異世界おにぃたん漫遊記

雑魚ぴぃ

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第二章―彷徨うジョナサン―

2−3・エルフの里

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―――エルフの里―――

 僕が霧の中で気を失い、目覚めた場所はエルフの里だった。食事を頂き、お風呂に入り、綺麗なお召し物に着替え、言われるがまま目の前のお尻……目の前の女性に誘導され付いていく。名前は確かメローペ――

「こちらです、桃矢様。フフ」

ここに何があるのだろう?僕は目の前の扉を開ける。すると――

「桃矢様!!」
「キャァ!桃矢様よ!」
「桃矢様ぁぁ!素敵!」

数百人の女性が眼下で僕に黄色い声援を送る。

「なっ!?何だこれは!?」
「お気に召しまして?フフ」
「うれしい……いや、そうじゃなくて!これはどういう……」

僕を案内してくれた女性が膝を付き、こう告げた。

「あなた様はエルフの里、唯一の男性。この中から好きな女性と性交し、お子を授けてくださいまし」
「任せろ……いや、ちょっと待て待て!ちょっと考えさせてくれ!」
「あなた様はかの偉大なジョナサンの魂を継ぐ者。婆様から聞いておりますれば――」

ふと、女性の後ろにフードを被った占い師の姿が見えた。

「ウィンダの街の占い師のばあさん!?」
「フォフォフォ……よう来たの、お若いの……」
「女難の相って言うのはこういう事か!ありがとう!いや、僕は仲間の所へ――」
「お若いの……諦めるのじゃ、そなたはここで生きていくのじゃ……ジョナサンがそうであったように……はぁふん!」

ビクッ!

え、今、はぁふん……て……大丈夫か、婆さん……

「さてさて、桃矢様いかがなさいますか?皆が待っておりますれば――」
「桃矢様!私!私を選んで!」
「桃矢様!こっち向いて!」
「きぁぁ!目が合ったわ!」

これはちょっと恐怖を感じる……どうする……!
えぇい!この場を収める為には――!!

「えっ!?桃矢様っ!?ちょっ……んっ!!」

僕は案内役の美女を抱き寄せキスをする。

「んん!!」

あ然とする女性達。諦め顔の者もいる。

「い、いいか!僕はこの……えぇと……メローペ?メローペと性交する!」
「そ、そんな…メローペ様と何て……」
「あぁ……もうそれじゃぁ私達は……!」
「ちょ!桃矢様!私は案内役で――んんっ!!」
「はふぅん!そんな事はあってはならぬ!!」

だんだん力が抜けていくメローペ。

「桃矢様……駄目……もう……これ以上は……す……すき♡」
「え?」

 こうして僕はその場をしのぎ、一旦部屋へと戻ることになった。眼下では大ブーイングが起きていたが、メローペはたぶんこの里で一番えらい立場のエルフだ。誰も諦めざるをえなかったのだ。

カツン……カツン……カツン……

ギィィィィィ……
バタン――

「ハァハァ……桃矢様……わたくし……皆が見ている前で……あんな事をされて……もう我慢できま……」
「お、落ち着け!メローペ!」

目がメロメロメローペになっている。

「ハァハァ……齢百二十三歳。わたくしはついに殿方に抱かれるのですね――」
「え?百二十三歳?」
「はい♡」
「え?」
「何か?♡」
「いや……」

お婆さんじゃん……

「え?桃矢様?もう……」

服脱いじゃったよ……しょうがないなぁ……

 そんな事を考えていたら、紅茶の匂いがまた漂ってくる。この匂い……さっきも……あれ?まずい……意識が……遠く……な……

「……フフ。頂きます――」

メローペの声を聞きながら、僕はそのまま気を失った。

◆◇◆◇◆

「――矢!桃矢!起きてっ!」
「……んん?」

 見慣れた天井が見える。無駄にキラキラしたシャンデリアに、使ったことのない暖炉、洒落た小さなス……テンドグラスの窓。

「ここは……僕の部屋?」
「気が付いたのね!良かった!」

早紀が僕の手を握っている。隣にはメイもいた。

「桃矢様!ご無事でよかッタ!」
「メイ……あぁ……どうしてここに……?」

頭の整理が追いつかず、体をゆっくと起こす。

「桃矢様……」
「エロッペ!?」
「はい?」
「あ……メロッ……メローペ!!どうして君が!?」
「フフ、わたくしが桃矢様をここまで運んで来たのですけど?」

 早紀とメイに話を聞く限り、霧の中で僕の方が行方不明になり、三日後、メローペがマイア城まで連れて来てくれたそうだ。僕は森の中で倒れてる所をメローペに拾われた――らしいが、そんな記憶はない。

「メローペ、エルフの――」
「しぃ……桃矢様、少し混乱されていますね。ゆっくりおやすみください……」

またあの紅茶の香りが……メローペから漂ってくる。

「くっ!またあの匂い!メローペ!いい加減に――」

メローペに手を上げかけたその時!

バチィィィィィィン!!

僕の方が引っ叩かれた!

「桃矢!女の子に手を上げるなんて最低よ!見損なったわ!ペローネさんは桃矢を助けてくれたのよ!」

 名前を間違えてはいるけど早紀は気にしない。僕は今、どうも怒られている。

「あ、あのぉ……その辺で……わたくしは大丈夫ですので……それとメローペ――」
「いいえ!きちんと言っておかないと後々、図に乗るわ!ペローネさんは黙ってて!」

おっしゃる通りですが、メローペさんです。

「早紀様、もうよろしいカト。桃矢様も反省しておられマス」
「……悪かった。また夢の中に連れて行かれるかと」

 僕は事情を説明する。霧の中であった事、メローペがエルフである事――

「早紀様、少しメローペ様とお話させて頂いテモ?」
「わ、わかったわ!」

気まずそうに部屋を出ていく早紀。

「さて、メローペ様。あなた様はどこのどなた様デスカ?」
「わたくしは――」

椅子に腰掛け、話を始めるメローペ。
そして、予期せぬ未来が僕らを飲み込んでいく――
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