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大事な恩人様
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『っ、…たく。流石に動き回るにゃ早かったな』
ベッドに下ろされると横になった俺に覆い被さるようになるボスが額に汗を浮かべながらシーツを掴む。苦しそうな顔に手を添えると熱が出てしまったのか少し熱い気がする。
あれ。なんか冷静に考えると俺たち凄い体勢になってないこれ…?!
『お前肌冷てェな』
『え?! ひゃっ! わ、ボス…!?』
薄手の病服っぽい水色の服に着替えさせられていたから風通しも良いし熱が堪るのは顔ばかり。手足はそうでもなかったようで手を恋人のように繋がれたかと思えば足を割開かれて自分より大きな身体が絡まる。
わーっ、?! なに、なんだこれ!!
『いや意外と高ェのか…?』
恐らく真っ赤になってプルプルと震えている俺とは違い、ボスはやけに冷静に俺の体温の感想を述べていらっしゃる。
早く! 退いてくれー!
『で? どこだ?』
何が!!
『怪我したの。見せてみな』
先生が巻いてくれた包帯を丁寧に解かれて、一番酷かったであろう腹部を蹴られた際にできた痣をじっくりとボスに見られる。他にも太ももや脛なんかに痣があり、いつの間にか肌が切れていたり…でもどれも大したことはない。まぁ足はヒビが入ったらしいが。
アルファになる頻度を上げれば、すぐによくなる。バランサーよりこういう時はアルファの方が良い。
『…残るって?』
『大袈裟ですよ。こんなの数ヶ月後には綺麗になくなってます。…ボスの方がよっぽど重傷なんですからね』
刺し傷に打撲など俺なんかよりよっぽど酷い有様だった。それなのにまだ半日程度でこんな風に俺を押し倒してお戯れが出来るんだから、呆れる。
…もう。怪我人だからって下手に出ればやりたい放題じゃないか。
『俺ァ慣れてる。お前には酷なことをした』
しっかりと目に焼き付けるように傷を見た後でボスは自らの手で包帯を巻き直してくれた。慣れた手付きで元通りにしてくれると頬に手を添えられる。
『…で? なんだって追い掛けて来やがった。あそこに隠れてりゃ、こんな傷も負わずに済んだ』
確かに。
昨夜、あの部屋に隠れていれば後から突入してきた弐条会の誰かに保護してもらえただろう。だけど後悔なんてない。この程度の傷で、貴方の命が護れたなら。
『痛くないです』
『嘘だなァ』
『痛くないです! ボスが俺に言った言葉の方が、ずっとずっと痛かったんですから! …あの言葉を訂正してもらうのに、貴方がいなくなったら困ります…』
ああ。我ながらなんて可愛くないんだ、マジで泣きそう…。
『ちゃんと嘘だったって言って下さい』
今思い返しても腹が立つ!
『…それとも、本当に俺はみんなの仲間じゃないんですか。ボスは…俺のこと、もう要らなくなったんですか』
嘘吐き。嘘吐きめ。
欲しいって、言ったくせに。どうせ体目当てだから! そうなんだ! あーやだやだ全く罪な男ですねぇ?!
…別にそれでも、良かったのに。
なんだか妙に惨めな気持ちになってズリズリとベッドから降りようと移動する。今になって身体が重たく感じる、胸なんかズンと重たくてズキズキするし。
誰とも顔なんか合わせたくない。
『おい待て』
手首を握られると有無を言わせず引き寄せられ、ベッドに座るボスに寄り掛かってしまうとそのまま肩を抱かれてしまう。
…は?
『宋平。嘘だ、全部…全部ってわけでもねェか。いや、お前への暴言は全部嘘だ。
ったく。なんだってこんなに振り回されちまうかなァ。とんだ大物だぜ。…さて、許してくれるか?』
赤黒い瞳に俺が写っている。その声が、仕草が、全てが甘く優しさを与えてきてこちらの動悸が激しくなった。
うわやっぱ心臓飛び出そう…。
『もう二度と言っちゃダメですからね。約束ですよ?
