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しおりを挟む私は庭に連れ出された。
生きたまま火あぶりにするそうだ。
クリスも悪魔の子なので私と一緒に火あぶりにすると言っている。
庭では高々と炎が燃え上がり、綺麗だった。
キャンプファイヤーのようだ。
私は体を縛られ、クリスと一緒に火の中に投げ入れられた。
集まった人達の歓声が上がった。
不思議と、熱くなかった。
限界を超えた悲しみのせいか、火に入れられたためか、私の中のもう1人の私が顔を出した。
私は燃え盛る炎の上にいた。地上3メートルくらいだろうか。
腕にはクリスを抱いている。
夜空の下、炎が地面を埋め尽くす中で、私の姿が遠くの者に分かるだろうか。
この小麦色の髪と新緑の瞳が見えるだろうか。
でも心配ないわね、この世界に炎の上に浮かぶ女など私以外に存在しないのだから。
私の正体に気づいた者が、順に跪いていくのが、上から見えた。
跪くというより、力なく膝を折るという方が正しいか。
興奮と奇声にあふれていたのが、シンと静まり返った。
「この星はすでに軌道を外れている。じきに浮遊惑星になる。今までは私が光となって冷たい星を支えてきた。でももう春は来ない。どんどん寒くなり。光もなくなる。さようなら、みなさん。私は新しい星に移る」
私の声は、静かなのに、どこまでも届き心に語り掛ける不思議な声だった。
私は全てを思い出した。
春の女神と呼ばれた、ヴェラとしての自分も、エリナとしての自分も。
両方の『私』が私の中にいる。
もっとも、エリナとしての私の外見は燃やされてしまったけれど。
遥か昔、私はこの星を見つけ、気に入って住み始めた。
この星の死を感じた私は、めぼしい星に自分の分身を作り生活させ、様々な星を吟味した。
やっと気に入った星を見つけた私は、新しい星にこの星の生命を移すため、この星に戻った。
神としてではなく、1人の人間として最後にこの星を見てみようと、作った分身の1つ『エリナ』の姿で私はこの星に帰ってきた。
そして、この悲劇が生まれた。
私は生命の移動を取りやめ、エド、ナナ、クレアとウォーレンの魂を持ち、クリスを抱いて新しい星に旅立った。
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