2 / 12
山ちゃんと私と秘密基地
しおりを挟む山ちゃんに連れて来られた、蝉の声しかしない公園。
その真ん中に堂々と佇むコンクリート山の、薄暗い土管の中に、私と山ちゃんは二人で座っていた。
コンクリートの壁はどこも冷たくて、肌に触れるざらりとした感触が少し気持ち悪い。
落ち着かない気持ちに、私は足を擦り合わせる。
山ちゃんと仲良くなってから、男女で遊んでいるのをよく男子に冷やかされるようになった。
私はそれが嫌で、最近山ちゃんをちょっと避けていた。
「ねぇ、もう帰ろうよ」
私が言うと、山ちゃんは急に体を倒すようにして、どんと私の右肩に自分の肩をぶつけてきた。
「っなに?」
驚いて山ちゃんを見れば、にんまりと目を細めて笑っている。
多分ふざけてぶつかってきたんだろう。
前なら一緒になって笑ってたけど、私はむっとして顔をそっぽに向けた。
山ちゃんは男子にからかわれた時、いつも平気そうに知らん顔してる。
でも私は山ちゃんみたいには強くない。からかわれると、胸がモヤモヤして泣きそうになる。
「ここなら誰にも見つからずに、二人で遊べるだろ」
だけど、ぽそりと。
私の耳元に手を添えて、内緒話みたいに山ちゃんは言った。
私は目をぱちくりさせて、山ちゃんを見る。
「気にしてたんだろ、からかわれたの」
ほんの少し山ちゃんの視線がはずれて、だけどすぐにまた目が合った。
「誰にも言うなよ、俺の隠れ家なんだから」
山ちゃんは笑ってた。まるで悪戯が成功した悪ガキみたいに。
私は驚きすぎて、一瞬言葉に詰まる。
山ちゃん、気にしてくれてたんだ。そう思ったら、鼻の奥がつんとして、思わず唇を噛んだ。
本当は私だって、山ちゃんともっと遊びたかったから。
「二人だけの、秘密基地?」
「そうだよ。だから絶対、親にも内緒だからな!」
さっきまでは怖かった薄暗さも、二人だけの内緒の場所だと思ったら、なんだか涼しくて居心地よく感じて来る。
ぶつけられた肩はちょっと痛かったけど、距離が近づいた分、山ちゃんから嗅ぎ慣れたおばあちゃんちの匂いがする。
お線香みたいな、落ち着く匂い。
私はにんまり目を細めて、山ちゃんを見た。
「どうしよっかなぁ?」
口ではそう言ったけれど、私はとびきり嬉しかった。多分、お母さんに褒められた時より、ずっと。
「言わないだろ?」
少しムッとしたのか、山ちゃんは私のおでこに全然痛くないでこぴんをした。それに私はへへっと笑ってから、とびっきりの笑顔を浮かべ、言った。
「当然! てか、いつの間にこんなとこ見つけてたし!」
わざとらしく声を張り上げたら、山ちゃんは少しだけ目を見開いて、それから目を細め、自慢げに口角をぐっと引き上げた。
「バーカ、教えねぇよ」
「なにそれ! 教えなよー!」
初めて見たその笑顔に、私は山ちゃんの特別なんだって、そう思ったら誇らしくて、思わずにやっと笑い返した。
「あ、ねぇあのゲームもうクリアした?」
「お前がいないからまだ! 明日やろうぜ」
二人だけの場所が出来たことに、私の胸はじんわりと温かくなる。
それから夢中で遊んでいたら、いつの間にか土管の外は橙色に染まっていた。
1
あなたにおすすめの小説
【親子おはなし絵本】ドングリさんいっぱい(2~4歳向け(漢字えほん):いろいろできたね!)
天渡 香
絵本
「ごちそうさま。ドングリさんをちょうだい」ママは、さっちゃんの小さな手に、ドングリさんをのせます。
+:-:+:-:+
ドングリさんが大好きな我が子ために作った絵本です。
+:-:+:-:+
「ひとりでトイレに行けたね!」とほめながら、おててにドングリさんを渡すような話しかけをしています(親子のコミュニケーションを目的にしています)。
+:-:+:-:+
「ドングリさんをちょうだい」のフレーズを繰り返しているうちに、子供の方から「ドングリさんはどうしたらもらえるの?」とたずねてくれたので、「ひとりでお着がえできたら、ドングリさんをもらえるよ~」と、我が家では親子の会話がはずみました。
+:-:+:-:+
寝る前に、今日の「いろいろできたね!」をお話しするのにもぴったりです!
+:-:+:-:+
2歳の頃から、園で『漢字えほん(漢字が含まれている童話の本)』に親しんでいる我が子。出版数の少ない、低年齢向けの『漢字えほん』を自分で作ってみました。漢字がまじる事で、大人もスラスラ読み聞かせができます。『友達』という漢字を見つけて、子供が喜ぶなど、ひらがなだけの絵本にはない発見の楽しさがあるようです。
+:-:+:-:+
未満児(1~3歳頃)に漢字のまじった絵本を渡すというのには最初驚きましたが、『街中の看板』『広告』の一つ一つも子供にとっては楽しい童話に見えるようです。漢字の成り立ちなどの『漢字えほん』は多数ありますが、童話に『漢字とひらがなとカタカナ』を含む事で、自然と興味を持って『文字が好き』になったみたいです。
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
童話絵本版 アリとキリギリス∞(インフィニティ)
カワカツ
絵本
その夜……僕は死んだ……
誰もいない野原のステージの上で……
アリの子「アントン」とキリギリスの「ギリィ」が奏でる 少し切ない ある野原の物語 ———
全16話+エピローグで紡ぐ「小さないのちの世界」を、どうぞお楽しみ下さい。
※高学年〜大人向き
ノースキャンプの見張り台
こいちろう
児童書・童話
時代劇で見かけるような、古めかしい木づくりの橋。それを渡ると、向こう岸にノースキャンプがある。アーミーグリーンの北門と、その傍の監視塔。まるで映画村のセットだ。
進駐軍のキャンプ跡。周りを鉄さびた有刺鉄線に囲まれた、まるで要塞みたいな町だった。進駐軍が去ってからは住宅地になって、たくさんの子どもが暮らしていた。
赤茶色にさび付いた監視塔。その下に広がる広っぱは、子どもたちの最高の遊び場だ。見張っているのか、見守っているのか、鉄塔の、あのてっぺんから、いつも誰かに見られているんじゃないか?ユーイチはいつもそんな風に感じていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる