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プロローグ
しおりを挟む遥か昔、遠い遠い昔の話。
そこはまだ戦の絶えない日々が続いていた。
魔物と呼ばれる生き物たちを、まだ多くの者が見えていた時代に彼らは存在していた。
目元だけが隠れる面を付けた人間でも妖怪ですらない半端者の一族。
彼らは人間よりも力があり戦闘向きの身体能力を持っていた。
だが、その代償として彼らの寿命は人間のように短く妖怪よりも短命であった。
しかし、まれに産まれてくる者の中で妖怪よりも長い寿命を持つ者もいた。
ずば抜けた身体能力と長命の両方を授かった者らを、彼らの中では“ヌシ族”と分類している。
ヌシのように長く生き続けられるとして、そう名付けられた。
けれど、そのヌシ族にも代償があった。
それは長く生きる為だと言われているが、中には孤独を感じさせるモノ。
あるヌシ族は、百年を生きた。
名を授かった筈のそのヌシ族は己の名前をよく忘れると。
あるヌシ族は、百五十年を生きた。
だがしかし、己の名前を全くもって覚えてはいなかった。
そう、ヌシ族の代償とは己の名前を忘れていく事だった。
そして今現在にしても尚、ヌシ族は存在しひっそりと人間と関わらないように生き続けている。
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