59 / 113
無限牢獄の生娘
第57話・王妃の死
しおりを挟む―――ウェスタン王国牢屋―――
「すみません、王妃の部屋を確認したいのですが」
「あっ、コリータ城主様。どうぞ、こちらです」
カツンカツンカツン……。
階段を降りる足音が響く。
僕達は王妃が幽閉されていた部屋へと着いた。牢屋に閉じ込められていると思っていたがきちんとした部屋になっており、ウェスタン国王も王妃に慈悲をかけたと言うのがわかった。
部屋には亡き王妃の姿はすでになく、魔法陣だけが残っている。
「うむ。この魔法陣は自身の命を燃やして、呪いをかける魔法か。やっかいじゃのぉ」
アクアが王毒と呪いに関する本をペラペラめくる。
「ありました。これですね。イスタン帝国の王族に伝わる秘術とありますね。この呪いを解くには……『呪いの血をまとわせた神器・天之叢雲を捧げよ、さすれば天の加護が舞い降りる』と記載されています。が、これは100年近く前の古い書紀ですね。神器もそもそもあるかどうか……」
「天之叢雲か!そうじゃ思い出した!ミヤビが持っていたのが天之叢雲じゃ!」
「アリス様ご存知なのですか!?その神器はイスタン帝国に代々伝わる家宝にて、門外不出とも書かれています。呪いをかけた者も呪いをかけられた者も、同じ方法で呪いが解けるそうです」
「……もしやミヤビは盗んで売る気だったとか?」
「それはなかろう。あれは神器じゃ。迂闊に扱うと災いが降りかねん」
そこへ偵察中のカエデから連絡が入る。
「――ご主人様、ご報告です。数日前に王妃宛に手紙と神器が送られたそうです。神器は輸送中に盗賊に盗まれたと。また今回の進軍は王妃の奪還、主犯はコブラを名乗る大臣かと」
リアルタイムで情報が入ってくる。
部屋を探ってみると、机から王妃宛の手紙が出てきた。
「これか、魔法陣の書き方が記されている」
手紙には魔法陣の書き方、使用後は神器を使い呪いを解けと書かれている。しかし神器は王妃の元へ届かなかった。いや、わざと届けなかったのか?盗賊に盗ませるフリをして……。
手紙の差し出し人はイスタン帝国大臣コブラ。この大臣がすべての元凶と言うワケか。
「カエデ、聞こえるか?大臣のコブラを探ってくれ、だが深入りは禁物だ。危なくなったらすぐに帰国して欲しい。今からきりんを向かわせるから合流してくれ」
「はい、ご主人様」
「きりん、カエデを頼んだ。小型化すれば町中でも大丈夫だろう」
「わかりました。ご主人様、行ってきます」
そういえばゼシカの話をした際に、食堂にいたのはアリスだけじゃなくきりんもいたのか……。あれは全部聞いてたな。
僕達は牢屋を後に王広間へと向かう。王広間にはエル、大臣達とチグサ、サルトが集まっていた。
「エル、ゼシカの容態は?」
「寝てる」
「そうか。後で行くよ」
「う、うん……」
なんだか歯切れの悪いエル。
「お兄ちゃん!お父様は助かるのっ!?」
「チグサ、安心して。呪いを解く方法は見つけた。皆、聞いてくれ!」
ざわざわざわ……。
「ウェスタン国王にかけられた呪いを解くには、剣聖ミヤビの持つ剣の力が必要だと言う事がわかった。ミヤビは現在ウェスタン王国からコリータ王国に移動中だ。見つけ次第確保とする。ミヤビは元イスタン帝国の人間だが現在はコリータで預かる身である、手荒な真似はするな。ただちに捜索隊を派遣してくれ!」
「はっ!!ただちにっ!」
バタバタバタ……!
大慌てで出ていく大臣と近衛兵達。さて次は……。
「サルト、ちょっと話がある。エルとチグサは先にゼシカのところで待ってて」
コクっとうなずくエル。
「ハルトさん、ぼく……うぅ……」
王妃の死に様を見たのだろう。普段、嫌ってたのは態度でわかったが実の母が亡くなったのだ。思う所もあるのだろう。サルトをそっと抱きしめて、頭をぐしゅぐしゅにしてやる。
「男だろ?サルトにしか出来ないお願いがある。聞いてくれるか?」
「……ヒック、ぼくにしかできないこと?」
「そうだ。良く聞け、いいか――」
僕はサルトに話ながら、自分自身にも言い聞かせるように言葉を選んだ。
――話終えると、ようやく泣き止み男らしい顔になったサルト。
「よし、いい顔だ。皆とミヤビを探して来てくれ」
「わかりました!ハルトさん!」
きっとこれでいいんだ。
「うむ。ちょっと生意気な発想だが、今は褒めてやる」
「アリス……僕はどうなっても、アリスの側にいるから安心してくれ」
「き、きもちの悪い事を言うな!ばか!はなくそっ!ちんげんさい!」
言ってる意味はわからないが、プンプンしながら照れ隠しをするアリス。これで良いんだ。
さて、ゼシカの容態を見に行こうか。
―――ゼシカの部屋―――
コンコンッ!カチャ……!
「ゼシカ、遅くなった」
室内にはアクアとエル、チグサが待っていた。
「ハルト、心配かけたわね。ごめん」
「ゼシカ、気付かなったこっちこそごめん」
「ちょっと2人にしてあげようか」
アクアがエルとチグサを促し外に出る。
「アクアありがとう」
僕はゼシカと2人きりになる。
「あのね、ハルト。私、その……」
僕はゼシカを抱きしめた。
「わかってる。僕が責任を取るよ」
「え?!そんな急に言われても!?」
真っ赤になるゼシカ。
「大丈夫。きっと皆、わかってくれる」
「嬉しい……あ、ありがとう……」
泣き出すゼシカ。
「子供の名前も考えなきゃな」
「あ、うん。でももう考えてあるの。男の子でも女の子でも……チ・ハ・ル。ふふ」
「良い名前だな」
「でしょ?ふふ」
何だか心穏やかな気持ちになる。これが幸せってやつなのか。
コンコンッ!カチャ……!
「ゼシカ嬢ちゃん!薬持って来たぞ!すまんなぁ。王毒だと勘違いして!タイミングがタイミングだったからなぁ。まさかな!はっはっは!」
「あ、先生。ハルト、こちらが王宮専属のお医者様よ」
「先生、初めまして。こちらこそ、勘違いしてしまって。で、いつ頃産まれそうなんですか?」
「薬が効けば楽になって、自然に出るとは思うのじゃが。今日……明日には出るじゃろ」
「そんなに早くですか!?ゼシカ!大丈夫なのか!」
「ふふ。もうあなたったら!恥ずかしい!」
「いや……えと……」
お前ら何を言っているんだ。子供が産まれるのにそんなに呑気にしてていいのか。出産準備とか、そういうのはいらないのかっ!
「嬢ちゃんはただの食べすぎじゃからのぉ。自然に出すのが一番じゃが、胃が痛いのは苦しいもんじゃ。ほれ薬はここに置いとくから飲むんじゃぞ。それじゃぁな」
そう言い残し、部屋を出ていく先生。
「やだわ、ハルトったら。先生に産まれるとか言っちゃって。まるで子供が産まれるみたいじゃない……恥ずかしっ!」
「は?どういう……」
コンコンッ!カチャ……!
「先生の話は終わったのかな?ゼシカ、病気とかじゃなくて良かったね。ただの食べすぎだってね」
「あ、アクア。リンが隠してたお菓子、全部食べちゃって……心配かけてごめんなさい、てへ」
「……は?どういうことだ?」
「ぷぷぷぷぷぷ……!」
「おいおいおいおいおーーーーーい!!アリス!お前知ってたのか!」
「ど、どうしたの!ハルトっ!?」
僕は色んな意味で深く反省をした……。
6
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
女神の白刃
玉椿 沢
ファンタジー
どこかの世界の、いつかの時代。
その世界の戦争は、ある遺跡群から出現した剣により、大きく姿を変えた。
女の身体を鞘とする剣は、魔力を収束、発振する兵器。
剣は瞬く間に戦を大戦へ進歩させた。数々の大戦を経た世界は、権威を西の皇帝が、権力を東の大帝が握る世になり、終息した。
大戦より数年後、まだ治まったとはいえない世界で、未だ剣士は剣を求め、奪い合っていた。
魔物が出ようと、町も村も知った事かと剣を求める愚かな世界で、赤茶けた大地を畑や町に、煤けた顔を笑顔に変えたいという脳天気な一団が現れる。
*表紙絵は五月七日ヤマネコさん(@yamanekolynx_2)の作品です*
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる