もうお前は勇者じゃないと追放されました。はい、最初から勇者じゃありません!

sanana

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 空は黒く、雲で隠れている。
雷が激しく鳴り響いていた。
勇者たちがいるこの城は、外壁は黒く塗られていないはずなのに、真っ黒でおどろおどろしく感じていた。
いかにも魔界の魔王のいる城といった雰囲気。
そんな城に入ったのは、今から数時間前のこと。
今、勇者たちがいるのは魔王城の大広間。
攻撃の影響で、窓ガラスが割れ、壁もえぐれている。
「はあはあ」
勇者たちは死力の限りを尽くして、戦っていた。
息切れも激しく、倒れこんでしまいたかった。
でも、倒れているのは勇者たちではなかった。
まぶたが閉じられた横たわる魔王の体は、砂埃が舞うように、黒いもやがほどけていくように消えていく。
死に際の声も聞こえなかった。
「やったー!」
勇者たちは大歓声を上げる。
女性陣のガーネットとライリーは抱き合っているし、スコルはほっと安堵の一息をつく。
「お疲れさん、アイ」
「ジーク…」
自他ともに認める親友のジークは、泥だらけ汗まみれの顔でにっと笑いかけながら、肩に手をかける。
「ありがとう、みんなのおかげだよ」
アイザックは全員の顔が見えるように振り向いた。
「うぐっ…」
ジークはアイザックによりかかっていたので、倒れかかったとき、一緒に倒れそうになった。
「大丈夫か、ジーク?」
「悪い。ちょっと立ちくらみ…」
「まあ、これだけ気力も体力も使ったもんね」
「戻りましょうか」
ライリーとガーネットに促され、帰路へ向かった。
「乾杯!」
魔王城に向かう途中にあった街のとある酒場。
乾杯の音頭を取り、みな飲み始める。
魔王討伐の報告はまだ広まっていないので、勇者パーティー内輪だけで打ち上げとなった。
「いやあ、本当オレよく頑張った」
「ちょっとー、ジークだけじゃないんだけど」
「ああ、我が主のおかげだ」
「スコルのアイ命なところは結局変わらなかったな」
ジークは、スコルのいつもの様子にげんなりとしていた。
みんな前のときの飲みと代わりなく、楽しく会話している。
「そういやさ、ジーク城に入る前、アイに話したいことあるって言ってたじゃん」
「そうね。気になっていたのよ」
「あ、んなこと言ったか?覚えてねえよ」
「えー、大事な話みたいだったけど…」
「これでもう解散だね」
センチメンタルな気分になっているアイザック以外は。
「魔王討伐のために、結成された勇者パーティーだから。も、やれることないから村に戻らないと」
(そもそもは本当はここにいてはいけない人間で。
でも、魔王討伐しないといけないから、みんなを騙していた。
それも終わったら、元に戻らないと。
ちゃんとと)
「アイ…」
ライリーも寂しそうにつぶやいた。
「ねえ、アイちゃん」
それまで静かにみんなを見守りながら飲んでいた、ガーネットが話しかける。
「今まで魔王討伐のレベル上げのために、モンスター倒してきたじゃない」
「そうだね」
「それって、魔王関係なく発生するって知っていた?」
それは、初耳だった。
同じように初耳だったライリーも、目を丸くしている。
うなずいているスコルとジークは知っているようだ。
「さすがに全部倒すってのは難しいけど。でも、人々が安心できるようにするのも、勇者の仕事じゃないかしら」
みんなと別れないという不安で震えていた拳を優しく包み込む。
こういう優しい姉みたいなところがアイザックは好きだった。
「いい、のかな…。まだ、みんなといて」
「それはみんな次第だけど。私はこれからまだすることないわよ」
顔を上げ、みんなを見るとうなずいていた。
「じゃあ、これからもよろしくね」
目尻に涙を浮かべて、笑いかけた。
これからも、この勇者パーティーはずっといられる。
そう信じていた。
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