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第二章―彷徨うジョナサン―
2−2・霧の都
しおりを挟む―――ウィンダの街―――
僕と早紀とメイは、北の大陸に渡るためウィンダの街で船を探していた。しかし北へ出向する船は無いと言う。情報収集に行き詰まり、合流した僕達。そこへ通りすがりの占い師が謎の言葉を残して立ち去る――
「女難の相が出ておる……」
「ジョナサンの象……」
メイが意味深な翻訳をして歩き出す……僕はいったいどうなってしまうのか!?
「メ、メイ!ジョナサンの象って何だ!」
「……桃矢様。お聞きにならない方がよろしいカト」
「駄目だ!気になる!教えてくれ!」
「……そうまで言われるなら付いてきて下サイ」
そう言うとメイはまた歩き出す。その顔はうっすら笑ったように見えた。
しばらく歩くと、町外れの墓地に着く。
「先日、たまたまこの墓地の前を通って見つけたのデス……」
お墓の横には石像が建てられ、プレートに何やら書かれている。
『この者は大勢の女性をたぶらかし、子を作ったあげく、金品を持ち逃げした罪にて極刑に処す―名・ジョナサン―』
その石像こそジョナサンだった。そして痛々しい事に大事な部分が切り落とされていた。
「ジョナサンの象さんが……」
早紀が口を手で多い、まじまじと石像を見ている。
「待て待て待て!僕は女難の相が出ていると言われただけで、ジョナサンの象――はっ!?」
言いかけて気付く。女難の相とはまさか!?
「ハイ……この地方では古くからジョナサンの象の事を、女難の相と言うそうデス……あの占い師は桃矢様にもしかしたらジョナサンの影が見えたのかもしれまセン……」
「OH!ジョナサァァァァンッ!!」
そして僕の叫び声はジョナサンに届いてしまった……
――翌日の朝
まさかのジョナサンの呪いが発動する。
「うぅん……」
何故だ。何故、早紀が僕の横で寝ているんだ!
昨夜も街の宿屋に泊まった。早紀とメイの二人部屋、僕は一人部屋を借りた。のだが……早紀が僕の布団の中にいる。
服は……着ていない。思い出せ思い出せ思い出せ……!!
「……覚えていない。最悪だ……」
「うぅん……桃矢?おはよ……」
「は……はは……は……おはよ……」
泣き叫ばれるかと思って覚悟を決める。しかし予想外の……早紀の反応に驚いた。
「昨夜はそのぉ……やだ……もぅ」
ジョナサン……あんたすげぇよ……
僕は早紀と……
でも待て……なぜだ。まったく覚えていない。
チュンチュンチュン――
◆◇◆◇◆
「メイ!おっはよう!」
「早紀様!目が覚めたらおられないのでどこに行ったのかと心配シテ……!」
「お散歩ついでに桃矢を起こしてきたわっ!さっ!今日もガンバロウ!」
「あ、ハイ!桃矢様おはようございマス」
「う、うん……おはよう」
気まずい雰囲気につい、顔をそむけてしまった。後で聞いたのだが、昨夜、早紀とメイは部屋に常備してあるハチミツ酒を知らずに飲んだらしい。早紀もかなり酔っていたそうだ。そしてなぜか僕は記憶がすっぽり無いのだ。あんなそんなこんなことをしたら起きたはずなのに……
「これが……ジョナサンの呪いか……」
「桃矢様?どうかされましタカ?」
「い、いや、何でもない」
僕達は一旦、マイア城へ戻ることにした。すでに一ヶ月近くも城を空けてしまった。舞と愛もそろそろ帰って来る頃というのもあった。
帰りも一週間の旅の道のりだ。必要な物資を揃えウィンダの街を後にする。
馬車に揺られる帰路の途中、土産物屋で買ったお土産を思い出し、早紀とメイに渡す。
パッカパッカパッカパッカ――
「この貝殻綺麗だろ?何個か買ったから二人には付いて来てくれたお礼だ」
「えぇ!ありがとう!桃矢!綺麗なペンダント!」
「桃矢様!その貝殻があの時、言ってたエルフの――」
「えっ!?」
それは突然の出来事だった。今、会話をしていたメイ、そして早紀……が忽然と目の前から消えた。
「早紀!?メイッ!!」
辺りはいつの間にか深い霧に包まれている。
「どういうことだ!?おい!誰かいないのか!」
サァァァァ……
霧で何も見えない。森の木々が風に揺れる音は聞こえる。手探りで、一歩ずつ一歩ずつ前へ進む。
「おぉい!誰かいないのか!」
荷馬車を引いていたおじさん、馬車、僕達以外の客、すべて消えた。しかし、僕の足元にあるこれは地面だ。夢ではない。しばらく進むと明かりが見えてくる。
「おぉい!誰か!」
霧の向こうの明かりに声をかけると、何か聞こえた気がした!
「フフ……かわいい坊や……おいで……」
と、ここで僕の記憶は途絶えた――
◆◇◆◇◆
目が覚めると、僕はベッドで寝ている。
「ここは……?」
なんだか懐かしい天井だ。木製の……そうだ。山小屋のコテージの天井を思い出す。
「あら?お目覚めですか?フフ」
「あなたは……?」
僕を覗き込むように、美しい顔立ちの耳の長い女性がこちらを見ている。
「エルフ……?」
「わぁ!すごい!エルフをご存知なのですね!フフ」
紅茶の良い香りがする。僕はゆっくと体を起こす。ずっと夢の様な体験をしているが、手も足もしっかり意識が繋がってる。匂いもするし、考えることも出来る。
「……現実なのか?」
「現実?何を仰っているのかわかりませんが、あなた様がこの村に来られてすでに三年が経っていますのよ」
「三年!?」
いや、落ち着け。そんなはずはない。肉体的に変わった所はない。痩せてもいなければ、記憶もしっかりある!
「嘘です。三日です。フフ」
「うそかぁい」
何だこのお茶目なエルフは……良く見ると美しいばかりか、ナイスなボディな持ち主だ。少し前かがみになる美女の胸元から目が離せない。
「さてさて、お食事の用意を致しますのでしばらくお待ちくださいね」
そう言うと、美女は部屋から出ていく。
まさかこれもジョナサンの呪いなのか……
僕はくしくも、ジョナサンの呪いに翻弄されている。
「クソッ!僕は何をしているんだ!」
拳を握りしめ、僕は思う。
ジョナサン万歳。
と――
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