異世界ざこぴぃ冒険たん

ざこぴぃ。

文字の大きさ
48 / 113
ホンモノと複製

第47話・勇者ロドリゲス様

しおりを挟む

―――エルフの里宿舎―――

 おはようございます。ハルトです。ロドリゲスではありません。それはおいおいお伝えするとして。
 実にいい眺めです。春です。僕の季節です。ゼシカさん、エルさん、レディさん。そんな格好で寝ると風邪ひきますよ。ほらほら……ふふふ……♡

「この変態。はよ起きろ」
「わっ!ビックリした!!」

耳元でアリスが冷たい視線を送る。

「う……うぅん。ふぁぁ、おはよう、あなた目が覚めたのね」
「うぅん……旦那様……」
「まだ……眠い……」

 残念……皆が起きてしまった。偽物騒ぎの悪夢が終わり、今度は天国かと思いきや天国はすぐに終わりを告げた。

「早く朝ご飯を食べに行くのじゃ!」
「あぁ、ここは……エルフの里か」

 パンの焼けるいい匂いがする。その匂いでようやく昨夜までの出来事を思い出した。
 僕達は身支度をし、食堂へと向かう。

「皆さんおはようございます。よく眠れましたか?昨夜は賑やかでしたものね。ふふ」
「皆さんおはようございます。おや?ロドリゲス様、ようやくお目覚めになられましたか!」

 ロドリゲス様か……自分で名付けてて何だが、ちょっと恥ずかしい。

「ミレーさん、ベリアルさんおはようございます。ちょっと色々お話が……」

ロドリゲス――そう名乗ったのには理由があった。

「僕の名前はハルト・センケ。中央都市コリータの城主をしています。ロドリゲスというのは偽名です。この偽名が一人歩きすることで、やっかいな輩や魔物、盗賊がコリータの城主とは気付きにくいでしょう。城主が出歩いてるとなれば戦争を始める国家も出てくるかもしれません。なので偽名を使っておりました。改めてよろしくお願いします」

ポンっ!と手を鳴らす2人。

「そういう事でしたか。改めてよろしくお願いします。ハルトさん」
「ハルト殿。そなたの戦いぶり誠に見事であった。感服致した。そしてミレーを救ってくれた事、あなたは命の恩人だ。感謝しかない。ありがとう」

 この人が魔王軍四死聖ベリアル。何かとっても良い人だった。話してみないとわからないものだ。
 エルフ達が、僕達に朝ごはんを配膳してくれる。美味しそうなパンと紅茶。

「いただきます」
「旦那様、ベリアルと話したのですが、準備ができ次第、魔王城から配下の奪還を行います。ミレー殿の面倒をお願いできますでしょうか」
「もぐもぐ……ごくん。あぁ、大丈夫……だよ?」
「あっ、旦那様。お口にクリームが……」

 舌なめずりをしながら、顔を近づけるレディ。そして僕の腕を噛むゼシカ。

「いってぇーーー!あっつぅぅーーー!」

紅茶をこぼす僕。

「あらあらまぁまぁ……」

レディがどこかで聞いた事のあるフレーズを言う。

「そういえばレディ。魔王城からここまで馬車でも2日はかかるはずだけど、どうやってあの短時間で来たんだ?」
「あぁ。あれはですね……」

そう言うとレディは1つの指輪を見せてくれた。

「おぉ!これは聖獣グリフォンを召喚できる指輪ではないのか?珍しいのぉ」

アリスが覗き込んでくる。

「確か……鷲と獅子を合成した聖獣だったか。それは早いわけだ」
「魔王城の東村の村長がこれを持っておりましてな。譲ってもらったの。たった金貨1000枚でしたのよ」
「金貨1000枚……滞在費とかもろもろ渡した路銀を全部か……」

ここは我慢、我慢。そのおかげで命拾いしたのだ。

「旦那様、私はもう路銀がないゆえ、お小遣いを所望いたすゾ。てへっ」

僕は泣く泣く、手持ちの金貨を渡す。

「かたじけない」

僕にとっては事故でしかない……トホホ。

◆◇◆◇◆

 食事を終えると、僕達はエルフ族の長老に会う事になった。先日のお礼をしたいとの事。

「よく来て下さいました。勇者ロドリゲス様。どうぞ上がってください。皆、待っておりました」

勇者ロドリゲス一行は会議室へ通された。

『パチパチパチパチ!ヒューヒュー!ピューイ!』

行儀の悪い。室内で口笛吹くと蛇が来るんだぞ。

「改めまして、ハルト……あっ、ロドリゲスと言います。よろしくお願いします。エルとは長らく一緒に冒険者をしています」
「なんとっ!エルを嫁にもらってくれるのか!急ぎ婚礼の儀式を!」

