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妹でもなく、彼女でもなく
01
真尋は就職すると同時に実家を出て一人暮らしを始めた。その時に持ち物の整理をして必要なものだけを引っ越し先に持ってきた。それから一年もたたずに今また真尋は引っ越しの準備をしている。
勤めている総合病院に近いこのマンションを出るのは正直悩んだ。けれど仕事が不規則な真尋と忙しい巧ではなかなか会う時間が確保できない。
入籍も済ませて夫婦になったし、結婚式の準備もしなければならない。
巧からは再三『早めに引っ越してこい』だの『結婚したんだから別居はおかしい』だの拗ねたように言われた挙句、最終的に『会えないのは耐えられない』と泣き言を漏らされた。
それでも重い腰をあげずにいると、巧のほうが真尋の狭い部屋に入り浸るようになった。
セミダブルのベッドだから二人で寝ても窮屈ではない。けれど、だんだん増えてくる巧の私物が部屋を占拠しはじめ、深夜勤務を終えて帰ってきて寝ている巧を起こさないよう動くのも気疲れするようになった。
なによりこのマンションには同じ病院に勤務する職員も入居している。そのため、よからぬ噂が広まり始めたのだ。
いわく――入ったばかりの新人がイケメンを部屋に連れ込んでいる――と。
病院では結婚したことを公にしていない。就職一年目で結婚したことも、その相手が湯浅製薬の御曹司であることも、元義理の兄であることも格好の噂の餌食になるからだ。いずれは知られるにしても、今はまだそのタイミングではないと真尋は思っている。
巧は、最初こそ真尋の部屋の狭さに文句を言っていたけれど、数歩も歩く必要なく真尋のそばにいられるとあって、それはそれで気に入ったようだった。
部屋に二人でいると巧はとにかくベタベタしてくる。そのため、真尋には一切逃げ場がない。
髪に触れ、体を抱き寄せ、すぐさま衣服を剥ぎ、真尋を激しい快楽に落とし込む。逃げ場がなければ体力がもたない。よって、真尋はようやく重い腰をあげることにしたのだ。
引っ越しを決めたら決めたで巧は喜んで、すぐさま引っ越し日時を決めてしまった。
全部業者に任せればいいと言ったけれど、他人に私物を触られるのには抵抗がある。それに物もそんなに多くない。
そのため真尋は時間があるときに、段ボール箱にちまちま荷物を詰める作業を行っていた。
日常生活に必要のないものから段ボール箱にしまいながら、真尋はふと懐かしいものを小物入れから見つけた。
そこには、髪が短かった時には必要なかったヘアアクセサリー類が入っていて、中に一際綺麗なヘアバレッタがあった。
それを手にしてしばし眺める。
ピンクベージュのふたつの花。花弁には華やかなビジューが散らばっている。数万円はする高級ヘアアクセサリーブランドのものだ。
当時、高校生だった真尋には、大人っぽくて贅沢な代物だった。それまで雑貨屋で数百円のものしか買ったことがなかったので、ヘアバレッタにこれだけお金をかけるなんてもったいないと驚いた。
働きだした今だってきっと手にするにはためらう。
真尋は肩に届くようになった髪をそのヘアバレッタでまとめた。巧がしきりに髪を伸ばせというので、結婚式も意識して髪を伸ばしている最中だ。
久しぶりにそれを髪につけて、真尋はその時の巧の表情を思い出す。
眩しそうに愛しそうに見つめて『似合っている』と呟いて、いつものように髪に指を絡めてきた。
それは義理の妹になった真尋が、初めて巧の彼女の振りをした日でもあった。
***
――真尋、高校二年。五月のとある土曜日。
その日、真尋は久しぶりに徒歩で自宅の最寄り駅までの道を歩いていた。普段はほとんど車で移動するため、家から近い駅を利用することはあまりない。けれど今日はその駅で、真尋は巧と待ち合わせをしていた。
巧はこの春に家を出て一人暮らしを始めた。元々大学入学と同時に一人暮らしをする予定だったのを、延期していただけだったらしい。
なかなか会えなくなったため先日思い切ってメッセージを送ったのだ。
『今年の父の日はどうするつもりなのか?』と。
母親が結婚して真尋には義理の父と兄ができた。去年、初めて迎えた父の日に、真尋はお礼の気持ちを込めてハンカチをプレゼントした。父親がいない真尋にとって、初めて贈った父の日のプレゼントだ。
義父はできたばかりの娘からのプレゼントに大げさではなく号泣した。小さな頃ならともかく、巧が父の日のプレゼントを準備することはなかったようで、ひとしきり泣いた後義父は『実の息子からは一切ないのに、真尋ちゃんからもらえるなんて感激だよ』と巧を見て言ったのだ。
父親の嫌味を受けた巧はその直後『こういうことをやるときは必ず俺にも声をかけろ』と真尋に八つ当たりをしてきた。だから以降家族のイベントごとがあるたびに、巧にお伺いをたてることにしている。
今回も同じ経緯で問い合わせた結果『今年は一緒に選ぶぞ』と言われ、買い物には車ではなく電車で行こうと提案された。
『たまには公共交通機関を使う練習をしろ』と。
真尋の通う高校は車送迎が原則だ。
家から出かけるときも車だし、友人である結愛と遊ぶときだって矢内家の車で出かける(なぜなら結愛はプライベートでも車を使うよう厳命されているからだ)。だからあえて使うようにしないと電車に乗る機会はほとんどない。
中学生の頃は塾へ通う時に電車を使っていたものの、遠くまで出かけることはなかったので、遊びで使った経験は少なくて、巧の言うことにも一理あると思えた。
そして過保護な義理の兄は、自宅からの最寄り駅を待ち合わせ場所に指定したのだ。ちなみに自宅から駅まで十分もかからないのに車で送ってもらえと言ってもいたが、さすがにそれは遠慮してこうして歩いている。
巧と二人で出かけたことは何度かあるが、駅での待ち合わせは初めてだ。
今日の真尋は、春休みに結愛と一緒に買い物に出かけたときに購入した少し大人びたワンピースを身に着けている。ノースリーブの膝丈Aラインのワンピースは臙脂色。紺色か臙脂色かで結愛と悩んで、結局結愛が紺を真尋が臙脂を選んで、二人でお揃いにしたものだ。前結びのリボンが少し大きめでちょっとキュートな感じもある。
上にオフホワイトのカーディガンを羽織って、同じ色のサンダルを合わせた。バッグは去年のクリスマスに巧からプレゼントされたこげ茶のハンドバッグ。斜め掛けできるベルトもついているけれど、今日はあえてはずして手で持っている。背中まで伸びた髪はポニーテールにした。
巧が一緒の時はできるだけ大人っぽい格好をするようにしている。そうしなければ、あのイケメン御曹司のオーラに負けて、隣にいることに気後れしてしまうからだ。
真尋はなんとなくくすぐったい気分で駅に向かいながら、まるでデートみたいだな、と経験もないくせに思った。
現実は義理の兄とのお出かけでしかない。
駅へ近づくと、改札のそばに立っているイケメンに気づいた。わざわざ外に出てこなくても駅のホームでの待ち合わせでいいと言ったのに。
巧は真尋に気づくとにやりと笑みを浮かべる。時間通りに迷わずに来たな、とまるで小学生でも見ているようだ。
「歩いてきたのか?」
「うん。ホームで待っていれば良かったのに」
「電車の乗り方忘れていたら困ると思って。チャージしてあるか?」
ICカードなんて久しぶりに探し出した。真尋が「わからない」と言うと、すぐさま巧が手にして確認し現金をチャージする。
「巧くん、お金」
「必要ない」
「……うん、ありがとう」
こういうときいまだに真尋は迷う。
巧にばかりに支払わせるのは申し訳ないとも思うのに、妹だったらあたりまえなのかなと考えたりもする。そういう線引きが時々わからなくなるのだ。
改札を抜けてホームに向かうと、タイミングよく電車が入ってきた。
通勤・通学の時間帯の電車ほどではないだろうが、休日だからなのかそこそこ人が乗っていて席は全部埋まっているし、立っている人も多かった。
「真尋、こっちだ」
扉のそばで巧が招く。混雑しているわけでもないのに庇うようにして巧は立ちふさがって、真尋はドキドキした。
今日の巧は、黒いパンツに濃いグレーのシャツ。上にはデザイン的にあしらわれたジッパーが個性的なオフホワイトのブルゾンを羽織っている。大学生らしいカジュアルさと上品さが、彼にとてもよく似合っていた。
なんとなくお互いオフホワイトの上着がまるでお揃いのようで、少し恥ずかしかった。
周囲にいる女の子たちの視線がすぐに巧に集まる。
中学までは共学だったのだから男性に全く免疫がないわけではない。なのに女子校に通う弊害か、こんなふうに異性に近くに立たれると、兄という間柄の相手なのに緊張する。
(こういう状況に慣れていないからであって、巧くんにドキドキしているわけじゃない)
なぜか自分に言い聞かせたくなる。
「このワンピース初めて見た。かわいいな。おまえに似合っている」
不意に言われてびっくりして巧を見上げた。
真尋の身長は標準だが、こんなに近いと巧を見上げる形になる。すぐそばに巧ののどぼとけや庇うように伸ばされた腕があり、さらに車に乗った時にも感じるいつもの彼の香りがした。
「あ、ありがとう」
「なに? 照れている?」
「別に、照れていない」
そう言いながら顔を背けてしまう。
(近い……近いよ、巧くん)
一緒に暮らしている間も、少年から青年に変化していく様を見てきた。今は久しぶりに会うごとに彼が大人の男性になっているのだと感じている。
「そういえばどこへ行くの?」
恥ずかしさを誤魔化すべく、真尋は話題をそらす。
巧はファッションビルの名前を挙げ、降りる駅名を教えてくれた。
父の日のプレゼントの相談をした時『何を贈るつもりなのか』と聞かれて『ネクタイがいいかな』と答えた。男性ならではのプレゼントだと思うし、なにより父の日のプレゼントとして定番っぽい気がしたからだ。毎日仕事に締めていくのだから役にも立つだろう。問題は、真尋のお小遣いで買える値段なのかどうかだった。
製薬会社社長なのだから義父のネクタイはきっと高級ブランドのもののはずだ。インターネットで値段を調べてみたらやはりぴんきりだった。
巧に予算を聞かれて、貯めてきたおこづかいを考慮して『一万円前後かな』と答えた。さすがにいくらなんでも一本千円のものを贈るわけにはいかない。
やはり義父には格好いい『お父さん』でいてほしいのだ。
巧は『不足分は俺が払うから、二人で贈ろう』と言ってくれた。おかげでふさわしいものを選べそうだ。それにやっぱりわくわくする。
電車を降りてファッションビルへと向かった。街中は人が多い。けれど迷いなく歩いていく巧の後をついていくことで、人にもまれずに済んだ。
高校生の自分には少し敷居の高いフロアに入る。メンズものばかりのフロアは見るからに高級ブランドで埋め尽くされている。
巧は様々なブランドのネクタイが並んでいるブースへと真尋を案内してくれた。
「このあたりから選べば間違いない」
シルクの艶とシックな色柄。
綺麗に並んだネクタイは男性を彩るアクセサリーの一つなんだなと実感する。
真尋は義父が身に着けた様子を想像しながらフロア内をゆっくりと歩いた。ブランド名はわからないが、ちらりと値段はチェックした。素敵だなと思うものはやはりそれなりのお値段で、予算オーバーなものもあって残念な気持ちになる。
巧が負担してくれるなら買えるだろうけれど、真尋が父の日に選ぶには背伸びをしすぎている気もして、そこはやむなく選択肢からはずした。
真尋が悩んでいると店のスタッフであろう二十代ぐらいの男性が近づいてくる。けれど、それを巧が制してくれた。
こんなとき一人じゃなくて良かったと思う。話しかけられたら緊張と恥ずかしさできっと逃げ出したに違いない。
そして巧のさりげない優しさに嬉しくなる。
真尋は二種類のネクタイを手にして、それぞれを比べた。
ひとつは義父がいつも身に着けているものに近いデザイン。もうひとつは義父なら選ばないかもしれないけど似合いそうだなとちょっと冒険したもの。
「真尋。悩んでいるのか?」
「うん、これか、こっちかがいいかなと思うんだけど、どう思う?」
「……ふうん、こっちはオーソドックスだな。もうひとつは……あまり見ない雰囲気だけど意外にいけそうな気もする」
そうだよね、と同意を得られて嬉しくなる。どちらも義父には似合いそうだ。
「あえてこっちにしたらどうだ? イメージ変わっていいんじゃないか?」
「うん、じゃあこっちにしようかな」
オーソドックスなネクタイなら何本もある。だからあえて冒険したものを選んだ。
「じゃあ、そうだな、次は俺のものを選べよ。このあたりから」
巧は真尋が決めた商品を店のスタッフに預けると、隣の棚を示した。義父のよりもあきらかに若々しい色柄のものが並んでいる。
「会社の手伝いに行くときに使いたい。おまえが選んで」
真尋はじっと巧を見た。スーツ姿の巧は何度か見たことがある。
ネクタイを選ぶという作業は一緒なのに、巧のものを選ぶと思うと違う緊張が走った。
「私のセンスに文句言わないでね」
「さあ、どうかな」
文句を言われたら自分で選んでもらおうと開き直って、真尋はネクタイを眺めた。
巧のシャツの襟もとを飾るそれ。
イケメン御曹司だからなんでも似合うし、着こなせる。きっと派手なものやポップなものでもいけるはずだ。でも、会社の手伝いの時に使うなら……と考える。
まだ大学生の彼が会社でどういう立ち位置にいるのかわからない。でも、彼らしい俺様っぽさと横暴さを気品でカバーできるようなものがいい。
シルバーは細かい網目模様、ブルーグレーは縞のグラデーション。
「真尋、あててみせて」
巧に言われて、真尋は順にそれらをあてた。今日のシャツは濃いグレーだからどちらも映える。
会社だと白いシャツが多いかもしれない。
シルバーは模様がおしゃれだし、ブルーグレーはグラデーションが綺麗だ。どちらも捨てがたい。
「巧くんはどっちが好き?」
巧は鏡の前に移動して、真尋があてる様子を見る。鏡越しにうつる自分たちは、周囲からどんなふうに見えているのだろうか。
ふとそう思った。
そのタイミングで、背後に立った女性のスタッフが「お客様は素敵ですので、どちらもお似合いですね」と声をかけてきた。
まだ年若い女性スタッフはきらきらした目で巧を見ている。
「妹さんですか? お兄さんのネクタイを選ぶなんて仲の良いご兄妹なんですね」
何気ないその台詞に真尋はぴくっとしてネクタイをおろした。
巧はすっと女性スタッフに視線を流す。そこにはにこやかさがないどころか、どこか冷めた、ある意味いつもの巧の姿があった。
「妹じゃなくて彼女ですよ」
言うなり巧はポニーテールにした真尋の髪の先を指に絡めてキスを落とす。
