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第三章―尊さと鬼―
3−4・皆殺しじゃぁぁ!!
しおりを挟む―――オニノ国―――
……どんどこどん どんどこどん
鬼が眠ったら 起これ起これ
鬼が起きたら 眠りれ眠りれ
どんどこどん どんどこどん
遊び疲れた子供を 油に入れて
食べちゃうぞ
泣きやまぬ子供を 釜に入れて
食べちゃうぞ
どんどこどん どんどこどん……
小さい女の子が二人、僕の周りで歌を歌っている。
「ここはどこだ……歌?」
「おう、若いの。目が覚めたか?」
「あなたは……?」
真っ暗な闇の中に揺らめく影がある。
大きな体に真っ赤な目……そしてツノが一本生えている。
「オニ……」
「ほぅ?オニ族を知っておるのか。わしはオニ族の長……皆からはジョナサンと呼ばれておる」
「ジョナサン!?」
「名前くらいは知っておるか!ツクヨミから何も聞いておらぬようじゃな。まぁ良い。今からお主にワシの力を貸してやる。正気を保てたらお主は生き返る、しかしそのまま闇に飲まれればオニと化すじゃろう――」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!僕は死んだのか!?色々聞きたいことが――」
意識がどんどん遠のいていく……女の子の歌声が心地よく体に響く――
……どんどこどん どんどこどん
鬼が起きたら 喰らえ喰らい
鬼が眠ったら お化けがくる
どんどこどん どんどこどん……
ザァァァァァァァァァァ――
頭の中で歌が響き、次第に意識がまとまってくる。
目を開けるとそこにはマイアの泣き顔があった。
「桃矢くぅん……良かった……死んじゃったのかと……」
「あぁ……体が……カラダガ……アツイ……」
「桃矢くん!?」
「おにぃたんっ!」
「ふ、ふたり共……逃げろ……僕から……」
「何を言って――」
「ガァァァァァァァ!!!」
ドクンッ!!
「敵は……ドコダ……」
ドクンッ!!ドクンッ!
「アツイ……」
僕はフラフラと城門を目指す。
……どんどこどん どんどこどん
鬼が眠ったら 起これ起これ
鬼が起きたら 眠りれ眠りれ
どんどこどん どんどこどん……
頭の中で歌が繰り返し繰り返し再生される。
『ガァァァァァァァ!!!』
桃矢は城門の上を走り、西門までやって来て辺りを見渡す。数万の軍勢が次々と城へと攻撃の手をやめない。
その先には本陣の旗と思われる国旗が見えた!
「皆殺しじゃぁぁぁぁぁ!!!」
ドスンッ!!
桃矢は西門から、城外へ飛び降り村正を構える。
「何だアイツは!殺せっ!」
兵士達が桃矢に気付き、襲いかかってくる。
『漆黒の太刀……月陰……』
「しねぇぇぇぇい!!」
「囲め!!囲め!!」
『皆殺――』
ズババババババッッッッ!!!!
およそ人の目では追えない太刀筋で周辺の兵士数百人を数秒で惨殺していく――
「引くなぁ!!相手は一人だ!!囲んでしまえ!!」
「うぉぉぉぉぉ!!」
数百人の兵士がさらに桃矢を取り囲む!
『皆殺――』
ヒュン――
桃矢の一振りで数百人の兵士が真っ二つになり、バタバタと倒れていく……
――東門
「マイア!!桃矢はどこ!!」
「早紀ちゃん!!」
涙で目を真っ赤にしたマイアが答える。
「西門に……」
「こっちは片付いた!行くわよ!!猿鬼!おいで!」
「がってん!」
スタッ!タタタタタ!!
軽快な身のこなしで城門に上がり西門へと急ぐ!
――西門
西門の上には一人の女性がいた。
「ロザリア!!」
「ん?早紀ではないか、遅かったのぉ……桃矢はもうあの姿じゃ」
「桃矢!?」
戦場で兵士を殺し続ける桃矢はまさに鬼神の様だった。
「完全に鬼に取り憑かれておるな。あのままじゃと、もうこっちの世界へは帰れぬかもしれぬ……」
「え!?どういう事!?あれが桃矢じゃないの!」
「まぁ、良い。マイアよ、三人の少女の歌を知っておるか?」
「は、はい!『夢の歌』の伝承――だったかと!」
「ならば良い。桃矢の呪いを解く鍵はその伝承にある。さて、わしはメローペの最後のお願いを果たしてくるかの……皆の者、さらばじゃ」
そう言うとロザリアの姿は、ふっと消えた。
「ハァハァハァ……早紀様、マイア様、先程の御人は?」
「ミーサ、ビル、レディス……後でゆっくり話すわ」
「あれ……おにぃたん……?怖い……」
「レディス、ここで猿鬼と待ってなさい」
早紀は城門から飛び降り、全武装で桃矢の後を追う。
「桃矢様のあの様子では鬼の火力は使えませぬな」
「猿鬼、あの赤い光る柱が出るやつ?」
「マイア様、いかにも。あれは四人が限界を超える時に発動する生気……言わゆる生きたいと願う気持ち。それは一種のドーピングみたいな物です。ですが桃矢様には生気が無い。ただただ殺しを楽しんでおられる様に見える」
「そんな……」
桃矢はゆっくりゆっくりと敵陣の中へと進んでいく。桃矢が通る道には血の絨毯が出来ていく。
「シネシネシネシネシネシネィィィ!!!」
そこにはもういつもの桃矢の姿は無かった。ツノが生え、目が赤く、手当たり次第に兵士を殺していく。逃げ惑う兵士達。敵本陣まで後少しという所まで迫って来た。
早紀は桃矢の後ろから援護に入ろうとするが、桃矢を避けた敵兵士が行き場を失い、早紀に向かって突撃してくる。
「くっ!数が多い!!桃矢に追いつけない!!」
ダダダダダダダダダダダダダダダッ!!
銃を乱射し続ける早紀。目視ではギリギリ桃矢が見えるがどんどん離されて行くのがわかる。早紀が一旦下がろうとした時、前方の異変に気付く。
「桃矢が止まった?」
キィィィィィィィン!!
甲高い金属と金属がぶつかる音が戦場に響く。
「よくもまぁ……こんなに殺してくれたなぁ……」
「アァ?オマエハダレダ?」
「この鬼風情が図に乗るなよ!!」
キィィィィィィィン!!
また戦場に甲高い音が響く。桃矢と剣を交わし、打ち合ってる誰かがいた――
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