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「姉さん、逃げて!」
そう叫ぶ自分の声で目が覚めた。
はあはあと、息を切らしている。
目の前には、知っているような知らないような天井。
木製で隙間なく、並べられている。
むき出しではなく、壁紙が貼られていたような気がするが。
「夢見が悪かったような」
頭を抱えながら、起き上がる。
寝床も床に布団が敷かれているのでなく、木製のベッドが置かれ、その傍らには靴が置かれている。
玄関に置かれているものではないのか。
頭の中で二つの生活が入り混じって、混乱している。
整理するのにしばらくかかり、ベッドから体を出すことがなかなかできなかった。
「俺、死んだんだな」
その結果分かったのは、花宮陽人としての人生が終わったということだった。
刺されたあと、玄関で倒れた俺にパソコンのコメントなど見る余裕はなかったが、神様視点とでもいうのか、姉からストーカー被害に遭っていたというコメントが上げられた。
音声を切り忘れていたので、ストーカーの発言や俺が倒れる音が生で流れ
てしまったようだった。
何でシオンは言ってくれなかったのかな。
心配をかけたくないとは言っていたが、それでも姉が悩んでいたのなら、助けたかった。
「あの後どうなったんだろ」
あのストーカーは弟の俺をシオンの恋人と勘違いしていた。
本当の婚約者の義兄さんに被害いかないかな。
それより、シオンに直接手を下すようなことしないかな。
警察に相談しているし、俺を殺すという直接な犯罪をしたから、すぐに捕まるとは思うけど。
俺が死んで、シオンは泣いたかな。
両親が亡くなってから、ずっと一緒の家族だったもんな。
このせいで、義兄さんとの結婚が取りやめにならないといいが。
しかし、今は心配しても、花宮陽人の人生を取り戻せる訳ではない。
今の俺は、アズライト・オルテンシア、15歳。
農業を営む大家族の次男である。
自分の前世をようやく受け入れることができた。
あんまりゆっくりしていると、朝食を急かされるので、俺はベッドを抜け、靴をトントン履き鳴らし、部屋から出た。
「おはよう、アズくん」
「おはよう、義姉さん」
今世の俺は次男なので、上に長兄がいて、彼には奥さんがいる。
俺と10以上離れている長兄のスカイには数年前に結婚した奥さんがいて、彼女も一緒に住んでいる。
現在身ごもっていて、ゆっくり休んでほしいのだが、母とともに毎日かかさず、朝食に限らず毎回の食事を作ってくれている。
「あんたさっさと食べなよ」
「分かってるって、母さん」
しかし、父、母、長兄、義姉、弟二人、妹二人が既にいるテーブルは広めに作られてはいるが、二人暮らしの頃を思い出したあとは圧倒的だ。
「お兄ちゃん、遅いよ」
「叫び声聞こえたけど、何かあった?」
俺のすぐ下の妹リーファと弟コーラル。
「ああ、怖い夢見ただけ」
「ふーん。まあ、でも今日から春休みとはいえ、あんまり遅くまで寝てないでよ。義姉さん、片付けるの遅くなるし」
「それは悪かった。まあ、春休み関係なく俺家で過ごすだけだから、これからはできること増えるし」
「お前、本当に学校行かないのか」
寡黙な父が口を開く。
「家は俺が継ぐし、アズラは何でもやっていいんだぞ」
「まあ、家業は何人いても困らないだろ。学校に行くにしたって、もう受験期間終わったから、今から通えないし」
「そうかもしれないが…」
「ヴィオラみたいに特待生で行けるほど頭が良い訳でもないから、家業で慣れた仕事をやっていた方がいいって」
俺は中学にあたるところまで通っており、高校という選択肢もあった。
しかし、特別勉強が好きな訳でもなく、そのまま家業の農業をすることを選んだ。
ん、ヴィオラ?
どこかで聞いたことあるような。
ついでに俺の苗字のオルテンシアも聞き覚えがある。
「ヴィオラはまあ特別だろ。学校でも主席の特待生で、平民のうちから生まれたのに、魔法が使えるんだし」
「王都の貴族の通う魔法学園に無償で行けるんだもの。ヴィオちゃんすごいわよね」
「お姉ちゃん、すごい!」
「お姉ちゃん、かっこいい!」
末っ子双子のレモンとオレンジは無邪気にはしゃいでいる。
この設定もどこかで聞いたことある。
「ヴィオラ・オルテンシア?」
「どうした、自分の姉をいきなりフルネームで呼んで」
ヴィオラ・オルテンシアって、確か俺がやろうとしていた乙女ゲームの主人公の名前だったような。
今までの生活を振り返ると、ゲームの舞台になりがちな中世ヨーロッパ風な異世界って感じだ。
魔法も存在するが、中学まで周りが平民だけだったこともあり、魔法を使えるのは先ほども言った通り、一つ年上の姉、ヴィオラのみ。
ヴィオラだって使えるのが分かったのは、去年だし。
俺も通っていた中学で生徒会長をやっていて、責任感が高かったヴィオラは、友人が大怪我をしたことで覚醒して、治癒魔法を使えるようになった。
そこを王族関係者に見つかり、高校からは上京することになったという。
本当にゲームの通りの設定だ。
俺が転生したのは、乙女ゲームのヒロインの弟のようだった。
そう叫ぶ自分の声で目が覚めた。
はあはあと、息を切らしている。
目の前には、知っているような知らないような天井。
木製で隙間なく、並べられている。
むき出しではなく、壁紙が貼られていたような気がするが。
「夢見が悪かったような」
頭を抱えながら、起き上がる。
寝床も床に布団が敷かれているのでなく、木製のベッドが置かれ、その傍らには靴が置かれている。
玄関に置かれているものではないのか。
頭の中で二つの生活が入り混じって、混乱している。
整理するのにしばらくかかり、ベッドから体を出すことがなかなかできなかった。
「俺、死んだんだな」
その結果分かったのは、花宮陽人としての人生が終わったということだった。
刺されたあと、玄関で倒れた俺にパソコンのコメントなど見る余裕はなかったが、神様視点とでもいうのか、姉からストーカー被害に遭っていたというコメントが上げられた。
音声を切り忘れていたので、ストーカーの発言や俺が倒れる音が生で流れ
てしまったようだった。
何でシオンは言ってくれなかったのかな。
心配をかけたくないとは言っていたが、それでも姉が悩んでいたのなら、助けたかった。
「あの後どうなったんだろ」
あのストーカーは弟の俺をシオンの恋人と勘違いしていた。
本当の婚約者の義兄さんに被害いかないかな。
それより、シオンに直接手を下すようなことしないかな。
警察に相談しているし、俺を殺すという直接な犯罪をしたから、すぐに捕まるとは思うけど。
俺が死んで、シオンは泣いたかな。
両親が亡くなってから、ずっと一緒の家族だったもんな。
このせいで、義兄さんとの結婚が取りやめにならないといいが。
しかし、今は心配しても、花宮陽人の人生を取り戻せる訳ではない。
今の俺は、アズライト・オルテンシア、15歳。
農業を営む大家族の次男である。
自分の前世をようやく受け入れることができた。
あんまりゆっくりしていると、朝食を急かされるので、俺はベッドを抜け、靴をトントン履き鳴らし、部屋から出た。
「おはよう、アズくん」
「おはよう、義姉さん」
今世の俺は次男なので、上に長兄がいて、彼には奥さんがいる。
俺と10以上離れている長兄のスカイには数年前に結婚した奥さんがいて、彼女も一緒に住んでいる。
現在身ごもっていて、ゆっくり休んでほしいのだが、母とともに毎日かかさず、朝食に限らず毎回の食事を作ってくれている。
「あんたさっさと食べなよ」
「分かってるって、母さん」
しかし、父、母、長兄、義姉、弟二人、妹二人が既にいるテーブルは広めに作られてはいるが、二人暮らしの頃を思い出したあとは圧倒的だ。
「お兄ちゃん、遅いよ」
「叫び声聞こえたけど、何かあった?」
俺のすぐ下の妹リーファと弟コーラル。
「ああ、怖い夢見ただけ」
「ふーん。まあ、でも今日から春休みとはいえ、あんまり遅くまで寝てないでよ。義姉さん、片付けるの遅くなるし」
「それは悪かった。まあ、春休み関係なく俺家で過ごすだけだから、これからはできること増えるし」
「お前、本当に学校行かないのか」
寡黙な父が口を開く。
「家は俺が継ぐし、アズラは何でもやっていいんだぞ」
「まあ、家業は何人いても困らないだろ。学校に行くにしたって、もう受験期間終わったから、今から通えないし」
「そうかもしれないが…」
「ヴィオラみたいに特待生で行けるほど頭が良い訳でもないから、家業で慣れた仕事をやっていた方がいいって」
俺は中学にあたるところまで通っており、高校という選択肢もあった。
しかし、特別勉強が好きな訳でもなく、そのまま家業の農業をすることを選んだ。
ん、ヴィオラ?
どこかで聞いたことあるような。
ついでに俺の苗字のオルテンシアも聞き覚えがある。
「ヴィオラはまあ特別だろ。学校でも主席の特待生で、平民のうちから生まれたのに、魔法が使えるんだし」
「王都の貴族の通う魔法学園に無償で行けるんだもの。ヴィオちゃんすごいわよね」
「お姉ちゃん、すごい!」
「お姉ちゃん、かっこいい!」
末っ子双子のレモンとオレンジは無邪気にはしゃいでいる。
この設定もどこかで聞いたことある。
「ヴィオラ・オルテンシア?」
「どうした、自分の姉をいきなりフルネームで呼んで」
ヴィオラ・オルテンシアって、確か俺がやろうとしていた乙女ゲームの主人公の名前だったような。
今までの生活を振り返ると、ゲームの舞台になりがちな中世ヨーロッパ風な異世界って感じだ。
魔法も存在するが、中学まで周りが平民だけだったこともあり、魔法を使えるのは先ほども言った通り、一つ年上の姉、ヴィオラのみ。
ヴィオラだって使えるのが分かったのは、去年だし。
俺も通っていた中学で生徒会長をやっていて、責任感が高かったヴィオラは、友人が大怪我をしたことで覚醒して、治癒魔法を使えるようになった。
そこを王族関係者に見つかり、高校からは上京することになったという。
本当にゲームの通りの設定だ。
俺が転生したのは、乙女ゲームのヒロインの弟のようだった。
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