意味深な光を宿したその視線は色気さえあって、女性スタッフばかりか当の真尋自身をも狼狽えさせた。
「真尋、両方もらおう。さっき選んだものはプレゼント用に、この二本は普通でいい。会計をお願いします」
真尋が手にしていたものを女性スタッフに渡すことで、すぐさま彼女を追い払う。真尋はいまだ固まったまま、そのやりとりをただ見守っていた。
「……彼女?」
「いいだろう、別に。おまえが妹だなんて言ってみろ。モーションかけられて面倒なことになる」
(あ! そ、そういうことか)
あの女性スタッフの興味をそらすために、あえて『彼女』と言ったのだ。
ああ、びっくりした。巧の一言は心臓に悪い。
真尋はドキドキとむやみやたらに鳴り始めた心臓を落ち着かせるべく、意味もなくとんとんと胸元を叩いてみた。
けれど鏡越しに自分たちの姿を見たときに感じたものが頭を過る。
できるだけ大人っぽい格好をしたつもりだった。
でも腰の大きなリボンとか、ストラップシューズとか、ポニーテールとか――巧の隣に立つ自分を見たとき、子どもっぽいと思った。
釣り合っていないと思った。
「……嘘だってバレていると思うよ。どう見ても彼女には見えないもん」
せいぜい妹にしか見えない。だからあの女性も最初から『妹さんですか?』と聞いたに違いない。
「なんで?」
「……だって、私……子どもっぽい」
「かわいいし、似合っている。でも――おまえが気になるなら、彼女らしくするか?」
「え?」
いや、元々義理とはいえ『妹』なのだから『妹』で構わないのだ。
「カードでまとめて払うから。あとでおまえの支払い分は現金でくれればいい」
「あ、うん」
巧はスタッフにクレジットカードを渡した。プレゼント用に包装されたものと、普通に包装されたもの二点を確認した後はひとつにまとめてもらう。
『彼女らしくする』と言った巧の言葉の意味がわかったのは、そのすぐあとのことだった。
勤めている総合病院に近いこのマンションを出るのは正直悩んだ。けれど仕事が不規則な真尋と忙しい巧ではなかなか会う時間が確保できない。
入籍も済ませて夫婦になったし、結婚式の準備もしなければならない。
巧からは再三『早めに引っ越してこい』だの『結婚したんだから別居はおかしい』だの拗ねたように言われた挙句、最終的に『会えないのは耐えられない』と泣き言を漏らされた。
それでも重い腰をあげずにいると、巧のほうが真尋の狭い部屋に入り浸るようになった。
セミダブルのベッドだから二人で寝ても窮屈ではない。けれど、だんだん増えてくる巧の私物が部屋を占拠しはじめ、深夜勤務を終えて帰ってきて寝ている巧を起こさないよう動くのも気疲れするようになった。
なによりこのマンションには同じ病院に勤務する職員も入居している。そのため、よからぬ噂が広まり始めたのだ。
いわく――入ったばかりの新人がイケメンを部屋に連れ込んでいる――と。
病院では結婚したことを公にしていない。就職一年目で結婚したことも、その相手が湯浅製薬の御曹司であることも、元義理の兄であることも格好の噂の餌食になるからだ。いずれは知られるにしても、今はまだそのタイミングではないと真尋は思っている。
巧は、最初こそ真尋の部屋の狭さに文句を言っていたけれど、数歩も歩く必要なく真尋のそばにいられるとあって、それはそれで気に入ったようだった。
部屋に二人でいると巧はとにかくベタベタしてくる。そのため、真尋には一切逃げ場がない。
髪に触れ、体を抱き寄せ、すぐさま衣服を剥ぎ、真尋を激しい快楽に落とし込む。逃げ場がなければ体力がもたない。よって、真尋はようやく重い腰をあげることにしたのだ。
引っ越しを決めたら決めたで巧は喜んで、すぐさま引っ越し日時を決めてしまった。
全部業者に任せればいいと言ったけれど、他人に私物を触られるのには抵抗がある。それに物もそんなに多くない。
そのため真尋は時間があるときに、段ボール箱にちまちま荷物を詰める作業を行っていた。
日常生活に必要のないものから段ボール箱にしまいながら、真尋はふと懐かしいものを小物入れから見つけた。
そこには、髪が短かった時には必要なかったヘアアクセサリー類が入っていて、中に一際綺麗なヘアバレッタがあった。
それを手にしてしばし眺める。
ピンクベージュのふたつの花。花弁には華やかなビジューが散らばっている。数万円はする高級ヘアアクセサリーブランドのものだ。
当時、高校生だった真尋には、大人っぽくて贅沢な代物だった。それまで雑貨屋で数百円のものしか買ったことがなかったので、ヘアバレッタにこれだけお金をかけるなんてもったいないと驚いた。
働きだした今だってきっと手にするにはためらう。
真尋は肩に届くようになった髪をそのヘアバレッタでまとめた。巧がしきりに髪を伸ばせというので、結婚式も意識して髪を伸ばしている最中だ。
久しぶりにそれを髪につけて、真尋はその時の巧の表情を思い出す。
眩しそうに愛しそうに見つめて『似合っている』と呟いて、いつものように髪に指を絡めてきた。
それは義理の妹になった真尋が、初めて巧の彼女の振りをした日でもあった。
***
――真尋、高校二年。五月のとある土曜日。
その日、真尋は久しぶりに徒歩で自宅の最寄り駅までの道を歩いていた。普段はほとんど車で移動するため、家から近い駅を利用することはあまりない。けれど今日はその駅で、真尋は巧と待ち合わせをしていた。
巧はこの春に家を出て一人暮らしを始めた。元々大学入学と同時に一人暮らしをする予定だったのを、延期していただけだったらしい。
なかなか会えなくなったため先日思い切ってメッセージを送ったのだ。
『今年の父の日はどうするつもりなのか?』と。
母親が結婚して真尋には義理の父と兄ができた。去年、初めて迎えた父の日に、真尋はお礼の気持ちを込めてハンカチをプレゼントした。父親がいない真尋にとって、初めて贈った父の日のプレゼントだ。
義父はできたばかりの娘からのプレゼントに大げさではなく号泣した。小さな頃ならともかく、巧が父の日のプレゼントを準備することはなかったようで、ひとしきり泣いた後義父は『実の息子からは一切ないのに、真尋ちゃんからもらえるなんて感激だよ』と巧を見て言ったのだ。
父親の嫌味を受けた巧はその直後『こういうことをやるときは必ず俺にも声をかけろ』と真尋に八つ当たりをしてきた。だから以降家族のイベントごとがあるたびに、巧にお伺いをたてることにしている。
今回も同じ経緯で問い合わせた結果『今年は一緒に選ぶぞ』と言われ、買い物には車ではなく電車で行こうと提案された。
『たまには公共交通機関を使う練習をしろ』と。
真尋の通う高校は車送迎が原則だ。
家から出かけるときも車だし、友人である結愛と遊ぶときだって矢内家の車で出かける(なぜなら結愛はプライベートでも車を使うよう厳命されているからだ)。だからあえて使うようにしないと電車に乗る機会はほとんどない。
中学生の頃は塾へ通う時に電車を使っていたものの、遠くまで出かけることはなかったので、遊びで使った経験は少なくて、巧の言うことにも一理あると思えた。
そして過保護な義理の兄は、自宅からの最寄り駅を待ち合わせ場所に指定したのだ。ちなみに自宅から駅まで十分もかからないのに車で送ってもらえと言ってもいたが、さすがにそれは遠慮してこうして歩いている。
巧と二人で出かけたことは何度かあるが、駅での待ち合わせは初めてだ。
今日の真尋は、春休みに結愛と一緒に買い物に出かけたときに購入した少し大人びたワンピースを身に着けている。ノースリーブの膝丈Aラインのワンピースは臙脂色。紺色か臙脂色かで結愛と悩んで、結局結愛が紺を真尋が臙脂を選んで、二人でお揃いにしたものだ。前結びのリボンが少し大きめでちょっとキュートな感じもある。
上にオフホワイトのカーディガンを羽織って、同じ色のサンダルを合わせた。バッグは去年のクリスマスに巧からプレゼントされたこげ茶のハンドバッグ。斜め掛けできるベルトもついているけれど、今日はあえてはずして手で持っている。背中まで伸びた髪はポニーテールにした。
巧が一緒の時はできるだけ大人っぽい格好をするようにしている。そうしなければ、あのイケメン御曹司のオーラに負けて、隣にいることに気後れしてしまうからだ。
真尋はなんとなくくすぐったい気分で駅に向かいながら、まるでデートみたいだな、と経験もないくせに思った。
現実は義理の兄とのお出かけでしかない。
駅へ近づくと、改札のそばに立っているイケメンに気づいた。わざわざ外に出てこなくても駅のホームでの待ち合わせでいいと言ったのに。
巧は真尋に気づくとにやりと笑みを浮かべる。時間通りに迷わずに来たな、とまるで小学生でも見ているようだ。
「歩いてきたのか?」
「うん。ホームで待っていれば良かったのに」
「電車の乗り方忘れていたら困ると思って。チャージしてあるか?」
ICカードなんて久しぶりに探し出した。真尋が「わからない」と言うと、すぐさま巧が手にして確認し現金をチャージする。
「巧くん、お金」
「必要ない」
「……うん、ありがとう」
こういうときいまだに真尋は迷う。
巧にばかりに支払わせるのは申し訳ないとも思うのに、妹だったらあたりまえなのかなと考えたりもする。そういう線引きが時々わからなくなるのだ。
改札を抜けてホームに向かうと、タイミングよく電車が入ってきた。
通勤・通学の時間帯の電車ほどではないだろうが、休日だからなのかそこそこ人が乗っていて席は全部埋まっているし、立っている人も多かった。
「真尋、こっちだ」
扉のそばで巧が招く。混雑しているわけでもないのに庇うようにして巧は立ちふさがって、真尋はドキドキした。
今日の巧は、黒いパンツに濃いグレーのシャツ。上にはデザイン的にあしらわれたジッパーが個性的なオフホワイトのブルゾンを羽織っている。大学生らしいカジュアルさと上品さが、彼にとてもよく似合っていた。
なんとなくお互いオフホワイトの上着がまるでお揃いのようで、少し恥ずかしかった。
周囲にいる女の子たちの視線がすぐに巧に集まる。
中学までは共学だったのだから男性に全く免疫がないわけではない。なのに女子校に通う弊害か、こんなふうに異性に近くに立たれると、兄という間柄の相手なのに緊張する。
(こういう状況に慣れていないからであって、巧くんにドキドキしているわけじゃない)
なぜか自分に言い聞かせたくなる。
「このワンピース初めて見た。かわいいな。おまえに似合っている」
不意に言われてびっくりして巧を見上げた。
真尋の身長は標準だが、こんなに近いと巧を見上げる形になる。すぐそばに巧ののどぼとけや庇うように伸ばされた腕があり、さらに車に乗った時にも感じるいつもの彼の香りがした。
「あ、ありがとう」
「なに? 照れている?」
「別に、照れていない」
そう言いながら顔を背けてしまう。
(近い……近いよ、巧くん)
一緒に暮らしている間も、少年から青年に変化していく様を見てきた。今は久しぶりに会うごとに彼が大人の男性になっているのだと感じている。
「そういえばどこへ行くの?」
恥ずかしさを誤魔化すべく、真尋は話題をそらす。
巧はファッションビルの名前を挙げ、降りる駅名を教えてくれた。
父の日のプレゼントの相談をした時『何を贈るつもりなのか』と聞かれて『ネクタイがいいかな』と答えた。男性ならではのプレゼントだと思うし、なにより父の日のプレゼントとして定番っぽい気がしたからだ。毎日仕事に締めていくのだから役にも立つだろう。問題は、真尋のお小遣いで買える値段なのかどうかだった。
製薬会社社長なのだから義父のネクタイはきっと高級ブランドのもののはずだ。インターネットで値段を調べてみたらやはりぴんきりだった。
巧に予算を聞かれて、貯めてきたおこづかいを考慮して『一万円前後かな』と答えた。さすがにいくらなんでも一本千円のものを贈るわけにはいかない。
やはり義父には格好いい『お父さん』でいてほしいのだ。
巧は『不足分は俺が払うから、二人で贈ろう』と言ってくれた。おかげでふさわしいものを選べそうだ。それにやっぱりわくわくする。
電車を降りてファッションビルへと向かった。街中は人が多い。けれど迷いなく歩いていく巧の後をついていくことで、人にもまれずに済んだ。
高校生の自分には少し敷居の高いフロアに入る。メンズものばかりのフロアは見るからに高級ブランドで埋め尽くされている。
巧は様々なブランドのネクタイが並んでいるブースへと真尋を案内してくれた。
「このあたりから選べば間違いない」
シルクの艶とシックな色柄。
綺麗に並んだネクタイは男性を彩るアクセサリーの一つなんだなと実感する。
真尋は義父が身に着けた様子を想像しながらフロア内をゆっくりと歩いた。ブランド名はわからないが、ちらりと値段はチェックした。素敵だなと思うものはやはりそれなりのお値段で、予算オーバーなものもあって残念な気持ちになる。
巧が負担してくれるなら買えるだろうけれど、真尋が父の日に選ぶには背伸びをしすぎている気もして、そこはやむなく選択肢からはずした。
真尋が悩んでいると店のスタッフであろう二十代ぐらいの男性が近づいてくる。けれど、それを巧が制してくれた。
こんなとき一人じゃなくて良かったと思う。話しかけられたら緊張と恥ずかしさできっと逃げ出したに違いない。
そして巧のさりげない優しさに嬉しくなる。
真尋は二種類のネクタイを手にして、それぞれを比べた。
ひとつは義父がいつも身に着けているものに近いデザイン。もうひとつは義父なら選ばないかもしれないけど似合いそうだなとちょっと冒険したもの。
「真尋。悩んでいるのか?」
「うん、これか、こっちかがいいかなと思うんだけど、どう思う?」
「……ふうん、こっちはオーソドックスだな。もうひとつは……あまり見ない雰囲気だけど意外にいけそうな気もする」
そうだよね、と同意を得られて嬉しくなる。どちらも義父には似合いそうだ。
「あえてこっちにしたらどうだ? イメージ変わっていいんじゃないか?」
「うん、じゃあこっちにしようかな」
オーソドックスなネクタイなら何本もある。だからあえて冒険したものを選んだ。
「じゃあ、そうだな、次は俺のものを選べよ。このあたりから」
巧は真尋が決めた商品を店のスタッフに預けると、隣の棚を示した。義父のよりもあきらかに若々しい色柄のものが並んでいる。
「会社の手伝いに行くときに使いたい。おまえが選んで」
真尋はじっと巧を見た。スーツ姿の巧は何度か見たことがある。
ネクタイを選ぶという作業は一緒なのに、巧のものを選ぶと思うと違う緊張が走った。
「私のセンスに文句言わないでね」
「さあ、どうかな」
文句を言われたら自分で選んでもらおうと開き直って、真尋はネクタイを眺めた。
巧のシャツの襟もとを飾るそれ。
