先生、時間です。

斑鳩入鹿

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第2章

白痴-6-

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作戦行動当日。以前、先生から頼まれていた一番よれたスーツを持ってきた。
中小に営業に行く人はよれのある服で、かつ靴も使い古してる方が頑張ってる感じが伝わるのだとか。第一印象は全てを支配する。

斑鳩先生もいつものパリッとしたジャケットを脱いで、古着屋にでも売ってそうなくたった背広に手を通す。時計、靴、鞄。オーラが消える。髪の毛を無造作に散らかすと、もはや別人だ。見た目の変化に加えて猫背っぽく構えた。

身体の力の入れ方だと言うが、ボディコントロールで中小企業の営業マンな感じが引き立つ。

移動にタクシーを使うが、呼吸が変わってしまうので目的地付近で降りて、走るらしい。徹底的だ。

「さて、いきますか」

「はい、先生」

僕はリラックスできている。
例の女の子の件を思い出すが、それをいつまでも引きずっていても、仕事に支障が出てしまう。

組織にはいいひともわるいひともいる。僕がなんとかしなければならないのは、そのわるいひとだ。

ひとつの出来事を取り上げて全てを悪だと考えてしまっては成り立たない世の中だと理解している。

事業所を潰して正義のヒーロー気取り。
自分の欲求は満たされるが、悪者を吊るしあげても、世界は変わらない。また次の悪者が出てくる。

本当に向き合わなければいけないのは、悪者を吊るしあげたい気持ちなのだと思う。処罰感情。

ハートフル福祉作業所が潰れた場合、多くの人が受け入れ先を探すことになる。それは正義だろうか。

正義を振りかざして、それが悪いことなに繋がることはあることだ。

行き場を失った通所者を誰が守るのか。

それを逆手にとってる面もあるだろう。人は依存する生き物だ。
悪い関係でも辞めれない。それは昨日もそうだったから、今日もそう。明日もきっとそうでありたいと願う人間の心に原因がある。

だから、今回は視察にいってまずは中身を見定める。先生は「百聞は一見にしかず」とよく口にする。

「悪の根源はどこなのか。
それを噂や人の言葉だけで判断してはいけないよ。」と、言う。

「人は人の目に映る時、必ず仮面を被る。それは悪いことではないけれど、いくつもの仮面を重ねて一人の人間なんだ。
嘘をつくこともある。
でもね、どんな仮面でも瞳の奥は正直なものだよ。」

心の目で見定めないとーー

先生はそう続けた。

僕の目は先生に比べたら、見えるものが少ない。圧倒的な存在の先生と比べるのはおこがましいかもしれないが、僕もいつか今よりも澄んだ目で人の心の奥が見れたらいいなと思っている。



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