異世界おにぃたん漫遊記

ざこぴぃ。

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第九章―世界の向こう側―

9−1・セリ様!!頑張れ!

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【デゼスポワール大陸】
―――双竜島―――

『雷帝のかんざしっ!!』

ヒュイン!!
ゴロゴロゴロゴロ!!

轟音と稲光が赤蛇の体に直撃する!

「おいおいっと……まったく効かないのは無しじゃないのかい?」

ズズズ……

 赤蛇は何事も無かったように周囲の兵士を振り払い、タケミカヅチめがけて噛み付いて来る!
 間一髪で避けるも、二度三度と繰り返し来るその噛み付きに遅れを取り出す。

「くっ!この巨体でこの動きはちょっとやっかいだよっと!!でも……」

『雷帝のかんざし!!』

 再びタケミカヅチの指先から雷が放たれ、轟音が轟く。

ゴロゴロゴロゴロ……!!

バキバキ……

 雷が周囲の木に落ち、辺りが燃え始める。これにはさすがの赤蛇もたじろいた。

「さてさて……時間稼ぎは出来そうだよっと。後は鬼笛を叩き割らないと……」

 セリは兵士達と鬼笛を追いかけていた。先程まで転移門の上にいた鬼の姿は見えなくなっている。

「ひぃぃ……どこ行ったのぉ……鬼さぁん!」

セリはへっぴり腰だった。

「セリ様!!向こうの丘の上に人影が!!」
「えぇぇぇぇ!こっちの丘じゃなくてあっちなの!?はぁぁ……ちょっと休憩……おえ……」

セリは体力が無かった。

『ピュルルル~ピュウィィ~ピュルルル~ピュウィィ……』

 戦場には笛の音が響き渡り、赤蛇が狂ったように暴れる。周囲の木々は燃え、まるで蛇が業火に包まれている様にも見えた。
 その様子を伺える丘の上ではチグサとミーサ、そして三人の子供の姿があった。

「ママ……なの?ねぇ……ママ?」
「え……チアキ?チアキなの!どうしてここに!?」
「ママァァァァ!!」

戦場で親子が数年ぶりに涙の再会をする。

「ミーサお姉ちゃん!」
「クルミ!?レディス!?どうして!」
「チアキちゃんのママを探して……後を着けてきたにゃ……ごめんなさいにゃ……」
「何ですって!!こんな危ない所に!駄目……」

 言いかけて、ミーサは口をつむいだ。ミーサも桃矢を追って来たのだ。クルミ達だけを叱るわけにはいかない。

「ふぅ……もうあなたちはいつも無茶ばかりして……」
「ごめんなさいにゃ……」
「でもでも!!チアキちゃんママがこっちにいると思って!!」
「もうわかったわ。怒らないから……それより二人共、お姉ちゃんから離れないでね」
「はいなのにゃ!」
「はぁい!!」

『ピュルルル~ピュウィィ~ピュルルル~ピュウィィ……』

「ねぇ、チグサさん。もしかして……」
「えぇ、同じ事を考えてたかもしれませんね……チアキ、ちょっと離れた場所でクルミちゃん達といてくれる?」
「ママ……どこにも行かない?」
「えぇ……もうどこにも行かない」
「……わかった!」

チアキとクルミ、レディスは岩陰に隠れる。

「……ミーサさん。歌……なのでしょ?」
「えぇ……あの笛の音をかき消せれば……」
「わかりました。やってみます」
「誰か!!拡声器を!」
「はっ!ミーサ様!!」

チグサは丘の上へと立ち、赤蛇に向かい歌を歌う――

とぅ……とぅ……とぅ……

堕ちてくあなたの手の平を
忘れることが出来ずに 今思う
伸ばしたあなたの鬼の手は
わずかに届かず地獄へ 墜ちる

あの日から何かを忘れぬようにと
神に願い 
あの日からお前を忘れぬようにと
何を憎む

舞いあがれ 咲き乱れ
桜吹雪よ
散りゆく花よ もがき遊べ
命の灯よ

今夜限りは……

とぅとぅとぅ……とぅとぅとぅ……

 その歌は戦場の怒号をかき消すように響き渡り、赤蛇の動きが止まる。
 赤蛇を殺そうと戦っていたカランデクル国の兵士、それを阻止しようとするカラミニクナイ国の兵士。そこにいた数千の兵士達も剣を降ろし、丘の上に耳を傾ける。

「ママ……綺麗……」

 そこには本来の歌姫チグサの姿があった。歌声は砂埃の戦場に響き、それは大気を震わせる――

ポツ……
ポツポツ……
ゴロゴロ――

やがて静けさの中、雨雲が広がり雨が降り始める。

「わしらは奇跡を見ておるのか……歌で戦闘が止まったのか……?」
「ジゴク丸様!!カランデクル兵隊長が来ます!」
「うむ……話をさせてくれ」
「はっ!!」

静かになった戦場にミーサが声を張り上げる。

『皆さん!!聞いてください!この戦争の原因は赤蛇様ではなく、鬼笛によるものです!どうか落ち着いて!』

 そう言うと、セリが登っている丘の上を指差す。そこには笛を握りしめ、立ち尽くす陽子の姿があった。
 
 ――セリは必死だった。雨でぬかるんだ道を一歩一歩進む。戦場が静まり返り、一心に皆がこの丘を見ている。ということは自分のこの痛々しい姿も見ているはずだ。

「負けられない……皆が頑張っているのに……こんな……こんな所でくたばるワケには!!」

 ぬかるんだ道で転び、血が流れ、あたかも死線をくぐったと思わせるその姿を兵士達は見つめる。
 補足だが、セリは戦闘はしていない。なんならまだ丘の二合目付近だった――

「何とおいたわしい姿……」

意味もわからず嗚咽をもらす兵士達。

「セリ様!!頑張れ!!」

心ない子供の声援が戦場に響き、それは引き金となる。

「セリ様!!」
「セリ様!!頑張れ!!」
「もう少し!!」

戦場にはまたたく間にセリ様コールが響き渡る。

「……やめて。ちょっと休憩した……い……ハァハァ」
「セリ様!皆が見ております!もう少しです!」
「ハァハァ……何なのこれ……ハァハァ……もう……死ぬぅ……」

セリは泣きべそをかいていた。
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