イケメン御曹司だからなんでも似合うし、着こなせる。きっと派手なものやポップなものでもいけるはずだ。でも、会社の手伝いの時に使うなら……と考える。
まだ大学生の彼が会社でどういう立ち位置にいるのかわからない。でも、彼らしい俺様っぽさと横暴さを気品でカバーできるようなものがいい。
シルバーは細かい網目模様、ブルーグレーは縞のグラデーション。
「真尋、あててみせて」
巧に言われて、真尋は順にそれらをあてた。今日のシャツは濃いグレーだからどちらも映える。
会社だと白いシャツが多いかもしれない。
シルバーは模様がおしゃれだし、ブルーグレーはグラデーションが綺麗だ。どちらも捨てがたい。
「巧くんはどっちが好き?」
巧は鏡の前に移動して、真尋があてる様子を見る。鏡越しにうつる自分たちは、周囲からどんなふうに見えているのだろうか。
ふとそう思った。
そのタイミングで、背後に立った女性のスタッフが「お客様は素敵ですので、どちらもお似合いですね」と声をかけてきた。
まだ年若い女性スタッフはきらきらした目で巧を見ている。
「妹さんですか? お兄さんのネクタイを選ぶなんて仲の良いご兄妹なんですね」
何気ないその台詞に真尋はぴくっとしてネクタイをおろした。
巧はすっと女性スタッフに視線を流す。そこにはにこやかさがないどころか、どこか冷めた、ある意味いつもの巧の姿があった。
「妹じゃなくて彼女ですよ」
言うなり巧はポニーテールにした真尋の髪の先を指に絡めてキスを落とす。
意味深な光を宿したその視線は色気さえあって、女性スタッフばかりか当の真尋自身をも狼狽えさせた。
「真尋、両方もらおう。さっき選んだものはプレゼント用に、この二本は普通でいい。会計をお願いします」
真尋が手にしていたものを女性スタッフに渡すことで、すぐさま彼女を追い払う。真尋はいまだ固まったまま、そのやりとりをただ見守っていた。
「……彼女?」
「いいだろう、別に。おまえが妹だなんて言ってみろ。モーションかけられて面倒なことになる」
(あ! そ、そういうことか)
あの女性スタッフの興味をそらすために、あえて『彼女』と言ったのだ。
ああ、びっくりした。巧の一言は心臓に悪い。
真尋はドキドキとむやみやたらに鳴り始めた心臓を落ち着かせるべく、意味もなくとんとんと胸元を叩いてみた。
けれど鏡越しに自分たちの姿を見たときに感じたものが頭を過る。
できるだけ大人っぽい格好をしたつもりだった。
でも腰の大きなリボンとか、ストラップシューズとか、ポニーテールとか――巧の隣に立つ自分を見たとき、子どもっぽいと思った。
釣り合っていないと思った。
「……嘘だってバレていると思うよ。どう見ても彼女には見えないもん」
せいぜい妹にしか見えない。だからあの女性も最初から『妹さんですか?』と聞いたに違いない。
「なんで?」
「……だって、私……子どもっぽい」
「かわいいし、似合っている。でも――おまえが気になるなら、彼女らしくするか?」
「え?」
いや、元々義理とはいえ『妹』なのだから『妹』で構わないのだ。
「カードでまとめて払うから。あとでおまえの支払い分は現金でくれればいい」
「あ、うん」
巧はスタッフにクレジットカードを渡した。プレゼント用に包装されたものと、普通に包装されたもの二点を確認した後はひとつにまとめてもらう。
『彼女らしくする』と言った巧の言葉の意味がわかったのは、そのすぐあとのことだった。
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トレーニング動画から切り取られたその二言は、意味深な字幕まで添えられ、Xのトレンド「#一ノ瀬玲央の専属トレーナー」で一日中繰り返し再生された。
私は、今度こそ本当に終わったと思った。
相手は売れっ子俳優だ。所属事務所の法務が本気になれば、損害賠償に違約金、名誉毀損への対応――どれか一つだけでも、学生の私には払いきれない。
けれど騒動が決定的になったその夜、当の本人が私の部屋を訪ねてきた。
玲央は帽子を深くかぶり、マスクの上からでも分かるほど傷ついた目で私を見ていた。
「どうして返事をくれないの?」
「もう、俺とは関わりたくない?」
答えを探しているうちに、彼が一歩だけ距離を詰める。
「トレンドが何個増えたって、そんなのどうでもいい」
まっすぐな視線が私を捉えた。声は、ひどく優しかった。
「水城トレーナー。俺は命だって、あなたに預けたい」
初色に囲われた秘書は、蜜色の秘処を暴かれる
ささゆき細雪樹理にはかつてひとまわり年上の婚約者がいた。けれど樹理は彼ではなく彼についてくる母親違いの弟の方に恋をしていた。
だが、高校一年生のときにとつぜん幼い頃からの婚約を破棄され、兄弟と逢うこともなくなってしまう。
あれから十年、中小企業の社長をしている父親の秘書として結婚から逃げるように働いていた樹理のもとにあらわれたのは……
幼馴染で初恋の彼が新社長になって、専属秘書にご指名ですか!?
