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第三十五話 レイモンドの「妻」
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「……リチャード様……」
斜め上を見上げると、整った美しい横顔があった。
ロイと同じ灰色の髪に、「ロイヤルブルー」の水色の瞳。レイモンドの兄……そして第一王子であるリチャードは、アリシアの腕を痛い程強く握りしめながら告げる。
「社交界に顔を出すのは、ほぼ初めてのはずだが……随分と目立ちたがりのようだな。ここまで場をかき乱してくれるとは」
その声は恐ろしく冷え切り、人を人とも思っていないような、残忍さが滲み出ていた。
「……その手を離せ」
怒りのこもったレイモンドの言葉に、リチャードは薄く唇の端を上げる。
その顔はレイモンドとよく似ていたが、髪は短く切り揃えられ、目尻は僅かに釣り上がっている。顔を正面に向けたまま、瞳だけをジロリとアリシアに向けると、リチャードは低い声で囁きかけた。
「……ユリウスからの忠告を聞いていないのか? 馬鹿な女め。余計な真似をすれば、お前の命など即刻葬り去れる。──帰りの馬車が不慮の事故で崖から落ちぬよう、せいぜい祈ることだな」
その瞬間、リチャードに掴まれた部分から強力な魔力が注入され、全身を熱い魔力が駆け巡った。体中の血が沸騰するかのように熱く、血管を針で刺されているような痛みがアリシアを襲う。
「ぐっ…………!」
自分の魔力を他人に流すのは禁術であり、属性が違えば拒絶反応で死にかねない重罪だ。耐え難い苦痛に、アリシアは声を殺して歯を食いしばった。
(この人は……ブルーベル様を捨てた、憎き父親。お嬢様の寂しい思いも知らないで、身内でも不要となれば切り捨てて……何でも自分の思い通りになると思ったら、大間違いなんだから!)
極限まで集中し、アリシアは体内の魔力を逆流させた。灼熱のような魔力は腕まで押し戻され、バチッという大きな音と共にリチャードの手を弾き飛ばす。
「絶対に、無事に、帰ります……。ブルーベル様が、私達の帰りを待っていますから……」
リチャードは弾かれて赤くなった手のひらに目を見開いた後、冷や汗を流しながら微笑むアリシアに目を向ける。
「ふん……俺の人生から捨てた者のことなど、あずかり知る所ではない。どう生きようがどう死のうが、全く興味はないが……せいぜい呪われた者同士、大人しく『家族ごっこ』でもするがいいさ」
「……ええ、言われなくても。私達は、本当の家族になります。どんなにせがまれても、ブルーベル様は貴方の元へ返しませんから。お嬢様は、私とレイモンド様が幸せにします」
鼻で笑うリチャードに一発入れてやりたい気持ちを何とか抑えていると、駆け寄ってきたレイモンドに抱き寄せられた。睨むレイモンドの横を素通りし、リチャードは固まっているロイの肩に触れる。
「ロイ、お前もだ。こんなに騒ぎにするとは……だからお前は未熟者なのだ。言うことを聞かせたいなら、他にやり方があるだろう。王家は王家らしくやることを覚えろ」
「はい、お兄様……」
震えるロイとクロエを後に引き連れ、リチャードは振り向きもせずに会場を後にした。その後ろ姿がすっかり見えなくなった後、レイモンドが呟く。
「……帰るか。もういいだろう」
「はい……。帰りましょう、私達の家へ」
優しく微笑んだレイモンドは、アリシアにそっと手を差し出した。
・・・・・
「…………疲れた」
執事のヨゼフとメイドのマールが待つ馬車まで戻り、レイモンドはグッタリとした様子でそう呟いた。
「随分お早いですけど……舞踏会はどうでした、成功しましたか……!?」
「ダンスは概ね成功でしたが……色々ありまして。また屋敷に戻ってからお伝えしますわ」
「ああ、今は一刻も早く家へ帰りたい。今となっては、あの寒さすら恋しいくらいだ……」
座席に座り込んで深くため息を吐くレイモンドを見て、ヨゼフは心配そうに眉根を寄せる。
「ええ、ではすぐに帰りましょう。マールも準備は良いですか?」
「は~い、ほんとは王都で買い物していきたかった所だけど、今日の所はやめておくわ~。二人とも、可哀想なくらいやつれてるから。旦那サマも奥サマも、ほんとお疲れ~」
ポンポンと頭を撫でられ、アリシアはようやく表情を崩した。
