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第四章―苛立ちと悲しみ―
4−9・裏切りと崩壊
しおりを挟む―――オニノ城―――
「報告致します!エルバルト王国が帝国に滅ぼされました!帝国兵はそのままマイア城方面に進軍を開始したとの事です!」
「何だって!!もう少し詳しく――」
「はっ!」
僕がオニノ城に帰還してから一週間が経とうとした頃、突然耳にした訃報。
エルバルト国王が亡くなった――それを受け撤退するエルバルト軍を帝国が追撃し、そのままエルバルト王国へ入ったそうだ。
「クルミ!皆を集めてくれ!」
「は、はいにゃ!」
早紀、舞、愛、メイ、ノア……主力であろう五名を急ぎ会議室へ呼ぶ。
「そんな……ミーサ達は……」
「先程連絡がついてまだムルーブの街にいるそうだ。これからミーサの母親と、ロメリア達の救出に向かうみたいだ」
「良かった……まだエルバルトへは行ってないのね」
「ご主人サマ、いかが致しますカ。帝国がマイア城に本当に向かってるのであれば守りを固めませんト――」
「メイ、その通りだ。マイア城へは早紀と舞、愛で行ってくれ。オニノ城はメイに任せる」
「わかりまシタ」
「ノア、すまないがもう一度、ムルーブの街まで付き合ってくれ」
「ぬ。わしは構わんぞ」
「ありがとう。早紀、舞、愛……もしも、もしもの時は逃げてくれ」
「それは住民を見捨ててでも……?」
「あぁ……つらいが帝国が数万で押し寄せてきたら、バナナ街とマイア城は正直持たないと思う」
「……わかったわ。善処はするわ」
「頼んだ」
「桃矢くんも気をつけてね……」
「舞ありがとう」
そして早紀達はそれぞれ支度をし、帝国との一戦に備える。僕はノアと再度、転移陣を抜けムルーブの街へとやってきた。
ミーサ達と合流し、状況を確認しながらエルバルト王国へと向かう。
―――エルバルト王国―――
――数日後
明らかに様変わりしたエルバルト王国に愕然とする。街は所々で白煙が上がり、大半が破壊されていた。王城からも白煙が上がり、東西の塔に至っては崩壊していた。
戦争が終わり、昨日今日で鎮火したばかりと言った感じだ。地面には横たわる兵士や街人、子供の姿もある……憤りのない気持ちがこみ上げる。ミーサ達は声をあげることもなく、ロメリアの屋敷へとまっすぐ向かう。強く握る拳が痛々しかった。
ロメリアの屋敷は無事だった。無事だった代わりに、門には見覚えのある人影があった。それは無惨にも手がもげ落ち、首はうなだれていた。
「へぺか……お前……屋敷を守るために戦ったのか……」
以前、メローペの復活を試みるために命を宿した人形へぺ。メローペの魂が抜けてもう動かないと思っていた。
「最後の力を振りしぼってくれたのですね……ありがとうへぺ……」
ミーサが涙ながらに、へぺに手をかけるとその人形は崩れ落ち土へと還っていった……
「へぺ……ありがとう」
僕達はロメリアの館の庭にへぺのお墓を建てた――
コンコン!!
「ロメリア様!ロメリア様!ミーサです!おられませんか!」
カチャ……
しばらく間が空いてから玄関のドアが開いた。
「ミーサ様!!良くぞご無事で!さぁ中へどうぞ!」
メイドさん風の使用人さんがロメリアのいる部屋へと案内をしてくれる。そして……
「ミーサや!無事なのかい!」
「ロメリア様こそ!!良くご無事……で……」
「近くに来ておくれ、わしはもう目が……」
ロメリアの顔は包帯がぐるぐる巻きの状態で、いたたまれない姿になっていた。
「くっ……くそがっ!!帝国兵!!」
ミーサが汚い言葉を発し、そこにいた全員がびっくりする。そして僕を横目で見る。
「おい。僕を見るな……」
「ミーサや……わしはどの道もう長くはない。いいのじゃ、お前たちが無事ならそれで……」
「ロメリア様……」
コンコン!
「失礼します。ロメリア様、お体はいかがですか?薬をもらってきま――!!」
「お母様っ!!」
「ミーサッ!!」
抱き合うミーサと母親。
「良かった。無事だったのか……」
「ぬ。こやつも人魚の魂を持つのか」
「あぁ、ノア。事情があってそれは後で説明するよ……」
ロメリアの話では帝国軍よりも、そもそもエルバルト軍の裏切りの線が濃いと言う。帝国へ攻めて行ったエルバルト軍。指揮をしていたのはハリス大臣。そしてエルバルト国王を操っていたのも……ハリス大臣だった。
途中で帝国軍に敗北したフリをしてエルバルト王国へ攻め込み、王座を奪う。王妃もたぶん――
「王妃も上手く操られておったのじゃな。ダリアを次期国王にするために。くだらぬ身内の争いじゃ。国王、王妃共に殺され、ダリアも行方不明。ミーサの母親は無事救出出来たが、いよいよこの国は終わりじゃ」
「許せない!ハリス大臣!私は断固として戦います!」
「ミーサや……気持ちはわかるが、もはやこの国は捨てた方が賢明じゃ。無駄な争いは避けるべきじゃ」
「ロメリア様……」
僕はそこにいた全員に提案をする。オニノ国へ来ないかと。最初は渋ってたロメリアだったが、まさかのノアの存在に気付き心が動いた。
「ぬ。桃矢よ、少しロメリアと話がしたいゆえ、皆を下げてくれぬか」
「あぁ、殺すなよ」
「ぬ。バカモノ、そんな事はせぬ」
バタン……
「ぬ。ぬしはアレか。ロザリアの肉親なのかえ」
「はい……失礼ですがあなた様は?なにぶん目が見えませぬゆえ……」
「ぬ。わしは死神ノアを今は名乗っておる。先の桃矢と死の契約中じゃ。どうじゃお主も一枚噛まぬか?」
「死神ノア様ですと!?は、はい!おっしゃる通りで御座います!ノア様……いえ、ノアリス様!」
「ぬ。その名は使うな。神々がどこで聞いているとも知らぬ」
「は、はい!ノア様!お導きのままに――」
――翌日
ミーサとロメリアの身内や護衛をムルーブの街へと向かわせた。百人余りの移動となったがこれで一安心だ。
そしてエルバルト軍……と帝国軍が向かった先へと、僕とノアは向かった。
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