山ちゃんと私

ひゃくえんらいた

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山ちゃんと私と出会い

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 早く起きた日曜日の朝は、マンガ図書館へ行く。
 図書館、と言っても一軒家いっけんやの一画単語いっかくの小さなものだ。
 カラカラと横開きの窓を開けると、少し古ぼけた本の匂いがふわりと香る。
 エアコンのうなる中、私は靴を脱いでぎしりと踏み込んだ。
 狭い室内には人が通る通路以外、天井まで本棚にマンガが詰まってて、その隙間隙間すきますきまに手作りのベンチや椅子いすが置かれている。
 かさり、ページをまくる音がして私は音の方を何気なく覗き込んだ。

「あ、山下くん!?」

 そこに、転校して来たばかりのクラスメイトの山下くんが居た。
 驚いてつい大きな声を出してしまった私に、山下くんはびくりと肩を揺らしてからちらりと私を見た。

「すごいね、どうやってここ知ったの? 知る人ぞ知る場所なのに!」
「別に、街を探索してたらあったから」
「それで見つけたの? 山下くん勇気あるねー!」

 私なんて最初は入って良いか分からず超びびって友達呼んだのに。
 だけど恥ずかしいから内緒にして、私は山下くんの隣に腰を下ろした。
 また、山下くんの体がびくりと揺れた。

「な、なに?」
「そのマンガ、私もちょうど今読んでるやつ! あ、山下くんの方が進んでるじゃん」

 山下くんの後ろにあるマンガを取りながら覗き込めば、ちょうど一巻分、山下くんの方が早かった。
 それから二人、黙々とマンガを読み進めた。

「うっそ、この展開で負けるの!?」
「あ、それ俺も思った」

 そして気付けば、マンガの展開について山下くんと話し込んでしまっていた。

「次何読もうかな、あ! このゲームマンガになってるんだけど!」
「え、お前もそのゲーム知ってるの?」
「知ってるに決まってんじゃん! 超好きだよ」
「マッジか、俺も!」

 それから山下くんは目をキラキラさせて話し出した。
 私はそこで初めて、いつも仏頂面ぶっちょうづらでクールだと思っていた山下くんの意外な一面にびっくりして、思わずじっと見つめる。
 山下くんは視線に気づくと、なんだよ、と恥ずかしそうにそっぽを向いた。
 その姿が少し面白くて、私はくすりと笑ってからにっと口角を上げる。

「ねぇ、うち来てゲームしない? あれって二人で進めた方が絶対良いじゃん」
「! 行く! ならさ、その前に俺んち寄って他のゲームも持って行って良いか?」
「いいよ! なんてゲーム? うちにあるかなぁ」

 それから山下くんと一日中たくさん遊んだ。
 まるで最初からずっと友達だったみたいに、山下くんと遊ぶのは楽しくて、学校でも休み時間に遊ぶようになって。

「山ちゃん!」

 気付けばそうやって呼んでいて、山ちゃんは初めてそう呼んだ時、ちょっとだけ顔を赤らめて、くしゃりと笑った。

「ねぇ、今日はどこで遊ぶ?」
「俺んちでゲームの続きしようぜ!」

 教室のすみで静かだった転校生は、そうして実はよく笑う、ちょっとお茶目で勇気のある、私の親友になるのである。


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