ヤクザと約定を交わすんですから、命を懸けてくださいね!』
だってボスが先に言ったんだから、しょうがないよな?
そんな思いでしてやったり顔をしながらボスにくっ付いていれば、隣にいるボスが無言のままなので心配になってくる。
…あ、あれ? ちょっと生意気だったか?!
『宋平』
『へぁっ、はいっ?!』
呼ばれたから怒られるかと思いつつ振り向けば、目の前が暗くなって髪を少しかき分けられるとすぐに額に何かが押し当てられる。
呆然と額に手を伸ばした俺は、離れるボスの顔から何をされたのか察した。
額に…キス、された…?
『約束だ。お前が俺の傍を離れるのは、最初に交わした約定が果たされた時。それまでお前は俺の近くにいろ』
先程まで勝ち誇ったような笑みをしていたのは俺だったのに。今ではボスの方がニヒルな笑みを浮かべて今度は絆創膏だらけの手を取って、甲にまで唇を落とす。
『爪割れてんじゃねェか』
あまりの出来事に固まる俺と違い、面白がったボスが割れた爪の指を口に含んだ瞬間、悲鳴を上げながら俺はベッドから飛び降りた。
無理無理無理無理!! ンだこの色気! うわぁああ!!
『ボス。失礼します、先程はすみませんでした。それであの、宋平は』
『ぅ兄貴ィイーッ!!』
『なんだそこにいた、かっ?!』
仮眠室から転がるように飛び出した俺の前に現れた刃斬。これ幸いと必死に背中からよじ登ってコアラの如く首に腕を巻き、足で上半身を挟む。
『なんなんだ一体…?! ん…? ちょっと待て、お前これ…マーキング』
『ボスが!! ボスが俺を揶揄って遊ぶ! 良くないっ、非常に! 良くない!!』
ドキドキし過ぎて心臓痛すぎ。顔が沸騰しそうなくらい熱くて、火が出そうだ。
『おいおい。他の男ンとこに逃げるなんざ、酷ェことしやがるな。ええ?』
『…ボス。まだ子どもですよ。お戯れは程々にしてやって下さい。こんな子猿みたいに震えて…』
誰が子猿か!?
『親猿も心配してます』
猿石かな?!
『どっちかってェと、親はこっちだろ』
『まぁ否定は出来ませんが…。いや猿の話はどうでも良いです。兎に角、コイツも一応は安静にさせないといけませんので…』
そう。この場にいる三人は怪我人であり、内二人は絶対安静が言い付けられているはずだ。アホみたいに高いアルファ性の回復力でこうしているが、多分先生が見たら問答無用でベッドに縛り付けられる。
『可愛い反応しやがるから、つい…な。
宋平』
ボスに呼ばれつつ刃斬の背中にへばり付いて目線だけを向ければ、ドアに寄り掛かったボスが腕を組みながら意地悪そうな笑みを浮かべる。
『約束、な?』
うぅ…! こんな意地悪でとんでもない色気を漂わせるくせに、傍にいろだなんてっ…絶対揶揄ってる!!
『~っ知りません!! もうっ、ボスのバカ!』
ピョンと刃斬の背中から飛び降りてエレベーターの方に走る。パタパタと走ると背中越しに刃斬の小さな溜め息とボスの笑い声がして口元を押さえる。
…視界にはもういないのに、まだドキドキする。
『あ!』
丁度エレベーターが開かれると犬飼が出てくるところだった。有無を言わさず犬飼の手を引いて再びエレベーターに引き込むと困惑した彼と俺の声が部屋に残った。
『あ~れ~』
『ごめんなさい! でも下まで送って下さい!』
ポーン、という音が鳴ってエレベーターが動き出す。QRコードがなければ動かない面倒なエレベーターでは幹部クラスの人の力を借りなければ出ることすら叶わない。
ふぅ。助かった…!
