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第一章―旅立ちと双子―
1−10・マイア・マイエスタ
しおりを挟む―――マイア神城―――
山小屋のあった場所に建てられた城は、皆からマイア神城と呼ばれていた。
そこには神と若い男女が住み、夜な夜な泣き叫ぶ声が聞こえてくると言う。
『お幸せにお幸せにお幸せに――』
と。
――ある日の朝
「なぁ、メイ。この大陸の法律というか、結婚に関してはルールがあるのか?」
「特にないデスネ。愛し合う人が一緒に住むという形くらいでショウカ。村長……失敬、町長さんは六人の奥様がおられたはずデス」
「六人!?」
カコーン
薪割りをしながら脅威の事実を知ることになった。
「あのじいさん……只者じゃねぇ……」
「絆を深めるために、古くからの言い伝えでエルフの森にあると言う貝殻をプレゼントする習わしがあるトカ……」
「森なのに貝殻……」
「えぇ、何でも森を抜けると海があり貝が育っているとかいないとか……言い伝えですけドネ」
「決めた!エルフの森に行こう!」
「桃矢様!そういうことでしたら私もお供致しますワ!」
この後、とんでもない事が待ち受けてるとも知らずに桃矢とメイは薪を割る。
カコーン
◆◇◆◇◆
「桃矢様……月が綺麗ですね」
「そ、そうだね」
夕食後、城のベランダで涼んでいると舞と愛がやってきた。愛は僕に対して日に日に思いを寄せているのか、今日は胸を寄せてアピールしてくる。
さわりたい。
「もう!愛!桃矢くんから離れなさいぃ!」
「ねぇさん!ちょ!待って!これから良いトコなの!」
「お幸せにお幸せにお幸せに――」
背後から殺気を感じる。
「つ、月が綺麗だなぁ……はは……は……は?」
違和感を覚えた。いつも見ている月が……
「月が大きくなってない?」
カタン――
後ろに居たメイが尻もちを付き、窓に寄りかかる。
「どうした?メイ?」
「桃矢様……アレは月の裁判デス……」
「月の裁判?」
「初めて見るわ……アレが月の裁判。あなた達はいったい何をしたの……」
愛が僕らを代わる代わる見渡す。
「桃矢くん……月が大きいんじゃない!近づいてくる!」
「噓……何よアレ……あんなのぶつかったら城が壊れるわ……」
「おいおいおいおぉぉい!!」
「ぶつかるっ!!」
月がどんどん迫って来て――
ズドドドドドドドォォォォ……
ピタッ!
数センチの所で止まる。
全員、腕で頭を隠しそっと目を開ける。
「へ?ウサギ?」
月……と言っても、良く見ると城よりは大きいが本物の月ではない。乗り物の様な……
「頭が高いっち!!ツクヨミ様の御前であるっち!」
「良い……お主らがマイア神の加護を持つ者か?」
「ツ、ツクヨミ様!?」
バッと、愛とメイが平伏する。
「桃矢様!ねぇさん!早紀様!このお方は――」
「かわいいな」
「え?何か言うたか?」
「ツク何とか。おまえかわいいな」
「ぽっ――」
『桃矢様のばかぁぁぁぁ!!』
僕は、皆にボッコボコにされ、舞の膝枕でツクヨミ様のありがたいお話を聞くことになった。
「……こほん。えぇ、用件を話そうか」
「は、はい」
「舞という子はおるか?」
「は、はい!わ、私です!」
「うむ、単刀直入に言おう。お主は元々この世界の神じゃった」
「へ?」
「マイエスタ神、それがそなたの本当の名じゃ」
「ふぇ?」
「やれやれ……マイア・マイエスタ神よ、お主らは双子ではなく元々一人だったのじゃ」
愛と舞が顔を見合わせる。そして舞より先に、早紀が口を開いた。
「うっそだぁ!」
「こらっ!口の利き方に気をつけるっぴ!」
「……うむ、そしてお前。そちはマイエスタの守護として使わせた神の使徒ぞ?」
「え?え?私も?」
うっそだぁ!の勢いはどこへいったのか。急にしおらしくなる早紀。
「お主ら二人には見張りとしてこの白兎を付けておいたのだ。見覚えがないか?」
「あっ!!大岩のとこにいたウサギ!!」
「そうだっぴ」
「時が来たので連れ返しに行かせたのじゃ。お主らのいた世界が滅ぶ前にな――」
――僕達の世界が滅ぶ?
「ど、どういうこと……」
「お主らが転送された後、世界崩壊が起き世界は死滅した」
「うそよ……そんなことっ!?ねぇ!メイは言ったよね!神の山から帰れるって!あれは噓だったの!」
早紀がメイの体を揺すりつける。
「……本当デス。ですがもし転送がうまく行き向こうの世界へ帰れても、早紀様は死んでおられると思いマス……」
「何よそれ……最初から選択肢は無かったんじゃないの!」
「やれやれ……マイエスタの使徒がこれでは話にならんな、少し寝ておれ」
バタン――
ツクヨミ様が腕をかざすと早紀は眠りについた。
「……さて、そこのお前」
「はいっ!」
ツクヨミ様がついに、僕を指差した。
僕はいったい何の神だったのだろうか……何を言われても動じず、受け止めよう。僕はこの世界で生きて行くと決めたのだから!
「お前は……うむ。……ただの人間じゃ、安心せい」
「なんでやねん」
僕だけまさかのノーマルタイプだった……
「向こうの世界では穴に落ちて死んだことになっておる」
「なんでやねん」
「かわいそうなので、この世界におまけで連れて来てやったのじゃ、感謝せい」
「それはありがとう。て、なんでやねん」
そうか……僕だけ……普通の人間で、死んだんだぁぁ……
「こやつもしばらく駄目じゃな。さて、マイア・マイエスタよ。今日はお主らに用があって来たのじゃ――」
その後、ツクヨミ様は月へと帰って行った。
早紀と僕は翌日まで夢の中だった。
そして――
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