新世界へ

佐々木 ガム

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〜始動〜

#2、漆黒の雨の日中で盲目は決意してしまう

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 辺りが静まり返り、放射能が含まれた黒い雨が降り始めた。その静けさと肌に当たる雨に対してゼロは楽しいと笑いを堪える事ができなかった。かろうじてアルクの爆破に瞬間で気付き防いだ者たちが数名起き上がり、たくさんの悲鳴の雷鳴が鳴り響いた。それもゼロにとっては好奇心を擽る物でしかなく、最大限に楽しさをあらわにした。
 そんな時、遅れて色々な神の部隊「アミニズ(神の警備部は街の規模に応じてして編成され、その中で最も精鋭とされる部隊がアミニズだ。)」が隊列を整えて、飛んできた。先に着いていたはずの石の神の不在に気付き、すぐにアルクが殺害した事をアミニズ達は悟った。
 アミニズは隊列を整えアルクの全方位を囲み、空からは電撃、左右からは槍、下からは火がアルクに襲いかかる。
 アルクは再び背中から血を吹き出し、次は朱い大きな翼で自分をコーティングする様に生やした。そのままアミニズを薙ぎ払うが多勢に無勢、キリがなかった。
 それを見ていたエルトはゼロを強いバリアにコーティングし直し、ウキウキしながらアルクの加勢に入る。エルトの腕からは鱗が生えて、徐々に爬虫類の腕へと変化し背中からはアルクとは違う膜の様な翼を基板になる骨から生やした。エルトは勢い良くアミニズに単身突撃。部隊の中心まで辿り着くと大地と大気が震えるほどの叫び声を上げた。その衝撃波がアミニズの脳まで響き渡り、細胞を壊死させた。これによってほとんどのアミニズが壊滅したが数名残る。
 アルクは周りに舞っている自身の羽根を掴み取る。そのまま漆黒の様だが、朱の混ざった刀を生み出し、残ったアミニズの首を落とた。刀は死んだアミニズの動脈から血を吸い上げる。アルクは更に、落ちた首を踏み潰して飛び散った血までも吸収し溜め込んだ。これはアルクにとって呼吸するのと同じ事であり、怖いほどに自然な行動だった。
 この場の全てが静まり返っている中、大きな笑い声を上げるゼロの声が静かな空間に響いていた。アルクは心底感に触り、ゼロに近ずくと自分が皆殺しにしたにも関わらず、死を笑ったゼロに対して怒り怒鳴り散らかした。
 ゼロには、現場を理解できていない分アルクが何に対して怒りを露わにしたか訳が解らず、怒らないでと冗談混じりに言い返した。
 アルクは握った刀をゼロの首筋に持っていき、首の皮を1センチ、正確に斬り血が噴き出した。ゼロはスローモーションの様に苦痛の表情を浮かび上げ、終いには涙は吹き出し、呼吸もできずに嗚咽をし始めた。
 ゼロにとって、この神の世界は窮屈と恐怖が混ざり合った世界にも関わらず、これが初めての死の恐怖だった。盲目なゼロは、死にながら生きている想いだったが、どこかそれ以上に新しい事を知る探究心が優っていた。血が流れた事でこの場の静けさと、自分から流れ出ている死の匂いが周りに満ちている事にも同時に気づいた。そして、アルクに対しての嫌悪と興味がゼロの中で同時に芽吹いた。
 この同時感情は、これからゼロの中で数々の選択をする中軸になる感情だ。

 ゼロは嗚咽混じりで泣きながら問う。
「この後は、どうするの?」

 アルクは「無」と沈黙で答える。

 ゼロにこの沈黙が伝わったのか、盲目の自分とアルクの沈黙を重ね合わせて
「僕以外にこうなってほしくない、、、。」
とありのままの感情が言葉に出た。

 だがアルクにそれを伝えるのはただの無駄な事だった。アルクの目的は自分がこの世界で孤独(ひとり)になる事だったからだ。それを知って居るのはこの場ではエルトのみ。
 アルクには明確な殺しの手順がある。いや、殺したい神がいる。アルクも無駄を踏むのを嫌っていた故に、ゼロと他の住民をこの場で殺すのは控えた。アルクにとって周りの者は全て虫ケラなんだ。
 アルクは溢れ出る血を圧えるゼロに「生を全うすることは奇跡であり幸福であり、悪だ」と告げる。
 この場の残った血を纏いアルクはエルトと一瞬眼を合わせ、姿を眩ませた。
 ゼロにはアルクが言った事をこの時理解できなかったが、この発言がどれだけ重要な事かを知るのは、今から18日後の事だ。
 エルトはアルクとゼロのやり取りに深い興味を持ち、暗い満面の笑みを浮かべる。ゼロはまだアルクに殺される事はないが故に、ゼロはアルクを表面で恐れてない分たくさんの影響をアルクに与える可能性があると思ったからだった。
 エルトはゼロに独り言のように背を向けながら話し始めた。「このままここにいてもいいし、先に進んでもいい。僕はゼロが気に入ったから僕の近くに居る限り匿ってあげられるよ。でも必ずこの先ずっと生かしてあげられる保証は全くない。気に入っただけで僕の中で1番は僕だからね。どうする?僕には観たい景色がある。だから、僕は行かなければならない所へ直ぐに向かうよ。例え一寸先が闇でもね。」と語りかけた。
 ゼロは間を開ける事なく、光を感じることのない眼を限界まで見開いて言葉ではなく、小さく首を縦に頷いた。ゼロはこの時決意した。"生きている感覚が他にどれだけあるのか知りたい"と。
                 EP2 END
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