山ちゃんと私

ひゃくえんらいた

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山ちゃんと私と秘密基地

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 山ちゃんに連れて来られた、せみの声しかしない公園。
 その真ん中に堂々とたたずむコンクリート山の、薄暗い土管の中に、私と山ちゃんは二人で座っていた。
 コンクリートの壁はどこも冷たくて、肌に触れるざらりとした感触が少し気持ち悪い。
 落ち着かない気持ちに、私は足を擦り合わせる。
 山ちゃんと仲良くなってから、男女で遊んでいるのをよく男子に冷やかされるようになった。
 私はそれが嫌で、最近山ちゃんをちょっと避けていた。

「ねぇ、もう帰ろうよ」

 私が言うと、山ちゃんは急に体を倒すようにして、どんと私の右肩に自分の肩をぶつけてきた。

「っなに?」

 驚いて山ちゃんを見れば、にんまりと目を細めて笑っている。
 多分ふざけてぶつかってきたんだろう。
 前なら一緒になって笑ってたけど、私はむっとして顔をそっぽに向けた。
 山ちゃんは男子にからかわれた時、いつも平気そうに知らん顔してる。
 でも私は山ちゃんみたいには強くない。からかわれると、胸がモヤモヤして泣きそうになる。

「ここなら誰にも見つからずに、二人で遊べるだろ」

 だけど、ぽそりと。
 私の耳元に手を添えて、内緒話みたいに山ちゃんは言った。
 私は目をぱちくりさせて、山ちゃんを見る。

「気にしてたんだろ、からかわれたの」

 ほんの少し山ちゃんの視線がはずれて、だけどすぐにまた目が合った。

「誰にも言うなよ、俺の隠れ家なんだから」

 山ちゃんは笑ってた。まるで悪戯いたずらが成功した悪ガキみたいに。
 私は驚きすぎて、一瞬言葉に詰まる。
 山ちゃん、気にしてくれてたんだ。そう思ったら、鼻の奥がつんとして、思わず唇を噛んだ。
 本当は私だって、山ちゃんともっと遊びたかったから。

「二人だけの、秘密基地?」
「そうだよ。だから絶対、親にも内緒だからな!」

 さっきまでは怖かった薄暗さも、二人だけの内緒の場所だと思ったら、なんだか涼しくて居心地よく感じて来る。
 ぶつけられた肩はちょっと痛かったけど、距離が近づいた分、山ちゃんから嗅ぎ慣れたおばあちゃんちの匂いがする。
 お線香みたいな、落ち着く匂い。
 私はにんまり目を細めて、山ちゃんを見た。

「どうしよっかなぁ?」

 口ではそう言ったけれど、私はとびきり嬉しかった。多分、お母さんに褒められた時より、ずっと。

「言わないだろ?」

 少しムッとしたのか、山ちゃんは私のおでこに全然痛くないでこぴんをした。それに私はへへっと笑ってから、とびっきりの笑顔を浮かべ、言った。

「当然! てか、いつの間にこんなとこ見つけてたし!」

 わざとらしく声を張り上げたら、山ちゃんは少しだけ目を見開いて、それから目を細め、自慢げに口角をぐっと引き上げた。

「バーカ、教えねぇよ」
「なにそれ! 教えなよー!」

 初めて見たその笑顔に、私は山ちゃんの特別なんだって、そう思ったら誇らしくて、思わずにやっと笑い返した。

「あ、ねぇあのゲームもうクリアした?」
「お前がいないからまだ! 明日やろうぜ」

 二人だけの場所が出来たことに、私の胸はじんわりと温かくなる。
 それから夢中で遊んでいたら、いつの間にか土管の外は橙色だいだいいろに染まっていた。


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