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山ちゃんと私と小川
しおりを挟む土曜の昼、まんが図書館で山ちゃんとゲームの話をした後、近所の小川へ遊びに出た。
さらさらと流れる小川の音と、木々がさざめく音が響く。
そんな中、私は川縁の大きな石を前にちょっと緊張して立っていた。
その横を山ちゃんがひょいと飛び越えて、向こう岸から振り返る。
「怖いの?」
「全然!? 余裕だし!」
反射的に言い返した私は、山ちゃんのにんまり顔にしまったと思ったけれど、もう遅い。
戻って来た山ちゃんが立つ大きな石。その隣の石に私は勢いよく登った。
対岸の石は、決して遠くはない。ジャンプすれば、きっと届く距離だ。
手のひらにじんわりと冷たい汗が滲んでいる。
隣で山ちゃんが急に高く跳んだ。白いTシャツが太陽に透けて、まるで羽でも生えたみたいにひらりと、山ちゃんは小川の向こう側の石に着地する。
振り返った山ちゃんの視線は、私に「ほら早く」と言っているみたいだった。
一度息を吸って、吐いて、私は覚悟を決めようとした。
「いくよ」
ごくりと息を呑む。
だけど、どうしても足が動かない。
すると山ちゃんがまた、ひらりと私の横に戻ってきた。
「足伸ばせばいけるって」
「っむ、無理! 届くわけない」
「落ちても浅いし、俺が見てるから」
山ちゃんの手が背中に軽く触れた。
見れば山ちゃんは思ったよりずっと真剣に私を見ていた。
そんな山ちゃんの視線と、背中に触れているちょっと熱い手のひらの感触が、私を急き立てているみたいで、何だか焦る。
だけどここでやめたら、自分に負けたみたいで格好悪いかもしれない。何より山ちゃんには負けたくない。
私がそう思ったタイミングで、山ちゃんの口が大きく開いた。
「せーのっ」
その掛け声と同時に、私は大股をひらいて小川の向こうの石へと飛び出した。
右足の裏が岩に触れて、ちょっと濡れた感覚をしっかりと掴むように着地する。
左足でバランスを取って、気付けば私は、向こう岸の石に立っていた。
呆然とする私の顔を、いつの間にこちらに来ていたのか、山ちゃんが覗き込んで、目を細め、笑った。
「上出来」
思わず「やったー!」と飛び跳ねそうになった私は、にやけそうになる口を無理やり結んで、つんとすました顔で「まあまあかな」と言ってやった。
山ちゃんの口からぶはっと大きな笑い声が漏れる。
それから笑い出した山ちゃんを見て、私は照れて顔を逸らした。
足元にはチョロチョロと小川が流れてる。
その底にある色とりどりの小石が、まるで私をお祝いしているみたいに、キラキラと輝いて見えた。
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