これは、両片想いでゆるふわオフィスラブなひしょひしょばなし。
※ムーンライトノベルズで開催された「昼と夜の勝負服企画」参加作品です。他サイトにも掲載中。
「Grand Duo * グラン・デュオ ―シューベルトは初恋花嫁を諦めない―」で当て馬だった紡の弟が今回のヒーローです(未読でもぜんぜん問題ないです)。
王妃教育を辞退したら「困る」と国王陛下が直接迎えに来ました ~婚約破棄された私に、王太子ではなく国王陛下が求婚してきます〜
由香【全一話完結】
王太子の心変わりによって婚約を破棄された侯爵令嬢リリアーナ。
十年以上受け続けた王妃教育も辞退し、ようやく自由になれると思っていた。
ところが数日後、侯爵家を訪れたのは国王陛下本人。
「王妃教育を辞退されると困る。私の妃になってほしい」
努力を踏みにじった王太子はすべてを失い、選ばれたのは誠実に生きてきた彼女だった。
これは、年上国王に溺愛されながら、世界一幸せな王妃になるまでの逆転ラブストーリー。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
左遷先の町工場で、無口な職人さんに恋をしたら人生が動き出しました
ちょこまろ本社で炎上の責任を押しつけられ、子会社の町工場へ左遷された広報担当・三浦光莉。
キャリアは終わった。
そう思ってたどり着いた古い工場で出会ったのは、無口で無愛想な職人・瀬川蓮だった。
「うちに、広報なんて必要ですか」
冷たい言葉に傷つきながらも、光莉は彼の作る試作品に心を奪われる。
それは、まだ誰にも届いていない小さな金属プレート。
けれど光莉には、その一枚が人の暮らしを変える光に見えた。
左遷された広報女子と、不器用だけど誠実な職人。
ふたりが町工場の商品を世の中へ届けようとしたとき、止まっていた光莉の人生も、静かに動き出す。
仕事も恋も、もう一度ここから始めたい。
町工場で生まれる、再生ラブストーリー。
「君はいらない」と捨てられた夜、天敵の冷徹社長に「なら、俺が貰う」と拾われました。――手を出さない約束でしたが、彼の理性が限界のようです
葉山 乃愛【婚約破棄から始まる、不器用なライオン(冷徹社長)の猛烈な求愛!】
「俺の妻になるなら覚悟しろ。……もう、指一本逃がすつもりはない」
★あらすじ★
「美月は完璧すぎて、可愛げがないんだよ」
28歳の誕生日。
一流ホテルのウエディングプランナーである相沢美月(あいざわ みつき)は、婚約者の裏切りにより、結婚目前ですべてを失った。
雨の降る路地裏。
ヒールも折れ、心も折れてうずくまっていた美月の前に現れたのは、かつての高校時代の天敵であり、現在は勤務先の冷徹な社長 一条蓮(いちじょう れん)だった。
「捨て猫以下だな」
そう憎まれ口を叩きながらも、彼は泥だらけの美月を躊躇なく抱き上げ、最高級ペントハウスへと連れ帰る。
そして、彼が突きつけたのは、あまりにも強引な提案だった。
「住む場所がないなら、俺の家に来い。その代わり――俺の『婚約者』役を演じろ」
利害の一致した契約関係。
条件は「お互いに干渉しないこと」、そして「決して手を出さないこと」。
……のはずだったのに。
「髪、濡れたままだと風邪を引く」
「あんな男のために泣くな。顔が台無しだ」
同居生活で見えてきたのは、冷徹な仮面の下に隠された、不器用すぎるほどの優しさと独占欲。
美月が作った手料理を誰よりも美味しそうに食べ、元婚約者が復縁を迫ってくれば「俺の女に触れるな」と徹底的に排除する。
天敵だったはずの彼に守られ、凍っていた美月の心は次第に溶かされていく。
しかし、ある雷雨の夜。
美月が不用意に彼に触れた瞬間、一条の理性のタガが外れてしまい――。
「……手を出さない約束? 撤回だ」
「そんな無防備な顔で見つめて、何もしないでいられるほど、俺は聖人君子じゃない」
10年越しの片思いをこじらせたハイスペック社長 × 仕事熱心で恋愛に臆病なプランナー。
契約から始まった二人の関係が、本物の愛(溺愛)に変わるまで。
元婚約者への痛快な「ざまぁ」も収録した、極上の大人のシンデレラストーリー!
【登場人物】
◆相沢 美月(28)
ホテルの敏腕ウエディングプランナー。真面目でお人好しな性格が災いし、「つまらない女」と婚約破棄される。実は家事万能で、酔うと少しだけ甘えん坊になる(本人は無自覚)。
◆一条 蓮(28)
ホテルグループの社長。美貌と才覚を併せ持つが、他人に興味を示さないため「氷の貴公子」と呼ばれる。実は高校時代から美月を一途に想い続けており、彼女のこととなると冷静さを失う。
一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました
由香没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。
ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。
遠い存在になったはずの彼。
けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。
冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。
完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす
小木楓完結しました✨
タグ&あらすじ変更しました。
略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。
「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」
「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」
大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。
しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。
強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。
夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。
恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……?
「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」
逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。
それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。
「一生、私の腕の中で溺れていろ」
守るために壊し、愛するために縛る。
冷酷な仮面の下に隠された、
一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。
★最後は極上のハッピーエンドです。
※AI画像を使用しています。