9 / 19
申し込み
しおりを挟む
イリーナのリム商会は追い詰められていた。
イマージュ皇女が、懇意にしている貴族や取引先に、リム商会の品を購入しないように伝えているらしい。急にキャンセルが増え、膨大な量の宝石が返品されてきた。このままだと、リム商会は立ち行かなくなる。
イマージュ皇女の嫌がらせだという事は分かりきっている。
噂に聞いていたはずだった。イマージュ皇女が、オージン・マクラビアンと婚約する予定だという事を知っていたのに、イリーナはオージンと何度も会っていた。
イリーナには、もう家族がいない。イリーナを追い出した母や妹、元婚約者の事を家族だと思う事ができない。
寂しかった。
ただ、オージンと過ごす時間が心地よくて、どうしても強く拒否する事が出来なかった。
リスクを感じながら、オージンと親しくしてしまった結果だった。
イリーナが、店舗兼借家で落ち込んでいると、店の呼び鈴がなった。
ここ数日は、誰も寄り付かなくなった店なのに、、、
「イリーナ。すまなかった。まさかイマージュ皇女がこんな事をするなんて、、、」
尋ねてきたのは、オージン・マクラビアン公爵子息だった。今回の事の原因が、彼と皇女様の関係にある事は分かっている。オージンとは縁を切らないといけない。そうでないと、帝国での商売は諦めるしかない。
イリーナは、オージンと会えなくなる事を想像して思わず、涙がこみ上げてきた。
(ああ、私は、いつの間にかオージンの事が、、、)
オージンは、そんなイリーナを見て慌てたように近づいてきた。
「イリーナ。君が涙を流すほど大変な事になるなんて、俺は君の力になりたい。実は今日は、提案があって来た。」
イリーナは、被りを振る。
(そうじゃない。私は、貴方の事が、、、、でも、この気持ちを伝えてどうするの。伝える訳にはいかない。彼も皇女様も、私だって困る事になる。)
オージンは、私の前に跪いて言った。
「俺のパートナーになって欲しい。愛おしいイリーナ。」
イリーナは、驚きオージンを見つめる。
(パートナー?結婚?こんなに急に?でもオージンとなら、ずっと一緒にいたい。グロッサー男爵家もリム商会の事も忘れて、オージンと一緒に、、、)
オージンは真剣な表情で、イリーナに言った。
「皇城舞踏会のパートナーになって欲しい。きっと君の商会を気に入ってくれる貴族が沢山いるはずだよ。俺に紹介させてくれ。」
イリーナは、顔に熱が籠るのを感じる。イリーナは両手で顔を隠して小声で言った。
「パートナーってそっちの?恥ずかしいわ。」
オージンは戸惑ったように言う。
「イリーナ大丈夫。熱でもあるのかい?首まで赤いよ。以前からイリーナに舞踏会のパートナーを申し込み、帝国貴族を紹介するつもりだった。でも、イマージュ皇女と君が仲良くなったと聞いてどうしようか迷っていた。何度も断られているのに、未練がましく感じるかもしれない。でも、舞踏会へ行くのは君や君の商会にとっても、メリットが高いはずだよ。お願いだ。イリーナ。」
イリーナは、少しだけ手の指を開き、その間からオージンを見ながら頷き言った。
「はい。お願いします。」
オージンは、満面の笑みで嬉しそうに微笑んでいた。
イマージュ皇女が、懇意にしている貴族や取引先に、リム商会の品を購入しないように伝えているらしい。急にキャンセルが増え、膨大な量の宝石が返品されてきた。このままだと、リム商会は立ち行かなくなる。
イマージュ皇女の嫌がらせだという事は分かりきっている。
噂に聞いていたはずだった。イマージュ皇女が、オージン・マクラビアンと婚約する予定だという事を知っていたのに、イリーナはオージンと何度も会っていた。
イリーナには、もう家族がいない。イリーナを追い出した母や妹、元婚約者の事を家族だと思う事ができない。
寂しかった。
ただ、オージンと過ごす時間が心地よくて、どうしても強く拒否する事が出来なかった。
リスクを感じながら、オージンと親しくしてしまった結果だった。
イリーナが、店舗兼借家で落ち込んでいると、店の呼び鈴がなった。
ここ数日は、誰も寄り付かなくなった店なのに、、、
「イリーナ。すまなかった。まさかイマージュ皇女がこんな事をするなんて、、、」
尋ねてきたのは、オージン・マクラビアン公爵子息だった。今回の事の原因が、彼と皇女様の関係にある事は分かっている。オージンとは縁を切らないといけない。そうでないと、帝国での商売は諦めるしかない。
イリーナは、オージンと会えなくなる事を想像して思わず、涙がこみ上げてきた。
(ああ、私は、いつの間にかオージンの事が、、、)
オージンは、そんなイリーナを見て慌てたように近づいてきた。
「イリーナ。君が涙を流すほど大変な事になるなんて、俺は君の力になりたい。実は今日は、提案があって来た。」
イリーナは、被りを振る。
(そうじゃない。私は、貴方の事が、、、、でも、この気持ちを伝えてどうするの。伝える訳にはいかない。彼も皇女様も、私だって困る事になる。)
オージンは、私の前に跪いて言った。
「俺のパートナーになって欲しい。愛おしいイリーナ。」
イリーナは、驚きオージンを見つめる。
(パートナー?結婚?こんなに急に?でもオージンとなら、ずっと一緒にいたい。グロッサー男爵家もリム商会の事も忘れて、オージンと一緒に、、、)
オージンは真剣な表情で、イリーナに言った。
「皇城舞踏会のパートナーになって欲しい。きっと君の商会を気に入ってくれる貴族が沢山いるはずだよ。俺に紹介させてくれ。」
イリーナは、顔に熱が籠るのを感じる。イリーナは両手で顔を隠して小声で言った。
「パートナーってそっちの?恥ずかしいわ。」
オージンは戸惑ったように言う。
「イリーナ大丈夫。熱でもあるのかい?首まで赤いよ。以前からイリーナに舞踏会のパートナーを申し込み、帝国貴族を紹介するつもりだった。でも、イマージュ皇女と君が仲良くなったと聞いてどうしようか迷っていた。何度も断られているのに、未練がましく感じるかもしれない。でも、舞踏会へ行くのは君や君の商会にとっても、メリットが高いはずだよ。お願いだ。イリーナ。」
イリーナは、少しだけ手の指を開き、その間からオージンを見ながら頷き言った。
「はい。お願いします。」
オージンは、満面の笑みで嬉しそうに微笑んでいた。
796
あなたにおすすめの小説
【完結】側妃は愛されるのをやめました
なか
恋愛
「君ではなく、彼女を正妃とする」
私は、貴方のためにこの国へと貢献してきた自負がある。
なのに……彼は。
「だが僕は、ラテシアを見捨てはしない。これから君には側妃になってもらうよ」
私のため。
そんな建前で……側妃へと下げる宣言をするのだ。
このような侮辱、恥を受けてなお……正妃を求めて抗議するか?
