3 / 92
第一章―旅立ちと双子―
1−2・集落と人形
しおりを挟む―――山小屋―――
カポーン――
お風呂場から楽しそうな声が聞こえてくる。
「もう!早紀ちゃん!そんなに見たらはずかしぃ!」
「いいじゃん!減るもんじゃないしさ!どれどれ……」
「ちょ!ちょっとぉ!あっ……」
ごくり……
薪をくべながら、僕はお風呂に入ってる早紀と舞に声をかける。
「お、お湯加減はど、どお?」
「ん~ちょうどいいよぉ~ちょっ!早紀ちゃん!」
「桃矢!覗いたら八つ裂きの刑だかんね!」
「わ、わかってるよ!覗かないよっ!何かあったら呼んで!向こう行ってるから!」
『はぁ~い!』
ザッザッザッ……そろりそろり……
僕は向こうに行ったフリをする……昼間に壁の補修をしていて見つけた。なぜか丸くくり抜いてある小さな穴。明日塞がないといけないな。などと思いつつ……そっと覗く――!?
そこには、男子共が発狂するであろう、早紀と舞の産まれたままの姿があった――
早紀はスポーツ万能で美人……中学の頃から他校の男子が告白して来たりしてたほどだ。普段はポニーテールにしているが、今は髪を下ろし、引き締まった体の美しいラインがわかる。
舞は小柄でかわいい、妹みたいな存在だ……が!こちらも学校の男子共が発狂するであろう。性格は天然なのに黙っていたら早紀に負けず劣らずかわいい容姿だ。幼い頃は一緒にお風呂に入っていたのに、今となっては――
僕はそっと部屋に戻り、一人妄想にふけるのであった――
「はぁ、いいお湯だったぁ!桃矢!お風呂いい……よ。あれ、寝てる」
「お風呂上がったよぉ~桃矢くんもお風呂……あれ」
「ぐぅ……ぐぅ……」
寝たフリをし、何事もなかった素振りをする。僕は反省していた。幼馴染を妄想とは言え……汚してしまった。もう二度と覗きはすまい!
だがしかし!……あと一回くらいはするかもしれないがなるべくしないようしよう!
まともに顔が合わせられず、その日は寝たフリをしていてそのまま本当に寝ていた。
「……桃矢」
◆◇◆◇◆
翌日からはいつもどおりに振るまい、食料や薪を探して歩く。山小屋から杉林を抜け、小高い丘まで来た。山小屋からは歩いて十分くらいだろうか。
「ねぇ、桃矢?あの山の所に煙が見えない?」
早紀に言われ、目を凝らして見る。しばらく一点を見つめていると確かに煙らしき白い物が上がっている。
「どこどこぉ?んんん……見えない」
舞は視力があまり良くないせいか、見えていないみたいだ。
「人がいるかもしれない……と、このまま向かっても暗くなるまでに帰って来れないかもしれない。明日の朝一番で向ってみるよ。僕が一人で見に行く」
「危ないかもしれないよ?」
「様子を見て危なかったら逃げるさ」
片道二時間か三時間はかかるだろう。怪我が完治したとは言え、早紀が途中歩けなくなると大変だ。それに毎日の食料調達はかかせない。
翌日、僕は煙の上がっていた山すそへと暗いうちから出掛けることにした。人が住む集落があることを願いながら――
◆◇◆◇
僕が出掛けてから、早紀と舞はご飯の準備をしていた――
「早紀ちゃんはさぁ――」
「なぁに?」
「桃矢くんの事、好きなの?」
「は、はぁ?!唐突に何を言ってるの!好きじゃないわよ!あ、あんなヤツ!」
「ふぅん……私はね、桃矢くんの事が前から好きなの」
唐突な舞の告白に戸惑いを隠せない早紀。
「そ、そうなの!が、頑張ってね!お、お幸せに!」
山菜が入った沸騰した鍋に、箸とか、スプーンとか手当たり次第に入れ始める早紀――
「ちょ!ちょっと!早紀ちゃん!それは入れても食べれないっ!」
「お幸せに……お幸せに……お幸せに……」
グツグツ……
そんなやり取りをしていると、ふいに玄関の方で物音が聞こえた。
――バタン
「ちょ!舞っ!顔が赤いわよ!お幸せに!」
「えぇ~!何回、お幸せに!て言うのぉ~もぅ……て今、何か音がしなかった?」
「うん、聞こえた。何か倒れたような……」
二人は玄関をそっと開けてみる……
「ちょ!人が倒れてる!!」
「大丈夫ですかぁ!」
慌てて、その人を小屋の中へと運ぼうとする。
しかし……
「重すぎて動かない……」
「こんなに細い女性がこんなに重いってどういう……こ……とっ!!」
二人はうつ伏せ状態の女性の足を一本づつ持ち、せーので引きずり込む。
ズズズズ……
ゴン、ズズズズ……ガツン!ズズズズ……
引きずられ、顔面強打をしてると思われる女性なのだが、ピクリとも動かない。
「はぁはぁはぁ……」
「はぁはぁはぁ……早紀ちゃん……もう動けない……」
「……背中に何かある?」
その女性の背中に何か光ってる物がある。恐る恐る近付き見てみると……
『バッテリー交換をしてください』
の文字が点滅している。顔を見合わせる早紀と舞。
「え?どういう……え?」
「早紀ちゃん……この人って……ロボットさん……?」
舞の言った言葉を妙に納得してしまう早紀。
「ロボット……なのかな。ネコ型じゃないのに……」
「早紀ちゃん、それはドラえ……」
「わっーーー!!舞!それ以上は言っちゃ駄目!」
そうです。著作権とか色々あるんです。
「だってぇ!早紀ちゃんがネコ型ドラえ……」
「ぬおぉぉぉい!!」
そんなこんなで、二人はしばらく漫才をするのであった……
次回は『どこでもドアと――』
失敬。
次回『アンドロイドの秘密』でお会いしましょう。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
7
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる