異世界おにぃたん漫遊記

ざこぴぃ。

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第七章―鬼斬丸―

7−7・帰れなくなる

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―――死者の泉―――

 桃矢達は死者の泉にたどり着き、突然現れた鬼斬丸を撃退した。そして一人の幽霊と出会う。この幽霊は魂の案内人であり、死神ノアの大ファンであることが判明する……

「ノアリス様!!サインを下さい!」
「ぬ……少々照れるではないか。どれ……」

キュキュキュ――

「きゃぁぁ!ありがとうございます!ありがとうございます!」
「なぁ、そろそろ本題に戻ってくれないか」

呆れ顔の桃矢が幽霊に話かける。

「あ……すいません。死神ノアリス様は偉大なる創造神アリス様の化身。我々幽霊と呼ばれる存在の間でも……と、話がそれました。この死者の泉を介して、その者の魂を成仏させるという事ですかな?」
「そうだ。出来そうか?」
「やってはみますが、上司に確認を取らねばならないので少しお時間を頂けますでしょうか」
「その上司は近くにいるのか?」
「はい、三日ほど頂けましたら……」
「……まぁまぁ遠いな。でもそれしか方法がないのなら待つよ。三日後にまた来たらいいのか」
「はい、お待ちしております」
「そういう事だ。皆、すまないが一旦帰ろうか」
「そうですね。幽霊さん楽しかったです。また後日」
「はい。ご来店ありがとうございました」

僕達は幽霊に別れを告げて一旦、山小屋に戻る事にした――

―――帝国マルク城―――

「ミーサ様!!ミーサ様!大変です!すぐ来て下さい!!」
「どうしたの?ビル、鳩が豆鉄砲食らったのにその後、美味しく食べてるような顔をして――」
「冗談を言ってる場合ではありません!転移門が!」

ガタン!!

ミーサは急いで転移門へと走る。嫌な予感がする。

「ハァハァハァ……嘘でしょ……消えかけてる!?」
「ハァハァハァ……はい!先程から徐々に薄くなってきて――」
「ビル!皆に連絡してすぐに来てもらって!城の転移陣をすべて開放!すべての街に繋いで!」
「は、はい!!」

 それから一時間もしないうちに、桃矢と苦楽を共にした仲間達が転移門の前へと集まる。

「……私、桃矢を迎えに行くわ!」
「駄目よ!早紀ちゃん!転移門が消えたら帰れなくなる!」
「舞!離して!私は鬼族!向こうの世界でも生きていける!」
「離さない!行くなら私も行く!」
「舞……」
「皆さん、落ち着いて下さい。私が行きます。桃矢くんの事はよく知ってるし、皆さんはこの世界で居なくなったら困る人がたくさんいます。でも私なら……大丈夫です!」

門の前に立ったのは……陽子パイセンだった。

「陽子パイセン……」

早紀の肩から力が抜けた。

「陽子パイセン……」
「早紀ちゃん、安心して?桃矢くんは必ず連れて帰るから――」
「でも私もやっぱり!!」

早紀が言おうとすると、陽子パイセンは転移門を開け吸い込まれるように入って行く!

「必ず戻るから待ってて!!」

そう言い残し、陽子パイセンと転移門は消えた――

「陽子パイセンッ!!!」

早紀と舞の声が何も無くなった部屋で響く……

「消えちゃった……おにぃたん……」

涙声のレディスをカディアがそっと抱きしめる。

「大丈夫。おにぃたんはきっと帰ってくるわ」
「うん……」

カディアにクルミと千明も抱きしめられる。

「大丈夫、大丈夫……」

皆、しばらく口を開く事なく転移門があった場所を見つめていたのだった……

―――サユキの山小屋―――

カチャ……

 死者の泉から帰ってきた桃矢達は疲れからかすぐに眠りについた。サユキとノアを除いて……

「ぬ……そうか、お主も寝ないタイプの者か」
「あ、はい。あんまり寝ないですね。たまに数時間寝ますが寝なくても特に支障も無いのです。どうぞ、お茶入りました」
「ぬ……すまぬな。ずずず……そうかお主は肉体より魂の意志が強すぎて違和感があるのじゃな。腑に落ちたよ」
「そうなんですかね?私はこの世界に未練が無いと言ったら嘘にはなりますが、もうこれ以上生きていてもしょうがないと言うか……なぜこの子では無く私が生かされたのか……」
「ぬ……端的に言うと執念じゃな。その幼子は自我が芽生える前に殺され執念も未練もない。片や、この世界への恨みつらみを持つお主は生きたいと望んだのであろう……」
「そんな……私は……」

 そこまで言うとサユキは口をつぐんだ。ノアにはわかっていたのであろう。成仏を願う彼女は本当は生きていたかったのだという事を。

――三日後。

 桃矢達は幽霊に言われた通り、死者の泉に来た。幽霊の上司の許可をもって、泉からサユキの肉体を引き上げるのだ。

「幽霊さん!おられますか!桃矢です!おられたらお返事――」
「はいはいはぁい!すぐ行きます!お待ち下さいっ!」

今日も元気な声で返事をする幽霊。

「ふぅ、すいません、お待たせしました。泉の肉体の件ですね!」
「はい、サユキさんの肉体を引き上げたいのですが」
「はい……あっ、いや。それがですね……」

神妙な面持ちの幽霊。しばし考え口を開く。

「あの……上司がですね。その……亡くなりまして……」
「はい?」
「いや、だから上司が亡くなりまして……判断がつかないのです」
「どういう事ですか?幽霊の上司が亡くなるとか、ちょっと良くわからないのですが……」
「ぬ……!!お主が言う上司とはまさかアドヴァンの事ではあるまいな!」
「ひぃぃぃ!!そのお名前をお呼びにならないで下さいぃぃ!苦手なんですぅぅ!」
「アドヴァン……アドヴァン……アドヴァン!?早紀が殺したアイツか!!」
「殺したっ!?あの方は性格はどうあれ……邪神と呼ばれる神ですよ!?殺せるはずが……」
「ぬ……わしが埋葬した。間違いなく死んでおった」
「ひえぇぇぇ……」

 幽霊は泉の上で尻もちをついた。アドヴァンは神の山で早紀のレーザーにより、首チョンパされた魔物だった。そしてノアの知り合いでもあったそうだ。

「ぬ……さてどうしたものか……」

考え込むノアであった。
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