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第七章―鬼斬丸―
7−9・女体全体どうしたんだ!
しおりを挟む―――死の泉跡―――
「で……ノア。これからどうするんだ?」
「ぬ……タケオ……」
「諸君、すまない。この技は再発動までに待機期間が約一ヶ月かかるよ……っと……」
「ぬ……タケオ……ちょっとこっちに来い」
「は……はい……」
ノアがタケオを茂みに連れて行く。
「ガフッ!?」
ザッザッザッ……
「ぬ……さて、こうなったものは仕方がない。一旦戻るぞな」
「え?ノアが治してくれないのか?」
「ぬ……無理じゃ。タケオが術を発動したせいでお主らの魂はタケオの管轄下にある。うかつに手を出せば神の使いが現れ皆殺しじゃ」
「ちょっとぉぉ!待って待って!私は一ヶ月もここで暮らすのぉ!!」
「陽子先輩、そのようですね。幽体なので襲われる心配も無いと思われますが?」
「わかったわ!百歩譲ってそこは我慢するっ!我慢したとして!とととと桃矢くん!!一ヶ月も私の体をどうする気なのっ!?」
「え……あっ、そうか僕は今、陽子先輩なのか」
目を足元に向けるとぷるるんとした物が視界を遮る。
「こ、これは!!おっぱ……!?」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
陽子の悲痛な叫び声が森に響き渡る……
「ぬ……お前はあれか。女体全体、誰でもいいのだな」
「桃吉さん見損ないました……」
「ゴシュジンサマノスケコマシ――」
「桃矢様……やだ……私の体も狙っていたのですか……」
「桃矢様、それはさすがにサクラ様に報告を致しませぬと……」
「ちょっと!!ちょっと待ってくれ!!僕はまだ――」
『雷帝のかんざし』
チュドォォォン!!!
「あ……が……が……」
バタンッ!
「よしっと。これで一ヶ月は目を覚ますまい!さて諸君、行きましょう……か?あれ?」
「ぬ……タケオよ、やりすぎじゃ。その肉体は陽子のぞ?鬼の血は入っておらぬ……死んだかもしれぬな」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
陽子の叫び声が再び森に木霊した――
―――鬼の里―――
「……ここはどこだ?」
「ぬ……目覚めたかえ?」
「桃吉さんお目覚めですか。ここは鬼の里に御座いますよ」
「長い間……眠っていたような……」
桃矢はチカゲに手伝ってもらい、体をゆっくりと起こす……そこは見慣れたジオナの屋敷だった。
「あれ……元に戻ってる?」
「ぬ……お主が変態覚醒する前にすべて終わったのじゃ」
「な、なんだって……!?まだ色々探検をしな――」
「桃矢くん……今、何て言ったのかなぁ?」
握り拳をした陽子先輩が目の前にいた。
「じょ、冗談です陽子先輩。ということは皆、元に戻れたのですか」
「えぇ、サユキさんは結局死者の泉の番人として、あの森へ残られたわ。タケオさんが責任をもって新しい肉体を探すと言う約束でね」
「じゃぁ、タケオ様も行ってしまわれたのか」
「ぬ……言ったであろう。あやつは気まぐれが過ぎるのじゃと。約束は守るやつじゃが、面白い物を見つけるとすぐに何処かへ行ってしまう……やれやれじゃ」
「あぁ、ノアが言おうとしてたのはそういう事か」
「ゴシュジンサマーオフロノジュンビガーオー」
「桃吉さん、お手伝い致しますのでお風呂に行きましょう」
「ま、姉弟ならさすがの変態桃矢くんも大丈夫でしょうねっ!」
「陽子先輩、勘弁して下さいよぉ」
桃矢はチカゲに付き添われ、お風呂に入る。さすがに一ヶ月寝たきりだった事もあり、体のあちこちに力が入らない……はずだった。
チャポン……
「桃吉さん……その……あの……ですね。そこはお元気というか……はは……は……」
「いや……チカゲねぇさん……それはその……」
カポーン……
沈黙が流れる。
桃矢は頭をフル回転させ、やましい気持ちを消そうとする。難読漢字を思い出してみたり、早紀の怒った顔を思い出してみたり、しかし――
「チカゲねぇさん……はもう亡くなったんだよね。今、僕の目の前にいるのはチカゲねぇさんによく似た別の人。いやそもそも急にねぇさんと言われても僕にはそんな記憶も無いし、違うかもしれないじゃないか!」
「桃吉さん?急にどうしたのですか。確かにあなたの姉かどうかはわかりません。肉体も変わりました。だけれど魂は元の私のまま――んっ!!?」
――桃矢は一線を越えてしまった。我慢の限界だった。そもそもこの美しいチカゲに一目惚れし、口説こうとしていたのだ。興味がないわけがない。
それを獣の目の前に美味しそうな肉をぶら下げられ『待て!』と言われてもそれは無理な話なのだ。
桃矢も男だ。陽子先輩の体に入ってからの欲求もあったのであろう。ついに覚醒してしまった。
「桃吉さん!駄目です!こんな所で!」
「チカゲねぇさん……いや、チカゲ!無理だ。静かにっ!」
「ちょ……んんん!?」
チャポンチャポンチャポン……
「あぁぁぁぁぁぁ!!」
カポーン――
桃矢はこの日、獣になった――
「ゴシュジンサマーノボセターノー」
「桃矢くん!いつまでお風呂に入ってたの!まったく」
「ごめんなさい、私が付いていながら……」
「チカゲさんのせいではないわ。ほら!桃矢くん!起きて!」
氷嚢を頭に乗せられ、布団に運ばれそのまま意識が遠くなっていく――
ボッ!
「熱っ!!……くはない。ん?なんだこの火?」
「あぁ、桃矢様!ようやくお気付きになられましたか」
「……すまない。誰でしたっけ?」
「……あの時の幽霊で御座います」
「あぁ!あの時の!……って、すいません。覚えていません」
「死者の泉で案内人をしておりました――」
そして夢の中でその幽霊はそっと囁いた――
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