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ホンモノと複製
第47話・勇者ロドリゲス様
しおりを挟む―――エルフの里宿舎―――
おはようございます。ハルトです。ロドリゲスではありません。それはおいおいお伝えするとして。
実にいい眺めです。春です。僕の季節です。ゼシカさん、エルさん、レディさん。そんな格好で寝ると風邪ひきますよ。ほらほら……ふふふ……♡
「この変態。はよ起きろ」
「わっ!ビックリした!!」
耳元でアリスが冷たい視線を送る。
「う……うぅん。ふぁぁ、おはよう、あなた目が覚めたのね」
「うぅん……旦那様……」
「まだ……眠い……」
残念……皆が起きてしまった。偽物騒ぎの悪夢が終わり、今度は天国かと思いきや天国はすぐに終わりを告げた。
「早く朝ご飯を食べに行くのじゃ!」
「あぁ、ここは……エルフの里か」
パンの焼けるいい匂いがする。その匂いでようやく昨夜までの出来事を思い出した。
僕達は身支度をし、食堂へと向かう。
「皆さんおはようございます。よく眠れましたか?昨夜は賑やかでしたものね。ふふ」
「皆さんおはようございます。おや?ロドリゲス様、ようやくお目覚めになられましたか!」
ロドリゲス様か……自分で名付けてて何だが、ちょっと恥ずかしい。
「ミレーさん、ベリアルさんおはようございます。ちょっと色々お話が……」
ロドリゲス――そう名乗ったのには理由があった。
「僕の名前はハルト・センケ。中央都市コリータの城主をしています。ロドリゲスというのは偽名です。この偽名が一人歩きすることで、やっかいな輩や魔物、盗賊がコリータの城主とは気付きにくいでしょう。城主が出歩いてるとなれば戦争を始める国家も出てくるかもしれません。なので偽名を使っておりました。改めてよろしくお願いします」
ポンっ!と手を鳴らす2人。
「そういう事でしたか。改めてよろしくお願いします。ハルトさん」
「ハルト殿。そなたの戦いぶり誠に見事であった。感服致した。そしてミレーを救ってくれた事、あなたは命の恩人だ。感謝しかない。ありがとう」
この人が魔王軍四死聖ベリアル。何かとっても良い人だった。話してみないとわからないものだ。
エルフ達が、僕達に朝ごはんを配膳してくれる。美味しそうなパンと紅茶。
「いただきます」
「旦那様、ベリアルと話したのですが、準備ができ次第、魔王城から配下の奪還を行います。ミレー殿の面倒をお願いできますでしょうか」
「もぐもぐ……ごくん。あぁ、大丈夫……だよ?」
「あっ、旦那様。お口にクリームが……」
舌なめずりをしながら、顔を近づけるレディ。そして僕の腕を噛むゼシカ。
「いってぇーーー!あっつぅぅーーー!」
紅茶をこぼす僕。
「あらあらまぁまぁ……」
レディがどこかで聞いた事のあるフレーズを言う。
「そういえばレディ。魔王城からここまで馬車でも2日はかかるはずだけど、どうやってあの短時間で来たんだ?」
「あぁ。あれはですね……」
そう言うとレディは1つの指輪を見せてくれた。
「おぉ!これは聖獣グリフォンを召喚できる指輪ではないのか?珍しいのぉ」
アリスが覗き込んでくる。
「確か……鷲と獅子を合成した聖獣だったか。それは早いわけだ」
「魔王城の東村の村長がこれを持っておりましてな。譲ってもらったの。たった金貨1000枚でしたのよ」
「金貨1000枚……滞在費とかもろもろ渡した路銀を全部か……」
ここは我慢、我慢。そのおかげで命拾いしたのだ。
「旦那様、私はもう路銀がないゆえ、お小遣いを所望いたすゾ。てへっ」
僕は泣く泣く、手持ちの金貨を渡す。
「かたじけない」
僕にとっては事故でしかない……トホホ。
◆◇◆◇◆
食事を終えると、僕達はエルフ族の長老に会う事になった。先日のお礼をしたいとの事。
「よく来て下さいました。勇者ロドリゲス様。どうぞ上がってください。皆、待っておりました」
勇者ロドリゲス一行は会議室へ通された。
『パチパチパチパチ!ヒューヒュー!ピューイ!』
行儀の悪い。室内で口笛吹くと蛇が来るんだぞ。
「改めまして、ハルト……あっ、ロドリゲスと言います。よろしくお願いします。エルとは長らく一緒に冒険者をしています」
「なんとっ!エルを嫁にもらってくれるのか!急ぎ婚礼の儀式を!」
え、と。じいさんちょっと待て。それは色々ツッコみ所があるだろう?あと後悔しても知らないぞ。
ドンッ!!と、ゼシカとレディが机に足を乗せ同時に言う。
「ジジィ。冗談を言うと里がなくなるゼ」
長老が青ざめる。
「は、は……は、じょ、冗談はこのくらいにして本題に入りますかな……。こ、こほん。改めて礼を言う。里を救ってくれて本当にありがとう。わしらに出来ることがあれば何でも言ってくだされ」
「それでは何点かご提案させてください。まず――」
まず一つ目は、コリータとの国交、同盟。これで流通ができればまた収益にも繋がる。
二つ目は、城壁の寄贈。ここエルフの里にも城壁を築き、魔物への対処を強化する。そして道の整備も行いたい。
三つ目は、転移魔陣の設置。これはウェスタン王国と同じ理由だ。
後、ロドリゲスは偽名だという説明も加えた。
「何も問題ありますまい。すべて善処いたしますじゃ。それではこちらもお願いしたい事がございます。聞くだけ聞いてもらえないじゃろうか」
長老が言うには世界樹の海岸に設置してある城壁をもう少し広げて今後は上陸してくるかもしれない魔物に対処したいと言う事。
それと世界樹は既に枯れてしまっていた様だ。これを一度伐採し、新しい芽を育てたいという事。そこで伐採した世界樹を今回のお礼として幾分か分けてもらう事になった。
「最後にですが、ハルト様。里の南の湖なんですが……」
しまった!忘れてた!湖を魔法で消してしまった気がする!
「すいません!あれは水があるといくらでも魔物が……」
と言いかけて、話をさえぎられる。
「いやいや、そうではない。むしろ感謝しておる」
「感謝?はて?何の事だ?」
「実はあの後で湖に行ったところ、温泉が湧き出しておってな!いやぁ、ビックリしたわい。もう皆大喜びじゃ!」
「温泉!?そんなものがっ!」
「是非、後で行ってみておくれ。その名もロドリゲス温泉に!ホッホッホ!」
いや、ネーミングセンスを疑う。その後細かい打ち合わせや、交流をし皆で温泉に向かった。
◆◇◆◇◆
カポンッ……。
「いやぁ、極楽極楽。これが本当の森林浴っていうのかなぁ。最高」
「ハルト。今回は里を救ってくれてありがとう」
温泉につかる僕達一行。まだ何も決まりが無く、混浴状態だ。
そして隣に座るエルが何だか妙に色っぽい。タオルは巻いているが……色々と見え隠れしている。
向こうでは、はしゃぐアリスをゼシカときりんが追いかけてる。
こっちではレディとミレーさん、ベリアルさんが笑いながら話している。
これはチャンスなのではないか!僕の手がエルの肩に触れる。
「あっ……」
エルの口から吐息が漏れ、距離がぐっと近くなる。
「もう、ハルトったら!……でも、今日はいいよ……」
上目遣いで見てくるエル。あぁ!もう理性を保てない!
「エルっ……!」
「ゼシカ!これでも食らえっ!!」
「アリス様!そんな物投げたら駄目ですっ!!」
『カッポーーーーン!』
突然、僕の頭に木の桶が命中した。
「あっ……ハルト……すまぬ……」
ブクブクブク………。
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