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4話
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終業式は午前中には終わったらしい。
学校の食堂も開いてはいるが、せっかく午後自由に過ごせる時間があるので、カフェでランチをするつもりだったようだ。
ドレスを取りに行く前に、カフェに行くことになった。
中世ヨーロッパな世界とはいえ、日本で作ったゲームなので、前世でも見たことあるような、テラス席のあるおしゃれな雰囲気だった。
店員にテラス席に案内された。
俺とヴィオラが隣り合わせで、向かい側にヴィオラの友人たち。
三つ編み眼鏡なミオンと、ポニーテールのシェリー。
さっそくメニューを開く。
「高っか」
さすが都会なだけあって、値段が高い。
コーヒー一杯がやっとだ。
昨日家でお昼食べてから、汽車の中ではお金取っておこうと、夕食は何も食べてなかったのに。
「じゃあ、俺コーヒーで」
「え、あんたそれだけで足りるの?」
「いや、こっち高いから」
「ちょっとくらいなら奢るよ。お姉ちゃん稼いでいるから」
「悪い。後で返すから」
「気にしなくていいよ」
そう言われても、あんまり高いもの頼むのは、悪いんだよな。
ほどほど安くて、腹に溜まりやすいもの。
「あ」
このパフェ、ボリュームある割に安い。
でも、カップル限定か。
「アズ、決まった?」
ヴィオラがのぞき込む。
でも、ここにはカップルいないから、別の決めないと。
「あ、店員さん!」
「俺、まだ見ていて…」
ヴィオラが手を上げて、店員に呼びかける。
店員はすぐにやってきた。
友人たちとヴィオラが頼んでいく。
そして、不意に手をつないできて、
「私たちカップルでーす。この限定パフェお願いします」
「お願いします」
そうして、店員はキッチンに伝えに行った。
「アズ顔に似合わず、甘党だもんね。このパフェ絶対好きだと思ったよ」
「顔に似合わずは余計だっての」
少し腹が立ったので、ヴィオラの頬をつまむ。
痛い痛い、とはしゃいでいた。
「君たち仲良いんだね」
「姉弟なんだよね」
俺とヴィオラは顔を見合わせる。
「これくらい普通だよね」
「そうだよな」
前世でも姉との距離感はこんなものだった。
友人や義兄は驚いていたようだった。
席には早く座れたが、店内は混み合っていたので、注文したものが届くのは、少し時間がかかりそうだ。
改めて店内を見回して思った。
女3人に男1人。
歩いているときは何にも思わなかったが、召使いの格好でもないカジュアルな私服で、とりわけ美形でもないモブ顔の男が、複数の女を誑かしているように見えないか。
「そういえば、今さらですが、俺がいて大丈夫でしたか?あなたたちには婚約者とかいませんでしたか?」
「私たちまだいないから、体面気にしないで大丈夫だよ」
「あーあー、私にもヴィオラみたいに恋人いたらなあ」
「え?」
ぐりんと、首が痛くなるくらいにヴィオラの方に振り向いた。
いや、恋人いるかもしれないと思って来たけど、実際に聞かされると、動揺してしまった。
「あの人といい感じなんでしょう」
「そんな訳ないでしょう。あの人は友達だから」
「あの人って誰のこと?」
このタイミングなら、誰か分かるな。
「ほら、弟くんも心配しているよ」
「言っちゃえ言っちゃえ」
「だから…!」
「ヴィオラ、か?」
ヴィオラの友人たちがはやし立てているときに、誰かが声をかけてきた。
3人がばっと立ち上がり、お辞儀、確かカーテンシーというんだったか。
「ごきげんよう、ハルト王子」
この人が第一攻略対象のハルト王子。
俺も後から立ち上がり、礼をする。
ちゃんとした挨拶の仕方なんて、分からねえ。
内心あせっていた。
「いや、お互い学生の立場というのは同じなんだから、気にしないでくれ」
そう言われたので、俺たちは顔を上げる。
小顔で雪みたいな真っ白な肌、俺よりも背が高くて、鍛えられた体をしている。
黄金の髪がきれいに光輝いていて、瞳もレモンみたいに鮮やかだった。
さすが第一攻略対象なだけあって、すごい美形だ。
パッケージで見たことはあるけど、こうやって生で見ると、違うな。
「ヴィオラ、この人は?」
ハルト王子は俺のことを見ている。
「この子は、私の弟なんです」
「初めまして。アズライト・オルテンシアです」
「僕はハルト・レイアニだ。よろしく」
手を差し出される。
「俺、平民ですけど」
「それが何か?」
性格の良い正統派王子様だったらしい。
俺は手を取った。
「殿下、早くしないと、次に支障が出ます」
後ろから王子に声をかける女性がいる。
ヴィオラたちと同じ制服を着ていた。
ハルトとは違う色味の金髪で、片方に束ねた髪はくるくると巻かれている。
目はきりっとした形で、桃色の瞳できっと見られると、オーラの違いに圧倒されてしまう。
この人も見たことはあった。
パッケージにはいなかったが、ホームページのキャラクター一覧に。
「ロゼッタ様もごきげんよう」
また、恭しく会釈をする。
「ごきげんよう、ヴィオラ」
そう言って笑いかけているが、その笑みにどこかひんやりとしたものを感じる。
この女性は、ロゼッタ・ガルシア。
