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大切なモノ
しおりを挟むある真夜中。
土佐間山に一人のヌシ族が森を駆け回っていた。
「…………どこへ行った……?」
気配を辿って走り続けど、目的の人物は未だ見つからずに彼は唇を軽く噛む。
「──────」
「…っあっちか…」
微かに聞こえた声に、彼は方向転換して走る。
森を抜けるとそこには古びた祠があり、小さな一つの影を見つけた。
彼は走るのを止めて、気付かれないようにソッと近づく。
「…見つけたぞ……カヤナ」
「っキャ!また見つかったぁ~。あとちょっとだったのにぃ」
「何度やっても無駄だ。……ほら、帰るぞ」
見つかった者は小さな女の子で、悔しそうにしながらも笑ってその者の手を握り締める。
「えーっやだ!まだ遊びたいのーっ」
「駄目だ。ジジ様に叱られるのはカヤナだぞ?」
その者の言葉にカヤナはつまらないと言いたげに頬を膨らまして、小さく返事をした。
「ジジ様、怖いからちゃんと帰る…」
「よし。イイ子だ」
「また遊んでくれる?」
「……あぁ。イイ子にしてたらな」
「ちゃんとイイ子でいる!だから遊んでねっ」
「約束だ」
二人はまた遊ぶという約束を指切りで交わし、手を繋いだまま古びた祠から姿を消した。
暫くして、幼い女の子は眠くなったのか首をコックリコックリとし始めて、気付いたその者は立ち止まりしゃがんで女の子を背負った。
「……ヌラ…ありがとー・・・」
眠りにつく寸前に女の子は小さく、そう呟き寝息をたてた。
「…………いつもの事だ。どうって事ないさ」
フッと笑い、ヌラと呼ばれた者は夜空を見上げた。
「…お前に呼ばれる名が聞けるなら…私はいくらでもお前の側にいる」
トボトボとその時間を惜しむようにヌラは家道をゆっくりと歩いた。
その名を呼ばれる事の嬉しさと己の事が見えて触れてくれる女の子の温もりを感じて、ヌラは口元を緩ませる。
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