「ごめんなさい、マール。王都へは、また今度一緒に来ましょうね」
「約束だからね~。今度はサリーとお嬢サマもね」
三人が乗り込むと、馬車はすぐに動き出した。行きと同じようにマールは一瞬で眠りに落ち、揺れにもお構いなくスヤスヤと寝息を立て始める。
「……貴方も、疲れているだろうな。色々と……すまなかった。俺の兄弟が迷惑をかけて……」
項垂れるレイモンドの正面で、アリシアがぶんぶんと頭を振った。
「とんでもない! 迷惑といえば、うちの妹もです。それに、あの……かばっていただけて、嬉しかったです。ありがとうございました」
大切な妻だと、そう言い切ったレイモンドの声が、頭の中でこだまする。色々なことがあったが、その言葉だけで胸がいつまでもじんわりと温かかった。
はにかむように笑うアリシアを見て、レイモンドもようやく緊張が解れたように口元を緩めた。
「こちらこそ、ありがとう。……実の所、ロイが貴方に『戻ってこい』と言った時は、怖かった。貴方が俺の元から離れて行ってしまうのではないかと……」
「そんなわけないじゃないですか! そんなの、即決でレイモンド様ですよ! 戻りたいなんて思った事はありません」
「そうか、即決……即決か」
そっぽを向いたレイモンドであったが、どうやら照れているようだった。手で覆い隠してはいるが、口元から嬉しさが滲み出ている。
「私はレイモンド様のメイドですよ。貴方が不要だと言わない限り、お側を離れたりなどしませんから!」
誇らしげに胸を張るアリシアに、レイモンドは寂しそうな視線を向けた。
「妻だとは……言ってくれないのか」
「えっ……!? は、うう……。その、貴方の妻、でもありますので……」
顔を赤くして俯くアリシアを見つめて、レイモンドは満足げな表情を浮かべる。細められた目は慈しみに溢れており、アリシアの胸がドクンと音を立てた。
(この表情……知っている。かつての「アリシア」を見ていた時の、旦那様の目だわ。こんなに愛しげに、見つめられていたのだった……。)
「それは、良かった。自由な小鳥のような貴方を縛りつけるわけにはいかないが……俺が貴方を不要と言うことなど、一生ないだろうから。俺も貴方が嫌だと言わない限り……誰が何と言おうと、放すつもりはない」
レイモンドはそう言うと、そっと両手でアリシアの手のひらを包んだ。
(それ……まるでプロポーズみたいじゃない!? 必要とされるのは嬉しいけれど、でも、こんなの……どう返したらいいかわからないわ!)
恥ずかしさに身を縮めるアリシアの前で、レイモンドはスッと姿勢を正した。
「貴方を正式に妻として迎える──いや、今も妻ではあるのだが、正しく妻として扱わせてもらう上で、話しておかなければならないことがある」
「……なんでしょうか?」
「俺の『亡き妻』のことだ」
熱を持っていたアリシアの胸が、冷や水を浴びせられたようにキュッと締まる。
レイモンドが愛していたという、かつての妻。「亡き妻以外愛さない」と宣言していた、唯一無二の愛しい女性。
彼が彼女を大切にしていたことは、アリシアもあらゆる場面で感じていた。氷の温室もこの髪飾りも、「亡き妻」にプレゼントするはずのものだったのだ。
それがどれほど素晴らしい贈り物で、時間と熱意を込めて作られた物であるかを理解するほど、その愛情の大きさを思い知らされるようだった。
舞い上がっていた心が急速に落ち着きを取り戻し、浅くなった呼吸は息をするのも苦しいほどだ。
(彼女がどんな人だったか……知っておきたいような、絶対に知りたくないような。それを聞いた上で、私は旦那様への想いをどう処理したら良いのかしら……。)
戸惑うアリシアの心は知らず、レイモンドは俯き気味に告げる。
「……聞いて、くれるか。彼女がどんな人物だったか。俺は貴方にも彼女にも……誠実でありたいと思っているんだ」
真剣なレイモンドの眼差しに、アリシアはゆっくりと頷いた。
レイモンドが話したいと言うのなら……聞かないわけにはいかない。何も彼女になる必要はないのだ。
その思い出を受け止めて、私は私の形の「妻」になろう。
アリシアが覚悟を持って姿勢を正すと、レイモンドは咳払いをして窓の外に目を向けた。
「どこから話すべきか……。そう、彼女と初めて出会ったのは、こんな吹雪の朝だった。彼女の、俺の亡き妻の名前は────アリシア」