『あらやだー。珍し。ボスが他人にマーキングするなんて凄いな。何があったのやら』
『え。マーキング…?』
『気付いてない? ああ、ベータ…特に君には尚更か。アルファの匂いベッタリついてるよ。うん。こりゃどのバース性でも顔面蒼白だね!』
くんくん、と手首や腕を嗅いでみるが特に何も感じない。今はベータに切り替えてるし…バランサーにでもなればわかるか?
しかし、俺がボスの匂いを確認することは出来なかった。
『くっせ!!! 臭い!』
『人の顔見て臭いとかヤメテ!!』
エレベーターから降りるとすぐに猿石と出会う。嬉しそうに近寄って来た猿石がみるみると表情を険しくして堪らずといったように鼻を摘んで叫んだ。
臭いと。
『~っ、宋平の体臭がしねぇ!! 最悪!!』
『体臭?!』
『臭ぇ!!』
『おいヤメロ!!』
臭い臭いと吠える猿石が二メートルほど先からギャンギャン騒ぐ。多分それ以上は本能的に近付きたくないんだろう。
とんでもない言葉を吐かれて落ち込む俺。そしてわらわらと集まる兄貴たち。
『うわ、マジだ。匂うわ』
『俺たちベータにゃよくわからんなぁ…いや待て、なぁんか感じるな。ザワザワする』
酷い。あまりにも、酷い。
若干涙目のまま肩を落とす俺を誰かがサッと持ち上げる。シュッと何か香水みたいなものを振り掛けてからいつもの凛とした声で…でもどこか苛立ったような口調で吐き捨てるように喋った。
『君たちは怪我人をベッドに連れて来ることも出来ないのか。この子は今日一日は絶対安静。他の大人共は知らないが、この子だけは違う。
二度と連れ出さないように』
白衣を靡かせながら立ち去る先生に周囲は何も言えないまま立ち尽くす。有無を言わせぬままベッドに戻される俺もなんだか疲れたので辰見先生の腕の中で眠ろうとしたら頬を抓られ一言。
『ちゃんとアルファになりなさい』
『はーい…』
先生までいるなら、本当に頼りになるや。
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ベッドに下ろされると横になった俺に覆い被さるようになるボスが額に汗を浮かべながらシーツを掴む。苦しそうな顔に手を添えると熱が出てしまったのか少し熱い気がする。
あれ。なんか冷静に考えると俺たち凄い体勢になってないこれ…?!
『お前肌冷てェな』
『え?! ひゃっ! わ、ボス…!?』
薄手の病服っぽい水色の服に着替えさせられていたから風通しも良いし熱が堪るのは顔ばかり。手足はそうでもなかったようで手を恋人のように繋がれたかと思えば足を割開かれて自分より大きな身体が絡まる。
わーっ、?! なに、なんだこれ!!
『いや意外と高ェのか…?』
恐らく真っ赤になってプルプルと震えている俺とは違い、ボスはやけに冷静に俺の体温の感想を述べていらっしゃる。
早く! 退いてくれー!
『で? どこだ?』
何が!!
『怪我したの。見せてみな』
先生が巻いてくれた包帯を丁寧に解かれて、一番酷かったであろう腹部を蹴られた際にできた痣をじっくりとボスに見られる。他にも太ももや脛なんかに痣があり、いつの間にか肌が切れていたり…でもどれも大したことはない。まぁ足はヒビが入ったらしいが。
アルファになる頻度を上げれば、すぐによくなる。バランサーよりこういう時はアルファの方が良い。
『…残るって?』
『大袈裟ですよ。こんなの数ヶ月後には綺麗になくなってます。…ボスの方がよっぽど重傷なんですからね』
刺し傷に打撲など俺なんかよりよっぽど酷い有様だった。それなのにまだ半日程度でこんな風に俺を押し倒してお戯れが出来るんだから、呆れる。
…もう。怪我人だからって下手に出ればやりたい放題じゃないか。
『俺ァ慣れてる。お前には酷なことをした』
しっかりと目に焼き付けるように傷を見た後でボスは自らの手で包帯を巻き直してくれた。慣れた手付きで元通りにしてくれると頬に手を添えられる。
『…で? なんだって追い掛けて来やがった。あそこに隠れてりゃ、こんな傷も負わずに済んだ』
確かに。
昨夜、あの部屋に隠れていれば後から突入してきた弐条会の誰かに保護してもらえただろう。だけど後悔なんてない。この程度の傷で、貴方の命が護れたなら。
『痛くないです』
『嘘だなァ』
『痛くないです! ボスが俺に言った言葉の方が、ずっとずっと痛かったんですから! …あの言葉を訂正してもらうのに、貴方がいなくなったら困ります…』
ああ。我ながらなんて可愛くないんだ、マジで泣きそう…。
『ちゃんと嘘だったって言って下さい』
今思い返しても腹が立つ!
『…それとも、本当に俺はみんなの仲間じゃないんですか。ボスは…俺のこと、もう要らなくなったんですか』
嘘吐き。嘘吐きめ。
欲しいって、言ったくせに。どうせ体目当てだから! そうなんだ! あーやだやだ全く罪な男ですねぇ?!
…別にそれでも、良かったのに。
なんだか妙に惨めな気持ちになってズリズリとベッドから降りようと移動する。今になって身体が重たく感じる、胸なんかズンと重たくてズキズキするし。
誰とも顔なんか合わせたくない。
『おい待て』
手首を握られると有無を言わせず引き寄せられ、ベッドに座るボスに寄り掛かってしまうとそのまま肩を抱かれてしまう。
…は?
『宋平。嘘だ、全部…全部ってわけでもねェか。いや、お前への暴言は全部嘘だ。
ったく。なんだってこんなに振り回されちまうかなァ。とんだ大物だぜ。…さて、許してくれるか?』
赤黒い瞳に俺が写っている。その声が、仕草が、全てが甘く優しさを与えてきてこちらの動悸が激しくなった。
うわやっぱ心臓飛び出そう…。
『もう二度と言っちゃダメですからね。約束ですよ?
ヤクザと約定を交わすんですから、命を懸けてくださいね!』
だってボスが先に言ったんだから、しょうがないよな?
そんな思いでしてやったり顔をしながらボスにくっ付いていれば、隣にいるボスが無言のままなので心配になってくる。
…あ、あれ? ちょっと生意気だったか?!
『宋平』
『へぁっ、はいっ?!』
呼ばれたから怒られるかと思いつつ振り向けば、目の前が暗くなって髪を少しかき分けられるとすぐに額に何かが押し当てられる。
呆然と額に手を伸ばした俺は、離れるボスの顔から何をされたのか察した。
額に…キス、された…?
『約束だ。お前が俺の傍を離れるのは、最初に交わした約定が果たされた時。それまでお前は俺の近くにいろ』
先程まで勝ち誇ったような笑みをしていたのは俺だったのに。今ではボスの方がニヒルな笑みを浮かべて今度は絆創膏だらけの手を取って、甲にまで唇を落とす。
『爪割れてんじゃねェか』
あまりの出来事に固まる俺と違い、面白がったボスが割れた爪の指を口に含んだ瞬間、悲鳴を上げながら俺はベッドから飛び降りた。
無理無理無理無理!! ンだこの色気! うわぁああ!!
『ボス。失礼します、先程はすみませんでした。それであの、宋平は』
『ぅ兄貴ィイーッ!!』
『なんだそこにいた、かっ?!』
仮眠室から転がるように飛び出した俺の前に現れた刃斬。これ幸いと必死に背中からよじ登ってコアラの如く首に腕を巻き、足で上半身を挟む。
『なんなんだ一体…?! ん…? ちょっと待て、お前これ…マーキング』
『ボスが!! ボスが俺を揶揄って遊ぶ! 良くないっ、非常に! 良くない!!』
ドキドキし過ぎて心臓痛すぎ。顔が沸騰しそうなくらい熱くて、火が出そうだ。
『おいおい。他の男ンとこに逃げるなんざ、酷ェことしやがるな。ええ?』
『…ボス。まだ子どもですよ。お戯れは程々にしてやって下さい。こんな子猿みたいに震えて…』
誰が子猿か!?
