【R18】君しか見えない部屋で、僕は君を創造する。

まつもとねここ

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 スマホを見ながらアンリが何気なく口にするとキリトは一拍置いて聞き返してきた。

「……え?」
「ハルキだよ。インスタフォローされてたんだ。同窓会しようって」

 ハルキは小学校のときキリトとアンリと仲の良いグループの1人で、放課後は毎日のように皆で遊んでいた。
 憎めない悪ガキで、お転婆だったアンリと気が合いよく2人でふざけ合っていたものだ。
 キリトとも仲が良く、中学でも一緒に居るところをよく見かけていた、のだが。

「キリト?」

 血の気が引いた顔で黙り込んだキリトをアンリはすぐに見上げる。

「もしかして、ハルキと何かあった?」
「………………」

 アンリは一瞬で思い至る。

──まさか、キリトが引きこもったのって……!

「あいつが原因!?」
「あ、いやっ、まあ、きっかけはそうだけど。本当にただのきっかけで」
「何言われたの?」
「いやほんとに大したことじゃ」
「教えて」

 アンリは真剣な眼差しでキリトを見つめる。
 キリトは視線を彷徨わせた。

「…………デリカシー無いって。失恋したっていうから慰めたつもりだったんだけど、オレが変なこと言って傷付けたんだと思う」

 淡々と言っているが声は微かに震えている。
 アンリは目を見開いてから、顔を歪ませた。

「それ、ただの八つ当たり。キリトが引きこもる前の日、私ハルキに告られたの。キリトが好きだからって断ったんだ」
「…………え?」
「ああ、許せない! ずっと何があったんだろうって思ってたけど、あいつ、キリトが引きこもってからも心配してる風にしれっと話してたんだ!」

 アンリはキリトのクラスで何かあったのかと思い、同じクラスだったハルキに何度も話を聞きに行ったのだ。何もわからない、と言われ信じていたのに。
 頭に血が昇るが今さら詰ったところで5年の月日は戻らない。

「しかも私が原因だったとか、マジでありえない! 本当にごめん、キリト。無理にでももっと早く聞き出してあげたら良かった」
「いや、あの、それは良いんだ。遅かれ早かれこうなってたとは思うから。良いんだけど」

 微かに焦った様子のキリトに気付き、アンリは少し気持ちを落ち着ける。

「うん?」
「オレのこと好きだったの」

 アンリは一瞬何を言われているのかわからずキリトを見上げた。
 キリトは少し困惑した表情でアンリを見ている。

──あ。

 2人は顔を見合わせてフリーズする。
 その時電車が大学の最寄り駅に着き、2人は慌てて電車を降りた。

 アンリは下を向いて早足で歩きながらグルグルと考える。

──ああああ、キリトが私のことなんか必要としてないってわかった途端に自分でバラしちゃうなんて!

 アンリは自分の失恋を確信していた。
 それでも朝から頑張ってキリトを引っ張り出したのは、キリトがまた引きこもるのをとにかく阻止したかったからである。

──自分の恋が実らなくても、キリトには楽しい人生を送って欲しいもん。隣で応援するくらいさせて欲しい……と思ってたのに! 私のバカ!

「アンリ、待って」

 いつのまにかアンリはほとんど走っていたようで振り返るとキリトが必死で着いてきていた。

「ごめんオレ体力ゼロ」
「え!? あ、ごめん!」

 アンリがようやく足を止めるとキリトはぜいぜいしながら言う。

「ええと、今の話じゃない、よな」
「…………なにそれ」

 アンリはムッとする。
 キリトは小さな声で続けた。

「だって5年も会ってなかったのに、オレなんか好きとか……ありえないし」
「好きって言ってるんだからもっと気にしてよ!」

 キリトの目が大きく開かれた。
 道の真ん中で向かい合う2人を避けて学生たちが足早に通り過ぎて行く。

「……え、でも」
「好きじゃなきゃ、チュウなんかしない!」

──もうどうにでもなれっ。

「ずっとずっとずーっとキリトが出てくるの待ってたの! そのくらい、わかってよぉ……」

 キリトはよろよろと後ずさった。

「ま、待ってくれ。でも、オレは」
「でもとか言うなっ!」

──ああもう告ってキレるとか私、最悪かっ!

「もう行くっ」

 アンリは耐えきれずにキリトを置いて走り出す。

「アンリ、後でちゃんと、話すから!」

 キリトの声が背中に響く。

──5年会ってなかったら好きとかありえないって、自分のこと!? 即答されない時点でもう、終わった……

 涙をぼたぼたとたらしながらアンリは全力で走った。



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