否。
そのような恥を晒す気は無い。
「承知いたしました。セリム陛下……私は側妃を受け入れます」
側妃を受けいれた私は、呼吸を挟まずに言葉を続ける。
今しがた決めた、たった一つの決意を込めて。
「ですが陛下。私はもう貴方を支える気はありません」
これから私は、『捨てられた妃』という汚名でなく、彼を『捨てた妃』となるために。
華々しく、私の人生を謳歌しよう。
全ては、廃妃となるために。
◇◇◇
設定はゆるめです。
読んでくださると嬉しいです!
虐げられた皇女は父の愛人とその娘に復讐する
ましゅぺちーの
恋愛
大陸一の大国ライドーン帝国の皇帝が崩御した。
その皇帝の子供である第一皇女シャーロットはこの時をずっと待っていた。
シャーロットの母親は今は亡き皇后陛下で皇帝とは政略結婚だった。
皇帝は皇后を蔑ろにし身分の低い女を愛妾として囲った。
やがてその愛妾には子供が生まれた。それが第二皇女プリシラである。
愛妾は皇帝の寵愛を笠に着てやりたい放題でプリシラも両親に甘やかされて我儘に育った。
今までは皇帝の寵愛があったからこそ好きにさせていたが、これからはそうもいかない。
シャーロットは愛妾とプリシラに対する復讐を実行に移す―
一部タイトルを変更しました。
思い出してしまったのです
月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。
妹のルルだけが特別なのはどうして?
婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの?
でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。
愛されないのは当然です。
だって私は…。
ご安心を、2度とその手を求める事はありません
ポチ
恋愛
大好きな婚約者様。 ‘’愛してる‘’ その言葉私の宝物だった。例え貴方の気持ちが私から離れたとしても。お飾りの妻になるかもしれないとしても・・・
それでも、私は貴方を想っていたい。 独り過ごす刻もそれだけで幸せを感じられた。たった一つの希望
お飾り王妃の死後~王の後悔~
ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。
王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。
ウィルベルト王国では周知の事実だった。
しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。
最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。
小説家になろう様にも投稿しています。
愛する夫が目の前で別の女性と恋に落ちました。
ましゅぺちーの
恋愛
伯爵令嬢のアンジェは公爵家の嫡男であるアランに嫁いだ。
子はなかなかできなかったが、それでも仲の良い夫婦だった。
――彼女が現れるまでは。
二人が結婚して五年を迎えた記念パーティーでアランは若く美しい令嬢と恋に落ちてしまう。
それからアランは変わり、何かと彼女のことを優先するようになり……
婚約破棄の代償
nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」
ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。
エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。
もう二度と、あなたの妻にはなりたくありません~死に戻った嫌われ令嬢は幸せになりたい~
桜百合
恋愛
旧題:もう二度と、あなたの妻にはなりたくありません〜死に戻りの人生は別の誰かと〜
★第18回恋愛小説大賞で大賞を受賞しました。応援・投票してくださり、本当にありがとうございました!
10/24にレジーナブックス様より書籍が発売されました。
現在コミカライズも進行中です。
「もしも人生をやり直せるのなら……もう二度と、あなたの妻にはなりたくありません」
コルドー公爵夫妻であるフローラとエドガーは、大恋愛の末に結ばれた相思相愛の二人であった。
しかしナターシャという子爵令嬢が現れた途端にエドガーは彼女を愛人として迎え、フローラの方には見向きもしなくなってしまう。
愛を失った人生を悲観したフローラは、ナターシャに毒を飲ませようとするが、逆に自分が毒を盛られて命を落とすことに。
だが死んだはずのフローラが目を覚ますとそこは実家の侯爵家。
どうやらエドガーと知り合う前に死に戻ったらしい。
もう二度とあのような辛い思いはしたくないフローラは、一度目の人生の失敗を生かしてエドガーとの結婚を避けようとする。
※完結したので感想欄を開けてます(お返事はゆっくりになるかもです…!)
独自の世界観ですので、設定など大目に見ていただけると助かります。
※誤字脱字報告もありがとうございます!
こちらでまとめてのお礼とさせていただきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる