聖女認定を剥奪されたら本当の幸せを掴むことが出来ました

長尾 隆生

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 死霊の王軍との戦いは私の予想通り王国軍の圧倒的勝利で終わりました。

 どれほど圧倒的だったのかと言えば、王国軍と冒険者たちには一人も負傷者が出なかったと言えばわかるでしょう。

 なぜなら私の聖女の力によって加護を受けた剣は、一刀でアンデッドを塵に変え、アンデッドの攻撃は同じく加護を受けた鎧によってほとんど兵士たちの体に届くことも無かったのです。
 そして、少しのかすり傷を受けたとしても、その全てが次の瞬間には完治するのです。

 全てのアンデッドを塵に変えられ、一体だけ残った死霊の王。
 しかし、そんな王の力ですら私の聖女の力の前では無力でした。

「死霊の王よ! 塵と化せ!!!」

 私の聖女の加護を受けたレオン先生の叫び声が戦場に響き渡ります。
 近接戦闘は苦手だと仰っていましたが、全ての兵士たちの前で敵軍の王を討ち取る姿は絶対に見せるべきだという私の言葉で、彼は渋々この役目を果たすことを決めてくれました。

「ああ、凜々しいお姿ですレオン先生」

 聖女の力を受け、光り輝く装備を身に纏ったレオン先生の姿は、私だけでなくその場にいた全ての者たちの瞳に刻みつけられたことでしょう。

「グォォォォォォアアァァァァァァ」

 空高く響き渡る死霊の王の断末魔。

 死霊の王は、自らの死と共にレオン先生に最後の呪いを放ったようでしたが、そんなものが私の聖女の加護に敵うわけがありません。
 それを知った瞬間の死霊の王の顔は、表情がうかがい知れないはずのアンデッドであるはずなのに、私には驚愕と諦めの表情を浮かべたことがはっきりとわかりました。

「終わっ……たか」

 レオン先生はそう呟くと、手にした剣を大きく天に突き上げときの声を上げました。

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

 地響きのような歓声が戦場に広がって行きます。
 この瞬間、私はこの国の新たなる王が誕生したことを確信したのでした。

「さて、それでは最後の大掃除を始めましょうか」

 私は一人、喜びに沸く戦場に背を向け馬を王都へ向け駆け出しました。
 目的地は王都……ではなくその向こう側。

「手を汚すのは私だけでいいのです。さようならレオン様」

 私は涙を振り払いながら馬を急かせます。
 目指す先は偽聖女ティアラや王族たちが逃げた先にある彼らの隠れ家。
 聖女時代に密かに調べていた王族が最後に頼る場所。

「首を洗って待ってなさい」

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