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第九章―世界の向こう側―
9−3・オイテイカナイデ
しおりを挟む【エスポワール大陸】
―――マイア城付近―――
桃矢は目を見張る。古代兵器オヘビウェポンから出てきたのは――
「ナメクジ……だな……あれ」
ぬるぬるする巨大な生物の正体はナメクジだった。巨大ナメクジはヘビウェポンの鉄の外皮から抜け出し、辺りにぬめぬめした液体をバラまく。
『ジュゥゥゥ……』
液体に触れた辺りの草花は一瞬で朽ちていく。
「何だ!?毒かっ!!」
「ぬっ!桃矢よ!一旦離れよっ!」
「メイ!!全員避難をっ!!」
「アイ!ワカッタ!!」
巨大ナメクジの周囲の生命があっと言う間に朽ちていく。動きは遅く、まだ外皮からも抜け出ていない。
そこへ遅れて、アイツが現われる。
「おいっ!古代兵器よ!何だその姿は!!」
「桃之丞様!!危のう御座います!離れてください!」
「えぇい!やかましい!俺の言うことを聞け!!このバケモノが!!」
古代兵器オヘビウェポンを開放させた桃之丞が追いつき、巨大ナメクジに剣を向け叫び続ける。
「貴様を復活させるのにどれだけの犠牲を――」
わめき散らす桃之丞を見て桃矢は思い出す。
「アイツ……見たことあるな」
「ぬ……アレはもうすぐ死ぬようじゃな。ほれ、魂が抜けるのが見える……」
「ノア、そういうのも見えるのか。さすが死神だな」
「ぬぬ。珍しく褒めておるのか?褒めたとて、アレは助けぬぞ?まずそうじゃ」
「ははは……別に良いよ。僕は偽善者ではない」
「ぬ……来るぞ!」
「おうっ!!」
身構える桃矢とノア。そしてわめき散らす桃之丞と護衛。そして――
グシュグシュグシュグシュ!!!
ズババババババババ!!
巨大ナメクジの体内から無数の触手らしきモノが飛び出し、周囲の人間を体内へと引きずり込む。
「な、なんだ!!これは!?よせ!やめろぉ!」
「桃之丞様!!」
「ぎゃぁぁぁ!!た、たすけ――」
数百人いた桃之丞達はことごとく、巨大ナメクジの体内に飲み込まれ溶けていく。運良く生き延びた兵士達は散り散りに逃げていく。
「あれはやっかいだな……」
「ぬ……距離を取りつつ魔法で……」
「桃矢くんっ!!」
その時、戦場から少し離れた場所から桃矢を呼ぶ声が聞こえた。
「舞かっ!?」
「うん!!もうすぐ援軍が到着するみたい!ちはやさんから連絡が入った!!」
「援軍!?」
「そう!!だから少しだけ時間稼ぎをして!!」
「わかった!!舞達は離れていろ!!」
桃矢は剣を納め、魔力に意識を集中する。
ゴロゴロ……
雷がなり始め、空に雨雲が広がる。
「ぬ……お主。ものすごい魔力を……」
「あぁ……たぶん蛇眼のおかげだ……魔力が溢れてる」
「ぬぬ……これはとんでもないモノを身に宿したのぉ……」
「ノア……ちょっと危ないから離れてて……」
バチバチッ!!
桃矢の周囲に電気が走り、空は見る見る雲が広がり暗くなる。
ポツン……
ポツンポツン……
大気が揺さぶられ、雨が降り出す。
ゴロゴロ――
『雷帝のかんざし――』
キランッ!
チュドォォォォン!!!
桃矢の詠唱と共に、空から具現化したイカヅチが巨大ナメクジを突き刺す!!
「ギュワァァァ!!!」
聞いたことない雄叫びが辺りに響く。
「ぬぐぐ……まさかタケオの技を……すでに神の領域に達しておるのだな……ふふふ……はっはっは!これは愉快じゃ!!」
「おまけの――」
『竜の嘆き!!!』
ズドォォォォン!!
轟音が響き、閃光が走り、巨大ナメクジはグチャグチャに飛び散る。
「はぁはぁはぁ……倒した……のか?」
「ぬ……まだじゃの。良く見てみろ」
「……はぁはぁはぁ。なるほどそうなるのか」
巨大ナメクジのバラバラになった破片が中心の本体に向かって集まり始める。それはさらに膨らみ、先程より大きくなったナメクジに生成されていく。
「再生か……これはやっかいだな」
「ぬぅ……倒せば倒すほど、巨大になっていくのぉ」
「フフフ……ソロソロ、メイノデバンナノダナ」
「いや、メイは下がっていろ」
「ハァ?ゴシュジンサマノオタンコナス!!」
「ぬ……あれはなんじゃ?」
東の空から鳥の群れらしきものが見える。それは、避難していた早紀達にも見て取れた。
「くっ!このタイミングで魔物か!」
「早紀様!一旦、逃げましょう!あれが報告のあった魔物だとしたら千体はいると思われます!」
「舞!愛!避難の合図を!ナメクジと挟まれたら助からない!!」
「早紀ちゃん!待って!!あれは……!?」
魔物の集団の先頭に見た事のある姿が、だんだんと近付いてくる。
「早紀ちゃん……桃矢くんっ!!あれが、ちはさんから聞いた援軍よっ!!間違いないわ!!」
「いや、舞!あれは魔物よ!どうしてそんな事が――え?」
早紀は目を疑った。
「あれは……オズとメズ……?」
以前、神の山でアドヴァンに仕えていた魔物が先頭で陣を仕切っている。
「お前らぁぁ!!聞こえるか!!ちはや様の命により、このオズとメズが助太刀に参った!!」
「全員退避せよ!!」
千を超える魔物の群れがナメクジに向かって突進していく!!
「ははは……舞、ちはやさんて何者なの……?」
「えへへ。早紀ちゃん。それはこの本を読んだらわかる――って!桃矢くん!!離れて!!」
「ん?ノア、飛ぶぞ!――跳躍っ!!」
「ぬっ!ふぅぅん!!」
桃矢は、ノアの腕を掴み空へと飛び上がる!
「エ……アタシヲオイテイカナイデ……」
メイは一人、ぽつんとナメクジの目の前に取り残される。
「ウググ……コ、コイッ!オナメヤロー!」
身構えるメイ!!その時だった!!
ゴンッ!!
何かがメイもろとも、オナメに投げつけられる。
「ンッ!?ペッ!!ペッ!ショッペェェェ!!」
それは岩塩だった。大量の岩塩であろう物を、魔物の群れはオナメに投げつけ去っていく。
千を超える魔物すべてが、オナメに塩をかけるのに数十分間……
ただただそれを呆然と見つめる桃矢達だった――
「ショッペェェェェ!!」
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