1 / 7
第1章
発症
しおりを挟む
「PTSDが出てますね。」
精神科医が言った。
戦地に赴いた戦士が、戦後にかかるような病だ。
なんで俺にそんな症状がでる。
原因不明。そんなことはよくあることだ。
医学はクソだ。
医者の所見によれば、精神を相当程度に追い込むだけのストレスがある、との事だ。なんのことだか思い当たることがない。
「エブリーファイン」
バカみたいなネーミングの薬をもらった。
なにがファインだ。毎日元気って。製薬会社を訴えようかと思った。こいつは万能薬に見えて麻薬に近い。
クリニックを出て処方箋を投げ捨てた。
おれにこんなものはいらない。
ここは東卿都、六王子。
郊外のこのクソ田舎の街におれは住んでいる。
京皇線が都心の新宿まで伸びてるので便利ではある。
駅前は栄えてるが裏路地に行けばピンクのお店があったり、飲み屋に、パチンコ、浮浪者。ありきたりな光景がそこにある。
ラーメン屋のダクトからとんでもなくいい匂いがする。腹が減った。
腹ごしらえをすることにした。
席について、タウィッターをチェックしながら、ふと過去を思い出した。
おれは過去に一度、精神病棟に入っている。
これもまあ、そうなった原因は不明だが社会的には鬱と言われている。
ある日おれは、地下鉄に飛び込もうとしたらしい。
他人みたいな言い方をするのは、その時の状況をよく覚えていないからだ。
夢の中の暗いモヤの中で、もがいてもがいて、光が見えたのでそこに向かってある行ったのを覚えている。
その光が地下鉄のライトだったということを病室のベッドで悟った。
当時付き合ってたヒカリ。
心配して遠くから駆けつけてくれた。
衰弱して変わり果てたおれの姿を見て抱きついてきたのを今でも思い出す。
こんな欠陥人間にはもったいない子だった。
最大の愛情を受け取ったとき、おれは一人で生きていくことを決めた。
「へい、お待ち!」
思考を遮断するかのようにラーメンが出てきた。
これは美味そうだ。
六王子はラーメンだけは美味い。
隣の席のカップルがいちゃつく。
ラブホテルでやれよ。
ここはラーメン屋だ。
そう皮肉に思った。
あの頃のおれもこんなバカをやっていたかと思うと、ちがう意味で死にたくなる。
時に、幸せは思考を鈍らせ、周りを見えなくする。
見えなくなってるのは本人。
周りはそれを見て微笑ましく思ったり、殺意を抱いたりする。
「幸せそうだったから殺した」
ヤフィーニュースで殺人犯の情報を見た。
京皇線殺傷事件。
カップルの女の子の方を、彼の目の前で滅多刺しにしたらしい。
犯人は、女の子ではなく残された彼のココロの方を滅多刺しにしたかったのだろう。
やるなら二人ともやってあげればいいのに。
犯人は優しくないと思った。
残された方はたまったもんじゃない。
幸せそうなカップルに一瞥をくれて、水を一杯飲み干して店を出た。
精神科医が言った。
戦地に赴いた戦士が、戦後にかかるような病だ。
なんで俺にそんな症状がでる。
原因不明。そんなことはよくあることだ。
医学はクソだ。
医者の所見によれば、精神を相当程度に追い込むだけのストレスがある、との事だ。なんのことだか思い当たることがない。
「エブリーファイン」
バカみたいなネーミングの薬をもらった。
なにがファインだ。毎日元気って。製薬会社を訴えようかと思った。こいつは万能薬に見えて麻薬に近い。
クリニックを出て処方箋を投げ捨てた。
おれにこんなものはいらない。
ここは東卿都、六王子。
郊外のこのクソ田舎の街におれは住んでいる。
京皇線が都心の新宿まで伸びてるので便利ではある。
駅前は栄えてるが裏路地に行けばピンクのお店があったり、飲み屋に、パチンコ、浮浪者。ありきたりな光景がそこにある。
ラーメン屋のダクトからとんでもなくいい匂いがする。腹が減った。
腹ごしらえをすることにした。
席について、タウィッターをチェックしながら、ふと過去を思い出した。
おれは過去に一度、精神病棟に入っている。
これもまあ、そうなった原因は不明だが社会的には鬱と言われている。
ある日おれは、地下鉄に飛び込もうとしたらしい。
他人みたいな言い方をするのは、その時の状況をよく覚えていないからだ。
夢の中の暗いモヤの中で、もがいてもがいて、光が見えたのでそこに向かってある行ったのを覚えている。
その光が地下鉄のライトだったということを病室のベッドで悟った。
当時付き合ってたヒカリ。
心配して遠くから駆けつけてくれた。
衰弱して変わり果てたおれの姿を見て抱きついてきたのを今でも思い出す。
こんな欠陥人間にはもったいない子だった。
最大の愛情を受け取ったとき、おれは一人で生きていくことを決めた。
「へい、お待ち!」
思考を遮断するかのようにラーメンが出てきた。
これは美味そうだ。
六王子はラーメンだけは美味い。
隣の席のカップルがいちゃつく。
ラブホテルでやれよ。
ここはラーメン屋だ。
そう皮肉に思った。
あの頃のおれもこんなバカをやっていたかと思うと、ちがう意味で死にたくなる。
時に、幸せは思考を鈍らせ、周りを見えなくする。
見えなくなってるのは本人。
周りはそれを見て微笑ましく思ったり、殺意を抱いたりする。
「幸せそうだったから殺した」
ヤフィーニュースで殺人犯の情報を見た。
京皇線殺傷事件。
カップルの女の子の方を、彼の目の前で滅多刺しにしたらしい。
犯人は、女の子ではなく残された彼のココロの方を滅多刺しにしたかったのだろう。
やるなら二人ともやってあげればいいのに。
犯人は優しくないと思った。
残された方はたまったもんじゃない。
幸せそうなカップルに一瞥をくれて、水を一杯飲み干して店を出た。
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
【完結】私が愛されるのを見ていなさい
芹澤紗凪
恋愛
虐げられた少女の、最も残酷で最も華麗な復讐劇。(全6話の予定)
公爵家で、天使の仮面を被った義理の妹、ララフィーナに全てを奪われたディディアラ。
絶望の淵で、彼女は一族に伝わる「血縁者の姿と入れ替わる」という特殊能力に目覚める。
ディディアラは、憎き義妹と入れ替わることを決意。
完璧な令嬢として振る舞いながら、自分を陥れた者たちを内側から崩壊させていく。
立場と顔が入れ替わった二人の少女が織りなす、壮絶なダークファンタジー。
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる