が残っているらしい。このままでいいか?』

ガイが声をかけると、ユキは水中から手を上げ、ゆっくりと立ち上がる。

「ガイ、ありがとう。魔力の影響かな。奏は魔力の無い世界から来たから。町につく頃にはたぶん良くなっていると思うよ。あいつがミスをすることは無いだろうしね」

右手を奏のおでこに当てながら、左手でガイの頭を撫でる。

「大丈夫そうだ。ガイも問題ないかい?じゃあいこうか」
『あぁ』

奏を起こさないように小さな声で話ながらユキとガイは川辺を下り始めた。

奏は2人の優しさに身を預けながら、この世界に来た理由を思い出した。


……特別な理由は無いんだ。ただあの世界で、いなくなっても誰もわからず、そして本人すらも困らない。世界を渡れるほどの心と身体の耐性がありながら、偏った知識を持たない。精神の美しさと、いままで生きてきた中の善悪の行為を差し引いて、一番僕が気に入った子ども。それがたまたま君だっただけさ。やるべき義務も使命も無い。君が世界を渡ってくれることで僕の空間の安定が保たれるのだから、後は好きに生きていい。大丈夫。僕と同じように君のことを気に入った2人が付いていってくれるみたいだ。どうか楽しんで。君の行動は全て僕が許すよ……


神様、よくわからないけれど、新しい世界を楽しんでみます。慈愛の笑みで送り出してくれた神様にそう心に誓って、奏は微睡みの中に溶けていった。

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