 え、と。じいさんちょっと待て。それは色々ツッコみ所があるだろう?あと後悔しても知らないぞ。
 ドンッ!!と、ゼシカとレディが机に足を乗せ同時に言う。

「ジジィ。冗談を言うと里がなくなるゼ」

長老が青ざめる。

「は、は……は、じょ、冗談はこのくらいにして本題に入りますかな……。こ、こほん。改めて礼を言う。里を救ってくれて本当にありがとう。わしらに出来ることがあれば何でも言ってくだされ」
「それでは何点かご提案させてください。まず――」

 まず一つ目は、コリータとの国交、同盟。これで流通ができればまた収益にも繋がる。
 二つ目は、城壁の寄贈。ここエルフの里にも城壁を築き、魔物への対処を強化する。そして道の整備も行いたい。
 三つ目は、転移魔陣の設置。これはウェスタン王国と同じ理由だ。
 後、ロドリゲスは偽名だという説明も加えた。

「何も問題ありますまい。すべて善処いたしますじゃ。それではこちらもお願いしたい事がございます。聞くだけ聞いてもらえないじゃろうか」

 長老が言うには世界樹の海岸に設置してある城壁をもう少し広げて今後は上陸してくるかもしれない魔物に対処したいと言う事。
 それと世界樹は既に枯れてしまっていた様だ。これを一度伐採し、新しい芽を育てたいという事。そこで伐採した世界樹を今回のお礼として幾分か分けてもらう事になった。

「最後にですが、ハルト様。里の南の湖なんですが……」

 しまった!忘れてた!湖を魔法で消してしまった気がする!

「すいません!あれは水があるといくらでも魔物が……」

と言いかけて、話をさえぎられる。

「いやいや、そうではない。むしろ感謝しておる」
「感謝?はて?何の事だ?」
「実はあの後で湖に行ったところ、温泉が湧き出しておってな!いやぁ、ビックリしたわい。もう皆大喜びじゃ!」
「温泉!?そんなものがっ!」
「是非、後で行ってみておくれ。その名もロドリゲス温泉に!ホッホッホ!」

 いや、ネーミングセンスを疑う。その後細かい打ち合わせや、交流をし皆で温泉に向かった。

◆◇◆◇◆

カポンッ……。

「いやぁ、極楽極楽。これが本当の森林浴っていうのかなぁ。最高」
「ハルト。今回は里を救ってくれてありがとう」

 温泉につかる僕達一行。まだ何も決まりが無く、混浴状態だ。
 そして隣に座るエルが何だか妙に色っぽい。タオルは巻いているが……色々と見え隠れしている。
 向こうでは、はしゃぐアリスをゼシカときりんが追いかけてる。
 こっちではレディとミレーさん、ベリアルさんが笑いながら話している。
 これはチャンスなのではないか!僕の手がエルの肩に触れる。

「あっ……」

エルの口から吐息が漏れ、距離がぐっと近くなる。

「もう、ハルトったら!……でも、今日はいいよ……」

上目遣いで見てくるエル。あぁ!もう理性を保てない!

「エルっ……!」
「ゼシカ!これでも食らえっ!!」
「アリス様!そんな物投げたら駄目ですっ!!」
『カッポーーーーン!』

突然、僕の頭に木の桶が命中した。

「あっ……ハルト……すまぬ……」

ブクブクブク………。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

女神の白刃

玉椿 沢
ファンタジー
 どこかの世界の、いつかの時代。  その世界の戦争は、ある遺跡群から出現した剣により、大きく姿を変えた。  女の身体を鞘とする剣は、魔力を収束、発振する兵器。  剣は瞬く間に戦を大戦へ進歩させた。数々の大戦を経た世界は、権威を西の皇帝が、権力を東の大帝が握る世になり、終息した。  大戦より数年後、まだ治まったとはいえない世界で、未だ剣士は剣を求め、奪い合っていた。  魔物が出ようと、町も村も知った事かと剣を求める愚かな世界で、赤茶けた大地を畑や町に、煤けた顔を笑顔に変えたいという脳天気な一団が現れる。  *表紙絵は五月七日ヤマネコさん(@yamanekolynx_2)の作品です*

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

処理中です...