「…………………………はい?」
アリシアの喉から出たのは、自分の人生史上、最も間抜けな声だった。
斜め上を見上げると、整った美しい横顔があった。
ロイと同じ灰色の髪に、「ロイヤルブルー」の水色の瞳。レイモンドの兄……そして第一王子であるリチャードは、アリシアの腕を痛い程強く握りしめながら告げる。
「社交界に顔を出すのは、ほぼ初めてのはずだが……随分と目立ちたがりのようだな。ここまで場をかき乱してくれるとは」
その声は恐ろしく冷え切り、人を人とも思っていないような、残忍さが滲み出ていた。
「……その手を離せ」
怒りのこもったレイモンドの言葉に、リチャードは薄く唇の端を上げる。
その顔はレイモンドとよく似ていたが、髪は短く切り揃えられ、目尻は僅かに釣り上がっている。顔を正面に向けたまま、瞳だけをジロリとアリシアに向けると、リチャードは低い声で囁きかけた。
「……ユリウスからの忠告を聞いていないのか? 馬鹿な女め。余計な真似をすれば、お前の命など即刻葬り去れる。──帰りの馬車が不慮の事故で崖から落ちぬよう、せいぜい祈ることだな」
その瞬間、リチャードに掴まれた部分から強力な魔力が注入され、全身を熱い魔力が駆け巡った。体中の血が沸騰するかのように熱く、血管を針で刺されているような痛みがアリシアを襲う。
「ぐっ…………!」
自分の魔力を他人に流すのは禁術であり、属性が違えば拒絶反応で死にかねない重罪だ。耐え難い苦痛に、アリシアは声を殺して歯を食いしばった。
(この人は……ブルーベル様を捨てた、憎き父親。お嬢様の寂しい思いも知らないで、身内でも不要となれば切り捨てて……何でも自分の思い通りになると思ったら、大間違いなんだから!)
極限まで集中し、アリシアは体内の魔力を逆流させた。灼熱のような魔力は腕まで押し戻され、バチッという大きな音と共にリチャードの手を弾き飛ばす。
「絶対に、無事に、帰ります……。ブルーベル様が、私達の帰りを待っていますから……」
リチャードは弾かれて赤くなった手のひらに目を見開いた後、冷や汗を流しながら微笑むアリシアに目を向ける。
「ふん……俺の人生から捨てた者のことなど、あずかり知る所ではない。どう生きようがどう死のうが、全く興味はないが……せいぜい呪われた者同士、大人しく『家族ごっこ』でもするがいいさ」
「……ええ、言われなくても。私達は、本当の家族になります。どんなにせがまれても、ブルーベル様は貴方の元へ返しませんから。お嬢様は、私とレイモンド様が幸せにします」
鼻で笑うリチャードに一発入れてやりたい気持ちを何とか抑えていると、駆け寄ってきたレイモンドに抱き寄せられた。睨むレイモンドの横を素通りし、リチャードは固まっているロイの肩に触れる。
「ロイ、お前もだ。こんなに騒ぎにするとは……だからお前は未熟者なのだ。言うことを聞かせたいなら、他にやり方があるだろう。王家は王家らしくやることを覚えろ」
「はい、お兄様……」
震えるロイとクロエを後に引き連れ、リチャードは振り向きもせずに会場を後にした。その後ろ姿がすっかり見えなくなった後、レイモンドが呟く。
「……帰るか。もういいだろう」
「はい……。帰りましょう、私達の家へ」
優しく微笑んだレイモンドは、アリシアにそっと手を差し出した。
・・・・・
「…………疲れた」
執事のヨゼフとメイドのマールが待つ馬車まで戻り、レイモンドはグッタリとした様子でそう呟いた。
「随分お早いですけど……舞踏会はどうでした、成功しましたか……!?」
「ダンスは概ね成功でしたが……色々ありまして。また屋敷に戻ってからお伝えしますわ」
「ああ、今は一刻も早く家へ帰りたい。今となっては、あの寒さすら恋しいくらいだ……」
座席に座り込んで深くため息を吐くレイモンドを見て、ヨゼフは心配そうに眉根を寄せる。
「ええ、ではすぐに帰りましょう。マールも準備は良いですか?」
「は~い、ほんとは王都で買い物していきたかった所だけど、今日の所はやめておくわ~。二人とも、可哀想なくらいやつれてるから。旦那サマも奥サマも、ほんとお疲れ~」
ポンポンと頭を撫でられ、アリシアはようやく表情を崩した。
「ごめんなさい、マール。王都へは、また今度一緒に来ましょうね」
「約束だからね~。今度はサリーとお嬢サマもね」
三人が乗り込むと、馬車はすぐに動き出した。行きと同じようにマールは一瞬で眠りに落ち、揺れにもお構いなくスヤスヤと寝息を立て始める。
「……貴方も、疲れているだろうな。色々と……すまなかった。俺の兄弟が迷惑をかけて……」
項垂れるレイモンドの正面で、アリシアがぶんぶんと頭を振った。
「とんでもない! 迷惑といえば、うちの妹もです。それに、あの……かばっていただけて、嬉しかったです。ありがとうございました」
大切な妻だと、そう言い切ったレイモンドの声が、頭の中でこだまする。色々なことがあったが、その言葉だけで胸がいつまでもじんわりと温かかった。
はにかむように笑うアリシアを見て、レイモンドもようやく緊張が解れたように口元を緩めた。
「こちらこそ、ありがとう。……実の所、ロイが貴方に『戻ってこい』と言った時は、怖かった。貴方が俺の元から離れて行ってしまうのではないかと……」
「そんなわけないじゃないですか! そんなの、即決でレイモンド様ですよ! 戻りたいなんて思った事はありません」
「そうか、即決……即決か」
そっぽを向いたレイモンドであったが、どうやら照れているようだった。手で覆い隠してはいるが、口元から嬉しさが滲み出ている。
「私はレイモンド様のメイドですよ。貴方が不要だと言わない限り、お側を離れたりなどしませんから!」
誇らしげに胸を張るアリシアに、レイモンドは寂しそうな視線を向けた。
「妻だとは……言ってくれないのか」
「えっ……!? は、うう……。その、貴方の妻、でもありますので……」
顔を赤くして俯くアリシアを見つめて、レイモンドは満足げな表情を浮かべる。細められた目は慈しみに溢れており、アリシアの胸がドクンと音を立てた。
(この表情……知っている。かつての「アリシア」を見ていた時の、旦那様の目だわ。こんなに愛しげに、見つめられていたのだった……。)
「それは、良かった。自由な小鳥のような貴方を縛りつけるわけにはいかないが……俺が貴方を不要と言うことなど、一生ないだろうから。俺も貴方が嫌だと言わない限り……誰が何と言おうと、放すつもりはない」
レイモンドはそう言うと、そっと両手でアリシアの手のひらを包んだ。
(それ……まるでプロポーズみたいじゃない!? 必要とされるのは嬉しいけれど、でも、こんなの……どう返したらいいかわからないわ!)
恥ずかしさに身を縮めるアリシアの前で、レイモンドはスッと姿勢を正した。
「貴方を正式に妻として迎える──いや、今も妻ではあるのだが、正しく妻として扱わせてもらう上で、話しておかなければならないことがある」
「……なんでしょうか?」
「俺の『亡き妻』のことだ」
熱を持っていたアリシアの胸が、冷や水を浴びせられたようにキュッと締まる。
レイモンドが愛していたという、かつての妻。「亡き妻以外愛さない」と宣言していた、唯一無二の愛しい女性。
彼が彼女を大切にしていたことは、アリシアもあらゆる場面で感じていた。氷の温室もこの髪飾りも、「亡き妻」にプレゼントするはずのものだったのだ。
それがどれほど素晴らしい贈り物で、時間と熱意を込めて作られた物であるかを理解するほど、その愛情の大きさを思い知らされるようだった。
舞い上がっていた心が急速に落ち着きを取り戻し、浅くなった呼吸は息をするのも苦しいほどだ。
(彼女がどんな人だったか……知っておきたいような、絶対に知りたくないような。それを聞いた上で、私は旦那様への想いをどう処理したら良いのかしら……。)
戸惑うアリシアの心は知らず、レイモンドは俯き気味に告げる。
「……聞いて、くれるか。彼女がどんな人物だったか。俺は貴方にも彼女にも……誠実でありたいと思っているんだ」
真剣なレイモンドの眼差しに、アリシアはゆっくりと頷いた。
レイモンドが話したいと言うのなら……聞かないわけにはいかない。何も彼女になる必要はないのだ。
その思い出を受け止めて、私は私の形の「妻」になろう。
アリシアが覚悟を持って姿勢を正すと、レイモンドは咳払いをして窓の外に目を向けた。
「どこから話すべきか……。そう、彼女と初めて出会ったのは、こんな吹雪の朝だった。彼女の、俺の亡き妻の名前は────アリシア」
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