『親猿も心配してます』
猿石かな?!
『どっちかってェと、親はこっちだろ』
『まぁ否定は出来ませんが…。いや猿の話はどうでも良いです。兎に角、コイツも一応は安静にさせないといけませんので…』
そう。この場にいる三人は怪我人であり、内二人は絶対安静が言い付けられているはずだ。アホみたいに高いアルファ性の回復力でこうしているが、多分先生が見たら問答無用でベッドに縛り付けられる。
『可愛い反応しやがるから、つい…な。
宋平』
ボスに呼ばれつつ刃斬の背中にへばり付いて目線だけを向ければ、ドアに寄り掛かったボスが腕を組みながら意地悪そうな笑みを浮かべる。
『約束、な?』
うぅ…! こんな意地悪でとんでもない色気を漂わせるくせに、傍にいろだなんてっ…絶対揶揄ってる!!
『~っ知りません!! もうっ、ボスのバカ!』
ピョンと刃斬の背中から飛び降りてエレベーターの方に走る。パタパタと走ると背中越しに刃斬の小さな溜め息とボスの笑い声がして口元を押さえる。
…視界にはもういないのに、まだドキドキする。
『あ!』
丁度エレベーターが開かれると犬飼が出てくるところだった。有無を言わさず犬飼の手を引いて再びエレベーターに引き込むと困惑した彼と俺の声が部屋に残った。
『あ~れ~』
『ごめんなさい! でも下まで送って下さい!』
ポーン、という音が鳴ってエレベーターが動き出す。QRコードがなければ動かない面倒なエレベーターでは幹部クラスの人の力を借りなければ出ることすら叶わない。
ふぅ。助かった…!
『あらやだー。珍し。ボスが他人にマーキングするなんて凄いな。何があったのやら』
『え。マーキング…?』
『気付いてない? ああ、ベータ…特に君には尚更か。アルファの匂いベッタリついてるよ。うん。こりゃどのバース性でも顔面蒼白だね!』
くんくん、と手首や腕を嗅いでみるが特に何も感じない。今はベータに切り替えてるし…バランサーにでもなればわかるか?
しかし、俺がボスの匂いを確認することは出来なかった。
『くっせ!!! 臭い!』
『人の顔見て臭いとかヤメテ!!』
エレベーターから降りるとすぐに猿石と出会う。嬉しそうに近寄って来た猿石がみるみると表情を険しくして堪らずといったように鼻を摘んで叫んだ。
臭いと。
『~っ、宋平の体臭がしねぇ!! 最悪!!』
『体臭?!』
『臭ぇ!!』
『おいヤメロ!!』
臭い臭いと吠える猿石が二メートルほど先からギャンギャン騒ぐ。多分それ以上は本能的に近付きたくないんだろう。
とんでもない言葉を吐かれて落ち込む俺。そしてわらわらと集まる兄貴たち。
『うわ、マジだ。匂うわ』
『俺たちベータにゃよくわからんなぁ…いや待て、なぁんか感じるな。ザワザワする』
酷い。あまりにも、酷い。
若干涙目のまま肩を落とす俺を誰かがサッと持ち上げる。シュッと何か香水みたいなものを振り掛けてからいつもの凛とした声で…でもどこか苛立ったような口調で吐き捨てるように喋った。
『君たちは怪我人をベッドに連れて来ることも出来ないのか。この子は今日一日は絶対安静。他の大人共は知らないが、この子だけは違う。
二度と連れ出さないように』
白衣を靡かせながら立ち去る先生に周囲は何も言えないまま立ち尽くす。有無を言わせぬままベッドに戻される俺もなんだか疲れたので辰見先生の腕の中で眠ろうとしたら頬を抓られ一言。
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『はーい…』
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