第一攻略対象ハルトの婚約者で、いわゆる悪役令嬢と呼ばれる女性だ。
学校の食堂も開いてはいるが、せっかく午後自由に過ごせる時間があるので、カフェでランチをするつもりだったようだ。
ドレスを取りに行く前に、カフェに行くことになった。
中世ヨーロッパな世界とはいえ、日本で作ったゲームなので、前世でも見たことあるような、テラス席のあるおしゃれな雰囲気だった。
店員にテラス席に案内された。
俺とヴィオラが隣り合わせで、向かい側にヴィオラの友人たち。
三つ編み眼鏡なミオンと、ポニーテールのシェリー。
さっそくメニューを開く。
「高っか」
さすが都会なだけあって、値段が高い。
コーヒー一杯がやっとだ。
昨日家でお昼食べてから、汽車の中ではお金取っておこうと、夕食は何も食べてなかったのに。
「じゃあ、俺コーヒーで」
「え、あんたそれだけで足りるの?」
「いや、こっち高いから」
「ちょっとくらいなら奢るよ。お姉ちゃん稼いでいるから」
「悪い。後で返すから」
「気にしなくていいよ」
そう言われても、あんまり高いもの頼むのは、悪いんだよな。
ほどほど安くて、腹に溜まりやすいもの。
「あ」
このパフェ、ボリュームある割に安い。
でも、カップル限定か。
「アズ、決まった?」
ヴィオラがのぞき込む。
でも、ここにはカップルいないから、別の決めないと。
「あ、店員さん!」
「俺、まだ見ていて…」
ヴィオラが手を上げて、店員に呼びかける。
店員はすぐにやってきた。
友人たちとヴィオラが頼んでいく。
そして、不意に手をつないできて、
「私たちカップルでーす。この限定パフェお願いします」
「お願いします」
そうして、店員はキッチンに伝えに行った。
「アズ顔に似合わず、甘党だもんね。このパフェ絶対好きだと思ったよ」
「顔に似合わずは余計だっての」
少し腹が立ったので、ヴィオラの頬をつまむ。
痛い痛い、とはしゃいでいた。
「君たち仲良いんだね」
「姉弟なんだよね」
俺とヴィオラは顔を見合わせる。
「これくらい普通だよね」
「そうだよな」
前世でも姉との距離感はこんなものだった。
友人や義兄は驚いていたようだった。
席には早く座れたが、店内は混み合っていたので、注文したものが届くのは、少し時間がかかりそうだ。
改めて店内を見回して思った。
女3人に男1人。
歩いているときは何にも思わなかったが、召使いの格好でもないカジュアルな私服で、とりわけ美形でもないモブ顔の男が、複数の女を誑かしているように見えないか。
「そういえば、今さらですが、俺がいて大丈夫でしたか?あなたたちには婚約者とかいませんでしたか?」
「私たちまだいないから、体面気にしないで大丈夫だよ」
「あーあー、私にもヴィオラみたいに恋人いたらなあ」
「え?」
ぐりんと、首が痛くなるくらいにヴィオラの方に振り向いた。
いや、恋人いるかもしれないと思って来たけど、実際に聞かされると、動揺してしまった。
「あの人といい感じなんでしょう」
「そんな訳ないでしょう。あの人は友達だから」
「あの人って誰のこと?」
このタイミングなら、誰か分かるな。
「ほら、弟くんも心配しているよ」
「言っちゃえ言っちゃえ」
「だから…!」
「ヴィオラ、か?」
ヴィオラの友人たちがはやし立てているときに、誰かが声をかけてきた。
3人がばっと立ち上がり、お辞儀、確かカーテンシーというんだったか。
「ごきげんよう、ハルト王子」
この人が第一攻略対象のハルト王子。
俺も後から立ち上がり、礼をする。
ちゃんとした挨拶の仕方なんて、分からねえ。
内心あせっていた。
「いや、お互い学生の立場というのは同じなんだから、気にしないでくれ」
そう言われたので、俺たちは顔を上げる。
小顔で雪みたいな真っ白な肌、俺よりも背が高くて、鍛えられた体をしている。
黄金の髪がきれいに光輝いていて、瞳もレモンみたいに鮮やかだった。
さすが第一攻略対象なだけあって、すごい美形だ。
パッケージで見たことはあるけど、こうやって生で見ると、違うな。
「ヴィオラ、この人は?」
ハルト王子は俺のことを見ている。
「この子は、私の弟なんです」
「初めまして。アズライト・オルテンシアです」
「僕はハルト・レイアニだ。よろしく」
手を差し出される。
「俺、平民ですけど」
「それが何か?」
性格の良い正統派王子様だったらしい。
俺は手を取った。
「殿下、早くしないと、次に支障が出ます」
後ろから王子に声をかける女性がいる。
ヴィオラたちと同じ制服を着ていた。
ハルトとは違う色味の金髪で、片方に束ねた髪はくるくると巻かれている。
目はきりっとした形で、桃色の瞳できっと見られると、オーラの違いに圧倒されてしまう。
この人も見たことはあった。
パッケージにはいなかったが、ホームページのキャラクター一覧に。
「ロゼッタ様もごきげんよう」
また、恭しく会釈をする。
「ごきげんよう、ヴィオラ」
そう言って笑いかけているが、その笑みにどこかひんやりとしたものを感じる。
この女性は、ロゼッタ・ガルシア。
第一攻略対象ハルトの婚約者で、いわゆる悪役令嬢と呼ばれる女性だ。
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